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第8章 鳴らされた終の音
107 最期の太陽
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いつものように夕食を取り、風呂に入り、スマホでSNSを眺めていた。どうやら俺に対して反対的な意見を持つ人間が多数派だが、少しずつ肯定派も出てきている。ニュースを見ると、昨日SNSに投稿された動画がフェイクではなかったと言う話題をアナウンサーが物知り顔で語っていた。能力研究の第一人者らしき専門家も何か言っていたが、曰く
「能力とはまた別の何かを彼は保有している」との事で、
「専門家ってなんだよ」と俺は呟き、
「夜か」そして、明日の戦いのために早々に眠る事にした。電気を消して、そして、眼を閉じる。
様々な記憶が、浮かんでは消えていく。意識的に那由他の記憶は浮かばないようにして。そのまま俺は眠りに落ちていった。
ふと、気配を感じて目を覚ます。俺のドアの前でその気配は止まっている。誰だ?寝たふりをして、敵意を感じたら先手を打とう。そして、俺は待ち、ドアが開くのを感じた。その気配は、那由他のものだった。
「寝てるんですか、もう」そして、那由他は俺の真横に来て、
「!‼︎⁇?」俺の布団に潜り込んできた。ちょっと?なにしてんの?パニックになりながらも俺は起きるタイミングを完全に失い、ただひたすらに睡眠中を装って、那由他が寝息を立て出したのを聞いた。
「何勝手に寝てんだよ」そう言いながらも、那由他が近くにいるという安心感だろうか、俺も逆らえない眠気に落ちていった。
朝起きると那由他は居なかったが、明らかに痕跡が残っている。髪の毛は数本落ちているし、布団にも那由他の匂いが残っていた。
「マジで何だったんだあいつ」そう言って、俺はその事実に気づいた。
「今日で、全部終わる」その事が少し物悲しかった。
と言ってもやはり何事もないかのように俺はいつもの場所に行き、
「いやいや葬式かよ」その陰鬱な雰囲気に思わず思った事をそのまま言ってしまった。それくらい静かだった。
「皆怖がりすぎじゃない?今まで戦った敵よりも強い敵と戦うだけじゃない」澄玲がいつものようにそう言うが、よく見ると顔が少し強張っている。
「そう言うお前も結局怖いんじゃねえか」すると
「あら、見抜かれちゃった?そりゃ怖いに決まってるでしょう。先生が昨日ああ言ってくれたとは言え、いつ何が起こるか分からない。でも、やっぱり現実味がないって言うか」それは俺も思っていた。
本当に今日世界の命運が分かれるのか、どう見ても今は普通なのに、午後7時から本当に始まるのか、それがなんだか俺の中で引っ掛かっていた。
「でも、結局いつかは始まるんだ。だから、そのために俺達は戦うんだろ?」今日も桜は妖しげに光りながら高台から俺達を見下ろしていて、
「そろそろ私の担当だから行ってくるわ」そして澄玲が女の先生に着いて行き、俺は黙々と朝食を食べる。いつもの朝食、いつもの朝日、これが最期に見る朝日になる人も多いだろう。だから皆外を見ている。親と電話をしている人もいる。泣きながら抱きしめ合っているカップルらしき生徒もいる。
普通だけど、異常。そんな光景が目の前に広がっていた。
数時間が経ち、夕焼けが見えている。
「今からが担当の生徒は着いてきてください」そして、俺の担当時間が始まった。
俺は先生に着いて行き、そのバスに乗り込むのだった。
「能力とはまた別の何かを彼は保有している」との事で、
「専門家ってなんだよ」と俺は呟き、
「夜か」そして、明日の戦いのために早々に眠る事にした。電気を消して、そして、眼を閉じる。
様々な記憶が、浮かんでは消えていく。意識的に那由他の記憶は浮かばないようにして。そのまま俺は眠りに落ちていった。
ふと、気配を感じて目を覚ます。俺のドアの前でその気配は止まっている。誰だ?寝たふりをして、敵意を感じたら先手を打とう。そして、俺は待ち、ドアが開くのを感じた。その気配は、那由他のものだった。
「寝てるんですか、もう」そして、那由他は俺の真横に来て、
「!‼︎⁇?」俺の布団に潜り込んできた。ちょっと?なにしてんの?パニックになりながらも俺は起きるタイミングを完全に失い、ただひたすらに睡眠中を装って、那由他が寝息を立て出したのを聞いた。
「何勝手に寝てんだよ」そう言いながらも、那由他が近くにいるという安心感だろうか、俺も逆らえない眠気に落ちていった。
朝起きると那由他は居なかったが、明らかに痕跡が残っている。髪の毛は数本落ちているし、布団にも那由他の匂いが残っていた。
「マジで何だったんだあいつ」そう言って、俺はその事実に気づいた。
「今日で、全部終わる」その事が少し物悲しかった。
と言ってもやはり何事もないかのように俺はいつもの場所に行き、
「いやいや葬式かよ」その陰鬱な雰囲気に思わず思った事をそのまま言ってしまった。それくらい静かだった。
「皆怖がりすぎじゃない?今まで戦った敵よりも強い敵と戦うだけじゃない」澄玲がいつものようにそう言うが、よく見ると顔が少し強張っている。
「そう言うお前も結局怖いんじゃねえか」すると
「あら、見抜かれちゃった?そりゃ怖いに決まってるでしょう。先生が昨日ああ言ってくれたとは言え、いつ何が起こるか分からない。でも、やっぱり現実味がないって言うか」それは俺も思っていた。
本当に今日世界の命運が分かれるのか、どう見ても今は普通なのに、午後7時から本当に始まるのか、それがなんだか俺の中で引っ掛かっていた。
「でも、結局いつかは始まるんだ。だから、そのために俺達は戦うんだろ?」今日も桜は妖しげに光りながら高台から俺達を見下ろしていて、
「そろそろ私の担当だから行ってくるわ」そして澄玲が女の先生に着いて行き、俺は黙々と朝食を食べる。いつもの朝食、いつもの朝日、これが最期に見る朝日になる人も多いだろう。だから皆外を見ている。親と電話をしている人もいる。泣きながら抱きしめ合っているカップルらしき生徒もいる。
普通だけど、異常。そんな光景が目の前に広がっていた。
数時間が経ち、夕焼けが見えている。
「今からが担当の生徒は着いてきてください」そして、俺の担当時間が始まった。
俺は先生に着いて行き、そのバスに乗り込むのだった。
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