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第7章 砂漠の獣神
第20話 死神の復活
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ハピの間を抜けてチユキ達は心臓の間を目指す。
「何よ、これ!!? とんでもない魔力が流れて来ている!!?」
チユキは驚きの声を出す。
心臓の間へ至る階段を上っていると強力な魔力が流れている。
その魔力の量にチユキは驚く。
「ああ、チユキ。とんでもない魔力だ……。敵はこの先で何かをしているみたいだな。トトナ。敵が何をやっているのかわかるかい?」
レイジが聞くとトトナは首を振る。
「わからない。でも嫌な予感がする」
この先で行われている事に不安を感じているのか、トトナは隣のメジェドの布をぐっと握りながら言う。
「だけど、行くしかないわね」
チユキ達は進む。
階段を上りきると広いハピの間よりも二回りほど小さい部屋へとたどり着く。
どうやら、ここが心臓の間のようであった。
その部屋の中心に複数の何者かが集まっている。
「蛇の王子。それにあの中心にいるのは?」
トトナは中心を見て呟く。
部屋には当然のごとくハピの間に蛇の王子達がいる。
それにチユキが見た事がない者も数名いる。
だけど、一番気になるのは部屋の中心で座禅を組んでいる法衣の男である。
蜘蛛を模した仮面を付けた男。
その仮面にチユキは見覚えがある。
チユキはその男とロクス王国の地下で初めて出会った。
死神ザルキシス。
そう呼ばれる神である。
「ええ、レイジ君。仮面を付けているけど間違い無いと思うわ。死神ザルキシスだわ」
チユキはザルキシスを睨む。
「ふん。来たか勇者共。しかし、遅かったようだな。我が肉体の再生はほぼ終わっておるぞ」
ザルキシスは笑うとチユキ達を見る。
「肉体の再生? もしかして、あれだけの数の生贄の命を奪ったのも、それが理由」
ザルキシスはトトナの言葉に頷く。
「その通りだ。忌まわしきミナの血を引く女神よ。あの愚かな王子から奪ったピラミッドは役に立ってくれた。生贄の生命力をこれ程増幅してくれたのだからな。もっとも無理をさせたせいか、もはやもたぬようだがな」
ザルキシスはある方向を見る。
そこには石棺のようなものがおかれている。
光る石棺はザルキシスの座っている魔法陣に力を送っている様子であった。
そして、その石棺はひび割れている。
「もうピラミッドは用済みってわけね……」
「その通りだ。勇者の女」
そう言ってザルキシスは立ち上がると蜘蛛の仮面を外す。
その顔を見てチユキは息を飲む。
顔の左半分は整った人間のようで、右半分は醜い化け物である。
左半分の顔が整っているだけに右半分の醜さが際立っているように感じる。
「なるほどな……。再生した所で申し訳ないが、再び壊させてもらうぞ。逃げるなよ」
レイジは光輝の剣を向ける。
「安心せよ光の勇者。逃げる事はせぬ。それよりもお主達が逃げる事を考えた方が良いのではないかな? 見るが良いぞ!!」
ザルキシスが叫ぶと映像が浮かび上がる。
映像はピラミッドの外を映していた。
「あれは蛇の女王!! それに何よ、あの数は!!」
チユキは映像を見て叫んでしまう。
映像には蛇の女王と数多の異形の者達が映っていて、ハルセス達と対峙している。
「ディアドナめ!! なかなか早いではないか!! 貴様らこそ逃げられると思うでないぞ!!」
ザルキシスは笑う。
確かにまずい状況であった。
チユキの背中に冷や汗が流れる。
「さあ!! もうこのピラミッドに用は無い!! カーネフ!! ピラミッドを破壊せよ!! 者共脱出だ!!」
ザルキシスが叫ぶとジプシール風の法衣を纏った者が出てくる。
顔は骨だけであり、目玉があるはずの眼窩は赤く光っている。
ザルキシスを崇める死の司祭のようであった。
その死の司祭が石棺を破壊する。
石棺が破壊されるとザルキシス達の姿が突然消える。
「魔力が暴走している!!? ピラミッドが爆発する!!」
トトナは叫ぶ。
「レイジ君!!」
「わかっているチユキ!!」
レイジは光砲を放ちピラミッドの壁に穴を開ける。
すかさずチユキ達は外へと飛び出す。
チユキ達がピラミッドから脱出した瞬間だった。
ピラミッドが轟音を響かせて爆発する。
「レイジ!!」
「トトナん!! メジェド!!!」
チユキ達がジプシールの陣営へと着地するとイシュティアとネルがこちらに駆け寄る。
「レイジ。無事だったようね。良かったわ」
「ああイシュティア。だけど、まだ安心できないな」
レイジは蛇の女王達を見る。
かなりの数である。
その中にはラヴュリュスにギルタルの姿も見えるところから、ほとんどが邪神に違いなかった。
それに対してチユキ達のほとんどはマミーの兵隊である。
力を取り戻した死神ザルキシスに蛇の女王ディアドナの実力はわからないが、向こうにはシロネやナオの2人でも敵わなかったギルタルに暴力の化身のようなラヴュリュスがいる。
それだけでもチユキ達の方が不利であった。
「イシュティア様。どうやら転移を阻害する魔法を使われています。魔法で逃げるのは難しいみたいです」
突然現れたピスティスは報告する。
この猿神は本当に神出鬼没だとチユキは思う。
「そうピスティス。逃げるのは難しそうね。ねえハルちゃん? どうするつもり?」
イシュティアは振り返り息子を見る。
「逃げるなどしませぬ!! 母上!! ジプシールの支配者が背を向ける事はできませぬ!!」
ハルセスはそう言い切る。
その言葉にチユキは感心する。
少しは骨があるようであった。
しかし、今は状況が悪い。
ピラミッドは敵が破壊してくれたのだ、ここは撤退を第一に考えるべきであった。
「ハルセス様!! ここは撤退すべきです!! このままでは全滅します!!」
チユキがそう思っていると、イスデスが撤退を進言する。
「何を言っている!! イスデス!! 奴らが我らを逃がしてくれるわけなかろう!!」
ハルセスはディアドナ達を睨む。
「ハルセス!! 聞こえるかい!! そちらにいるイシュティアとトトナを引き渡しな!! そしたら他の奴らは見逃してやる!!」
ディアドナはハルセスに呼びかける。
「母上を引き渡すだと!! できるわけがなかろう!!」
さすがのハルセスも拒否する。
猫達は見捨てても自らの母親までは見捨てる事はしないようであった。
「そうかい!! なら、お前の首をセクメトラに送ってやる!! アポフィス同盟の諸君!! ジプシールの奴らを蹂躙せよ!!」
ディアドナは手を上げると邪神達に号令を出す。
「レイジ!!」
イシュティアはレイジを見る。
「任せろ、イシュティア!! エリオスの女神は俺が守る!! 出てきてくれベンヌ!!」
レイジは両手に剣を構えると光の上位精霊を呼び出す。
暗雲が立ち込める空に太陽のごとく光る鳥が出現する。
「輝火の光翼よ!!」
レイジが叫ぶとベンヌが羽ばたく。
光の翼が広がり邪神達に降り注ぐ。
邪神達の悲鳴が聞こえる。
大砂蟲のように倒す事は出来なくても吹き飛ばす事はできるようであった。
「このまま行くぜ!!」
ベンヌにひるんだ邪神達にレイジは突っ込む。
2本の剣を振るい邪神達を薙ぎ払う。
「馬鹿な!!」
「なんて強さだ!!」
「こりゃ、勝てねえぜ!!」
邪神達は叫びながらレイジから逃げる。
その強さにディアドナ達はもちろんハルセス達も驚いている。
「何だあれは!!? 勝負にならないではないか!!」
「はいハルセス様。まさか光の勇者がこれほどとは。もしかするとアルフォス並みに強いのかもしれません」
ハルセスとイスデスの会話にイシュティアは嬉しそうに笑う。
「さすがね。案外これならレイジだけでも良いかもしれないわね」
「本当。できればそうであって欲しいわ」
イシュティアの言葉にチユキは頷く。
「何をしている!! 相手はたった一騎だぞ!!」
怒りの表情でディアドナは叫ぶ。
これだけの邪神がいてもレイジただ1人に敵わない。
怒るのも当然であった。
「勇者!! 俺が相手だ!!」
逃げ惑う邪神の中で、逃げなかったラヴュリュスがレイジに向かう。
レイジに迫ったラヴュリュスは巨大な双頭の斧を振るう。
「おっと!!」
しかし、その斧はレイジにあっさり避けられる。
「そんな攻撃が当たるかよ!」
レイジは笑うと魔力を剣に込めて振るう。
閃光のような斬撃がラヴュリュスを襲う。
「ぐああああ!!! くそがああああ!!!!」
ラヴュリュスは耐えられず、後ろに下がる。
力ではレイジに勝っていても、速さではレイジの方が上であった。
迷宮の力がなく、広い場所ではレイジの方が圧倒的に優勢である。
「どうしたラヴュリュス!! その程度か!!」
レイジは不敵に笑う。
すると、ラヴュリュスは鼻息を荒くする。
「こうなったらモロクの火で焼き殺してやる!!」
「させるか!!」
レイジは剣を低く構えると、全身をバネのようにしならせて相手に向かって飛ぶ。
「ぐわああああああ!!!」
あわれラヴュリュスはモロクの火を使う前に吹き飛ばされ、地面に激突すると動かなくなる。
血が噴き出しているが、チユキがいる場所からは生死は判断できなかった。
レイジはラヴュリュスに勝ち、その戦いぶりに犬人や鳥人にマミー達から歓声が上がる。
「さあ!! どうした!! これで終わりか?!!」
レイジは剣をディアドナに向ける
上空では光の精霊ベンヌが翼を羽ばたかせている。
そのレイジの気迫に邪神達は後退する。
その時だった。
突然、笑い声が鳴り響く。
「あはははは!! あのラヴュリュスも形なしとはな!! やるではないか、光の勇者よ!! ならばこのザルキシスが相手をしてやる!!」
ザルキシスは笑いながら、前に出る。
「おおザルキシス!! もう良いのか?!!」
「まかせておけ、ディアドナ。取り戻した力を勇者で試してくれる!!!」
半分化け物の顔をしたザルキシスは不気味に笑うと法衣を一枚脱ぐ。
すると背中から巨大な蝙蝠の羽が出て来る。
いつの間にか片方の手に捻じ曲がった剣を持っている。
ザルキシスはその剣をレイジに向ける。
「へえ? 俺で試すだって? 死にぞこないだった奴が言ってくれるじゃないか? ベンヌ!!」
レイジに反応してベンヌの体がさらに輝く。
まるで、ザルキシスを威嚇しているようであった。
「ふん!! 光の上位精霊を使役できるようだが!! そのようなものはザルキシスの敵ではない!! 見るが良い黒いピラミッドで得た力を!! 闇狼にして闇蛇なる者よ!!九曜星の羅睺星より出でてその姿を現せ!!光喰らう者エクリプス!!」
ザルキシスが叫ぶと何もない空中から黒い霧が吹き出す。
黒い霧は長く伸び、まるで蛇のようである。
伸びた頭の所が狼の口のように開く。
それはまさに巨大な闇の竜であった。
「ふははっはは!! 勇者よ!! これが闇の上位精霊光喰らう者エクリプスよ!! 光の上位精霊など敵ではないわ!!」
ザルキシスは哄笑する。
上空に浮かぶエクリプスが巨大な口を開く。
するとベンヌの輝きが次第に小さくなる。
チユキが知る伝承によればエクリプスは光の精霊の天敵であった。
このままではベンヌの力は使えない。
「さあ勇者よ! これでベンヌの力は使えぬぞ!! 死ぬが良い勇者!! 千列の餓鬼弾ぉ!!」」
ザルキシスが叫ぶと空中に千個のサッカーボールほどの餓鬼玉が現れ、レイジに向かう。
「くそ!! 千列の光弾!!!」
ザルキシスの餓鬼弾に対してレイジは光弾で応戦する。
餓鬼玉達は避けようとするが追尾能力のある光弾から逃れられず全て撃ち落とされる。
「ほうやるな、勇者!!」
餓鬼玉が全て落とされたというのにザルキシスは余裕の表情だ。
「今度はこちらから行くぞ!!」
レイジが光輝の剣を掲げザルキシスに向かう。
何故だろう、レイジの動きが先ほどに比べて鈍く感じる。
そのためかザルキシスは余裕の表情でレイジの剣を受け止める。
「この程度か? 勇者?」
「何の!!」
光輝の剣を受け止められたレイジはもう片方の手に持つオリハルコンの剣で攻撃する。
しかし、ザルキシスはすかさず背中の翼で受け止める。
オリハルコンの剣を受け止められたのにも関わらずザルキシスの翼が傷ついた様子はない。
ザルキシスの背中にある蝙蝠のような羽はオリハルコン並みの硬度がある事になる。
チユキはその事に驚く。
「どういう事なの!!? レイジ君の光の魔法が弱くなっている気がするわ!!?」
チユキは焦る。
このままではレイジが負けるだろう。
「おそらくエクリプスの力。あの闇の上位精霊は光だけでなく敵の力を奪う。対峙した者は能力が下がる。おそらく私達の力も下がっている」
トトナは説明する。
トトナに言われてチユキは自身の魔力が弱まっている事に気付く。
体の力が奪われているのかのようであった。
周りを見るとマミーに犬人や鳥人で倒れている者達が見える。
力を奪われてしまったようであった。
ハルセスやイスデスは無事のようだけど、その配下の者達は戦えないだろう。
先程までチユキ達が優勢だったのが逆転されてしまった。
チユキの目の前でレイジはザルキシスの攻撃に押されている。
「ぐわあああ!!」
ザルキシスの攻撃にレイジの体が砂の上に叩き付けられる。
何とか起き上がろうとしているみたいだが、これ以上は無理みたいであった。
「嘘!! レイジがやられるなんて!! トトナちゃん何とかならない?!!」
イシュティアはトトナに詰め寄る。
しかし、トトナは何も答えない。
冷静にレイジとザルキシスの戦いを見ている。
「ふん、この程度か。他愛ないな。ギルタル!! お前に譲ってやる!! 勇者の首を取れ!!」
ザルキシスがそう言うと蠍の神ギルタルが前に出て来る。
「はははは!! 感謝しますよ!! 私に光の勇者の首を取らせてくれるとは!! 光の勇者!! 天上の美姫を奪った事を後悔しなさい!!」
ギルタルは背中の巨大な蠍の鋏をレイジに向ける。
「まずいわ! このままじゃレイジ君が死んじゃう!」
「そうね。まずいわ、このままレイジを死なせるのは惜しいのよね。何とか助けないと」
チユキとイシュティアは隙を見てレイジを助けようと身構える。
しかし、ザルキシス以外にディアドナ達がいるので難しそうであった。
「大丈夫。黒髪の賢者にイシュティア様。私達には強い味方が付いている」
それまで、静かに観戦していたトトナが呟くと指さす。
「えっ? メジェド? 何時の間に移動したの? 全く気付かなかったわ?」
トトナが指さした方を見てチユキは驚く。
トトナが指さした方向、レイジとギルタルの間にメジェドが立っている。
「何ですか? この愉快な恰好をした者は?!!」
ギルタルもまた突然現れた闖入者に驚く。
驚いているのはギルタルだけではない。
ザルキシスにディアドナもいつの間にか移動したメジェドに驚いている。
「お前がああ!! シロネを刺した蠍神かああああああああああ!!!!!?」
怒ったようにメジェドは叫ぶ。
初めて聞くメジェドの声。
チユキはその声には聞き覚えがあった。
そのメジェドの体が突然黒い炎に包まれる。
そして、黒い炎が消えた時だった。
漆黒の鎧を着た者が現れる。
「う!!? うそ?!!!!」
チユキはその時になって初めて理解する。
メジェドの正体を、ブルルルンの持ち主を。
「馬鹿な!!! 暗黒騎士だと!!!」
ザルキシスは叫ぶ。
その場にいた者達全員がメジェドであった者に注目する。
全員の視線が集まる中、暗黒騎士は静かに立っていた。
★★★★★★★★★★★★後書き★★★★★★★★★★★★
更新です。
ようやく、クロキが戦います。
7章も終わりが見えてきました。また文章が相変わらず酷いです。
「何よ、これ!!? とんでもない魔力が流れて来ている!!?」
チユキは驚きの声を出す。
心臓の間へ至る階段を上っていると強力な魔力が流れている。
その魔力の量にチユキは驚く。
「ああ、チユキ。とんでもない魔力だ……。敵はこの先で何かをしているみたいだな。トトナ。敵が何をやっているのかわかるかい?」
レイジが聞くとトトナは首を振る。
「わからない。でも嫌な予感がする」
この先で行われている事に不安を感じているのか、トトナは隣のメジェドの布をぐっと握りながら言う。
「だけど、行くしかないわね」
チユキ達は進む。
階段を上りきると広いハピの間よりも二回りほど小さい部屋へとたどり着く。
どうやら、ここが心臓の間のようであった。
その部屋の中心に複数の何者かが集まっている。
「蛇の王子。それにあの中心にいるのは?」
トトナは中心を見て呟く。
部屋には当然のごとくハピの間に蛇の王子達がいる。
それにチユキが見た事がない者も数名いる。
だけど、一番気になるのは部屋の中心で座禅を組んでいる法衣の男である。
蜘蛛を模した仮面を付けた男。
その仮面にチユキは見覚えがある。
チユキはその男とロクス王国の地下で初めて出会った。
死神ザルキシス。
そう呼ばれる神である。
「ええ、レイジ君。仮面を付けているけど間違い無いと思うわ。死神ザルキシスだわ」
チユキはザルキシスを睨む。
「ふん。来たか勇者共。しかし、遅かったようだな。我が肉体の再生はほぼ終わっておるぞ」
ザルキシスは笑うとチユキ達を見る。
「肉体の再生? もしかして、あれだけの数の生贄の命を奪ったのも、それが理由」
ザルキシスはトトナの言葉に頷く。
「その通りだ。忌まわしきミナの血を引く女神よ。あの愚かな王子から奪ったピラミッドは役に立ってくれた。生贄の生命力をこれ程増幅してくれたのだからな。もっとも無理をさせたせいか、もはやもたぬようだがな」
ザルキシスはある方向を見る。
そこには石棺のようなものがおかれている。
光る石棺はザルキシスの座っている魔法陣に力を送っている様子であった。
そして、その石棺はひび割れている。
「もうピラミッドは用済みってわけね……」
「その通りだ。勇者の女」
そう言ってザルキシスは立ち上がると蜘蛛の仮面を外す。
その顔を見てチユキは息を飲む。
顔の左半分は整った人間のようで、右半分は醜い化け物である。
左半分の顔が整っているだけに右半分の醜さが際立っているように感じる。
「なるほどな……。再生した所で申し訳ないが、再び壊させてもらうぞ。逃げるなよ」
レイジは光輝の剣を向ける。
「安心せよ光の勇者。逃げる事はせぬ。それよりもお主達が逃げる事を考えた方が良いのではないかな? 見るが良いぞ!!」
ザルキシスが叫ぶと映像が浮かび上がる。
映像はピラミッドの外を映していた。
「あれは蛇の女王!! それに何よ、あの数は!!」
チユキは映像を見て叫んでしまう。
映像には蛇の女王と数多の異形の者達が映っていて、ハルセス達と対峙している。
「ディアドナめ!! なかなか早いではないか!! 貴様らこそ逃げられると思うでないぞ!!」
ザルキシスは笑う。
確かにまずい状況であった。
チユキの背中に冷や汗が流れる。
「さあ!! もうこのピラミッドに用は無い!! カーネフ!! ピラミッドを破壊せよ!! 者共脱出だ!!」
ザルキシスが叫ぶとジプシール風の法衣を纏った者が出てくる。
顔は骨だけであり、目玉があるはずの眼窩は赤く光っている。
ザルキシスを崇める死の司祭のようであった。
その死の司祭が石棺を破壊する。
石棺が破壊されるとザルキシス達の姿が突然消える。
「魔力が暴走している!!? ピラミッドが爆発する!!」
トトナは叫ぶ。
「レイジ君!!」
「わかっているチユキ!!」
レイジは光砲を放ちピラミッドの壁に穴を開ける。
すかさずチユキ達は外へと飛び出す。
チユキ達がピラミッドから脱出した瞬間だった。
ピラミッドが轟音を響かせて爆発する。
「レイジ!!」
「トトナん!! メジェド!!!」
チユキ達がジプシールの陣営へと着地するとイシュティアとネルがこちらに駆け寄る。
「レイジ。無事だったようね。良かったわ」
「ああイシュティア。だけど、まだ安心できないな」
レイジは蛇の女王達を見る。
かなりの数である。
その中にはラヴュリュスにギルタルの姿も見えるところから、ほとんどが邪神に違いなかった。
それに対してチユキ達のほとんどはマミーの兵隊である。
力を取り戻した死神ザルキシスに蛇の女王ディアドナの実力はわからないが、向こうにはシロネやナオの2人でも敵わなかったギルタルに暴力の化身のようなラヴュリュスがいる。
それだけでもチユキ達の方が不利であった。
「イシュティア様。どうやら転移を阻害する魔法を使われています。魔法で逃げるのは難しいみたいです」
突然現れたピスティスは報告する。
この猿神は本当に神出鬼没だとチユキは思う。
「そうピスティス。逃げるのは難しそうね。ねえハルちゃん? どうするつもり?」
イシュティアは振り返り息子を見る。
「逃げるなどしませぬ!! 母上!! ジプシールの支配者が背を向ける事はできませぬ!!」
ハルセスはそう言い切る。
その言葉にチユキは感心する。
少しは骨があるようであった。
しかし、今は状況が悪い。
ピラミッドは敵が破壊してくれたのだ、ここは撤退を第一に考えるべきであった。
「ハルセス様!! ここは撤退すべきです!! このままでは全滅します!!」
チユキがそう思っていると、イスデスが撤退を進言する。
「何を言っている!! イスデス!! 奴らが我らを逃がしてくれるわけなかろう!!」
ハルセスはディアドナ達を睨む。
「ハルセス!! 聞こえるかい!! そちらにいるイシュティアとトトナを引き渡しな!! そしたら他の奴らは見逃してやる!!」
ディアドナはハルセスに呼びかける。
「母上を引き渡すだと!! できるわけがなかろう!!」
さすがのハルセスも拒否する。
猫達は見捨てても自らの母親までは見捨てる事はしないようであった。
「そうかい!! なら、お前の首をセクメトラに送ってやる!! アポフィス同盟の諸君!! ジプシールの奴らを蹂躙せよ!!」
ディアドナは手を上げると邪神達に号令を出す。
「レイジ!!」
イシュティアはレイジを見る。
「任せろ、イシュティア!! エリオスの女神は俺が守る!! 出てきてくれベンヌ!!」
レイジは両手に剣を構えると光の上位精霊を呼び出す。
暗雲が立ち込める空に太陽のごとく光る鳥が出現する。
「輝火の光翼よ!!」
レイジが叫ぶとベンヌが羽ばたく。
光の翼が広がり邪神達に降り注ぐ。
邪神達の悲鳴が聞こえる。
大砂蟲のように倒す事は出来なくても吹き飛ばす事はできるようであった。
「このまま行くぜ!!」
ベンヌにひるんだ邪神達にレイジは突っ込む。
2本の剣を振るい邪神達を薙ぎ払う。
「馬鹿な!!」
「なんて強さだ!!」
「こりゃ、勝てねえぜ!!」
邪神達は叫びながらレイジから逃げる。
その強さにディアドナ達はもちろんハルセス達も驚いている。
「何だあれは!!? 勝負にならないではないか!!」
「はいハルセス様。まさか光の勇者がこれほどとは。もしかするとアルフォス並みに強いのかもしれません」
ハルセスとイスデスの会話にイシュティアは嬉しそうに笑う。
「さすがね。案外これならレイジだけでも良いかもしれないわね」
「本当。できればそうであって欲しいわ」
イシュティアの言葉にチユキは頷く。
「何をしている!! 相手はたった一騎だぞ!!」
怒りの表情でディアドナは叫ぶ。
これだけの邪神がいてもレイジただ1人に敵わない。
怒るのも当然であった。
「勇者!! 俺が相手だ!!」
逃げ惑う邪神の中で、逃げなかったラヴュリュスがレイジに向かう。
レイジに迫ったラヴュリュスは巨大な双頭の斧を振るう。
「おっと!!」
しかし、その斧はレイジにあっさり避けられる。
「そんな攻撃が当たるかよ!」
レイジは笑うと魔力を剣に込めて振るう。
閃光のような斬撃がラヴュリュスを襲う。
「ぐああああ!!! くそがああああ!!!!」
ラヴュリュスは耐えられず、後ろに下がる。
力ではレイジに勝っていても、速さではレイジの方が上であった。
迷宮の力がなく、広い場所ではレイジの方が圧倒的に優勢である。
「どうしたラヴュリュス!! その程度か!!」
レイジは不敵に笑う。
すると、ラヴュリュスは鼻息を荒くする。
「こうなったらモロクの火で焼き殺してやる!!」
「させるか!!」
レイジは剣を低く構えると、全身をバネのようにしならせて相手に向かって飛ぶ。
「ぐわああああああ!!!」
あわれラヴュリュスはモロクの火を使う前に吹き飛ばされ、地面に激突すると動かなくなる。
血が噴き出しているが、チユキがいる場所からは生死は判断できなかった。
レイジはラヴュリュスに勝ち、その戦いぶりに犬人や鳥人にマミー達から歓声が上がる。
「さあ!! どうした!! これで終わりか?!!」
レイジは剣をディアドナに向ける
上空では光の精霊ベンヌが翼を羽ばたかせている。
そのレイジの気迫に邪神達は後退する。
その時だった。
突然、笑い声が鳴り響く。
「あはははは!! あのラヴュリュスも形なしとはな!! やるではないか、光の勇者よ!! ならばこのザルキシスが相手をしてやる!!」
ザルキシスは笑いながら、前に出る。
「おおザルキシス!! もう良いのか?!!」
「まかせておけ、ディアドナ。取り戻した力を勇者で試してくれる!!!」
半分化け物の顔をしたザルキシスは不気味に笑うと法衣を一枚脱ぐ。
すると背中から巨大な蝙蝠の羽が出て来る。
いつの間にか片方の手に捻じ曲がった剣を持っている。
ザルキシスはその剣をレイジに向ける。
「へえ? 俺で試すだって? 死にぞこないだった奴が言ってくれるじゃないか? ベンヌ!!」
レイジに反応してベンヌの体がさらに輝く。
まるで、ザルキシスを威嚇しているようであった。
「ふん!! 光の上位精霊を使役できるようだが!! そのようなものはザルキシスの敵ではない!! 見るが良い黒いピラミッドで得た力を!! 闇狼にして闇蛇なる者よ!!九曜星の羅睺星より出でてその姿を現せ!!光喰らう者エクリプス!!」
ザルキシスが叫ぶと何もない空中から黒い霧が吹き出す。
黒い霧は長く伸び、まるで蛇のようである。
伸びた頭の所が狼の口のように開く。
それはまさに巨大な闇の竜であった。
「ふははっはは!! 勇者よ!! これが闇の上位精霊光喰らう者エクリプスよ!! 光の上位精霊など敵ではないわ!!」
ザルキシスは哄笑する。
上空に浮かぶエクリプスが巨大な口を開く。
するとベンヌの輝きが次第に小さくなる。
チユキが知る伝承によればエクリプスは光の精霊の天敵であった。
このままではベンヌの力は使えない。
「さあ勇者よ! これでベンヌの力は使えぬぞ!! 死ぬが良い勇者!! 千列の餓鬼弾ぉ!!」」
ザルキシスが叫ぶと空中に千個のサッカーボールほどの餓鬼玉が現れ、レイジに向かう。
「くそ!! 千列の光弾!!!」
ザルキシスの餓鬼弾に対してレイジは光弾で応戦する。
餓鬼玉達は避けようとするが追尾能力のある光弾から逃れられず全て撃ち落とされる。
「ほうやるな、勇者!!」
餓鬼玉が全て落とされたというのにザルキシスは余裕の表情だ。
「今度はこちらから行くぞ!!」
レイジが光輝の剣を掲げザルキシスに向かう。
何故だろう、レイジの動きが先ほどに比べて鈍く感じる。
そのためかザルキシスは余裕の表情でレイジの剣を受け止める。
「この程度か? 勇者?」
「何の!!」
光輝の剣を受け止められたレイジはもう片方の手に持つオリハルコンの剣で攻撃する。
しかし、ザルキシスはすかさず背中の翼で受け止める。
オリハルコンの剣を受け止められたのにも関わらずザルキシスの翼が傷ついた様子はない。
ザルキシスの背中にある蝙蝠のような羽はオリハルコン並みの硬度がある事になる。
チユキはその事に驚く。
「どういう事なの!!? レイジ君の光の魔法が弱くなっている気がするわ!!?」
チユキは焦る。
このままではレイジが負けるだろう。
「おそらくエクリプスの力。あの闇の上位精霊は光だけでなく敵の力を奪う。対峙した者は能力が下がる。おそらく私達の力も下がっている」
トトナは説明する。
トトナに言われてチユキは自身の魔力が弱まっている事に気付く。
体の力が奪われているのかのようであった。
周りを見るとマミーに犬人や鳥人で倒れている者達が見える。
力を奪われてしまったようであった。
ハルセスやイスデスは無事のようだけど、その配下の者達は戦えないだろう。
先程までチユキ達が優勢だったのが逆転されてしまった。
チユキの目の前でレイジはザルキシスの攻撃に押されている。
「ぐわあああ!!」
ザルキシスの攻撃にレイジの体が砂の上に叩き付けられる。
何とか起き上がろうとしているみたいだが、これ以上は無理みたいであった。
「嘘!! レイジがやられるなんて!! トトナちゃん何とかならない?!!」
イシュティアはトトナに詰め寄る。
しかし、トトナは何も答えない。
冷静にレイジとザルキシスの戦いを見ている。
「ふん、この程度か。他愛ないな。ギルタル!! お前に譲ってやる!! 勇者の首を取れ!!」
ザルキシスがそう言うと蠍の神ギルタルが前に出て来る。
「はははは!! 感謝しますよ!! 私に光の勇者の首を取らせてくれるとは!! 光の勇者!! 天上の美姫を奪った事を後悔しなさい!!」
ギルタルは背中の巨大な蠍の鋏をレイジに向ける。
「まずいわ! このままじゃレイジ君が死んじゃう!」
「そうね。まずいわ、このままレイジを死なせるのは惜しいのよね。何とか助けないと」
チユキとイシュティアは隙を見てレイジを助けようと身構える。
しかし、ザルキシス以外にディアドナ達がいるので難しそうであった。
「大丈夫。黒髪の賢者にイシュティア様。私達には強い味方が付いている」
それまで、静かに観戦していたトトナが呟くと指さす。
「えっ? メジェド? 何時の間に移動したの? 全く気付かなかったわ?」
トトナが指さした方を見てチユキは驚く。
トトナが指さした方向、レイジとギルタルの間にメジェドが立っている。
「何ですか? この愉快な恰好をした者は?!!」
ギルタルもまた突然現れた闖入者に驚く。
驚いているのはギルタルだけではない。
ザルキシスにディアドナもいつの間にか移動したメジェドに驚いている。
「お前がああ!! シロネを刺した蠍神かああああああああああ!!!!!?」
怒ったようにメジェドは叫ぶ。
初めて聞くメジェドの声。
チユキはその声には聞き覚えがあった。
そのメジェドの体が突然黒い炎に包まれる。
そして、黒い炎が消えた時だった。
漆黒の鎧を着た者が現れる。
「う!!? うそ?!!!!」
チユキはその時になって初めて理解する。
メジェドの正体を、ブルルルンの持ち主を。
「馬鹿な!!! 暗黒騎士だと!!!」
ザルキシスは叫ぶ。
その場にいた者達全員がメジェドであった者に注目する。
全員の視線が集まる中、暗黒騎士は静かに立っていた。
★★★★★★★★★★★★後書き★★★★★★★★★★★★
更新です。
ようやく、クロキが戦います。
7章も終わりが見えてきました。また文章が相変わらず酷いです。
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