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第3章 白銀の魔女
第1話 ドワーフの都
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神々の住まう国エリオス。
そのエリオスはこの世界でもっとも高い山であるエリオス山の頂上の雲に浮かぶように作られている天空にある国である。
このエリオスに入る方法は3つある。1つは空を飛んで入る方法。2つ目は山を登って入る方法。3つ目は地下から山の中を通って入る方法。
そして、どのルートで入るにしても簡単にはいかない。
1つ目は当たり前だが空を飛ぶ方法が無ければならず、また空から入るには神王オーディスに仕える聖騎士団の許可がなければ、近づくだけで殺されるだろう。
2つ目はエリオス山が険しい山である事もあるが、エリオス山の麓に広がる大樹海はエルフの王国があり、森に入るにはエルフの許可が必要だ。
3つ目の地下道はドワーフが守っており、ドワーフの許可が無ければ入る事ができない。
クロキが行こうとしているルートは3番目の地下ルートである。
視界が揺らぐとそれまでいた部屋とは違う部屋に変わる。足元の魔法陣はまだ少し淡い光を残していた。
「ダリオ殿、ここは?」
「ここは樹海の外れにある祠じゃよ、暗黒騎士殿。この奥にある地下道から目的の地へと行ける」
答えてくれたのはクロキの肩までの身長だが、横は2回りも大きな男である。
ドワーフ。
彼はそう言われる種族だ。
ドワーフは人間よりも長命であり、鍛冶に優れている。
ドワーフが作る道具はこの世界で最上級の物だ。
そんなドワーフは魔王モデスとドワーフ達の神であるヘイボスの仲が良い事もあってナルゴルに出入りする者も多い。
ナルゴルは鉱物資源が豊富なのでドワーフとしても利益があるからである。
ダリオはナルゴルに出入りするドワーフの1人で、クロキがエリオスに行く道案内をしてくれる。
エリオスに来た理由はエリオスの一番最下層にいるヘイボスに会うためである。
レイジ達との戦闘でぼろぼろになった鎧に代わりの新しい鎧をもらいに行くためであった。
「それでは、行くとするかの」
ダリオはそう言うと歩き始める。
祠の奥には地下道があるらしくそこからドワーフの王国に行けるらしい。
「行こうか、クーナ」
クロキは横を見て、クロキの腕に抱き着いているクーナを促す。
クーナはそれに答えず頷く。
すると顔を隠した黒色の頭巾が揺れて銀の前髪と白い顔が少し見える。
クロキはクーナと共に歩き始める。
クーナが腕を離してくれないため、少し歩きにくいが我慢する。
(せっかく綺麗で可愛い女の子が慕ってくれているのだ。少しぐらい歩きにくくても構わないに決まっている。そもそも、今までこんな可愛い子に好かれた事があっただろうか?)
そのために作った女神なのだから好きになって当然なのかもしれないが、出来上がったクーナを見ているとクロキはそんな事はどうでも良くなった。
今までの事を思うと色々な物が込み上げてくる。
「クロキ……泣いてるの?」
クーナが下からクロキの顔を覗き込むように聞いてくる。その仕草が可愛らしい。
「違うよ……これは目から鼻水が出てるだけだよ。さあ行こう、クーナ」
歩いていると通路に変な形をした小さな舟みたいのが置かれている場所に出る。
「暗黒騎士殿、ここからはこれに乗っていく」
「これにですか?ダリオ殿」
別に水に浮かんでいる訳ではない。ただ舟が通路に置かれているだけだ。
「ふぉふぉふぉ、まあ乗ってみればわかるよ」
ダリオはニヤッと笑いながら船に乗る。
そのダリオの様子に、何だろうと首を傾げながらクロキはクーナと一緒に船に乗り込む。
すると突然、舟が浮かび上がる。
「おおっ!!」
クロキは思わず声を出す。
空飛ぶ船に乗るのは初めてだ、驚くのも当然である。
舟は浮かび上がるとそのまま前へと進む。
「どうじゃな、さすがの暗黒騎士も驚くじゃろう」
「はい。驚きました」
ダリオの問いにクロキは素直に答える。
この世界の技術には驚かされる。ある意味クロキが元いた世界よりも発達している。
舟はかなり速く進んでいる。
この地下道の上はすでに聖域である。聖域はエリオスの神々が認めた種族天使族、エルフ族、ドワーフ族しか基本的に入る事ができない。ましてやクロキはエリオスの敵であるナルゴルの者だ。ドワーフ以外の種族に見つかったらただではすまない。
舟は進んでいく。聖域は広いのでその下を通る地下道もかなり長い、舟はかなりの速さで進んでいるのに中々終わりが見えなかった。
本来なら転移魔法で移動した方が速いのだが、防衛上の都合から聖域全体に転移を封じる魔法がかけられているため、このような手段でしか聖域を進めない。
時間にして一時間ぐらいだろうか、ようやく出口が見えてくる。
舟が止まるとクロキ達は舟を降り、今度は少し小さい通路に出る。
通路を抜けると広い場所に出る。
様々な光がクロキ達を照らす。通路も灯りがあり明るかったがこの場所の光はそれとは違う物だ。
赤や緑に黄色等様々な光に彩られたその街並みはここが地下である事を忘れさせる。
街並みのいたるところに綺麗な装飾が施されており、それが様々な光で照らされる事で幻想的な光景を作り出している。
「おおっ!! これはまた……」
「ようこそ、暗黒騎士殿。ここがドワーフの都ヴェルンドじゃよ」
初めて見る光景にクロキは感嘆の声を上げる。
そのクロキの顔を見たダリオが満足そうな顔をする。
エリオス山の聖域の地下にあるドワーフの都ヴェルンドは、魔法技術の粋を集めて作られた都市であった。
いくつもの階層を何重にも重ねた都市の至る所に動く床やロープも何もないのにエレベーターのように上下する石等があり、都市の各区域を繋げている。
これは人間の世界には無い物だ。
ドワーフはこの世界の人間よりも遥かに進んだ魔法技術を持っているのは間違いないだろう。
そして都市の外観は至る所に魔法技術の光輝く宝石に彩られ、その七色の光が綺麗な装飾が施された道や建物を照らしている。
そして、地下ではあるが丁度良い広さに設計されているためかクロキは狭苦しさを感じなかった。
ヴェルンドに住むドワーフは約1万人。
ドワーフの数が人間よりも遥かに少ないとはいえ都にしてはさみしい人数である。
しかし、ドワーフの神であるヘイボスのお膝元であるこの都市は、彼らにとって特別な意味を持つ。
道を歩いているとクロキは何名ものドワーフとすれ違う。
ドワーフの都なのだから当然といえば当然であった。
だが歩いているとドワーフではない者ともすれ違う。
ドワーフ以外の者も住んでいるのかとクロキは思い見てみると、それは生物ではなかった。
のっぺりとした顔に丸い筒を合わせたような体をしている。
ドワーフ達が作るゴーレムであった。
ゴーレムは岩や木や鉄等を材料にして作られる動く人形だ。元の世界で言う所のロボットと同じである。
そのゴーレム達はドワーフのお供をしたり、道路の掃除をしていたりしている。
ここに来る前にクロキはルーガスからゴーレムの事を聞いた事があった。
ゴーレムは色々な用途で使われており、戦闘用から家事雑事用の物まである。
今掃除をしているゴーレムは掃除用といった所だろう。
「驚きで声もでないようじゃな、暗黒騎士殿」
先程からきょろきょろしているクロキを見てダリオが言う。
「はい、ダリオ殿。地下であるにも関わらず、これだけの都市を作るドワーフ族の凄さには驚かされます」
クロキの素直な感想にダリオは喜ぶ。
「ふぉふぉふぉ。だが、暗黒騎士殿。驚くのはここまで。そろそろ件の場所に入りますゆえ心の準備を」
ダリオは少し真剣な顔に戻して言う。
クロキは頷く。
「クーナ、顔を隠して」
それまで全く喋らずクロキの腕にしがみ付きながら歩いていたクーナに促す。
「わかったぞ、クロキ」
クーナはそう言うと頭巾をかぶり、顔を隠す。
浮かび上がる石に乗ってかなり上の階層までクロキ達は来ていた。ここから先は気を付けて移動しなければならない。
この先はヴェルンドの中でもっとも重要な区域、ドワーフの工房である。
そして、この工房を抜けたその上にヘイボスの工房がある。
クロキ達は工房区域に入る。それまで装飾などがあった場所とは違い、殺風景だが実用的な光景が広がっていた。
この工房にいるドワーフは特に気難しい者が多く、あまり騒がしくしてはいけない。
またこの工房のドワーフの中には女性嫌いの者もいるため本来ならクーナは連れてこない方が良いのだが、クーナがクロキから離れたがらず、またクーナをナルゴルに残す事に不安があったから結局連れてきた。
なぜ不安なのかというとアルゴアの元王女であるリジェナに関係があった。
クロキがアケロン山脈で拾ったリジェナはその後、魔王城におけるクロキ付きのメイドになった。
そしてどうもクーナはリジェナの事が嫌いみたいなのである。
リジェナの方はそうでもないのだがクーナが一方的にリジェナの事を嫌っているらしく、このままクーナを置いて魔王城を留守にするのは不安だった。
そのためクーナを連れて来たのである。
クロキ達は静かに工房を抜ける。
ドワーフ達がこの工房でやっている事に興味はあったが、自身の領域に入られる事を非常に嫌がる者もいるらしいので我慢する。
そして、その工房を抜け上の階へと辿りつく。
そこは奇妙な部屋だった。
様々な鉱石や道具や紙類が所せましと置かれており、部屋の形も狭いのか広いのかわからないような間取りをしていて、見る者を混乱させる。
ここがヘイボスの工房らしかった。だとしたら、ここはヴェルンドとエリオスの境界でもあるはずだ。話によればヘイボスはエリオスで最も低い場所にして、ヴェルンドで最も高い場所に住んでいるとの事だ。
クロキ達はヘイボスの工房を進む。
すると少し広い場所に出る。そこには1人の男がいた。
「ヘイボス様。暗黒騎士を連れてまいりました」
男は振り返るとクロキを見る。
普通なら、ふさふさの髭にまがったような体は見る者に弱弱しい印象を与えるだろう。
しかし、目の前の男の眼光は鋭く、歴戦の勇士のような気迫をクロキは感じる。
「よく来たな暗黒騎士。ヘイボスだ。会うのは初めてだな」
ヘイボスは厳めしい表情で名乗るのだった。
そのエリオスはこの世界でもっとも高い山であるエリオス山の頂上の雲に浮かぶように作られている天空にある国である。
このエリオスに入る方法は3つある。1つは空を飛んで入る方法。2つ目は山を登って入る方法。3つ目は地下から山の中を通って入る方法。
そして、どのルートで入るにしても簡単にはいかない。
1つ目は当たり前だが空を飛ぶ方法が無ければならず、また空から入るには神王オーディスに仕える聖騎士団の許可がなければ、近づくだけで殺されるだろう。
2つ目はエリオス山が険しい山である事もあるが、エリオス山の麓に広がる大樹海はエルフの王国があり、森に入るにはエルフの許可が必要だ。
3つ目の地下道はドワーフが守っており、ドワーフの許可が無ければ入る事ができない。
クロキが行こうとしているルートは3番目の地下ルートである。
視界が揺らぐとそれまでいた部屋とは違う部屋に変わる。足元の魔法陣はまだ少し淡い光を残していた。
「ダリオ殿、ここは?」
「ここは樹海の外れにある祠じゃよ、暗黒騎士殿。この奥にある地下道から目的の地へと行ける」
答えてくれたのはクロキの肩までの身長だが、横は2回りも大きな男である。
ドワーフ。
彼はそう言われる種族だ。
ドワーフは人間よりも長命であり、鍛冶に優れている。
ドワーフが作る道具はこの世界で最上級の物だ。
そんなドワーフは魔王モデスとドワーフ達の神であるヘイボスの仲が良い事もあってナルゴルに出入りする者も多い。
ナルゴルは鉱物資源が豊富なのでドワーフとしても利益があるからである。
ダリオはナルゴルに出入りするドワーフの1人で、クロキがエリオスに行く道案内をしてくれる。
エリオスに来た理由はエリオスの一番最下層にいるヘイボスに会うためである。
レイジ達との戦闘でぼろぼろになった鎧に代わりの新しい鎧をもらいに行くためであった。
「それでは、行くとするかの」
ダリオはそう言うと歩き始める。
祠の奥には地下道があるらしくそこからドワーフの王国に行けるらしい。
「行こうか、クーナ」
クロキは横を見て、クロキの腕に抱き着いているクーナを促す。
クーナはそれに答えず頷く。
すると顔を隠した黒色の頭巾が揺れて銀の前髪と白い顔が少し見える。
クロキはクーナと共に歩き始める。
クーナが腕を離してくれないため、少し歩きにくいが我慢する。
(せっかく綺麗で可愛い女の子が慕ってくれているのだ。少しぐらい歩きにくくても構わないに決まっている。そもそも、今までこんな可愛い子に好かれた事があっただろうか?)
そのために作った女神なのだから好きになって当然なのかもしれないが、出来上がったクーナを見ているとクロキはそんな事はどうでも良くなった。
今までの事を思うと色々な物が込み上げてくる。
「クロキ……泣いてるの?」
クーナが下からクロキの顔を覗き込むように聞いてくる。その仕草が可愛らしい。
「違うよ……これは目から鼻水が出てるだけだよ。さあ行こう、クーナ」
歩いていると通路に変な形をした小さな舟みたいのが置かれている場所に出る。
「暗黒騎士殿、ここからはこれに乗っていく」
「これにですか?ダリオ殿」
別に水に浮かんでいる訳ではない。ただ舟が通路に置かれているだけだ。
「ふぉふぉふぉ、まあ乗ってみればわかるよ」
ダリオはニヤッと笑いながら船に乗る。
そのダリオの様子に、何だろうと首を傾げながらクロキはクーナと一緒に船に乗り込む。
すると突然、舟が浮かび上がる。
「おおっ!!」
クロキは思わず声を出す。
空飛ぶ船に乗るのは初めてだ、驚くのも当然である。
舟は浮かび上がるとそのまま前へと進む。
「どうじゃな、さすがの暗黒騎士も驚くじゃろう」
「はい。驚きました」
ダリオの問いにクロキは素直に答える。
この世界の技術には驚かされる。ある意味クロキが元いた世界よりも発達している。
舟はかなり速く進んでいる。
この地下道の上はすでに聖域である。聖域はエリオスの神々が認めた種族天使族、エルフ族、ドワーフ族しか基本的に入る事ができない。ましてやクロキはエリオスの敵であるナルゴルの者だ。ドワーフ以外の種族に見つかったらただではすまない。
舟は進んでいく。聖域は広いのでその下を通る地下道もかなり長い、舟はかなりの速さで進んでいるのに中々終わりが見えなかった。
本来なら転移魔法で移動した方が速いのだが、防衛上の都合から聖域全体に転移を封じる魔法がかけられているため、このような手段でしか聖域を進めない。
時間にして一時間ぐらいだろうか、ようやく出口が見えてくる。
舟が止まるとクロキ達は舟を降り、今度は少し小さい通路に出る。
通路を抜けると広い場所に出る。
様々な光がクロキ達を照らす。通路も灯りがあり明るかったがこの場所の光はそれとは違う物だ。
赤や緑に黄色等様々な光に彩られたその街並みはここが地下である事を忘れさせる。
街並みのいたるところに綺麗な装飾が施されており、それが様々な光で照らされる事で幻想的な光景を作り出している。
「おおっ!! これはまた……」
「ようこそ、暗黒騎士殿。ここがドワーフの都ヴェルンドじゃよ」
初めて見る光景にクロキは感嘆の声を上げる。
そのクロキの顔を見たダリオが満足そうな顔をする。
エリオス山の聖域の地下にあるドワーフの都ヴェルンドは、魔法技術の粋を集めて作られた都市であった。
いくつもの階層を何重にも重ねた都市の至る所に動く床やロープも何もないのにエレベーターのように上下する石等があり、都市の各区域を繋げている。
これは人間の世界には無い物だ。
ドワーフはこの世界の人間よりも遥かに進んだ魔法技術を持っているのは間違いないだろう。
そして都市の外観は至る所に魔法技術の光輝く宝石に彩られ、その七色の光が綺麗な装飾が施された道や建物を照らしている。
そして、地下ではあるが丁度良い広さに設計されているためかクロキは狭苦しさを感じなかった。
ヴェルンドに住むドワーフは約1万人。
ドワーフの数が人間よりも遥かに少ないとはいえ都にしてはさみしい人数である。
しかし、ドワーフの神であるヘイボスのお膝元であるこの都市は、彼らにとって特別な意味を持つ。
道を歩いているとクロキは何名ものドワーフとすれ違う。
ドワーフの都なのだから当然といえば当然であった。
だが歩いているとドワーフではない者ともすれ違う。
ドワーフ以外の者も住んでいるのかとクロキは思い見てみると、それは生物ではなかった。
のっぺりとした顔に丸い筒を合わせたような体をしている。
ドワーフ達が作るゴーレムであった。
ゴーレムは岩や木や鉄等を材料にして作られる動く人形だ。元の世界で言う所のロボットと同じである。
そのゴーレム達はドワーフのお供をしたり、道路の掃除をしていたりしている。
ここに来る前にクロキはルーガスからゴーレムの事を聞いた事があった。
ゴーレムは色々な用途で使われており、戦闘用から家事雑事用の物まである。
今掃除をしているゴーレムは掃除用といった所だろう。
「驚きで声もでないようじゃな、暗黒騎士殿」
先程からきょろきょろしているクロキを見てダリオが言う。
「はい、ダリオ殿。地下であるにも関わらず、これだけの都市を作るドワーフ族の凄さには驚かされます」
クロキの素直な感想にダリオは喜ぶ。
「ふぉふぉふぉ。だが、暗黒騎士殿。驚くのはここまで。そろそろ件の場所に入りますゆえ心の準備を」
ダリオは少し真剣な顔に戻して言う。
クロキは頷く。
「クーナ、顔を隠して」
それまで全く喋らずクロキの腕にしがみ付きながら歩いていたクーナに促す。
「わかったぞ、クロキ」
クーナはそう言うと頭巾をかぶり、顔を隠す。
浮かび上がる石に乗ってかなり上の階層までクロキ達は来ていた。ここから先は気を付けて移動しなければならない。
この先はヴェルンドの中でもっとも重要な区域、ドワーフの工房である。
そして、この工房を抜けたその上にヘイボスの工房がある。
クロキ達は工房区域に入る。それまで装飾などがあった場所とは違い、殺風景だが実用的な光景が広がっていた。
この工房にいるドワーフは特に気難しい者が多く、あまり騒がしくしてはいけない。
またこの工房のドワーフの中には女性嫌いの者もいるため本来ならクーナは連れてこない方が良いのだが、クーナがクロキから離れたがらず、またクーナをナルゴルに残す事に不安があったから結局連れてきた。
なぜ不安なのかというとアルゴアの元王女であるリジェナに関係があった。
クロキがアケロン山脈で拾ったリジェナはその後、魔王城におけるクロキ付きのメイドになった。
そしてどうもクーナはリジェナの事が嫌いみたいなのである。
リジェナの方はそうでもないのだがクーナが一方的にリジェナの事を嫌っているらしく、このままクーナを置いて魔王城を留守にするのは不安だった。
そのためクーナを連れて来たのである。
クロキ達は静かに工房を抜ける。
ドワーフ達がこの工房でやっている事に興味はあったが、自身の領域に入られる事を非常に嫌がる者もいるらしいので我慢する。
そして、その工房を抜け上の階へと辿りつく。
そこは奇妙な部屋だった。
様々な鉱石や道具や紙類が所せましと置かれており、部屋の形も狭いのか広いのかわからないような間取りをしていて、見る者を混乱させる。
ここがヘイボスの工房らしかった。だとしたら、ここはヴェルンドとエリオスの境界でもあるはずだ。話によればヘイボスはエリオスで最も低い場所にして、ヴェルンドで最も高い場所に住んでいるとの事だ。
クロキ達はヘイボスの工房を進む。
すると少し広い場所に出る。そこには1人の男がいた。
「ヘイボス様。暗黒騎士を連れてまいりました」
男は振り返るとクロキを見る。
普通なら、ふさふさの髭にまがったような体は見る者に弱弱しい印象を与えるだろう。
しかし、目の前の男の眼光は鋭く、歴戦の勇士のような気迫をクロキは感じる。
「よく来たな暗黒騎士。ヘイボスだ。会うのは初めてだな」
ヘイボスは厳めしい表情で名乗るのだった。
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