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2.辺境の密会、魔女の耳は獣耳
Remember-64 VS.獣の魔女/収束する転生使い達
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「……なあシャーリィ、あの村に行方不明者を探すって体裁が必要だってのは分かってるけどさ、ここまで歩き続ける必要があるのかなぁ~」
あれからしばらく経っただろうか。俺とシャーリィは二人で朝焼けに照らされている森の中を歩き回っていた。
そんな途中、弓矢を片手に先陣を切るシャーリィの後をついて行きながらそんなことを尋ねたりしてみる。
「あるわよ。行方不明者が居ると思われる場所は異世界周辺でしょ? だからここまで来なきゃ」
「なあシャーリィ、分かってるだろうけど言うぞ? 俺達は徹夜してずっっっと働いたり動き回っているんだ。いくら転生使いだからって限度があると思うぞ限度が~」
アザミやシャーリィは仮眠を取る暇があったかもしれないが、俺はひたすら重労働だったんだぞ、と遠回しに訴える。
……まあ、色々振り切れて既に一周回って眠くない状態なのだが。でも事が終わったら三日ぐらいは寝続けるぞ俺は。
『……なんだろう、さっきからユウマもシャーリィも何か変じゃないか? それに、アザミさんのことはどうするんだよ』
ポケットの中で独り言の様に呟く声。だけど俺はそんな軽口を口にしながらも、周囲に気を配るのに忙しい。口を開いていない間は呼吸すら止めて耳を澄ませている。
――だから確かに、今羽音が聞こえた。
「……なあ、シャーリィ~」
「何よしつこいわね。集中しなさいよ」
「――ああ、してるさ。ほら、後ろの上。鳥だ」
「ありがと、上出来よッ――!」
芝居じみた会話を止めにして、指をさしてそう言った直後。シャーリィは振り返って弓に矢をつがえて引き、問答無用でその方向へ放った。
トン、と意外にも軽い音。その後に木の上から黒い鳥がボトリと地に落ちてきた。その腹の真ん中を、今シャーリィが放った矢で貫かれている。
「――ポ、ポポ……ポ……」
「……前から不気味な鳴き声がすると思ったが……この鳥の鳴き声だったのか」
「よし、急ぎましょ。早かれ遅かれ、監視の目が潰れたってヤツらに気がつかれるわ。向こうが動くより前に行動するわよ」
「ああ。それとベルと俺にも詳しい解説をお願いしたい。正直今までこの鳥が何だったのかも、今まで俺達が置かれていた状況も分からずじまいだったんだからな」
『? ???』
「ホラ見ろ、ベルなんて特に分からず仕舞いだ」
ポケットからガラスを取り出すと、その中では案の定ポカンとしているベルの姿。
……まあ、俺も大雑把に“策”があることまでしか分からなかったから、いい加減に詳しく教えて欲しい頃合いだったりする。
『ゆ、ユウマ……さっきから一体何が起きているんだ? どういうことなんだ?』
「どこから説明するか……そうだな、アザミの件から話すか。あの鳥が監視の目だったってことは、今は何話しても良いよな?」
「ええ、お好きにどうぞ」
シャーリィから快諾を頂いたので、俺は一度咳払いをして喉の調子を整えてから口を開いた。
「アザミに胸倉を掴まれて、俺が彼女に言われた言葉を覚えてるか?」
『あ、ああ……確か、「すみません。ですが、どうか信じて。これが“私達”のやり方なんです」――って』
「うん、あの時彼女に言われた言葉で俺は悟ったよ。アザミは一芝居を打っていたんだ……連中を騙すためにな」
『連中……魔道の密会をか!? 騙すために!?』
「思い返せば、彼女はちゃんと言葉を使い分けて遠回しに示してくれていたんだ。アザミは決まってこう言ってた、“私と魔道の密会の方々”とか“貴方達と私”みたいに、自身と連中を分けて呼んでいた……でも、あの時のアザミは“私達”って言ってくれた――あれは、アザミと俺やシャーリィを指している言葉だ」
『あ……』
――はい、ではこれからもよろしくお願いしますね! “私達”の関係を……!
以前、満面の笑みで答えた彼女の返事はやはり偽物なんかじゃなかった。一瞬でも彼女のあの笑顔を疑ったことを恥ながらも、やっぱり嬉しく思える。
「……正直、嬉しかったな。俺の友達友好大作戦を覚えてくれてて」
「えっ、何その、なに?」
『私も前々から聞きたかったが、何なんだよそのヘンテコな作戦は』
……二人から困惑の声を放り込まれるが、んなこた知ったことか。
ゴホン、ゴホン。と咳払いで彼女達の言葉を躱して、閑話休題のつもりで手を叩いて話題を仕切り直す。時間が無いのに話が脱線しすぎた。
「……で、俺がそういうことだって理解したことを察したシャーリィは、俺に一つ頼み事をしてきたのさ。……ってか、俺が状況を理解出来たってよく察したな?」
「そりゃ、あんなブチギレて飛び出した奴がサッパリした顔をして戻って来たらねぇ? この際だから白状すると、貴方を蚊帳の外にして、私とアザミさんだけで事を進めようと思ったけど……ユウマったら、あれだけ真剣に頑張っていたんだもの。折角だし、協力して貰うことにしたの」
そうして何かあると分かった後、シャーリィに招かれて耳元で言われた言葉はこうだ。「黒い鳥を見つけたら、私に教えなさい」……という、当時は訳の分からない指示だった。
それからは異世界付近で行方不明者の捜索――と見せかけた、いわば“黒い鳥探し”が始まった。
俺もそこまでの事情は汲み取れないまま、とりあえず言われた指示だけは忠実にこなして、今に至る訳だ。
「アザミさんと出会った後から、私達もまとめて監視されてたみたい。大雑把に言うと、アザミさんと敵対している存在からね」
『か、監視? アザミさんと敵対する存在――は、魔道の密会のことだと分かるが……ちょっと待て。内容に関してはまあ良い。だが、そんな話をシャーリィはどうやって知って、どうやって芝居を打つ計画を立てた!? そんな暇はなかっただろうに』
と、ベルが俺にも分からなかった部分に早速踏み込んで尋ねた。やっぱ頭いい人はなんて言うか、質問の“質”が違うなぁ、なんて呑気な感想を抱く。俺もそれについてはずっと気になっていたりする。
「監視されてるから声でやり取りをしたらバレちゃうからね。私達は今まで通りのやり方で相談し合って計画を立てたって訳。ほら、簡単でしょ?」
そう言いながらシャーリィはポーチの中から複数の手紙を取り出した。
その内容は見せられても読めないが、今の説明を聞く限り、アザミとの間で渡し合っていた手紙なのだろう。
……今まで通りのやり方、ねぇ。確かにシャーリィとアザミは今まで手紙でやり取りをしていたんだっけ。直接会っている最中にも手紙でやり取りをしていたのは驚きだが。
「何を驚いてるのよユウマ。こうして手紙でやり取りするのも、貴方が切っ掛けだったんだから」
「……あっ、もしかしてアザミから渡されたあの手紙か!?」
「その手紙で初めて私はアザミさんが敵対する組織に目を付けられていること、鳥を使った監視が私達にもされていることを知ったわ」
『なるほど……アザミさんが自分からシャーリィにその手紙で相談を持ちかけたのか』
「ええ、彼女は“魔道の密会”とかいう組織に昔から目を付けられていたらしいの。それで監視されていて、そんなアザミさんと接触した転生使いの私達も同様に監視の対象になる恐れがある……って。そしたら案の定監視されててねぇ……しかも黒魔術と来たかぁ」
あーもう、面倒くさいなぁ。と言いたげに――あ、今溜め息まじりに言った。そう言ってシャーリィはポーチに手紙をしまう。
それで監視に遣わされたのが先程、シャーリィに射貫かれた黒い鳥だったという訳か。黒魔術というものはよく分からないが、シャーリィが思わず溜め息を吐く代物だということは理解した。
「それからは連中に“私とアザミさんが不仲に陥って、関係が決裂する”までの芝居を打ち続けたって訳。私がアザミさんには何かある、怪しいって感じで警戒している姿勢を見せ続けたの。連中にとって都合が良い状況になって警戒を緩ませるためにね」
……思い返せば、アザミの村に居た時にもシャーリィが不自然に馬車を蹴り飛ばしていたが……あれは馬車の上から監視していた鳥を強引に逃がしたのだろう。
あの時だけ妙に“アザミと仲良くするように”と推してきたが……そういう事だったのか?
『なるほどな……ん? 因みにだがユウマまで騙していたのは何でだ?』
「そりゃ単純に文章でやり取りができないからね……文字が読めないでしょ。まあ、ユウマまでも騙していたこともあって、貴方の反応のお陰で芝居が本格的になったわ。私達の不仲に対してあんな本気で怒る姿を見たら連中、間違いなく騙されるわよ」
「そりゃどーも……なんか褒められてる気がしない」
フッフッフ、と笑うシャーリィにせめてもの仕返しに湿度の高い視線を送る。
敵の裏をかくための貢献ができたことは嬉しいはずだが、なんか利用された感……いや、間違いなく利用されたのでいい気はしないのである。
「……本当は、ユウマにもこの件を伝えてもっと時間をかけて計画を進めて、完璧な状態で敵組織を追い詰める予定だったけど……今回の子供が誘拐された件があるでしょ? あんな事が起こったら呑気に下準備を整えている場合じゃないって動くことにしてね」
口調はいつも通りだが、シャーリィの表情は穏やかなものではない。内心、相手がやったと残酷な行いに心底怒りを感じている――それのことを声への力の籠もり方だけでも察することができる。それほどに彼女は冷静に怒り心頭って感じの様子だ。
「……さあ、もうすぐ異世界よ。多分もうそろそろアザミさんも反旗を翻す頃か、もう突入しているか……まあ、どちらにせよ私達も突入するわよ」
「? 異世界にか? どうして」
「魔道の密会の拠点はノールド村の近く、それも異世界の内部にある……らしいわ。中心部に向かえば人工的な建設物があるらしくて、そこを拠点にしているって情報よ」
異世界を拠点に……魔道の密会という名前からして、魔道具や転生とかの手段で俺達のように異世界へ踏み入れる事ができるのだろう。
ということは、これから先それ相応の衝突が起こることが予想できる。魔道具を使っていたベルホルトの時の様な苦戦を強いるかもしれない。
『私はさっきから新事実にびっくりしっぱなしだが……ユウマ、準備は良いか?』
「あ? ああ。色々考え事はあるけど、今は目の前のことだ。行こう、シャーリィ!」
「良い返事ね、行くわよ!」
お互いに威勢の良い返事をし合って、俺達は異世界の中に突入するのだった――
■□■□■
異世界をしばらく歩いているが、相変わらず乾いた大地が広がっている。
……この異世界は、歩いていてあまり良い気分にならない。歩いていて気分が良くなる異世界だなんて存在しなかったが、そう感じてしまうのはやっぱり、あの出来事が心に残っているからだろうか――
「ユウマ。ねぇ、ユウマ!」
「ッ! はい何でしょう!?」
「どういう反応よ。それより構えて!」
いかんいかん、心に残った傷に足を引っ張られている場合じゃない。シャーリィの一喝を受けて言われた通りに身構えた。
『なんだ……? どこかから足音がする!』
「……ユウマ! 何かが来るわよ!」
ベルから注意喚起を受けて、シャーリィと背中を合わせて周囲を警戒する。
タタッ、タタッ、と。乾いた地面を駆ける軽い足取りの音。この足音、どこかで聞いたことがあるような――
「来た! 避けて!」
「ッ――!」
シャーリィの声に合わせて散開するように、突撃してくる影を難なく回避する。回避の姿勢から立ち直ると、そこには一度見たことがある、狼の姿をした怪物が居た。
「ッ、やるわよ!」
「ああ! ッ、転生――!」
シャーリィは瞬時に転生を済ませて短剣を取り出し、俺は包丁で首を切って転生する。
「……ん? なんで今わざわざ“転生”って言ったの?」
「いや……ちょっとアザミに感化された」
『それと聞きたいんだが、そのさっきから手にしている物はなんだ……?』
「村の人達に貰ってきた。クレオさんに研いでもらって切れ味も持たせてある――ふッ!」
俺に目掛けて跳びかかる狼の一撃を、両手に握った漆喰塗り用の“コテ”で受け止めて押し返す。アザミのように片手では叶わなかったが、両手でなら十分に怪物の跳びかかりを押し返せた。
「ッ、は――!」
「ギャ――!」
狼の顔面を左手のコテで殴り、隙を突いて右手のコテの先端で首を狙って鋭い突きを放ち、そのまま首を貫いたコテを横に振り払って切り裂いた。
狼の怪物は短い断末魔と共に首からボトボトと黒い粘性を持った液体を漏らして倒れる。首を半分切断されたのだから、抵抗する体力も無く倒れたのだろう。
「……! 気をつけて! まだいる……それも複数!」
『ッ、なんだこの気味の悪い声……いや、怪物の遠吠えか!?』
「……足音からして、周りを囲まれているみたいだ」
「ユウマ、背中は頼むわよ」
「ッ、難題だぞシャーリィ! いやまあ、やるけどさ!」
似たような足音が複数、周りをグルグルと囲むように走り回っている。
状況は……あまり芳しくない。今みたいに一匹が襲ってくるなら良いが、もしも複数の怪物が一度に襲いかかってきたのなら――俺とシャーリィの二人がかりでも難しいかもしれない。
「depict――Teiwaz!」
俺の背後。シャーリィは呪文を唱えて宙にルーン文字を浮かべると、その文字を短剣で貫き、まるで鍵のように突き刺したまま捻った。すると貫かれたルーン文字が輝きだし、短剣を引き抜く――と、短剣の剣先は、まるで剣のような形をした光を纏っていた。
『……! まるでロングソードだ。短剣がまるで剣のようになっている!』
「おわぁ……なにそれ、格好いい」
「よそ見をしてないで! ここからは持久戦よ。むやみに焦ったら負けるわ……でも、どうしてこんなに怪物が集まってるの……?」
シャーリィはそう言いながら、跳びかかってくる狼の怪物をルーン魔術で作られた剣で牽制し、退ける。時には盾のように扱って押し返す守りの姿勢で俺の背中から襲いかかる怪物に対応している。
「ッ、散弾! ……? シャーリィ、何か煙の匂いがしないか? 霧に混じって何か香のような匂いがする……気がする」
「香の匂い? ……いや、私には全く」
いや、確かに煙の匂いがした。何処か近くで、何かの煙が俺達の場所に流れてきている――
「――鼻が良いな、魔法使い。使い魔を殺して本拠地を突き止めるのも、香に気がつくのも」
霧の奧から、不意に男の声がしてシャーリィと俺は咄嗟にその方向へ身構える。
……聞いたことのない声、だが、あの格好……白いとんがり帽子に白いローブの姿は見たことがある……!
「魔道の密会の奴か!」
「ご名答だ。“魔道の導きのままに、我らの昇華のために”。邪魔者を迎えに来たのだよ」
「ッ、にしては手荒な歓迎ね? しつけのなっていないペット自慢だなんて」
「しつけのなっていないのは同感だ。だが、やり方さえ間違えなければ利口な怪物でね……ほら、俺に構っていると首を噛み千切られるぞ?」
「……ッ! 一体何匹いるんだよ……!?」
シャーリィの言うとおり、持久戦かつ防衛戦だ。こうして二人で背中を預け合っていないと背後から襲われてしまうに違いない。
クソッ、そんな俺達を見て男がニヤリと笑っているのが憎たらしいな……!
『いや、それだけじゃない! どうしてあの男は襲わず、ユウマとシャーリィだけを襲ってるんだ!?』
「流転した怪物を使い魔にするだなんて、聞いたことが無いわよ! それにこの数……何かタネがあるわ!」
『――ッ! そうか、香だよユウマ! その香とやらが怪しい!』
「……! そうか! この匂いで怪物を誘導しているのか……!?」
さっきまでは微かな違和感だったが、今確信に変わった。
この香の匂い……そして不自然な程に集まった獣の怪物達。ベルの力を借りなくても理解できる。あの男は風上、そして俺達は風下……相手の策略にまんまと嵌められたってことか……!
「ほう、察しが良いな……だがもう無駄さ。もう匂いはお前達に染みついている。たとえ風上に逃げようと、この獣たちは追跡は止めないぞ」
『獣の嗅覚は鋭い……悔しいが、あの男の言うとおりだ。今はあの男よりも、獣の撃退を最優先しろ!』
「フッ! ねえユウマ、あの野郎をこっち側に引きずり込むってのはどうかしら! あるいはアンタの魔法でその香の匂いをアイツにも浴びせてやるとか!」
「そんな余裕――ッ、はッ! ッ、とと……あればの話だけどな……!」
獣の群れは戦術的な統率こそ無いが、それが原因で逆に攻撃のタイミングが読めない。一匹一匹、隙を突いて襲ってくるのではなく、我先にと餌を求めるかの如く、次々と――時には同時に襲いかかってくる。
……これは、あまりよろしくない状況だ。
何匹かシャーリィと俺で怪物を倒しているのに、足音がまるで減らない。やはりこれは、香の匂いで異世界内の怪物が引き寄せられているということか。
「ッ、ハァ――ッ!」
同時に跳びかかってくる怪物を、シャーリィは真っ向から横に薙ぎ払って切り伏せる。直撃した一匹は即死、もう一匹は肉の壁のお陰で負傷で済んだらしく、逃げるように霧へ隠れて行った。
彼女の武器の間合いは、同時に怪物を寄せ付けない縄張りでもある。
短剣ではなくルーン魔術でわざわざ長剣にしたのがその理由なのだろう。視野の悪い環境で、不特定多数に対してリーチの長い武器は制圧力がある。
「ッ、クソ……散弾!」
だが、俺にはリーチのある武器は無い。
シャーリィの長剣を使った戦いが近距離戦だとするなら、俺は超至近距離戦と言っても良い。片手斧もコテも、襲われるギリギリの間合いでしか使えない。
だからこそ、広範囲に撃ち込める礫の散弾や、圧縮空気を薙ぎ払うように放出させたり――雑に範囲攻撃の出来る俺の魔法は、この防衛戦にはシャーリィよりも効果的だ。
しかし、獣を退けるほどの空気を圧縮させるにはどうしても時間が必要になる。実際、空気の圧縮を諦めて近接武器で対応しなければならない場面が何度かあった。
「どうする……一匹なら呆気なかったが、これだけ束になると……」
「そんな先の事を今は考えないで、呼吸を整えることを優先しなさい! 防衛戦で“恐れ”は敗北への片道切符よ!」
……これでは有効打が無い。焦っている訳ではないが、耐えるだけではこの状況を切り抜けられない。
それに、あの男の存在も気になる。ただ俺達を挑発するためだけに此処に現れたとは思えない。相手は魔術使いだ。何かを持っているに違いない……!
「……フン、その程度か、魔法使いの残りカス共め。話にならん――」
『! ユウマ、シャーリィ! 気をつけろ! あの男、何かするつもりだ!』
「ッ、嫌な予感がした途端に来るか……! シャーリィ、怪物は任せた! あの男への対応は俺がする!」
「悪いけどお願い! ッ、こっちは剣を振るのに精一杯だから……!」
シャーリィと立ち位置を変えて、俺は男の攻撃に備える。
発言通り、シャーリィは対応こそ出来てはいるが、現状維持で精一杯に見える。長剣を盾にして剣越しに強引に蹴り飛ばしたり、手段を問わずに俺の背中と自身を守っているのを横目に見た。
「ほぉら――対応を間違えれば、死ぬぞ?」
『ッ! 赤い……瓶?』
男が行ってきた行動は、投擲――しかもどういう意図なのか、俺達目掛けてというよりは上空に向けて瓶のような物を放り投げた。
(遊び半分な言い方は気にくわないが、危険なのは違いない……!)
アレが放物線を描いて落ちる着地地点は……おおよそ俺達のいる場所周辺。狙いが余りに粗雑だが……あの赤色は、何か嫌な予感がする。ぼんやりと赤く光るあの瓶を見ると、思わずアザミが使っていた小瓶を――恐ろしい殺傷力を秘めた魔術を思い出してしまう。
『ユウマ、いけるのか!? 狙いは小さいが……迎撃した方が良い!』
「ああ。空気中に居る限り、手に取るように分かるさ……俺だって、成り行き任せだけで戦ってる訳じゃない……!」
手元の一つの礫を中心に空気をかき集め、発砲の準備を整える。
ああ、そうだ。俺だっていつまで経ってもじゃじゃ馬でいるつもりは無い。ここは一発、考えついた新技とやらでも見せてやる――!
(空間距離――50m以上。風速は誤差程度……向かい風。礫の形状を考慮――空気抵抗、問題無し――)
空気を視る俺は、我ながら自分が自分じゃないみたいな錯覚を覚える。まるで演算処理をするコンピュータ――コンピュータって、なんだ? ――のようだ。
目を凝らせば、風も空気も、流れも形も、俺には視える。
『ユウマ……?』
「――――」
空気は“粒”で、風は粒が集まってできた“線”なんだ。
空中に放り込まれた瓶が空気の粒を押し退けて出来た歪み――あの瓶を包むような曲線が空気抵抗。
……ああ、微塵も問題ない。俺の魔法なら、手に取るように理解できる……!
「ッ……!」
礫と圧縮空気を持った手を、まるで銃のように指を構えて狙いを澄ませる。
狙いは遠く、動いた物体。だが、やってみせるとも――!
「――単弾!」
ボン、と一方向に集中して打ち込まれるたった一つの礫。
従来の散弾とは異なり、圧縮空気は更に一点に集中して放出され、たった一つの礫を撃ち出すことのみに圧縮空気を全て消費する。
今までに無い初速で放たれた弾丸は、空気を突き破るように一直線に飛び――僅かに軌道がブレながらも、想定通りに直進する……!
「……!?」
この距離で撃墜を狙うことはあの男も想定していなかったらしく、唸り声のような驚愕の声が漏れていた。
そして、曲線を描く瓶と直線を引く礫は、まるで互いが引き合うように三次元空間で交差する一点に近づき――
『……! やった! 命中した!』
――パリン、と。こちらに届くよりもずっと前――はるか上空で男の投げた瓶は撃墜された。
「……いや、待て! アレは……妙だ」
『妙……? ッ! あの瓶の中身、ただの液体じゃないのか!?』
空中で砕け散った瓶は、ガラス片を地面にばらまく……が、肝心のその“中身”が中々落ちてこない。
ただの液体なら、今落ちてきたガラス片と同じタイミングで降ってくる筈だ。なのに未だ落ちず、それどころか液体らしきものすら見えないということは……!
『ユウマ、マズイぞ! あの瓶の中身の液体は霧状化しているみたいだ! もしもアレが気化した爆薬や毒の類いなら――』
「ッ、狙いが粗雑だったのはそういうことか……!」
そういうことなら確かに粗雑に投げようとも、俺達に壊滅的な被害をもたらすことが可能だ。
……それに、マズイ。あんなに上空で霧と化した謎の液体が、このまま地上に降りてきたら広範囲が巻き込まれる。その中には確実に、俺とシャーリィも含まれている……!
「ッ、クソ――!」
『待てユウマ! 冷静になれ!』
「いいや、待てばやられるんだよ……!」
全力で再度、空気の圧縮を開始する。
正体不明の霧が上空から降り注いでくるなら、空気砲を真上に向けて撃ち込めば良い。それだけで俺とシャーリィに降りかかることは無くなる。
その後は気流のコントロールを続けて、こちらに霧化した液体が流れてこないように周囲の空気に形を与えれば……!
「クックク……さぁ、どうする?」
「この……! ナメるんじゃァ――ないんだよォ……ッ!」
舐め腐った態度の男の問いに答えるように、俺は雄叫びと共に空気砲を天に向けて放つ。それだけで霧のど真ん中に穴が空き、降り注ぐ正体不明の液体の霧は俺達に降り注ぐことはなくなった――
「……!? な、何よこいつら……!?」
――だが、その安心も束の間の事。
すぐ背後からの困惑の声で、俺は何か嫌な予感を感じ取ってしまった。
「どうしたシャーリィ!?」
「ッ、ぐ……! 怪物の動きが急に変になった! ヤケクソと言えばいいのか――痛ッ!? こいつら、捨て身になっている気がする……!」
「捨て身に……? ッ! な、なんだ……!?」
跳びかかって来た怪物をコテで受け止めて、違和感を覚える。
シャーリィの言っている事がなんとなく分かった。さっきまでは食い殺すように跳びかかって来た狼の怪物が、今では捨て身の突撃――言うなら、自身の体を肉弾のようにして、質量の塊をぶつけて攻撃してきた。
幾ら怪物とはいえ、これは生物ならば本来あり得ない動きの筈だ。
どういう訳か、怪物達が突然自分の生死よりも、俺達を殺す事しか脳に無いような襲いかかり方をしてくる……!?
「クックク――ハッハハハハハハハ! ああ、本当に間抜けだな魔法使い! 自分から最悪の中でも本当に最悪な選択肢を選ぶとはなァ!?」
「何……最悪、だと……?」
「今のもただの香の一種さ……人体に害なんて無い。だが、コイツらには劇薬でね……この通り、自身の生死を考えない人を襲うだけの化け物に成り果てるのさ……!」
この展開を目の前にして、霧の中で清々しい気持ちになった男は、腹の底から笑い声を上げながらあざ笑うようにこの状況を説明してきた。
つまり、怪物達の猛攻が更に激化しているという訳か……!?
(ッ、やらかした……! ベルの言うとおり、冷静になるべきだった!)
これは、完全に俺の判断ミスだ。内心、この状況に焦りを感じながら奥歯を噛み締めて後悔する。俺だけではなく、シャーリィまで巻き込んでしまう結末を選んでしまうことになるなんて――
「ッ……! ユウマ、斜め左! 上!」
「ッ、しま――」
……油断した。手遅れな後悔が余計な隙を生み出した。
シャーリィの言われた方向を遅れて向くと、大きく跳躍して頭上から跳びかかろうとする怪物の姿が――
(ッ!? 空気の圧縮が間に合わな――)
『ユウマァ――!?』
敗北を無言で悟る俺と、ポケットからの悲痛な叫び。
このままユウマは、頭から怪物の肉弾を受けて致命傷を受けることになるだろう――
「グギャ――――」
――その瞬間。
ドシュゥ! と、怪物の首から下――胴体が極大の閃光で消し飛ぶ、既視感のある光景を俺は目の前で確かに見た。
あれからしばらく経っただろうか。俺とシャーリィは二人で朝焼けに照らされている森の中を歩き回っていた。
そんな途中、弓矢を片手に先陣を切るシャーリィの後をついて行きながらそんなことを尋ねたりしてみる。
「あるわよ。行方不明者が居ると思われる場所は異世界周辺でしょ? だからここまで来なきゃ」
「なあシャーリィ、分かってるだろうけど言うぞ? 俺達は徹夜してずっっっと働いたり動き回っているんだ。いくら転生使いだからって限度があると思うぞ限度が~」
アザミやシャーリィは仮眠を取る暇があったかもしれないが、俺はひたすら重労働だったんだぞ、と遠回しに訴える。
……まあ、色々振り切れて既に一周回って眠くない状態なのだが。でも事が終わったら三日ぐらいは寝続けるぞ俺は。
『……なんだろう、さっきからユウマもシャーリィも何か変じゃないか? それに、アザミさんのことはどうするんだよ』
ポケットの中で独り言の様に呟く声。だけど俺はそんな軽口を口にしながらも、周囲に気を配るのに忙しい。口を開いていない間は呼吸すら止めて耳を澄ませている。
――だから確かに、今羽音が聞こえた。
「……なあ、シャーリィ~」
「何よしつこいわね。集中しなさいよ」
「――ああ、してるさ。ほら、後ろの上。鳥だ」
「ありがと、上出来よッ――!」
芝居じみた会話を止めにして、指をさしてそう言った直後。シャーリィは振り返って弓に矢をつがえて引き、問答無用でその方向へ放った。
トン、と意外にも軽い音。その後に木の上から黒い鳥がボトリと地に落ちてきた。その腹の真ん中を、今シャーリィが放った矢で貫かれている。
「――ポ、ポポ……ポ……」
「……前から不気味な鳴き声がすると思ったが……この鳥の鳴き声だったのか」
「よし、急ぎましょ。早かれ遅かれ、監視の目が潰れたってヤツらに気がつかれるわ。向こうが動くより前に行動するわよ」
「ああ。それとベルと俺にも詳しい解説をお願いしたい。正直今までこの鳥が何だったのかも、今まで俺達が置かれていた状況も分からずじまいだったんだからな」
『? ???』
「ホラ見ろ、ベルなんて特に分からず仕舞いだ」
ポケットからガラスを取り出すと、その中では案の定ポカンとしているベルの姿。
……まあ、俺も大雑把に“策”があることまでしか分からなかったから、いい加減に詳しく教えて欲しい頃合いだったりする。
『ゆ、ユウマ……さっきから一体何が起きているんだ? どういうことなんだ?』
「どこから説明するか……そうだな、アザミの件から話すか。あの鳥が監視の目だったってことは、今は何話しても良いよな?」
「ええ、お好きにどうぞ」
シャーリィから快諾を頂いたので、俺は一度咳払いをして喉の調子を整えてから口を開いた。
「アザミに胸倉を掴まれて、俺が彼女に言われた言葉を覚えてるか?」
『あ、ああ……確か、「すみません。ですが、どうか信じて。これが“私達”のやり方なんです」――って』
「うん、あの時彼女に言われた言葉で俺は悟ったよ。アザミは一芝居を打っていたんだ……連中を騙すためにな」
『連中……魔道の密会をか!? 騙すために!?』
「思い返せば、彼女はちゃんと言葉を使い分けて遠回しに示してくれていたんだ。アザミは決まってこう言ってた、“私と魔道の密会の方々”とか“貴方達と私”みたいに、自身と連中を分けて呼んでいた……でも、あの時のアザミは“私達”って言ってくれた――あれは、アザミと俺やシャーリィを指している言葉だ」
『あ……』
――はい、ではこれからもよろしくお願いしますね! “私達”の関係を……!
以前、満面の笑みで答えた彼女の返事はやはり偽物なんかじゃなかった。一瞬でも彼女のあの笑顔を疑ったことを恥ながらも、やっぱり嬉しく思える。
「……正直、嬉しかったな。俺の友達友好大作戦を覚えてくれてて」
「えっ、何その、なに?」
『私も前々から聞きたかったが、何なんだよそのヘンテコな作戦は』
……二人から困惑の声を放り込まれるが、んなこた知ったことか。
ゴホン、ゴホン。と咳払いで彼女達の言葉を躱して、閑話休題のつもりで手を叩いて話題を仕切り直す。時間が無いのに話が脱線しすぎた。
「……で、俺がそういうことだって理解したことを察したシャーリィは、俺に一つ頼み事をしてきたのさ。……ってか、俺が状況を理解出来たってよく察したな?」
「そりゃ、あんなブチギレて飛び出した奴がサッパリした顔をして戻って来たらねぇ? この際だから白状すると、貴方を蚊帳の外にして、私とアザミさんだけで事を進めようと思ったけど……ユウマったら、あれだけ真剣に頑張っていたんだもの。折角だし、協力して貰うことにしたの」
そうして何かあると分かった後、シャーリィに招かれて耳元で言われた言葉はこうだ。「黒い鳥を見つけたら、私に教えなさい」……という、当時は訳の分からない指示だった。
それからは異世界付近で行方不明者の捜索――と見せかけた、いわば“黒い鳥探し”が始まった。
俺もそこまでの事情は汲み取れないまま、とりあえず言われた指示だけは忠実にこなして、今に至る訳だ。
「アザミさんと出会った後から、私達もまとめて監視されてたみたい。大雑把に言うと、アザミさんと敵対している存在からね」
『か、監視? アザミさんと敵対する存在――は、魔道の密会のことだと分かるが……ちょっと待て。内容に関してはまあ良い。だが、そんな話をシャーリィはどうやって知って、どうやって芝居を打つ計画を立てた!? そんな暇はなかっただろうに』
と、ベルが俺にも分からなかった部分に早速踏み込んで尋ねた。やっぱ頭いい人はなんて言うか、質問の“質”が違うなぁ、なんて呑気な感想を抱く。俺もそれについてはずっと気になっていたりする。
「監視されてるから声でやり取りをしたらバレちゃうからね。私達は今まで通りのやり方で相談し合って計画を立てたって訳。ほら、簡単でしょ?」
そう言いながらシャーリィはポーチの中から複数の手紙を取り出した。
その内容は見せられても読めないが、今の説明を聞く限り、アザミとの間で渡し合っていた手紙なのだろう。
……今まで通りのやり方、ねぇ。確かにシャーリィとアザミは今まで手紙でやり取りをしていたんだっけ。直接会っている最中にも手紙でやり取りをしていたのは驚きだが。
「何を驚いてるのよユウマ。こうして手紙でやり取りするのも、貴方が切っ掛けだったんだから」
「……あっ、もしかしてアザミから渡されたあの手紙か!?」
「その手紙で初めて私はアザミさんが敵対する組織に目を付けられていること、鳥を使った監視が私達にもされていることを知ったわ」
『なるほど……アザミさんが自分からシャーリィにその手紙で相談を持ちかけたのか』
「ええ、彼女は“魔道の密会”とかいう組織に昔から目を付けられていたらしいの。それで監視されていて、そんなアザミさんと接触した転生使いの私達も同様に監視の対象になる恐れがある……って。そしたら案の定監視されててねぇ……しかも黒魔術と来たかぁ」
あーもう、面倒くさいなぁ。と言いたげに――あ、今溜め息まじりに言った。そう言ってシャーリィはポーチに手紙をしまう。
それで監視に遣わされたのが先程、シャーリィに射貫かれた黒い鳥だったという訳か。黒魔術というものはよく分からないが、シャーリィが思わず溜め息を吐く代物だということは理解した。
「それからは連中に“私とアザミさんが不仲に陥って、関係が決裂する”までの芝居を打ち続けたって訳。私がアザミさんには何かある、怪しいって感じで警戒している姿勢を見せ続けたの。連中にとって都合が良い状況になって警戒を緩ませるためにね」
……思い返せば、アザミの村に居た時にもシャーリィが不自然に馬車を蹴り飛ばしていたが……あれは馬車の上から監視していた鳥を強引に逃がしたのだろう。
あの時だけ妙に“アザミと仲良くするように”と推してきたが……そういう事だったのか?
『なるほどな……ん? 因みにだがユウマまで騙していたのは何でだ?』
「そりゃ単純に文章でやり取りができないからね……文字が読めないでしょ。まあ、ユウマまでも騙していたこともあって、貴方の反応のお陰で芝居が本格的になったわ。私達の不仲に対してあんな本気で怒る姿を見たら連中、間違いなく騙されるわよ」
「そりゃどーも……なんか褒められてる気がしない」
フッフッフ、と笑うシャーリィにせめてもの仕返しに湿度の高い視線を送る。
敵の裏をかくための貢献ができたことは嬉しいはずだが、なんか利用された感……いや、間違いなく利用されたのでいい気はしないのである。
「……本当は、ユウマにもこの件を伝えてもっと時間をかけて計画を進めて、完璧な状態で敵組織を追い詰める予定だったけど……今回の子供が誘拐された件があるでしょ? あんな事が起こったら呑気に下準備を整えている場合じゃないって動くことにしてね」
口調はいつも通りだが、シャーリィの表情は穏やかなものではない。内心、相手がやったと残酷な行いに心底怒りを感じている――それのことを声への力の籠もり方だけでも察することができる。それほどに彼女は冷静に怒り心頭って感じの様子だ。
「……さあ、もうすぐ異世界よ。多分もうそろそろアザミさんも反旗を翻す頃か、もう突入しているか……まあ、どちらにせよ私達も突入するわよ」
「? 異世界にか? どうして」
「魔道の密会の拠点はノールド村の近く、それも異世界の内部にある……らしいわ。中心部に向かえば人工的な建設物があるらしくて、そこを拠点にしているって情報よ」
異世界を拠点に……魔道の密会という名前からして、魔道具や転生とかの手段で俺達のように異世界へ踏み入れる事ができるのだろう。
ということは、これから先それ相応の衝突が起こることが予想できる。魔道具を使っていたベルホルトの時の様な苦戦を強いるかもしれない。
『私はさっきから新事実にびっくりしっぱなしだが……ユウマ、準備は良いか?』
「あ? ああ。色々考え事はあるけど、今は目の前のことだ。行こう、シャーリィ!」
「良い返事ね、行くわよ!」
お互いに威勢の良い返事をし合って、俺達は異世界の中に突入するのだった――
■□■□■
異世界をしばらく歩いているが、相変わらず乾いた大地が広がっている。
……この異世界は、歩いていてあまり良い気分にならない。歩いていて気分が良くなる異世界だなんて存在しなかったが、そう感じてしまうのはやっぱり、あの出来事が心に残っているからだろうか――
「ユウマ。ねぇ、ユウマ!」
「ッ! はい何でしょう!?」
「どういう反応よ。それより構えて!」
いかんいかん、心に残った傷に足を引っ張られている場合じゃない。シャーリィの一喝を受けて言われた通りに身構えた。
『なんだ……? どこかから足音がする!』
「……ユウマ! 何かが来るわよ!」
ベルから注意喚起を受けて、シャーリィと背中を合わせて周囲を警戒する。
タタッ、タタッ、と。乾いた地面を駆ける軽い足取りの音。この足音、どこかで聞いたことがあるような――
「来た! 避けて!」
「ッ――!」
シャーリィの声に合わせて散開するように、突撃してくる影を難なく回避する。回避の姿勢から立ち直ると、そこには一度見たことがある、狼の姿をした怪物が居た。
「ッ、やるわよ!」
「ああ! ッ、転生――!」
シャーリィは瞬時に転生を済ませて短剣を取り出し、俺は包丁で首を切って転生する。
「……ん? なんで今わざわざ“転生”って言ったの?」
「いや……ちょっとアザミに感化された」
『それと聞きたいんだが、そのさっきから手にしている物はなんだ……?』
「村の人達に貰ってきた。クレオさんに研いでもらって切れ味も持たせてある――ふッ!」
俺に目掛けて跳びかかる狼の一撃を、両手に握った漆喰塗り用の“コテ”で受け止めて押し返す。アザミのように片手では叶わなかったが、両手でなら十分に怪物の跳びかかりを押し返せた。
「ッ、は――!」
「ギャ――!」
狼の顔面を左手のコテで殴り、隙を突いて右手のコテの先端で首を狙って鋭い突きを放ち、そのまま首を貫いたコテを横に振り払って切り裂いた。
狼の怪物は短い断末魔と共に首からボトボトと黒い粘性を持った液体を漏らして倒れる。首を半分切断されたのだから、抵抗する体力も無く倒れたのだろう。
「……! 気をつけて! まだいる……それも複数!」
『ッ、なんだこの気味の悪い声……いや、怪物の遠吠えか!?』
「……足音からして、周りを囲まれているみたいだ」
「ユウマ、背中は頼むわよ」
「ッ、難題だぞシャーリィ! いやまあ、やるけどさ!」
似たような足音が複数、周りをグルグルと囲むように走り回っている。
状況は……あまり芳しくない。今みたいに一匹が襲ってくるなら良いが、もしも複数の怪物が一度に襲いかかってきたのなら――俺とシャーリィの二人がかりでも難しいかもしれない。
「depict――Teiwaz!」
俺の背後。シャーリィは呪文を唱えて宙にルーン文字を浮かべると、その文字を短剣で貫き、まるで鍵のように突き刺したまま捻った。すると貫かれたルーン文字が輝きだし、短剣を引き抜く――と、短剣の剣先は、まるで剣のような形をした光を纏っていた。
『……! まるでロングソードだ。短剣がまるで剣のようになっている!』
「おわぁ……なにそれ、格好いい」
「よそ見をしてないで! ここからは持久戦よ。むやみに焦ったら負けるわ……でも、どうしてこんなに怪物が集まってるの……?」
シャーリィはそう言いながら、跳びかかってくる狼の怪物をルーン魔術で作られた剣で牽制し、退ける。時には盾のように扱って押し返す守りの姿勢で俺の背中から襲いかかる怪物に対応している。
「ッ、散弾! ……? シャーリィ、何か煙の匂いがしないか? 霧に混じって何か香のような匂いがする……気がする」
「香の匂い? ……いや、私には全く」
いや、確かに煙の匂いがした。何処か近くで、何かの煙が俺達の場所に流れてきている――
「――鼻が良いな、魔法使い。使い魔を殺して本拠地を突き止めるのも、香に気がつくのも」
霧の奧から、不意に男の声がしてシャーリィと俺は咄嗟にその方向へ身構える。
……聞いたことのない声、だが、あの格好……白いとんがり帽子に白いローブの姿は見たことがある……!
「魔道の密会の奴か!」
「ご名答だ。“魔道の導きのままに、我らの昇華のために”。邪魔者を迎えに来たのだよ」
「ッ、にしては手荒な歓迎ね? しつけのなっていないペット自慢だなんて」
「しつけのなっていないのは同感だ。だが、やり方さえ間違えなければ利口な怪物でね……ほら、俺に構っていると首を噛み千切られるぞ?」
「……ッ! 一体何匹いるんだよ……!?」
シャーリィの言うとおり、持久戦かつ防衛戦だ。こうして二人で背中を預け合っていないと背後から襲われてしまうに違いない。
クソッ、そんな俺達を見て男がニヤリと笑っているのが憎たらしいな……!
『いや、それだけじゃない! どうしてあの男は襲わず、ユウマとシャーリィだけを襲ってるんだ!?』
「流転した怪物を使い魔にするだなんて、聞いたことが無いわよ! それにこの数……何かタネがあるわ!」
『――ッ! そうか、香だよユウマ! その香とやらが怪しい!』
「……! そうか! この匂いで怪物を誘導しているのか……!?」
さっきまでは微かな違和感だったが、今確信に変わった。
この香の匂い……そして不自然な程に集まった獣の怪物達。ベルの力を借りなくても理解できる。あの男は風上、そして俺達は風下……相手の策略にまんまと嵌められたってことか……!
「ほう、察しが良いな……だがもう無駄さ。もう匂いはお前達に染みついている。たとえ風上に逃げようと、この獣たちは追跡は止めないぞ」
『獣の嗅覚は鋭い……悔しいが、あの男の言うとおりだ。今はあの男よりも、獣の撃退を最優先しろ!』
「フッ! ねえユウマ、あの野郎をこっち側に引きずり込むってのはどうかしら! あるいはアンタの魔法でその香の匂いをアイツにも浴びせてやるとか!」
「そんな余裕――ッ、はッ! ッ、とと……あればの話だけどな……!」
獣の群れは戦術的な統率こそ無いが、それが原因で逆に攻撃のタイミングが読めない。一匹一匹、隙を突いて襲ってくるのではなく、我先にと餌を求めるかの如く、次々と――時には同時に襲いかかってくる。
……これは、あまりよろしくない状況だ。
何匹かシャーリィと俺で怪物を倒しているのに、足音がまるで減らない。やはりこれは、香の匂いで異世界内の怪物が引き寄せられているということか。
「ッ、ハァ――ッ!」
同時に跳びかかってくる怪物を、シャーリィは真っ向から横に薙ぎ払って切り伏せる。直撃した一匹は即死、もう一匹は肉の壁のお陰で負傷で済んだらしく、逃げるように霧へ隠れて行った。
彼女の武器の間合いは、同時に怪物を寄せ付けない縄張りでもある。
短剣ではなくルーン魔術でわざわざ長剣にしたのがその理由なのだろう。視野の悪い環境で、不特定多数に対してリーチの長い武器は制圧力がある。
「ッ、クソ……散弾!」
だが、俺にはリーチのある武器は無い。
シャーリィの長剣を使った戦いが近距離戦だとするなら、俺は超至近距離戦と言っても良い。片手斧もコテも、襲われるギリギリの間合いでしか使えない。
だからこそ、広範囲に撃ち込める礫の散弾や、圧縮空気を薙ぎ払うように放出させたり――雑に範囲攻撃の出来る俺の魔法は、この防衛戦にはシャーリィよりも効果的だ。
しかし、獣を退けるほどの空気を圧縮させるにはどうしても時間が必要になる。実際、空気の圧縮を諦めて近接武器で対応しなければならない場面が何度かあった。
「どうする……一匹なら呆気なかったが、これだけ束になると……」
「そんな先の事を今は考えないで、呼吸を整えることを優先しなさい! 防衛戦で“恐れ”は敗北への片道切符よ!」
……これでは有効打が無い。焦っている訳ではないが、耐えるだけではこの状況を切り抜けられない。
それに、あの男の存在も気になる。ただ俺達を挑発するためだけに此処に現れたとは思えない。相手は魔術使いだ。何かを持っているに違いない……!
「……フン、その程度か、魔法使いの残りカス共め。話にならん――」
『! ユウマ、シャーリィ! 気をつけろ! あの男、何かするつもりだ!』
「ッ、嫌な予感がした途端に来るか……! シャーリィ、怪物は任せた! あの男への対応は俺がする!」
「悪いけどお願い! ッ、こっちは剣を振るのに精一杯だから……!」
シャーリィと立ち位置を変えて、俺は男の攻撃に備える。
発言通り、シャーリィは対応こそ出来てはいるが、現状維持で精一杯に見える。長剣を盾にして剣越しに強引に蹴り飛ばしたり、手段を問わずに俺の背中と自身を守っているのを横目に見た。
「ほぉら――対応を間違えれば、死ぬぞ?」
『ッ! 赤い……瓶?』
男が行ってきた行動は、投擲――しかもどういう意図なのか、俺達目掛けてというよりは上空に向けて瓶のような物を放り投げた。
(遊び半分な言い方は気にくわないが、危険なのは違いない……!)
アレが放物線を描いて落ちる着地地点は……おおよそ俺達のいる場所周辺。狙いが余りに粗雑だが……あの赤色は、何か嫌な予感がする。ぼんやりと赤く光るあの瓶を見ると、思わずアザミが使っていた小瓶を――恐ろしい殺傷力を秘めた魔術を思い出してしまう。
『ユウマ、いけるのか!? 狙いは小さいが……迎撃した方が良い!』
「ああ。空気中に居る限り、手に取るように分かるさ……俺だって、成り行き任せだけで戦ってる訳じゃない……!」
手元の一つの礫を中心に空気をかき集め、発砲の準備を整える。
ああ、そうだ。俺だっていつまで経ってもじゃじゃ馬でいるつもりは無い。ここは一発、考えついた新技とやらでも見せてやる――!
(空間距離――50m以上。風速は誤差程度……向かい風。礫の形状を考慮――空気抵抗、問題無し――)
空気を視る俺は、我ながら自分が自分じゃないみたいな錯覚を覚える。まるで演算処理をするコンピュータ――コンピュータって、なんだ? ――のようだ。
目を凝らせば、風も空気も、流れも形も、俺には視える。
『ユウマ……?』
「――――」
空気は“粒”で、風は粒が集まってできた“線”なんだ。
空中に放り込まれた瓶が空気の粒を押し退けて出来た歪み――あの瓶を包むような曲線が空気抵抗。
……ああ、微塵も問題ない。俺の魔法なら、手に取るように理解できる……!
「ッ……!」
礫と圧縮空気を持った手を、まるで銃のように指を構えて狙いを澄ませる。
狙いは遠く、動いた物体。だが、やってみせるとも――!
「――単弾!」
ボン、と一方向に集中して打ち込まれるたった一つの礫。
従来の散弾とは異なり、圧縮空気は更に一点に集中して放出され、たった一つの礫を撃ち出すことのみに圧縮空気を全て消費する。
今までに無い初速で放たれた弾丸は、空気を突き破るように一直線に飛び――僅かに軌道がブレながらも、想定通りに直進する……!
「……!?」
この距離で撃墜を狙うことはあの男も想定していなかったらしく、唸り声のような驚愕の声が漏れていた。
そして、曲線を描く瓶と直線を引く礫は、まるで互いが引き合うように三次元空間で交差する一点に近づき――
『……! やった! 命中した!』
――パリン、と。こちらに届くよりもずっと前――はるか上空で男の投げた瓶は撃墜された。
「……いや、待て! アレは……妙だ」
『妙……? ッ! あの瓶の中身、ただの液体じゃないのか!?』
空中で砕け散った瓶は、ガラス片を地面にばらまく……が、肝心のその“中身”が中々落ちてこない。
ただの液体なら、今落ちてきたガラス片と同じタイミングで降ってくる筈だ。なのに未だ落ちず、それどころか液体らしきものすら見えないということは……!
『ユウマ、マズイぞ! あの瓶の中身の液体は霧状化しているみたいだ! もしもアレが気化した爆薬や毒の類いなら――』
「ッ、狙いが粗雑だったのはそういうことか……!」
そういうことなら確かに粗雑に投げようとも、俺達に壊滅的な被害をもたらすことが可能だ。
……それに、マズイ。あんなに上空で霧と化した謎の液体が、このまま地上に降りてきたら広範囲が巻き込まれる。その中には確実に、俺とシャーリィも含まれている……!
「ッ、クソ――!」
『待てユウマ! 冷静になれ!』
「いいや、待てばやられるんだよ……!」
全力で再度、空気の圧縮を開始する。
正体不明の霧が上空から降り注いでくるなら、空気砲を真上に向けて撃ち込めば良い。それだけで俺とシャーリィに降りかかることは無くなる。
その後は気流のコントロールを続けて、こちらに霧化した液体が流れてこないように周囲の空気に形を与えれば……!
「クックク……さぁ、どうする?」
「この……! ナメるんじゃァ――ないんだよォ……ッ!」
舐め腐った態度の男の問いに答えるように、俺は雄叫びと共に空気砲を天に向けて放つ。それだけで霧のど真ん中に穴が空き、降り注ぐ正体不明の液体の霧は俺達に降り注ぐことはなくなった――
「……!? な、何よこいつら……!?」
――だが、その安心も束の間の事。
すぐ背後からの困惑の声で、俺は何か嫌な予感を感じ取ってしまった。
「どうしたシャーリィ!?」
「ッ、ぐ……! 怪物の動きが急に変になった! ヤケクソと言えばいいのか――痛ッ!? こいつら、捨て身になっている気がする……!」
「捨て身に……? ッ! な、なんだ……!?」
跳びかかって来た怪物をコテで受け止めて、違和感を覚える。
シャーリィの言っている事がなんとなく分かった。さっきまでは食い殺すように跳びかかって来た狼の怪物が、今では捨て身の突撃――言うなら、自身の体を肉弾のようにして、質量の塊をぶつけて攻撃してきた。
幾ら怪物とはいえ、これは生物ならば本来あり得ない動きの筈だ。
どういう訳か、怪物達が突然自分の生死よりも、俺達を殺す事しか脳に無いような襲いかかり方をしてくる……!?
「クックク――ハッハハハハハハハ! ああ、本当に間抜けだな魔法使い! 自分から最悪の中でも本当に最悪な選択肢を選ぶとはなァ!?」
「何……最悪、だと……?」
「今のもただの香の一種さ……人体に害なんて無い。だが、コイツらには劇薬でね……この通り、自身の生死を考えない人を襲うだけの化け物に成り果てるのさ……!」
この展開を目の前にして、霧の中で清々しい気持ちになった男は、腹の底から笑い声を上げながらあざ笑うようにこの状況を説明してきた。
つまり、怪物達の猛攻が更に激化しているという訳か……!?
(ッ、やらかした……! ベルの言うとおり、冷静になるべきだった!)
これは、完全に俺の判断ミスだ。内心、この状況に焦りを感じながら奥歯を噛み締めて後悔する。俺だけではなく、シャーリィまで巻き込んでしまう結末を選んでしまうことになるなんて――
「ッ……! ユウマ、斜め左! 上!」
「ッ、しま――」
……油断した。手遅れな後悔が余計な隙を生み出した。
シャーリィの言われた方向を遅れて向くと、大きく跳躍して頭上から跳びかかろうとする怪物の姿が――
(ッ!? 空気の圧縮が間に合わな――)
『ユウマァ――!?』
敗北を無言で悟る俺と、ポケットからの悲痛な叫び。
このままユウマは、頭から怪物の肉弾を受けて致命傷を受けることになるだろう――
「グギャ――――」
――その瞬間。
ドシュゥ! と、怪物の首から下――胴体が極大の閃光で消し飛ぶ、既視感のある光景を俺は目の前で確かに見た。
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