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第4章 邪神の迷宮
第26話 迷宮都市ラヴュリュントス10 迷宮の牢獄
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「ナオさん、どうだった?」
「駄目っすね……チユキさん。脱出できそうな所はないっす。なかなか見つからないっすね、ルビー」
頭に乗せたネズミを撫でながらナオが答える。
ネズミはルビーと名付けられた。
名前の由来は、燃えるような紅い毛並が宝石のルビーのように見えるかららしい。
ルビーは最初は嫌がっていたが、最近は諦めたように大人しくなっている。
「そう……。このあたりも駄目か……」
チユキは溜息を吐く。
ここに来て1日。
チユキとナオは今、地下5階層から抜け出せないか探索をしている。
この5階層は全体に結界が張られており、転移で抜け出す事が出来ない。
そのため、抜け道がないか探しているのだが、見つけ出せずにいる。
今も探索していたナオからの答えにチユキは溜息を吐いた。
最初、リノの土の精霊魔法でトンネルを掘って脱出を試みたが、この迷宮は特殊な素材で造られているみたいで穴を開ける事が出来なかった。
そもそも迷宮の中では精霊の働きが弱くてどうにもならないらしく、諦めるしかなかった。
また、ナオの感知能力も結界に阻まれて発揮出来ず、レイジとチユキの魔法で迷宮を壊そうにも強固で壊せなかった。
例え壊せたとしても、そんな事をすれば無事では済まないだろう。
完全に手詰まりだ。
もう少し迷宮を調べてから侵入すべきだったとチユキは後悔する。
だけど、悔やんでも仕方がない。
今は何とか抜け出す方法を見つけなければならない。
「どうするっすか、チユキさん?」
「仕方ないわ。一旦ウスの街へ戻りましょ」
方法が思い浮かばず、ウスの街へ戻る事にした。
チユキは飛行魔法を使い、ナオは背中に翼を生やして空を飛ぶ。
ナオの翼はシロネのように光り輝く純白の翼ではなく、光らず少し青みがかっている。そして、飛行速度はシロネよりも遅かったりする。
その事で不公平だとナオは言うが、ナオの翼もシロネに劣らず充分綺麗だとチユキは思っている。
空を飛んでしばらくするとウスの街が見えてくる。
このウスの街には城壁がない。
5階層には人間を脅かす魔物がいないため、城壁が必要ないのだ。
降りると広場にいた人達がチユキ達から離れるように逃げて行く。
チユキ達を遠巻きに眺めるだけで、話しかけてくる者はいない。皆、チユキ達と一緒にいる事が怖いのだ。
なぜなら、チユキ達がこの街を支配していたミノタウロス達を倒したからだ。
ウスの街の人達は下の階層にいるミノタウロス達の報復を恐れている。
だから、チユキ達になるべく近寄らないようにしているのだ。
広場の人達の暮らしぶりは、外の世界とあまり変わらない暮らしをしているように見える。
ミノタウロス達から聞き出した情報では、ウスの街は迷宮都市ラヴュリュントスの第5階層にある街だ。
この第5階層より下は、ミノタウロス達が暮らす地下都市が広がっている。
そして、この街は人間が暮らすためにミノタウロス達によって造られたのだ。
街の人口は2000人。 ここにいる人達はみんな外からミノタウロス達によって連れて来られたか、その子孫だ。
つまり、この街の人達は全員ミノタウロス族の奴隷……いや家畜である。
彼等はミノタウロス達から生贄を強要されている。
連れて来られたばかりの人達の中には抵抗する者もいたそうだが、人間ではミノタウロスに太刀打ち出来ず、贄にされるだけだったようだ。
しかし、逆らわなければこの5階層で平穏に暮らす事ができる。
上下水完備の石造りの家は大変立派で、アリアディア共和国の高級住宅に匹敵するほどだ。
そして、頭上にある巨大な水晶が時間と共に暗くなったり明るくなったりして昼夜を作り出す。さらには、草木や水が豊富にある。
魔法の力でミノン平野にある大地の力が集められるせいか、土地が大変豊かであるため様々な作物を取る事ができる。
この5階層で人間は大切に飼育されている。年に何人かの犠牲にさえ目を瞑れば豊かに暮らしていく事ができる。
もしかすると地上にいるよりも豊かな生活が送れるかもしれない。
少なくとも人間にこき使われているゴブリンよりも良い暮らしをしているみたいだ。
それにミノタウロスを除けば魔物の脅威が無い。おそらく地上よりも安全だろう。
そこまで考えてチユキは首を振る。
例えどんなに豊かで安全でも、それは家畜の安寧だ。受け入れてはいけない。
それに、この街に連れて来られたパシパエア王国の人々を助けると約束した以上は、何としても脱出しなければならない。
パシパエア王国の人達もこのウスの街に連れて来られたみたいだ。
もっとも、連れ去られた人全員ではない。途中で殺された人、ここよりも下の階層に連れ去られた人もいるようだ。
何よりもエウリアの母親であるパシパエアの女王がいない。生きているのなら下の階層に連れ去られたのだろう。
このウスの街にいるパシパエアの人々は150人ぐらいで、いなくなった人間の数よりもかなり少ない。
チユキはパシパエアの人々と会ったが、全員表情が暗かったことを思い出す。 これからどうなるかわからないから当然と言えば当然であった。
(それにしても、地上ではゴブリンを奴隷にしていた人達がここでは自分達が家畜になる。何という皮肉なのかしら)
チユキはナオと共に街の中央にある神殿へと足を運ぶ。
神殿の門には左右に刃の付いた斧の紋章がある。
邪神ラヴュリュスの聖印だ。
また、この双頭の斧はミノタウロス族を象徴する武器である。
「チユキ様」
神殿の中に入ろうとするとチユキは呼び止められる。
振り向くとそこには小さな女の子が1人立っていた。
年は10歳に満たないだろう、なかなか可愛い顔立ちをしている。
「どうしたの?」
チユキは意識してなるべく優しい声で問いかける。
「あっ……あのお野菜とパンを持ってきました」
少女は手に持っている籠を差し出す。
「そう、ありがとう」
チユキが受け取ると少女は頭を下げ踵を返すと走って去って行く。
ほとんどの人間は怖がって近づかないが例外もある。
先程の少女がそうだ。
なんでも少女の姉は1ヶ月後にミノタウロスの生贄になる事が決まっていたそうだ。
だけど、チユキ達が来た事で助かったらしい。
少女とその姉がお礼に来たのを覚えている。
それ以来、彼女はチユキ達に食べ物を持って来てくれる。
チユキ達を応援してくれる人もいる。助けを求めている人がいるのなら助けたいとチユキは思う。
ゴブリンが奴隷にされている時は助けたいとは全く思わなかったが、やはり人間が奴隷にされているのは我慢ができない。
神殿の奥へと行くと祭壇になっていて10メートルを超える巨大な像がある。
像は牛頭六腕の人間の体をした化け物だ。
邪神ラヴュリュスの像だ。
その像の前に誰かが立っている。
身長2メートルぐらいのミノタウロスである。
「これはチユキ様にナオ様。お帰りなさいませブモ」
チユキ達に気付いたミノタウロスが頭を下げる。
「ただいま、ズーン。レイジ君達は何処かしら」
チユキはミノタウロスに呼びかける。
ミノタウロスの名はズーン。
このウスの街で人間を支配していたミノタウロスの1匹だ。
だけど、ズーンは他のミノタウロス達からいじめられていた。
ミノタウロス族は強さで上下関係が決まる。
ズーンはラビュリュントスで一番弱く、一番の下っ端だ。
チユキ達がこの街に来た時、人々を支配していたミノタウロス達と戦い、そして勝利した。
その時、ズーンはただ1匹命乞いをして来た。だから、命までは取らなかった。
そして、リノが魅了の魔法で支配して情報を引き出した。
ズーンによると、5階層を出入りするには外から開けなければならないそうだ。
この時、あの魔方陣が5階層に閉じ込めるための罠であった事に気付いた。
他にもズーンから色々聞いた。
ミノタウロス族は強さで決まる。弱い者は強い者に絶対服従で、場合によっては殺されて喰われる事もあるらしい。
どうやらミノタウロス族には共食いの性質があるようだと、チユキは推測する。
そもそもチユキ達の世界の神話でも、ミノタウロスは人間の女性から生まれてきたにも関わらず人間を食べる。
それは、この世界でも同じみたいであった。
ズーンも人間がうまく飼育出来なければ喰われる立場にあり、寧ろウスの街の人間よりもひどい扱いだったようである。
ブラック企業が経営する牧場の従業員と言ったところだろう。
家畜よりも下の立場とはとても悲しい。
だから、ズーンを人質ならぬ牛質にしようとしても意味がない。
下の階層のミノタウロス達はズーンをあっさり見捨てるだろう。
「申し訳ございませんで、チユキ様……。今日はまだ会っていないのでわかりませんブモ。もしかするとまだ寝ていらっしゃるのかもしれませんブモウ」
ブモブモとズーンが申し訳なさそうに言う。顔が牛なので不気味だ。
(さてこれからどうするか? まあ、お昼でも食べながら考えましょう)
妙案が出る事を期待して、チユキは仲間達とお昼にするのだった。
◆
少し遅めの昼食を食べるためにチユキとその仲間達は全員食堂に集まる。
もちろんズーンはいない。
目の前には薄焼きのパンと野菜、チーズが並ぶ。
この世界のパンは薄焼きが普通である。
薄焼きのパンは穀物と水から作られるシンプルなパンで、酵母が使われていない。
この世界に酵母がないわけではない。
現に聖レナリア共和国では酵母を使ったふんわりしたパンが売られている。
薄焼きのパンが一般的なのは、保存とわずかな燃料で焼くためだろう。
そして、このパンに野菜や肉を挟んで食べるのが普通だ。
パンに何かを挟んで食べるのは、チユキ達の世界でもポピュラーな食べ方だ。
チユキはパンにチーズと野菜を乗せる。
チーズはこの5階層で飼われている山羊から取られたフェタチーズのような物である。
5階層には巨大な岩塩があるので塩には困らない。水もどこから引かれているかわからないが、枯れることはない。
だから、この5階層から出なくても永遠に暮らしていけそうだ。
「駄目ね……他に抜け道はないみたい」
昼食を食べながらチユキはナオと一緒に探索をした結果をみんなに話す。
「そうですか。残念ですねチユキ。どうしましょう、レイジさまぁ~」
エウリアがレイジに身を寄せながら甘えた声を出す。
それを見てリノとナオが険しい顔をする。サホコもあんまり面白くなさそうだ。
「エウリアさん……。真面目な話しをしている途中よ、あんまりべたべたしないでくれるかしら?」
チユキはエウリアを睨む。だけどエウリアは涼しい顔だ。
「いやですわ。折角レイジ様が無事だったのですもの、離れません」
そう言ってレイジに抱き着く。
かなり危ない目にあったにしては余裕がある。
母親が見つかっていないのに心配する様子もない。
そして、チユキが気になるのは彼女と共に連れて来られた侍女達だ。
エウリアと同じようにこの状況に全く動じていない。
彼女達もこの神殿に当り前のように住み、エウリアの世話をしている。
部屋の掃除や食事の支度やお風呂の支度等をしてくれるから助かっているが、彼女達は不安ではないのだろうかとチユキは疑問に思う。
「まあ良いじゃないか、チユキ。のんびりしようぜ」
レイジがリンゴに似た果実を頬張りながら言う。
「ちょっと、レイジ君! ずっとここにいるつもりなの!?」
チユキは怒鳴る。だけどレイジはそんなチユキを見て優しく微笑む。
「大丈夫だ、チユキ。ミノタウロス達もこのままにはしないだろう。何か行動を起こすはずだ。それまで待てば良いさ。それに外にはシロネやカヤがいる。何とかしてくれるはずだ。それまでのんびりしよう」
閉じ込められたというのに全く動じていない。いつも通りだ。
(本当にレイジ君は大物よね)
チユキは溜息を吐く。
実を言えば、チユキは閉じ込められた事でかなり動揺している。普通の人間なら皆そうだろうと思う。
だけど、この中で慌てているのはチユキだけだ。
エウリア達だけでなくサホコもリノもナオも平然としている。
こう見ると落ち着きのないチユキの方が変なのかもしれない。
皆レイジが何とかしてくれると信じている。もしくは、レイジさえ側にいれば別に閉じ込められても問題ないと思っているのかもしれない。
サホコはいかにもそう考えていそうだ。
エウリアも日は短いがレイジを信じているのだろう。だからこんな態度なのだ。
チユキはそこまでレイジを信じる事ができない。他の人達は良くても正直不安だ。
(どうなるのだろう? 私……)
チユキは食卓に伏せる。
「チユキ」
すぐ耳元で声がする。
声をした方を振り向くと何時の間にかレイジがチユキの側に来ていた。
「大丈夫だ、チユキ。俺を信じろ。そして外にいるシロネ達を信じるんだ」
そう言ってレイジが顔を寄せてくる。
綺麗な顔が迫って来てドキリとする。こいつは顔だけは間違いなく良いから困る。
これでチユキだけを見てくれるなら、きっとチユキは落ちていただろう。
顔を寄せてくるレイジの目は何時になく真剣だ。いつもこんな顔だったら良いのにと思う。
そしてレイジはそのままチユキに顔を寄せてくる。
このままじゃまずい!!
チユキの理性が危険信号を出す。
「大丈夫よ、レイジ君! 何か元気が出てきたから!!」
チユキはレイジを押しのける。
(危うく流される所だった。危ない危ない)
だけどチユキは何だかさっきまで不安だったのが消えた気がした。
でも心臓はまだドキドキしている。
レイジを見ると押しのけられたのにも関わらずニヤニヤしている。
(全くこいつは……)
そんなレイジを見て、チユキは別の感情が噴出しそうだった。
「さて、チユキも元気が出た事だし。明日はピクニックにでも行くか。ここは雨も降らないみたいだし。気持ちが良いはずだぞみんな」
「さんせ~い!!」
レイジが明るく言うとリノが賛同する。
この5階層は広く、湖に草花が生えた丘がある。
水晶から放たれる光は暖かくピクニックをするには丁度良いだろう。
「それじゃ、私はお弁当を作るわね。ナオちゃん手伝って」
「はいっす! サホコさん!!」
サホコとナオがチユキを見ながら言う。
どうやらレイジだけでなくサホコやナオもチユキを気遣ってくれているみたいだ。
確かに落ち込んでいても仕方がない。
チユキは元気を出す事にする。
「サホコさん、私も手伝うわ」
「ありがとう、チユキさん」
サホコはにっこりと笑う。それは聖女の微笑みだ。見た者の心を癒す。
当然チユキもだ。
落ち込んでばかりはいられない。チユキが真っ先にダウンするなんて真似はできない。
チユキは強くなければいけないのだ。
「へえ、久しぶりにチユキの手料理を食べさてもらえるのか、楽しみだな」
レイジが茶化すように言う。
「サホコさん程うまく出来ないから期待しないでね」
チユキは少し睨みながら言う。
「チユキの料理ならどんな物でも俺は食べるよ」
それだとチユキの料理がすごくまずいみたいではないか。
レイジのその言葉にすごく辛い物でも入れてやろうかと思う。
「レイジ様~。わたくしも一緒に行っても良いですか?」
「良いぜ、エウリア。皆で行こう」
「ありがとうございますわ、レイジ様っ!!」
そう言ってエウリアはレイジに抱き着く。
その様子にエウリアを除く全員が険しい顔をする。
何はともあれ明日はピクニックだ。
外のシロネには悪いけど暗く過ごすよりは良いだろう。
チユキ達は昼食を続けた。
◆
日が暮れて影が伸びる頃合いになると市民は外での仕事をやめて城壁の内側へと戻る。
夜の闇は人間にとって脅威であり、魔物達が活動するからである。
人々は夜の間は城壁へ籠り、朝が来るのを待つのである。
しかし、基本的に城壁の内側に入る事が出来るのは市民権を持つ者だけだ。
基本的にどこの市民権も持たない者は城壁の外で暮らすしかない。
そんなアリアディア共和国の郊外には市民権を持たない者達が造る外街がある。
夕暮れの中に複数の影が動く。
影は粗末な木材で出来た街並みをすべるように動く。
影は人の姿をしておらず、奇妙な形をしている。その姿は上半身は人間の女性だが下半身は巨大な蜘蛛である。
アラクネと呼ばれる種族だ。
女性しかいない種族であり、普段は蛇女や雌蟷螂と同じように普通の人間の女に化けて暮らしている。
その彼女達は今は本来の姿となり、暗い影が差す街の中を疾走している。
まだ、日が落ちていないので人間の姿も多い。
しかし、隠形に優れた彼女達に気付く者はいない。
そのアラクネが一つの建物へと集まる。
そこは彼女達の集会場である。
集会場は無数の輝く蜘蛛の糸が張り巡らされ、その糸には所々に人の髑髏が飾られている。
アラクネ達は食料とした男の髑髏を飾る性質がある。
自身にそして自らの巣を髑髏で飾り同族に誇示する。
その蜘蛛の巣の中心にその女神はいた。
「我らが女神よ。かの暴神より、件のものが送られてきました」
「そう、ようやく来たのね。待っていたわ。これでレーナを捕えられる」
報告を受けて蜘蛛の女神アトラナクアは笑う。
普段はアトラナと名乗り、人間の姿になっているが、自身の眷属しかいないこの場では本来の姿に戻っている。
彼女はこの場である物が送られてくるのを待っていた。
全ては憎きレーナを捕えるためである。
レーナが地上に降りて来ていると聞いて、捕獲する絶好の機会であった。
だが、レーナは強い。アトラナクアも腕に自信があるが、逃げられる可能性もある。
万全の態勢で臨む必要があった。
「レーナめ、他所の夫に色目を使う売女め。捕らえたら、その顔を潰してやる」
アトラナクアはそう呟いて笑う。
無傷で捕らえろとラヴュリュスに言われているが、アトラナクアは聞く気はなかった。
後のことはどうなろうと構わない。憎いレーナを徹底的に痛めつける予定だ。
今レーナは船でアリアディア共和国へと向かっているはずであった。
そして、なるべく護衛が少ない時を狙って捕らえるつもりである。
「ふふふ、待ってなさいレーナ。私の糸から逃れられると思うなよ……」
「駄目っすね……チユキさん。脱出できそうな所はないっす。なかなか見つからないっすね、ルビー」
頭に乗せたネズミを撫でながらナオが答える。
ネズミはルビーと名付けられた。
名前の由来は、燃えるような紅い毛並が宝石のルビーのように見えるかららしい。
ルビーは最初は嫌がっていたが、最近は諦めたように大人しくなっている。
「そう……。このあたりも駄目か……」
チユキは溜息を吐く。
ここに来て1日。
チユキとナオは今、地下5階層から抜け出せないか探索をしている。
この5階層は全体に結界が張られており、転移で抜け出す事が出来ない。
そのため、抜け道がないか探しているのだが、見つけ出せずにいる。
今も探索していたナオからの答えにチユキは溜息を吐いた。
最初、リノの土の精霊魔法でトンネルを掘って脱出を試みたが、この迷宮は特殊な素材で造られているみたいで穴を開ける事が出来なかった。
そもそも迷宮の中では精霊の働きが弱くてどうにもならないらしく、諦めるしかなかった。
また、ナオの感知能力も結界に阻まれて発揮出来ず、レイジとチユキの魔法で迷宮を壊そうにも強固で壊せなかった。
例え壊せたとしても、そんな事をすれば無事では済まないだろう。
完全に手詰まりだ。
もう少し迷宮を調べてから侵入すべきだったとチユキは後悔する。
だけど、悔やんでも仕方がない。
今は何とか抜け出す方法を見つけなければならない。
「どうするっすか、チユキさん?」
「仕方ないわ。一旦ウスの街へ戻りましょ」
方法が思い浮かばず、ウスの街へ戻る事にした。
チユキは飛行魔法を使い、ナオは背中に翼を生やして空を飛ぶ。
ナオの翼はシロネのように光り輝く純白の翼ではなく、光らず少し青みがかっている。そして、飛行速度はシロネよりも遅かったりする。
その事で不公平だとナオは言うが、ナオの翼もシロネに劣らず充分綺麗だとチユキは思っている。
空を飛んでしばらくするとウスの街が見えてくる。
このウスの街には城壁がない。
5階層には人間を脅かす魔物がいないため、城壁が必要ないのだ。
降りると広場にいた人達がチユキ達から離れるように逃げて行く。
チユキ達を遠巻きに眺めるだけで、話しかけてくる者はいない。皆、チユキ達と一緒にいる事が怖いのだ。
なぜなら、チユキ達がこの街を支配していたミノタウロス達を倒したからだ。
ウスの街の人達は下の階層にいるミノタウロス達の報復を恐れている。
だから、チユキ達になるべく近寄らないようにしているのだ。
広場の人達の暮らしぶりは、外の世界とあまり変わらない暮らしをしているように見える。
ミノタウロス達から聞き出した情報では、ウスの街は迷宮都市ラヴュリュントスの第5階層にある街だ。
この第5階層より下は、ミノタウロス達が暮らす地下都市が広がっている。
そして、この街は人間が暮らすためにミノタウロス達によって造られたのだ。
街の人口は2000人。 ここにいる人達はみんな外からミノタウロス達によって連れて来られたか、その子孫だ。
つまり、この街の人達は全員ミノタウロス族の奴隷……いや家畜である。
彼等はミノタウロス達から生贄を強要されている。
連れて来られたばかりの人達の中には抵抗する者もいたそうだが、人間ではミノタウロスに太刀打ち出来ず、贄にされるだけだったようだ。
しかし、逆らわなければこの5階層で平穏に暮らす事ができる。
上下水完備の石造りの家は大変立派で、アリアディア共和国の高級住宅に匹敵するほどだ。
そして、頭上にある巨大な水晶が時間と共に暗くなったり明るくなったりして昼夜を作り出す。さらには、草木や水が豊富にある。
魔法の力でミノン平野にある大地の力が集められるせいか、土地が大変豊かであるため様々な作物を取る事ができる。
この5階層で人間は大切に飼育されている。年に何人かの犠牲にさえ目を瞑れば豊かに暮らしていく事ができる。
もしかすると地上にいるよりも豊かな生活が送れるかもしれない。
少なくとも人間にこき使われているゴブリンよりも良い暮らしをしているみたいだ。
それにミノタウロスを除けば魔物の脅威が無い。おそらく地上よりも安全だろう。
そこまで考えてチユキは首を振る。
例えどんなに豊かで安全でも、それは家畜の安寧だ。受け入れてはいけない。
それに、この街に連れて来られたパシパエア王国の人々を助けると約束した以上は、何としても脱出しなければならない。
パシパエア王国の人達もこのウスの街に連れて来られたみたいだ。
もっとも、連れ去られた人全員ではない。途中で殺された人、ここよりも下の階層に連れ去られた人もいるようだ。
何よりもエウリアの母親であるパシパエアの女王がいない。生きているのなら下の階層に連れ去られたのだろう。
このウスの街にいるパシパエアの人々は150人ぐらいで、いなくなった人間の数よりもかなり少ない。
チユキはパシパエアの人々と会ったが、全員表情が暗かったことを思い出す。 これからどうなるかわからないから当然と言えば当然であった。
(それにしても、地上ではゴブリンを奴隷にしていた人達がここでは自分達が家畜になる。何という皮肉なのかしら)
チユキはナオと共に街の中央にある神殿へと足を運ぶ。
神殿の門には左右に刃の付いた斧の紋章がある。
邪神ラヴュリュスの聖印だ。
また、この双頭の斧はミノタウロス族を象徴する武器である。
「チユキ様」
神殿の中に入ろうとするとチユキは呼び止められる。
振り向くとそこには小さな女の子が1人立っていた。
年は10歳に満たないだろう、なかなか可愛い顔立ちをしている。
「どうしたの?」
チユキは意識してなるべく優しい声で問いかける。
「あっ……あのお野菜とパンを持ってきました」
少女は手に持っている籠を差し出す。
「そう、ありがとう」
チユキが受け取ると少女は頭を下げ踵を返すと走って去って行く。
ほとんどの人間は怖がって近づかないが例外もある。
先程の少女がそうだ。
なんでも少女の姉は1ヶ月後にミノタウロスの生贄になる事が決まっていたそうだ。
だけど、チユキ達が来た事で助かったらしい。
少女とその姉がお礼に来たのを覚えている。
それ以来、彼女はチユキ達に食べ物を持って来てくれる。
チユキ達を応援してくれる人もいる。助けを求めている人がいるのなら助けたいとチユキは思う。
ゴブリンが奴隷にされている時は助けたいとは全く思わなかったが、やはり人間が奴隷にされているのは我慢ができない。
神殿の奥へと行くと祭壇になっていて10メートルを超える巨大な像がある。
像は牛頭六腕の人間の体をした化け物だ。
邪神ラヴュリュスの像だ。
その像の前に誰かが立っている。
身長2メートルぐらいのミノタウロスである。
「これはチユキ様にナオ様。お帰りなさいませブモ」
チユキ達に気付いたミノタウロスが頭を下げる。
「ただいま、ズーン。レイジ君達は何処かしら」
チユキはミノタウロスに呼びかける。
ミノタウロスの名はズーン。
このウスの街で人間を支配していたミノタウロスの1匹だ。
だけど、ズーンは他のミノタウロス達からいじめられていた。
ミノタウロス族は強さで上下関係が決まる。
ズーンはラビュリュントスで一番弱く、一番の下っ端だ。
チユキ達がこの街に来た時、人々を支配していたミノタウロス達と戦い、そして勝利した。
その時、ズーンはただ1匹命乞いをして来た。だから、命までは取らなかった。
そして、リノが魅了の魔法で支配して情報を引き出した。
ズーンによると、5階層を出入りするには外から開けなければならないそうだ。
この時、あの魔方陣が5階層に閉じ込めるための罠であった事に気付いた。
他にもズーンから色々聞いた。
ミノタウロス族は強さで決まる。弱い者は強い者に絶対服従で、場合によっては殺されて喰われる事もあるらしい。
どうやらミノタウロス族には共食いの性質があるようだと、チユキは推測する。
そもそもチユキ達の世界の神話でも、ミノタウロスは人間の女性から生まれてきたにも関わらず人間を食べる。
それは、この世界でも同じみたいであった。
ズーンも人間がうまく飼育出来なければ喰われる立場にあり、寧ろウスの街の人間よりもひどい扱いだったようである。
ブラック企業が経営する牧場の従業員と言ったところだろう。
家畜よりも下の立場とはとても悲しい。
だから、ズーンを人質ならぬ牛質にしようとしても意味がない。
下の階層のミノタウロス達はズーンをあっさり見捨てるだろう。
「申し訳ございませんで、チユキ様……。今日はまだ会っていないのでわかりませんブモ。もしかするとまだ寝ていらっしゃるのかもしれませんブモウ」
ブモブモとズーンが申し訳なさそうに言う。顔が牛なので不気味だ。
(さてこれからどうするか? まあ、お昼でも食べながら考えましょう)
妙案が出る事を期待して、チユキは仲間達とお昼にするのだった。
◆
少し遅めの昼食を食べるためにチユキとその仲間達は全員食堂に集まる。
もちろんズーンはいない。
目の前には薄焼きのパンと野菜、チーズが並ぶ。
この世界のパンは薄焼きが普通である。
薄焼きのパンは穀物と水から作られるシンプルなパンで、酵母が使われていない。
この世界に酵母がないわけではない。
現に聖レナリア共和国では酵母を使ったふんわりしたパンが売られている。
薄焼きのパンが一般的なのは、保存とわずかな燃料で焼くためだろう。
そして、このパンに野菜や肉を挟んで食べるのが普通だ。
パンに何かを挟んで食べるのは、チユキ達の世界でもポピュラーな食べ方だ。
チユキはパンにチーズと野菜を乗せる。
チーズはこの5階層で飼われている山羊から取られたフェタチーズのような物である。
5階層には巨大な岩塩があるので塩には困らない。水もどこから引かれているかわからないが、枯れることはない。
だから、この5階層から出なくても永遠に暮らしていけそうだ。
「駄目ね……他に抜け道はないみたい」
昼食を食べながらチユキはナオと一緒に探索をした結果をみんなに話す。
「そうですか。残念ですねチユキ。どうしましょう、レイジさまぁ~」
エウリアがレイジに身を寄せながら甘えた声を出す。
それを見てリノとナオが険しい顔をする。サホコもあんまり面白くなさそうだ。
「エウリアさん……。真面目な話しをしている途中よ、あんまりべたべたしないでくれるかしら?」
チユキはエウリアを睨む。だけどエウリアは涼しい顔だ。
「いやですわ。折角レイジ様が無事だったのですもの、離れません」
そう言ってレイジに抱き着く。
かなり危ない目にあったにしては余裕がある。
母親が見つかっていないのに心配する様子もない。
そして、チユキが気になるのは彼女と共に連れて来られた侍女達だ。
エウリアと同じようにこの状況に全く動じていない。
彼女達もこの神殿に当り前のように住み、エウリアの世話をしている。
部屋の掃除や食事の支度やお風呂の支度等をしてくれるから助かっているが、彼女達は不安ではないのだろうかとチユキは疑問に思う。
「まあ良いじゃないか、チユキ。のんびりしようぜ」
レイジがリンゴに似た果実を頬張りながら言う。
「ちょっと、レイジ君! ずっとここにいるつもりなの!?」
チユキは怒鳴る。だけどレイジはそんなチユキを見て優しく微笑む。
「大丈夫だ、チユキ。ミノタウロス達もこのままにはしないだろう。何か行動を起こすはずだ。それまで待てば良いさ。それに外にはシロネやカヤがいる。何とかしてくれるはずだ。それまでのんびりしよう」
閉じ込められたというのに全く動じていない。いつも通りだ。
(本当にレイジ君は大物よね)
チユキは溜息を吐く。
実を言えば、チユキは閉じ込められた事でかなり動揺している。普通の人間なら皆そうだろうと思う。
だけど、この中で慌てているのはチユキだけだ。
エウリア達だけでなくサホコもリノもナオも平然としている。
こう見ると落ち着きのないチユキの方が変なのかもしれない。
皆レイジが何とかしてくれると信じている。もしくは、レイジさえ側にいれば別に閉じ込められても問題ないと思っているのかもしれない。
サホコはいかにもそう考えていそうだ。
エウリアも日は短いがレイジを信じているのだろう。だからこんな態度なのだ。
チユキはそこまでレイジを信じる事ができない。他の人達は良くても正直不安だ。
(どうなるのだろう? 私……)
チユキは食卓に伏せる。
「チユキ」
すぐ耳元で声がする。
声をした方を振り向くと何時の間にかレイジがチユキの側に来ていた。
「大丈夫だ、チユキ。俺を信じろ。そして外にいるシロネ達を信じるんだ」
そう言ってレイジが顔を寄せてくる。
綺麗な顔が迫って来てドキリとする。こいつは顔だけは間違いなく良いから困る。
これでチユキだけを見てくれるなら、きっとチユキは落ちていただろう。
顔を寄せてくるレイジの目は何時になく真剣だ。いつもこんな顔だったら良いのにと思う。
そしてレイジはそのままチユキに顔を寄せてくる。
このままじゃまずい!!
チユキの理性が危険信号を出す。
「大丈夫よ、レイジ君! 何か元気が出てきたから!!」
チユキはレイジを押しのける。
(危うく流される所だった。危ない危ない)
だけどチユキは何だかさっきまで不安だったのが消えた気がした。
でも心臓はまだドキドキしている。
レイジを見ると押しのけられたのにも関わらずニヤニヤしている。
(全くこいつは……)
そんなレイジを見て、チユキは別の感情が噴出しそうだった。
「さて、チユキも元気が出た事だし。明日はピクニックにでも行くか。ここは雨も降らないみたいだし。気持ちが良いはずだぞみんな」
「さんせ~い!!」
レイジが明るく言うとリノが賛同する。
この5階層は広く、湖に草花が生えた丘がある。
水晶から放たれる光は暖かくピクニックをするには丁度良いだろう。
「それじゃ、私はお弁当を作るわね。ナオちゃん手伝って」
「はいっす! サホコさん!!」
サホコとナオがチユキを見ながら言う。
どうやらレイジだけでなくサホコやナオもチユキを気遣ってくれているみたいだ。
確かに落ち込んでいても仕方がない。
チユキは元気を出す事にする。
「サホコさん、私も手伝うわ」
「ありがとう、チユキさん」
サホコはにっこりと笑う。それは聖女の微笑みだ。見た者の心を癒す。
当然チユキもだ。
落ち込んでばかりはいられない。チユキが真っ先にダウンするなんて真似はできない。
チユキは強くなければいけないのだ。
「へえ、久しぶりにチユキの手料理を食べさてもらえるのか、楽しみだな」
レイジが茶化すように言う。
「サホコさん程うまく出来ないから期待しないでね」
チユキは少し睨みながら言う。
「チユキの料理ならどんな物でも俺は食べるよ」
それだとチユキの料理がすごくまずいみたいではないか。
レイジのその言葉にすごく辛い物でも入れてやろうかと思う。
「レイジ様~。わたくしも一緒に行っても良いですか?」
「良いぜ、エウリア。皆で行こう」
「ありがとうございますわ、レイジ様っ!!」
そう言ってエウリアはレイジに抱き着く。
その様子にエウリアを除く全員が険しい顔をする。
何はともあれ明日はピクニックだ。
外のシロネには悪いけど暗く過ごすよりは良いだろう。
チユキ達は昼食を続けた。
◆
日が暮れて影が伸びる頃合いになると市民は外での仕事をやめて城壁の内側へと戻る。
夜の闇は人間にとって脅威であり、魔物達が活動するからである。
人々は夜の間は城壁へ籠り、朝が来るのを待つのである。
しかし、基本的に城壁の内側に入る事が出来るのは市民権を持つ者だけだ。
基本的にどこの市民権も持たない者は城壁の外で暮らすしかない。
そんなアリアディア共和国の郊外には市民権を持たない者達が造る外街がある。
夕暮れの中に複数の影が動く。
影は粗末な木材で出来た街並みをすべるように動く。
影は人の姿をしておらず、奇妙な形をしている。その姿は上半身は人間の女性だが下半身は巨大な蜘蛛である。
アラクネと呼ばれる種族だ。
女性しかいない種族であり、普段は蛇女や雌蟷螂と同じように普通の人間の女に化けて暮らしている。
その彼女達は今は本来の姿となり、暗い影が差す街の中を疾走している。
まだ、日が落ちていないので人間の姿も多い。
しかし、隠形に優れた彼女達に気付く者はいない。
そのアラクネが一つの建物へと集まる。
そこは彼女達の集会場である。
集会場は無数の輝く蜘蛛の糸が張り巡らされ、その糸には所々に人の髑髏が飾られている。
アラクネ達は食料とした男の髑髏を飾る性質がある。
自身にそして自らの巣を髑髏で飾り同族に誇示する。
その蜘蛛の巣の中心にその女神はいた。
「我らが女神よ。かの暴神より、件のものが送られてきました」
「そう、ようやく来たのね。待っていたわ。これでレーナを捕えられる」
報告を受けて蜘蛛の女神アトラナクアは笑う。
普段はアトラナと名乗り、人間の姿になっているが、自身の眷属しかいないこの場では本来の姿に戻っている。
彼女はこの場である物が送られてくるのを待っていた。
全ては憎きレーナを捕えるためである。
レーナが地上に降りて来ていると聞いて、捕獲する絶好の機会であった。
だが、レーナは強い。アトラナクアも腕に自信があるが、逃げられる可能性もある。
万全の態勢で臨む必要があった。
「レーナめ、他所の夫に色目を使う売女め。捕らえたら、その顔を潰してやる」
アトラナクアはそう呟いて笑う。
無傷で捕らえろとラヴュリュスに言われているが、アトラナクアは聞く気はなかった。
後のことはどうなろうと構わない。憎いレーナを徹底的に痛めつける予定だ。
今レーナは船でアリアディア共和国へと向かっているはずであった。
そして、なるべく護衛が少ない時を狙って捕らえるつもりである。
「ふふふ、待ってなさいレーナ。私の糸から逃れられると思うなよ……」
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