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第2章 裏切りという名の誠実

13 逃げろ!

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「一応言っておくが、俺じゃないからな」しかし、さすがに怪しまれているらしく、
「何が目的なの?」クラスSの連中は完全に俺がやったと思っているらしく、話したことのない黄緑の目の男が
「今なら理由を聞いてやる。だが、抵抗するようなら僕達を敵に回すことになるぞ」既にその男は腕に風を纏わせ、すぐに攻撃する態勢を取っている。仕方ないから説明しておこう。

「なるほどね」泡沫澄玲は考えているが、先ほどの男は
「お前にあの気配を放てる深層生物アンダーアイズを倒せるわけがないだろ」そうだった。俺は黒眼の落ちこぼれと言われているのだ。さっきの事実を言っても信じられる訳ないか。
「まあ、そうね。貴方。覚悟は出来ているかしら?」泡沫澄玲も掌に紫の焰を作り出し、それに続くように他のやつらも各々の能力を発動させた。マズいことになったな。ここで攻撃を仕掛けてたり逃げても良いのだが、それをすると完全に黒だと認識されてしまう。しかし、話し合いで解決できそうではないし、
「その女子は僕の友人だ。お前も嫌だろ?友人が傷つけられるのは!」その声と共に風の刃が飛んでくる。生半可なものではない。
高圧水柱チャージドアクア!」もう一人青目の男が腕を下から上に振り上げた途端、地面から数本の太い水柱が立ち上がった。風の刃も一緒に避けつつすると、
地裂クエーク!」足元が割れ、躓かないように飛び上がり、追撃で飛んできた風の刃を躱す。
「あら、貴方。思ったよりも動けるのね」真下から呑気な声が聞こえた。
「お前も速すぎるだろうが!泡沫!」下から飛んできた紫の焰を身を捻って避け、着地と同時に俺は飛んできた華奢な拳を避けた。しかし、段差に躓き、直後に飛んできた風の刃で皮膚を切られ、水柱で打ち上げられた。
「ちっ」舌打ちをしながらも思考をめぐらせる。ここで俺が取るべき最適解は、
 打ち落とされた瞬間に俺は受け身を最小限の動きでとり、後方に飛び退き、知らない間に出来た竜巻を避ける。そして、炎を生み出し、陽炎を利用して避ける。さっきからずっと避けてばかりだが、俺には彼らを傷つけることが出来ないのでしないのだ。だから、逃げるしかない。
 俺は一際大きな炎を作り出し、自分と彼らの間に壁を作る。すぐに破られるだろうが、時間稼ぎだ。俺は本気で走り去った。


「逃げられたわね」私は思ったよりもあっさり消えたその炎の壁を見た。少しくすぶっているが、強い能力ではなかったのか大して脅威ではなかった。それでも気になるのが、
「なあ、あいつ黒眼だろ?なんで能力放てたんだ?」その疑問は全員持っているが、すべきことはある。私は振り返ってクラスメイト達を見て言う。
「貴方は彼女を医務室に。あと、君は先生に事情報告しておいて。私と霰(あられ)ちゃんは彼を追ってくる」霰ちゃんの名字は九十九(つくも)で、少し堅そうな名字だが、実際はかなり明るい子だ。眼の色は蒼と紫のオッドアイだ。さっきの戦いでは全く手を出していなかったが、かなりの実力者だ。
「で、澄玲ちゃん。あいつどこに行ったと思う?」霰ちゃんが私に声をかけてくる。
「仮に彼が本気で逃げたとしてもこの学校の設備的に逃げるのは難しいから、そこまで必死に探す必要は無いと思うわ」しかし、彼なら逃げれそうな予感が少ししている。私は天高く昇った満月を見て、そして、走り出した。
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