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第2章 聖竜王の角
第26話 ロクス王国との別れ1
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ゾンビの軍勢が去りあたりは活気を取り戻している。
クロキは1人で大通りを歩いていた。
通りを歩く人からはレイジを讃える声がちらほらと聞こえる。
実際にレイジ達はこの国を救うために頑張ったのだから讃えられても良いだろうとクロキは考える。
クロキは最後に見せたレイジの魔法はすごかった事を思い出す。
ザルキシスの魔法陣を壊しクロキは地上に戻った。
その時、水王寺千雪と轟奈緒美が出口の所にいたのにはクロキは驚いた。
しかし、2人は頭上を見上げて何かに気を取られているみたいなので、クロキは気付かれずに簡単にすり抜ける事が出来た。
そして2人から離れてしばらくすると突然空が輝いたのである。見るとレイジが空を飛んでいてそこから光があふれていた。光の奔流は遠くまで空を輝かせていた。
あの魔法は並みの魔法では防げないだろうとクロキは思う。
前回戦ったときはレイジはその魔法を使わなかった。もし再び戦う事があるなら要注意である。
クロキは正直に言うと戦いたくはない。
だけど再びレイジ達がナルゴルに攻めて来るなら戦う事になるかもしれなかった。
問題はレーナだった。
彼女がナルゴルを攻めるのを諦めれば丸く収まる。
どうすれば諦めてくれるのか?
クロキは頭を悩ませる。
そして、この国で何をしようとしていたのかさっぱりわからないので、さらに混乱する。
その後、レーナはこの国からいなくなったようだ。
彼女が何を考えているかわからないが、その動きには特に注意しなければならない。
そして、クロキには他にも気になる事がある。
それはザルキシスの事だ。
(何者なのだろう?)
クロキは彼の言葉が気になる。
ザルキシスはモデスを裏切り者と呼んだ。そして、自身の事を破壊神ナルゴルの片腕と言った。
ナルゴルと言えばモデスの支配する土地の事だ。
だけど、クロキはナルゴルと言う名詞には、もう1つ別の意味があるような気がする。
(ナルゴルに戻ってモデスに聞こうと思う。だけどその前にこの地に来た本当の目的を果たすべきだろうな)
だから、明日の朝にロクス王国を去ろうとクロキは思う。
その前に世話になった人にはできる限り挨拶をしておきたいとも考える。
そう思い歩いていると前方に見たことがある顔が歩いてくる。
「レンバー殿じゃないですか。どうしたのです?」
前から歩いて来るのはレンバーであった。
だがいつもと様子が違う。
クロキには何か思い悩んでいるように見えた。
それに今王宮は勇者レイジを讃える晩餐会の真っ最中のはずだ。
その晩餐会にはガリオス達自由戦士も呼ばれている。ゾンビを押しとどめるのに功績があったから特別に招待されたのだ。
ゾンビが市街地に入らないように奮戦したのだから当然であった。
逆に悲惨なのは神殿騎士達だろう。全員命が助かったとはいえ、操られて仕える対象である勇者に剣を向けたのだ。
彼らはレイジ達が聖レナリア共和国に戻るまでこの国の衛兵の代わりをするらしく、エリートの彼らには屈辱だろう。
晩餐会の招待に来た王宮の使いが笑いながら言っていた事をクロキは思い出す。
晩餐会にはガリオスは行きたがらなかったが、自由戦士達のリーダーであるガリオスが行かない訳にもいかず渋々王宮に行った。
クロキも誘われたがレイジ達と顔を合わせたくないので辞退した。
だから今1人で歩いているのだ。
その晩餐会に騎士であるレンバーが参加しなくて良いのだろうかとクロキは思う。
「えっ……ああ……クロ殿ですか」
クロキの顔を見るレンバーの顔が暗い。
正面にいたのに声を掛けるまで気が付かなかったようだ。
「何かあったのですか? 王宮にいなくても良いのですか?」
「いえ、特に何もありません……、クロ殿。王宮も私がいなくても大丈夫そうなので休ませてもらいました」
レンバーが目を合わせずに言う。
(レンバー卿、なんだか元気がないみたいだな……。何があったのだろう?)
この国でクロキは彼の世話になった。
余計なお世話かもしれないが放っておけなかった。
「レンバー殿。お暇ならそこらで一杯やっていきませんか? 奢りますよ」
クロキは酒を飲まないが、付き合うぐらいは良いだろうとレンバーを誘うのだった。
◆
「そんな奴がいたのか?」
チユキがレイジに地下での仮面の男の事を話すとレイジは悔しそうな顔をする。
「すまない、チユキ。俺がついていれば……」
レイジがチユキに謝る。
(あなたはアルミナ姫を助けるためいなくなったでしょうが!!)
チユキは心の中で思うが口には出さない。
同時にこれがレイジの限界だろう。2人の女の子が同時に危機に瀕した時はどちらか一方しか助けられない。
チユキと違って戦う能力がないアルミナを助ける方が正しい。だけど、おかげでチユキは危険な目にあった。
レイジも私がどうなっても良いと思ったわけではなく、チユキなら自分で何とかすると思ったからこそ、アルミナを助けに行ったのだ。
チユキは元の世界でも同じ扱いだったので慣れているから、そこまで怒ったりはしない。
チユキ自身も男性に助けを求めたりはしなかった。
だけど、今回は本当に怖かったのである。
あの彼の助けがなければどうなっていたかわからないとチユキは震える。
男性に助けられたのはレイジの次に2度目だ。
チユキはお礼を言いたかったが、彼は地上に出て来ず。
チユキは地下の部屋へ戻った。
そこには助けてくれた彼も仮面の男もすでにおらず、2人が戦った後だけがあった。
部屋の状況を見るに激しい魔法戦が繰り広げられたように思う。
凍った床に、高熱で溶けたであろう石畳。かなり高度な魔法が使われたみたいだった。
助けてくれた彼はカヤを投げ飛ばすほど体術に優れて、なおかつ魔法能力も高いようだ。
一体何者だろうとチユキは悩むのだった。
「ねえチユキさん。チユキさんを助けた人ってどんな人?恰好良かった?」
ヒーローっぽい出来事が好きなシロネが目を輝かせながら聞く。
チユキはその目を見て苦笑する。
「わからないわ。顔を隠していたもの。ただ優しそうな感じがしたわ」
「顔を隠した謎の助っ人。燃える展開っすね!!」
ナオがシロネに合わせる。
「でしょでしょ!!」
シロネとナオが笑い合う。
ナオもチユキと彼に助けられたがその時は意識を失っていた。だから彼に助けられた実感がわかないのかもしれない。
「ナオさん……。あなた危ない所だったのよ」
チユキはナオを窘める。
今回で一番危険な目にあったのはナオだ。笑い話にしているが実際は笑い事ではない。
「まあ、そうなんですが。自分達を影から助けてくれる人がいるってのは心強いっす。ぜひとも探してお会いしたいっす」
ナオが楽しそうに言う。
「確かになチユキ達を助けてくれた事には感謝をしないとな……」
レイジがうんうんと頷く。
レイジは悪いうわさが多く誤解されやすい事が多いが、助けられた事に感謝をしないわけではない。
周りに女性が多く、悪い噂の多くがモテない男性が流したやっかみだったりする。
もっとも少なからず真実もあり、本人も弁解しないので悪い噂は尾ひれがつき放題である。
また、同性の友達でもいれば良かったのだが、近づく男性はレイジの周りの女性を狙って近づいて来る者ばかりだったため、レイジが全員追い払ったのだ。
チユキはレイジを動物に例えるならライオンだと思う。
群れに他のオスが近づくのを許さず。近づいてくるオスがいたら噛み殺す。
「ところで、チユキさんを危ない目に合わせた仮面の人はどうなったの?」
サホコが不安そうに言う。
チユキはそれも気になる所だった。
黒い霧がなくなった事から彼が勝ったようだが、仮面の男がどうなったのかわからない。それらしき死体も発見されなかった。
「仮面の男がどうなったのかわからないわ」
チユキは首を振る。
「ねえチユキさん。その仮面の男って魔王の手下なんだよね?」
リノの問いに私は頷く。
「ナルゴルの手の者かどうか尋ねたら、そうだと言ったから間違いないと思うわ」
「だとしたら暗黒騎士の仲間だよね?」
「そうなるわね。どうしたのリノさんそんな事を聞いて?」
リノは何が言いたいのだろう?
「えーっとね……確かここには暗黒騎士の企みを阻止するために来たのに、その当人が全く姿を見せないから気になって」
「それもそうね。おかしいわね。一体何を考えているのかしら?」
チユキは首を傾げる。
「そんなのどうでも良いよ。チユキさんやナオちゃんを危険な目に会わせるような奴らの考えなんて。姿を現したら今度こそ倒してやる!!」
シロネが怒ったように言う。
「シロネの言う通りだ。みんな!! 今度こそ倒してやろうぜ!!」
レイジが力強く言う。
「まってレイジ君。野放しにしておけない危険な奴らだけど、慎重に行動した方が良いと私は思う。何しろ命がかかっているのだから」
チユキは一応くぎを刺す。
だけど、倒してやろうと思うのは一緒だ。
何だかんだ言ってもチユキもレイジと同じ思いだったりする。
「あの、皆さん。晩餐の準備が整いました」
その後しばらく雑談している時だった。
扉を開けてアルミナが入って来る。
チユキ達は一瞬アルミナに見惚れる。
アルミナのドレス姿はかなり桃色を基調にした気合の入った物でとても綺麗だった。
アルミナの視線はまっすぐレイジを見つめている。
王子様みたいに助けた事でレイジに対する好感度は最大値にまで上がっているのだろう。
アルミナのレイジを見る目が熱っぽい。
これで何人目だよとチユキは思う。
「せっかくのもてなしだみんな行こうぜ」
レイジが言う。
この国を救った事で王宮がレイジを讃える宴を開いてくれるらしく、その準備が整うまで王宮の別室にいたのだ。
アルミナが説明するには、もともとはストリゲスの塔を調査したお礼に王宮が用意していた物をさらに豪華にした物らしい。
また、王宮だけでなく国中の人がこの宴に協力しているとの事であった。
おそらくこの国でできる最高のもてなしだろうとチユキは思う。
せっかくだから御馳走になろうとチユキは思う。
「そうね、行きましょう。」
チユキ達はアルミナの後に続いた。
クロキは1人で大通りを歩いていた。
通りを歩く人からはレイジを讃える声がちらほらと聞こえる。
実際にレイジ達はこの国を救うために頑張ったのだから讃えられても良いだろうとクロキは考える。
クロキは最後に見せたレイジの魔法はすごかった事を思い出す。
ザルキシスの魔法陣を壊しクロキは地上に戻った。
その時、水王寺千雪と轟奈緒美が出口の所にいたのにはクロキは驚いた。
しかし、2人は頭上を見上げて何かに気を取られているみたいなので、クロキは気付かれずに簡単にすり抜ける事が出来た。
そして2人から離れてしばらくすると突然空が輝いたのである。見るとレイジが空を飛んでいてそこから光があふれていた。光の奔流は遠くまで空を輝かせていた。
あの魔法は並みの魔法では防げないだろうとクロキは思う。
前回戦ったときはレイジはその魔法を使わなかった。もし再び戦う事があるなら要注意である。
クロキは正直に言うと戦いたくはない。
だけど再びレイジ達がナルゴルに攻めて来るなら戦う事になるかもしれなかった。
問題はレーナだった。
彼女がナルゴルを攻めるのを諦めれば丸く収まる。
どうすれば諦めてくれるのか?
クロキは頭を悩ませる。
そして、この国で何をしようとしていたのかさっぱりわからないので、さらに混乱する。
その後、レーナはこの国からいなくなったようだ。
彼女が何を考えているかわからないが、その動きには特に注意しなければならない。
そして、クロキには他にも気になる事がある。
それはザルキシスの事だ。
(何者なのだろう?)
クロキは彼の言葉が気になる。
ザルキシスはモデスを裏切り者と呼んだ。そして、自身の事を破壊神ナルゴルの片腕と言った。
ナルゴルと言えばモデスの支配する土地の事だ。
だけど、クロキはナルゴルと言う名詞には、もう1つ別の意味があるような気がする。
(ナルゴルに戻ってモデスに聞こうと思う。だけどその前にこの地に来た本当の目的を果たすべきだろうな)
だから、明日の朝にロクス王国を去ろうとクロキは思う。
その前に世話になった人にはできる限り挨拶をしておきたいとも考える。
そう思い歩いていると前方に見たことがある顔が歩いてくる。
「レンバー殿じゃないですか。どうしたのです?」
前から歩いて来るのはレンバーであった。
だがいつもと様子が違う。
クロキには何か思い悩んでいるように見えた。
それに今王宮は勇者レイジを讃える晩餐会の真っ最中のはずだ。
その晩餐会にはガリオス達自由戦士も呼ばれている。ゾンビを押しとどめるのに功績があったから特別に招待されたのだ。
ゾンビが市街地に入らないように奮戦したのだから当然であった。
逆に悲惨なのは神殿騎士達だろう。全員命が助かったとはいえ、操られて仕える対象である勇者に剣を向けたのだ。
彼らはレイジ達が聖レナリア共和国に戻るまでこの国の衛兵の代わりをするらしく、エリートの彼らには屈辱だろう。
晩餐会の招待に来た王宮の使いが笑いながら言っていた事をクロキは思い出す。
晩餐会にはガリオスは行きたがらなかったが、自由戦士達のリーダーであるガリオスが行かない訳にもいかず渋々王宮に行った。
クロキも誘われたがレイジ達と顔を合わせたくないので辞退した。
だから今1人で歩いているのだ。
その晩餐会に騎士であるレンバーが参加しなくて良いのだろうかとクロキは思う。
「えっ……ああ……クロ殿ですか」
クロキの顔を見るレンバーの顔が暗い。
正面にいたのに声を掛けるまで気が付かなかったようだ。
「何かあったのですか? 王宮にいなくても良いのですか?」
「いえ、特に何もありません……、クロ殿。王宮も私がいなくても大丈夫そうなので休ませてもらいました」
レンバーが目を合わせずに言う。
(レンバー卿、なんだか元気がないみたいだな……。何があったのだろう?)
この国でクロキは彼の世話になった。
余計なお世話かもしれないが放っておけなかった。
「レンバー殿。お暇ならそこらで一杯やっていきませんか? 奢りますよ」
クロキは酒を飲まないが、付き合うぐらいは良いだろうとレンバーを誘うのだった。
◆
「そんな奴がいたのか?」
チユキがレイジに地下での仮面の男の事を話すとレイジは悔しそうな顔をする。
「すまない、チユキ。俺がついていれば……」
レイジがチユキに謝る。
(あなたはアルミナ姫を助けるためいなくなったでしょうが!!)
チユキは心の中で思うが口には出さない。
同時にこれがレイジの限界だろう。2人の女の子が同時に危機に瀕した時はどちらか一方しか助けられない。
チユキと違って戦う能力がないアルミナを助ける方が正しい。だけど、おかげでチユキは危険な目にあった。
レイジも私がどうなっても良いと思ったわけではなく、チユキなら自分で何とかすると思ったからこそ、アルミナを助けに行ったのだ。
チユキは元の世界でも同じ扱いだったので慣れているから、そこまで怒ったりはしない。
チユキ自身も男性に助けを求めたりはしなかった。
だけど、今回は本当に怖かったのである。
あの彼の助けがなければどうなっていたかわからないとチユキは震える。
男性に助けられたのはレイジの次に2度目だ。
チユキはお礼を言いたかったが、彼は地上に出て来ず。
チユキは地下の部屋へ戻った。
そこには助けてくれた彼も仮面の男もすでにおらず、2人が戦った後だけがあった。
部屋の状況を見るに激しい魔法戦が繰り広げられたように思う。
凍った床に、高熱で溶けたであろう石畳。かなり高度な魔法が使われたみたいだった。
助けてくれた彼はカヤを投げ飛ばすほど体術に優れて、なおかつ魔法能力も高いようだ。
一体何者だろうとチユキは悩むのだった。
「ねえチユキさん。チユキさんを助けた人ってどんな人?恰好良かった?」
ヒーローっぽい出来事が好きなシロネが目を輝かせながら聞く。
チユキはその目を見て苦笑する。
「わからないわ。顔を隠していたもの。ただ優しそうな感じがしたわ」
「顔を隠した謎の助っ人。燃える展開っすね!!」
ナオがシロネに合わせる。
「でしょでしょ!!」
シロネとナオが笑い合う。
ナオもチユキと彼に助けられたがその時は意識を失っていた。だから彼に助けられた実感がわかないのかもしれない。
「ナオさん……。あなた危ない所だったのよ」
チユキはナオを窘める。
今回で一番危険な目にあったのはナオだ。笑い話にしているが実際は笑い事ではない。
「まあ、そうなんですが。自分達を影から助けてくれる人がいるってのは心強いっす。ぜひとも探してお会いしたいっす」
ナオが楽しそうに言う。
「確かになチユキ達を助けてくれた事には感謝をしないとな……」
レイジがうんうんと頷く。
レイジは悪いうわさが多く誤解されやすい事が多いが、助けられた事に感謝をしないわけではない。
周りに女性が多く、悪い噂の多くがモテない男性が流したやっかみだったりする。
もっとも少なからず真実もあり、本人も弁解しないので悪い噂は尾ひれがつき放題である。
また、同性の友達でもいれば良かったのだが、近づく男性はレイジの周りの女性を狙って近づいて来る者ばかりだったため、レイジが全員追い払ったのだ。
チユキはレイジを動物に例えるならライオンだと思う。
群れに他のオスが近づくのを許さず。近づいてくるオスがいたら噛み殺す。
「ところで、チユキさんを危ない目に合わせた仮面の人はどうなったの?」
サホコが不安そうに言う。
チユキはそれも気になる所だった。
黒い霧がなくなった事から彼が勝ったようだが、仮面の男がどうなったのかわからない。それらしき死体も発見されなかった。
「仮面の男がどうなったのかわからないわ」
チユキは首を振る。
「ねえチユキさん。その仮面の男って魔王の手下なんだよね?」
リノの問いに私は頷く。
「ナルゴルの手の者かどうか尋ねたら、そうだと言ったから間違いないと思うわ」
「だとしたら暗黒騎士の仲間だよね?」
「そうなるわね。どうしたのリノさんそんな事を聞いて?」
リノは何が言いたいのだろう?
「えーっとね……確かここには暗黒騎士の企みを阻止するために来たのに、その当人が全く姿を見せないから気になって」
「それもそうね。おかしいわね。一体何を考えているのかしら?」
チユキは首を傾げる。
「そんなのどうでも良いよ。チユキさんやナオちゃんを危険な目に会わせるような奴らの考えなんて。姿を現したら今度こそ倒してやる!!」
シロネが怒ったように言う。
「シロネの言う通りだ。みんな!! 今度こそ倒してやろうぜ!!」
レイジが力強く言う。
「まってレイジ君。野放しにしておけない危険な奴らだけど、慎重に行動した方が良いと私は思う。何しろ命がかかっているのだから」
チユキは一応くぎを刺す。
だけど、倒してやろうと思うのは一緒だ。
何だかんだ言ってもチユキもレイジと同じ思いだったりする。
「あの、皆さん。晩餐の準備が整いました」
その後しばらく雑談している時だった。
扉を開けてアルミナが入って来る。
チユキ達は一瞬アルミナに見惚れる。
アルミナのドレス姿はかなり桃色を基調にした気合の入った物でとても綺麗だった。
アルミナの視線はまっすぐレイジを見つめている。
王子様みたいに助けた事でレイジに対する好感度は最大値にまで上がっているのだろう。
アルミナのレイジを見る目が熱っぽい。
これで何人目だよとチユキは思う。
「せっかくのもてなしだみんな行こうぜ」
レイジが言う。
この国を救った事で王宮がレイジを讃える宴を開いてくれるらしく、その準備が整うまで王宮の別室にいたのだ。
アルミナが説明するには、もともとはストリゲスの塔を調査したお礼に王宮が用意していた物をさらに豪華にした物らしい。
また、王宮だけでなく国中の人がこの宴に協力しているとの事であった。
おそらくこの国でできる最高のもてなしだろうとチユキは思う。
せっかくだから御馳走になろうとチユキは思う。
「そうね、行きましょう。」
チユキ達はアルミナの後に続いた。
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