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2.辺境の密会、魔女の耳は獣耳
Remember-57 真夜中の会談/物事の仕組みと事後考察
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「……さて、今回の件をどう思う?」
……夕食を摂って少し経ったぐらいだろうか。
四台の馬車を風除けにして焚き火を囲んで暖を取っている最中、シャーリィは俺達に問いかけた。
今回の件……シャーリィが言いたいのは大体想像がつく。
間違いなくこの村の依頼に関しての話だろう。あの場では平穏に収めるために曖昧に濁して終わらせたが、不可解かつ未解明なことが多すぎる。
「私には全く……シャーリィの依頼に関しては、ほとんど関わりがありませんでしたので。村長さんに伝言した時に初めて知りましたし……」
「俺さんも同じく。嬢ちゃんの持ち込んだ依頼とやらはよく知らないからな……まずは嬢ちゃんの話を聞いてからじゃなきゃ意見も浮かび上がりやせん」
「それもそうね……考えを聞くにも、私の事情を話してからが良かったか」
腕を組んでムム、と唸るような仕草をしつつシャーリィは謝罪の意を込めて二人に答えた。
……と、そこで話されるよりも前に、俺は手を挙げて「意見がありますよ」と無言で主張する。
「? どうしたのユウマ、何かあったの?」
「えっと……シャーリィの事情も気になるけど、その前にさ、その……なんだ、“依頼の仕組み”ってのがそもそも俺には分からないから、その辺の説明が欲しい。依頼人がギルドに依頼を届けて、ギルドがそれを一般に向けて仲介して、それを仕事人が引き受ける――ってぐらいしか俺は知らなかったけど、なにやら複雑な事情があるみたいだし」
アザミやクレオさんは細々とした社会的な仕組みを知っているかもしれないが、俺はまだ必要最低限の部分しか知らない。このまま話を始められても俺はきっと話について行けなくなる。
それに、ベルも同じく知らない筈だ。彼女を人前に出せない以上、こうやって俺が情報収集に徹していれば、後で彼女が考えをまとめてくれるだろう。
「そっか、ユウマは知らないか……それじゃ、状況推理の助けにもなるだろうし改めて一から説明するかな」
腕を組みながら彼女は一瞬、俺の右ポケットに視線を向けた。
今の俺の質問がベルに対しての説明の意味もあるということを、どうやらシャーリィは悟ってくれたらしい。
シャーリィはわかりやすく説明するにはどうしようかな~とか呟きながら、しばらくすると咳払いをして口を開いた。頭の中で説明の順序が整ったらしい。
「ユウマに話したのは“依頼人”と“ギルド”、“仕事を請け負う人”の三点の関係だったかしら。最低限の仕組みはこれで成り立つから略していたけど、本来は依頼人とギルドの間にもう一点加わるの」
「もう一点? 郵送業の人とかか?」
「郵送業は全ての間に入るから無視して良いわ。今回みたいな辺境の村だと、その村が所在する領域を管理している貴族――領主が間に挟まるの」
貴族なら実際に会ったことがあるから俺でも分かる――ああいや、アレじゃあんまり分からない。シャーリィ曰く悪い例だったらしいし。
ふんわりと把握している限りだと、ネーデル王国城から遠い場所を治める国王代理みたいな存在らしい。政治の方針を決める権利は無いが、それ以外は国王とほぼ同じぐらいの権利を――建前の上では――持っているお偉いさんだとか。
「“貴族”と“領主”で使い分けられているけど、まぁ内容は同じよ。強いて言うなら“貴族”はその個人を指す単語で、“領主”は管理主としての立ち位置を指す言葉なんだけど……うーん、雰囲気で使い分けてるからこの辺の説明は難しいわね」
「私は“領主”呼びが多いですね……自分の住んでいる領土を治める貴族を“領主”と呼んで、その他の領土を治める領主を“貴族”って呼ぶ感じ……でしょうか」
「俺さんみたいな王国民だと、上に立っているのは国王様で領主じゃないから“貴族”呼びがほとんどだな。郵送業をやっていると貴族のやり方に不満を持つことが多くてな、「あそこの貴族がまた無理な郵送を依頼してきやがった!」……なんて言葉をよく聞くぜ」
「――ってな感じ。それぞれ当事者がいると分かりやすくて助かるわ~。あ、私も貴族呼びがほとんどかな。皮肉で領主様呼びはすることがあるけど」
……なるほど。まず貴族と領主は同じ意味。やっている事も同じ。その上で、自分の上に立つ貴族を領主と呼んでいる……って感じか。
因みにシャーリィのその最後の情報は要らなかったと思う。それを俺はどんな顔をして聞けば良い?
「……話を戻すわ。今回はその立場上、“領主”って言葉に統一して説明する。まずその領主は何をしているのかって言うと、担当させられた領土内の管理。もう少し細かく言うなら、自分の領土内の村の住民を保護、監視する役割ってところかしら」
「保護と、監視? なんか急に穏やかじゃない単語が出るじゃないか」
「そう物騒なことじゃないわ。監視ってのは昔の名残で、王国への反乱が起きていないか。もし起きたなら迅速に王国へ連絡するってやつだけど……ほぼ形骸化してるから、今回は無視して構わないわ」
……なる、ほど。
無視していいなら遠慮なく無視しよう。申し訳ないが俺の頭の容量はそこまで余裕じゃない。というわけでベルに丸投げする。
「で、保護ってのが今回関わるんだけど、まあそのままの意味ね。だけど軽視はしちゃいけないわ」
「……? 監視の方が単語としては物々しいのに、保護の方が重要なのか?」
「まあね。領主にとって自分の管理している集落の保護は“国王から任せられた義務であり、誇りでもある”――これが少々、私達みたいな部外者からすれば厄介でね。誰だって自分の仕事を――それも、名誉に関わる内容を他人に横取りされたくないでしょ?」
「領主の存在意義みたいなものか。それはまあ、横取りされて良い顔はできないな」
「そ。だからもし領主を無視して中抜きなんてやろうものなら、領主の顔に泥を塗ることになる……要は怒りを買うってことね。だから私も貴方も強引な手段は使わない方が良い。ね、クレオさん?」
「うぐ、あの時は緊急事態だと思ったから言っちまいやしたが、冷静じゃなかったと思いやす……」
シャーリィから視線を向けられてクレオさんが耐えきれず視線を逸らして反省の言葉を口にする。
あの時、シャーリィは足を失うわけにはいかないと答えたが、こういう意味でも制止させたのだろう。
……まさか、アレが思っていたよりも危険な提案だったとは。シャーリィが止めなかったら俺は危険なんて知らずに彼の背中を押していたに違いない。
やっぱり俺達とシャーリィ達ではそういう一般常識への認識にズレがある。そのズレとやらは、思ってたよりも深刻で、間違えれば致命的な様子。
もっと、もっと社会的な“当たり前”とやらを知らなくては――
「そんなわけで、辺境の集落で何か外注したい事があれば申請書を領主に出すの。備えが不足しているから商人を要請したいだとか、ギルドに依頼を出したいだとかをね」
……確か、「事務的な手続きに一日かかる」と彼女は言っていたが、アレはギルドのことじゃなくて領主に対してだったのか。それなら不自然だと思えた話が分かる気がする。
「それがあの時の話に出てきた申請書ってやつか。じゃあ、話を聞く限りそこの工程で偽装されたんじゃないか? 誰かが偽造して領主に申請書を出したとか」
「まあ、できなくもない……けど、難しいんじゃない? 村を治める人には例外なく
領主から渡された“証明印”ってのを持っているんだけど、その印を押さないと申請書はまず認可されない。門前払いってやつね。印を押された申請書を届けることで、初めて領主がそれを認可するかの判断をする」
……つまり、偽物対策はされているという訳か。
その証明印とやらを盗んでしまえば可能だと思うが……そんな村の存命に関わるほどに大切な物、隠すなり常に肌身離さず持ち歩くなりしているだろうし、もし盗まれていれば村は騒ぎになっている筈だ。
「で、必要な申請だと領主が判断して認可された依頼は、ここでやっとギルドに向けて送られるって訳。それをギルドが確認、申請書を保管した上で、申請書を元に依頼書を書き上げる。それをこうして私達や仕事人が請け負うって訳……以上が依頼に関する細かな仕組みの説明よ」
そう言うとシャーリィはポーチの中から封筒のようなものを取り出した。相変わらず何が書いてあるのか分からないが、ちょっとだけ見覚えがある文字な気がした。レイラさんの文字かな。
「それがシャーリィさんの受け取った依頼書ですか。確認させて頂いても?」
「ええ、どうぞ。でもこれはギルドが書いたものだからね。本当に証拠となるのはギルドが持っている申請書――村の村長が押した証明印と、領主の認可を示す承認印の二つが押されている方の紙じゃないと真偽は不明って訳」
「……確かに、これでは何も分かりませんね」
「そ。だから明日の朝に領主に向けて手紙を送ることにする。『貴殿がギルドに届け出した依頼をこなしに来たが、現地の住民と話が食い違っている。至急、申請書の文面確認のためにギルドへの連絡を願う』……みたいな感じに書けば良いでしょ。私達はあくまでただの仕事人で、仕事の契約にトラブルが起きたから領主に確認を求める。こういう立ち位置で動けば、領主から要らない恨みを買わなくて済む」
「……何て言うか、ずいぶんと慎重だな」
事情はわかるが、シャーリィにしてはかなり慎重な対応だ。普段ならもう少し大胆というか、強引で大雑把なやり方で事を進めそうなものだが。
「言ったでしょ、危ない橋は渡らないって。それに今の私は王女じゃなくて一つの組織の人間だもの。今後ももっと名声も規模も大きくなる予定なんだから、その辺の立ち回りは特に気を遣ってるわ」
「……因みに、領主がシャーリィさんの申し出に応じなかった場合はどうするのですか?」
「まずあり得ないけど……もしそうなったらこの件、間違いなく領主が黒よ。今回みたいな契約上のトラブルへの責任は領主にもあるからね。普通なら領主も適切に対応して原因の解明に努めるわ。理由も無く応じない事はまず無い」
「……! もしも応じなかったら、領主が何かしらの理由を隠してるってことか?」
「そうね。今回の件、もしも領主側が仕組んで引き起こしたことだというのなら、原因の解明なんて自身のボロが出る恐れのあることをするわけがないわ。そういう時は大体、断った上で平民に対して圧力をかけて黙らせるでしょうね……証拠を偽造するよりも、その方が領主からすれば楽だし。で、そうなったら私は王女として権力をかざして殴り込めば良い」
「わはぁ、おっかない」
しかし、そういう場合ではちゃんと動ける考えがあるというのは安心できる。
政治的な関係で問題が起こった時には彼女ほど頼りになる人はそうそう居ない。何と言ったって、今まで王女として政治に関わってきた人――いわば専門家みたいなものだ。その辺は全て彼女に任せた方が良いだろう
……そう、原因についての考察はこのあたりで十分だ。
どちらにせよ、三日後じゃないと詳細は分からないのだから。それよりも――
「……とりあえず、嬢ちゃんが偽物の依頼を掴まされたってのは分かった。やり方は分からないが、連絡の行き違いみたいな事故じゃなくて、誰かが意図してやったんだろうな……で、そんなことよりも――って言って良いか分からないが、それよりも考えなきゃならないのが……」
「ああ……結局、その犯人とやらは何が目的なんだ?」
クレオさんの言葉に続いて、二つ目の疑問点を口にする。
今まではこの混乱の原因を推察していたが、それよりも当事者としては何故このような事に巻き込まれたのか――犯人が何を狙ってこんなことを起こしたのかを考えるべきだろう。
「それも重要な点よね……あ、そうだ。さっき聞かれたから私の事情を言っておくと、今回の依頼は相手を問わず出されていたものよ。異世界絡みだったからギルドマスターが偶然選んだだけで、この件の犯人が私達に対して何かを狙っている訳じゃないと思うわ。私達は偶々巻き込まれただけ」
「そう、なのか……俺がパッと思い浮かべたのは、犯人とやらは転生使いを集めるのが目的なんじゃないか~って感じなんだけど。ほら、希少で重要なんだろ? 転生使いって」
「……ツッコミ所は多いけど、まあ仮に目的が転生使いを集めることだとするわ。でも、転生使いを集めてどうするのよ。こんな人間兵器みたいなのを集めたりなんてしたら、悪巧みがバレた瞬間文字通りぶっ飛ばされるわよ」
「……む」
それは……確かに。
皆が皆、転生使いを欲しているって話を聞いていたからそういうものかと思っていたが……言われてみれば確かに狙ってこんな状況になったとは思えない。
実際、今回の件が不審だと分かった身からすれば、内心では黒幕を突き止めてぶっ飛ばす気満々だったし。こんな感じにわざわざ喧嘩を売って敵を作る意味が無い、といった感じか。
「私達が偶然選んだだけで、本来なら腕っ節が良い普通の人が集まると思います……この依頼書を読む限り、転生使いを集めようとする意図は感じられませんでした」
「じゃあ、呼び込むのが目的って部分は同じで、呼び込む相手は誰でも良かったとか……?」
「確かにそれならあり得るけど……駄目ね、現状だと推測の域を出ないわ。結局呼び込んだ目的が不鮮明だし」
カラン、と焚き火に薪を放り込んで、シャーリィは諦めたように言う。
続いてクレオさんも頭をガシガシと掻いて足を崩すし、アザミも小さく息を吐いて目を瞑っている。詰まるところ、皆シャーリィと同じ考えのようだ。
「さて、私は紅茶でも飲もうと思ってるんだけど、皆はどう?」
「俺さんは……いいや。遠慮しておく」
「私も遠慮します……夜遅くに飲むと寝れなくなっちゃうので」
「そう。んじゃ、ユウマ――」
立ち上がってふらりと歩き出したシャーリィはクレオさんとアザミに確認を取ると、通りすがりに俺の肩に手を置いて、名を呼んだ。
「……ベルと話し合って、何か考えが無いか後で聞かせて」
「……ああ。それと、紅茶は俺もいらない」
「そう……んじゃ、一人で飲んでるから何かあったら私の馬車に来て」
彼女の小声での申し出に、俺も小さく答える。
俺の返答を聞くと、シャーリィは笑みを浮かべてそのまま通り過ぎ、肩に乗せられた手は引っ張られるように離れた。
「? 兄ちゃん、何を話してたんだ?」
「……シャーリィに圧をかけられた。“私の紅茶が飲めないのか”って」
会話の内容は聞こえていないが、内緒話をしたことはどうしてもバレる。だから俺は目を逸らして、誤魔化しの言葉をでっち上げた。
当然だがまだこの場にはアザミが居る。ベルについては不本意ながら存在を誤魔化さなければならない。
「し、シャーリィさんってそんなことを言う人なんですか……?」
「ああ、そうだぞ。シャーリィとの交流はアザミの方が先輩だが、リアルの付き合いじゃ俺の方が先輩だ。だから忠告しておくが、アイツはこわ~い紅茶の魔女なんだ」
「こ、紅茶の魔女」
「ああ。アイツは紅茶に関しては血も涙も無い人間になる。ああいや、もしかしたら血の代わりに紅茶が流れているのかも――」
「――聞こえてるわよユウマァアッ!!」
「――って冗談だから許してくれないかなァシャーリィ!? ……返事が無いな! 許さないってか!? そっか!」
……まあ、うん。
慣れない嘘はつくものじゃないなって思った。特にシャーリィに関しては。
「うひょー……兄ちゃん、嬢ちゃんを怒らせたみたいだな」
「……まさか、この距離、馬車の壁越しに聞こえてるだなんて。アザミ、今話したことは冗談だ。だけど前に話したが、シャーリィと打ち解け合うってのはこういうことだ。これぐらいのお遊びで殴り合う距離感でいいんだ……正直、後が怖いけど」
「あ、あはは……」
シャーリィの圧に若干ビビり倒しながらそう言うと、アザミは俺に同情するような愛想笑いを浮かべていた。
まあ、なんだ。後で会う時がちょっと怖いなぁ……
■□■□■
適当に理由をつけて、俺達は人気の無い森の中に踏み込んでいた。
俺の馬車は現在アザミの作業拠点でもあるし、馬車に防音性はほとんどない。だから隠れてベルと話をするにはここしかないと思ったのだが……
『……結論から言うが、私も推測の域を出る答えは出せそうに無いよ』
キッパリと。
わざわざ場所を選んだことが徒労に感じてしまうぐらいに言い切られてしまったのだった。
「シャーリィと同じ結論だな……やっぱり現状の情報だけだと分からないか?」
『そうだな……私は初め、この村に原因が潜んでいると思っていたんだ。だが、シャーリィから領主の話を聞いてからは分からなくなってしまったよ』
「領主も怪しいと?」
『うん。領主という存在自体がブラックボックス――わかりやすく言うなら、内部で何をしているかが何も分からない状態だからな。領主がやろうと思えば、この領地内に関しては好き勝手を振る舞えるだろうさ』
つまり、目星をつけていたところでもっと怪しい存在が明るみに出て選択肢に迷っている……って感じか。
「好き勝手って……でもさ、ギルドに届け出るには“村の証明印”と“領主の印”の二つが必要なんだろ? 領主の印は本人が押せるとして、村の証明印はどうするんだ? 村長の話を聞くところ、届け出はまだ出してない……つまり、証明印は使ってないってことだろ? 領主だけじゃ好き勝手もなにもできないんじゃないのか?」
ベルが表に出られないんだ。浅はかでも、俺だって考えるところは考えている。
この“二つの印”のシステムがある以上、村と領主どちらかが独断で動くことはできない……と思う。
『そうだな。だがユウマ、その証明印は誰が渡すってシャーリィは言っていた?』
「シャーリィは、確か……」
……領主から渡される、だったか。
でも、じゃあなんだ。領主の手元には村の証明印があって、やろうと思えば自分で“村から届けられた申請書を偽造する”ことができる――そうベルは言いたいのか。
『話を聞く限り、村に渡される証明印という物は“権利の象徴”だと私は解釈しているよ。村という小さなコミュニティから、地位の高い貴族に対して物申すためのね』
「権利の象徴?」
『そうだ。仮にもしこれが国王側――例えばギルドから証明印を発行しているのなら、“正当性の証明”って私は言っていたよ。だけどこのシステムは領主の管轄内だけで完結している。これを考察するに、つまりこれは貴族に領主という立ち位置を設けるためだけの仕組みであって――』
「ううん……? ちょっと待ってベル、話が難しくなってきた。もうちょっと簡潔にお願い……」
『了解したよ。そうだな……まず、国王は貴族に対して領主という役割を与えた。それだけじゃなく、仕事に関しても一任しているんだろう。シャーリィの言葉から解釈するに、花を持たせるって意味合いで』
――――領主にとって自分の管理している集落の保護は“国王から任せられた義務であり、誇りでもある”――これが少々、私達みたいな部外者からすれば厄介でね。誰だって自分の仕事を――それも、名誉に関わる内容を他人に横取りされたくないでしょ?
さっきシャーリィが話していたことをぼんやりと思い返す。
……誇り云々は本当かどうか置いておくとして、領主の名誉ために仕事を一任しているという考えは筋が通っている……と思う。
『国王は信用して領主に仕事を一任した訳だけど、悪心を持った領主がその一任された信用を苗床にしている……って感じかな。要はアレだ、優しくしたら相手がツケあがったってやつだよ』
「そんな……いや、言っていることは分かりやすかった。でもそんなことが本当にあるのか……? そんなことをしたら自分は当然、他の領主の立場はどうなる? やることがあまりに無責任すぎないか?」
ベルの言いたいことは分かるが、そんなの滅茶苦茶だ。せっかくのセキュリティの厳重さが、まるで信頼性を持っていないじゃないか。
それにこれは“領主”という立ち位置そのものへの信頼に関わる。そんなことがあってしまって良いのか……いや、良くないだろう。そんなこと、あって良いわけが――
『……まだまだ純粋だな。悪人には致命的に向いていないよ、君は』
「な――あ、え……?」
何か駄目出しされた――ような感じがする一方、何か安心されている気がする。
悪人に向いていない……? まあ、確かにこれから悪事を働く予定はまったく無いけれど、そう断言されると何か反論したくなってしまう。
『いいか、ユウマ。悪事ってのは基本的に常識を――社会のルールを破って動いている。「社会の中で生きているのに、それをやっちゃ駄目だろう」だとか、「あまりにも後先を考えていなすぎる」とか、客観的に見ればそう思えることを平然とやってみせるのが悪人だ』
「…………」
『目先の利益しか見ていないから、秩序を壊して好き勝手に振る舞い、仕組みを腐敗させる……目先の甘い蜜に比べたら身を滅ぼす危険なんてどうでもいいと思えてしまう、“甘い蜜”への中毒者。だから連中は“甘い蜜”に目が眩み、公平な損得に囚われない動きをする』
フン、と鼻を鳴らしてベルはそう言い切る。
なにやら思うところでもあるのか、露骨に嫌そうな言い方だが……まあ、とりあえずは参考になった。
『少し話が逸れたな……まあ、そもそも領主が黒だって断定できた訳じゃない。シャーリィの言うとおり、それは三日後にわかることだ。――ああ、そうそう。現状で断言できることが一つあった。この村に紛れているかもとは言ったが、住民そのもの……これについてだが、私は怪しくないって思ってる。彼らはユウマの次に犯人にはなれない人間だ』
「断言か……その理由は?」
『彼らの対応に犯人としてのメリットがまるで無いからだ。「まだ依頼を出していない」……この告白をする理由が思い浮かばない。腹に一物あるのなら、相手を警戒させるような発言をしないだろう』
「……確かに、その言葉がなかったらこんな状況にならなかったからな」
パッと浮かんだ考えは“俺達を足止めする”ことだが……そんなことを言わなくても、上手いこと言いくるめたら俺達をこの村に引き留めることはできただろう。
ベルの言うとおり、俺達をわざわざ疑心暗鬼にさせることはない。もしも裏があるならもっと良い方法がいくらでもあるはずだ。
『そうだ。それにもし私なら、振る舞った料理に眠り薬でも混ぜ込んで、眠ったところを牢に放り込んでる。拉致して実験か、奴隷として売り飛ばすか、食人文化か……思いついたのはその辺だが、村長の対応はこのどれにも当てはまらない』
「ぉぅ…………」
確かに、方法がいくらでもあるはずだとは思ったけど……その淡々とした計画性が怖い。
言われてみればその通りだし、彼女の言っていることは変じゃない……けど、やろうと思えば本当に計画してそうな雰囲気と言えば良いのか。こういう意味でも彼女を敵に回したくないと常々思う。
『だから思うんだ……犯人が居るとしたら、この村に近いところ――潜伏でもしているんじゃないかって』
「村長の身近な人とかか? それならこっそり証明印を盗み出すことができそうだけど……」
『いいや、逆だ。その可能性は低いと思う。確かに身近な人なら盗みやすいだろうが、それと同じくらい企みが相手にバレやすい。何を企んでいるかは分かりかねるが、何であれ隠し通すのは難しいだろうな』
「……そういうもんなのか?」
『“深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いている”……そこまで大層な事ではないが、大まかな意味ではそういうもんさ』
「……?」
『あー、ようはアレだ。トランプ遊びなんかでさ、相手の手の内を覗こうと近づきすぎると、逆に自分の手の内が相手に覗かれるってことさ。隠し事が大きければ大きいほど、相手に見られないように――今回の場合は、村長とかから距離を遠く離す必要がある』
……時々ベルは難しい言葉を引っ張ってくる。
とりあえず俺が理解しないと話が進まないみたいなので、とりあえず頷いて“分かってますよ”感を出しておく。
『……という訳で結論だが、怪しいのは近からず遠からずの立ち位置の人だ。村長みたいに政に関わらなくて、私達みたいな部外者じゃない人……』
「当てはまりそうな人は――まだ思いつかないな……村の中に転生使いとか魔術使いがこっそり紛れ込んでいるとか?」
『便利な言葉だな、その二つは。それを出されたら私からは「可能かもしれない」としか言えないじゃないか。反則さ反則』
雑すぎる思いつきにベルの反応も雑になってきた。
そもそも、そんな転生使いや魔術使いが居ればシャーリィが何らかの情報を掴んでいる筈だ。
じゃあ、他に怪しいこととなると……怪しい、こと……
「……じゃあ、あの噂話は?」
『噂? そんなの……ああ、あの子供が言っていたことか?』
白い姿をしていて、子供を攫う……だっけ?
内容から関連性は多分無いが、怪しさでは上位に入る話だ。あくまで“噂”話であるのだが。
『確かにあの話は気になるな……この村特有の郷土信仰の類いなのか、本当に目撃情報なのか。でもそれは二の次で良い。噂話の域を出ない以上、こちらから何か手を打つことはできない』
「そうだな……と言う訳でシャーリィに報告するか?」
『シャーリィへの報告は……した方が良いんだろうけど……うーん』
「どうした?」
『ああいや、なんて言うかさ……こんな中身も成果も無い話をしに行くのがなんか恥ずかしく思えて。私は物事を考える担当――いや、それしかできないのにこんなずさんな結論しか用意できないのはなんだか……』
俺にはイマイチ分からない感想だが、ベルはベルなりに自分の役割に職人気質――こだわりみたいなものを持っている様子。
「――――!」
……だが、今の俺はそんな彼女の言葉に耳を傾けていられなかった。
片手を添えるように差し出して、彼女の言葉を遮る。
『? どうしたんだユウマ?』
「……ベル、少し静かに」
『……? ああ』
元々小さな声の会話だったが、それも止まることで森がより一掃静かになる。
『……どうかしたのか? 何か聞こえたとかか?』
「声がした……もう少し掘り下げるなら、何か話し声だ。人に声をかけるような……」
『話し声? 相変わらず耳が良いな……だが、こんな夜中に会話? それはなんというか、妙だな』
ベルの指摘はごもっともだ。
こんな夜中の森の中で会話だなんて、まるで隠し事をしているみたいじゃないか――まるで今の俺達みたいに。
「……今の声色、は」
ピンと来た感覚と、ベルからの急かしで慌ててしまいそうな喉をグッと飲み込んで、一度冷静さを取り戻す。
『もしかして聞き覚えのある声か?』
「……今から声のした方向へ進む。焦らなくても、それでわかる……」
まるで自分に言い聞かせるように呟きを口にして、俺は音を殺して歩み始めた。
……夕食を摂って少し経ったぐらいだろうか。
四台の馬車を風除けにして焚き火を囲んで暖を取っている最中、シャーリィは俺達に問いかけた。
今回の件……シャーリィが言いたいのは大体想像がつく。
間違いなくこの村の依頼に関しての話だろう。あの場では平穏に収めるために曖昧に濁して終わらせたが、不可解かつ未解明なことが多すぎる。
「私には全く……シャーリィの依頼に関しては、ほとんど関わりがありませんでしたので。村長さんに伝言した時に初めて知りましたし……」
「俺さんも同じく。嬢ちゃんの持ち込んだ依頼とやらはよく知らないからな……まずは嬢ちゃんの話を聞いてからじゃなきゃ意見も浮かび上がりやせん」
「それもそうね……考えを聞くにも、私の事情を話してからが良かったか」
腕を組んでムム、と唸るような仕草をしつつシャーリィは謝罪の意を込めて二人に答えた。
……と、そこで話されるよりも前に、俺は手を挙げて「意見がありますよ」と無言で主張する。
「? どうしたのユウマ、何かあったの?」
「えっと……シャーリィの事情も気になるけど、その前にさ、その……なんだ、“依頼の仕組み”ってのがそもそも俺には分からないから、その辺の説明が欲しい。依頼人がギルドに依頼を届けて、ギルドがそれを一般に向けて仲介して、それを仕事人が引き受ける――ってぐらいしか俺は知らなかったけど、なにやら複雑な事情があるみたいだし」
アザミやクレオさんは細々とした社会的な仕組みを知っているかもしれないが、俺はまだ必要最低限の部分しか知らない。このまま話を始められても俺はきっと話について行けなくなる。
それに、ベルも同じく知らない筈だ。彼女を人前に出せない以上、こうやって俺が情報収集に徹していれば、後で彼女が考えをまとめてくれるだろう。
「そっか、ユウマは知らないか……それじゃ、状況推理の助けにもなるだろうし改めて一から説明するかな」
腕を組みながら彼女は一瞬、俺の右ポケットに視線を向けた。
今の俺の質問がベルに対しての説明の意味もあるということを、どうやらシャーリィは悟ってくれたらしい。
シャーリィはわかりやすく説明するにはどうしようかな~とか呟きながら、しばらくすると咳払いをして口を開いた。頭の中で説明の順序が整ったらしい。
「ユウマに話したのは“依頼人”と“ギルド”、“仕事を請け負う人”の三点の関係だったかしら。最低限の仕組みはこれで成り立つから略していたけど、本来は依頼人とギルドの間にもう一点加わるの」
「もう一点? 郵送業の人とかか?」
「郵送業は全ての間に入るから無視して良いわ。今回みたいな辺境の村だと、その村が所在する領域を管理している貴族――領主が間に挟まるの」
貴族なら実際に会ったことがあるから俺でも分かる――ああいや、アレじゃあんまり分からない。シャーリィ曰く悪い例だったらしいし。
ふんわりと把握している限りだと、ネーデル王国城から遠い場所を治める国王代理みたいな存在らしい。政治の方針を決める権利は無いが、それ以外は国王とほぼ同じぐらいの権利を――建前の上では――持っているお偉いさんだとか。
「“貴族”と“領主”で使い分けられているけど、まぁ内容は同じよ。強いて言うなら“貴族”はその個人を指す単語で、“領主”は管理主としての立ち位置を指す言葉なんだけど……うーん、雰囲気で使い分けてるからこの辺の説明は難しいわね」
「私は“領主”呼びが多いですね……自分の住んでいる領土を治める貴族を“領主”と呼んで、その他の領土を治める領主を“貴族”って呼ぶ感じ……でしょうか」
「俺さんみたいな王国民だと、上に立っているのは国王様で領主じゃないから“貴族”呼びがほとんどだな。郵送業をやっていると貴族のやり方に不満を持つことが多くてな、「あそこの貴族がまた無理な郵送を依頼してきやがった!」……なんて言葉をよく聞くぜ」
「――ってな感じ。それぞれ当事者がいると分かりやすくて助かるわ~。あ、私も貴族呼びがほとんどかな。皮肉で領主様呼びはすることがあるけど」
……なるほど。まず貴族と領主は同じ意味。やっている事も同じ。その上で、自分の上に立つ貴族を領主と呼んでいる……って感じか。
因みにシャーリィのその最後の情報は要らなかったと思う。それを俺はどんな顔をして聞けば良い?
「……話を戻すわ。今回はその立場上、“領主”って言葉に統一して説明する。まずその領主は何をしているのかって言うと、担当させられた領土内の管理。もう少し細かく言うなら、自分の領土内の村の住民を保護、監視する役割ってところかしら」
「保護と、監視? なんか急に穏やかじゃない単語が出るじゃないか」
「そう物騒なことじゃないわ。監視ってのは昔の名残で、王国への反乱が起きていないか。もし起きたなら迅速に王国へ連絡するってやつだけど……ほぼ形骸化してるから、今回は無視して構わないわ」
……なる、ほど。
無視していいなら遠慮なく無視しよう。申し訳ないが俺の頭の容量はそこまで余裕じゃない。というわけでベルに丸投げする。
「で、保護ってのが今回関わるんだけど、まあそのままの意味ね。だけど軽視はしちゃいけないわ」
「……? 監視の方が単語としては物々しいのに、保護の方が重要なのか?」
「まあね。領主にとって自分の管理している集落の保護は“国王から任せられた義務であり、誇りでもある”――これが少々、私達みたいな部外者からすれば厄介でね。誰だって自分の仕事を――それも、名誉に関わる内容を他人に横取りされたくないでしょ?」
「領主の存在意義みたいなものか。それはまあ、横取りされて良い顔はできないな」
「そ。だからもし領主を無視して中抜きなんてやろうものなら、領主の顔に泥を塗ることになる……要は怒りを買うってことね。だから私も貴方も強引な手段は使わない方が良い。ね、クレオさん?」
「うぐ、あの時は緊急事態だと思ったから言っちまいやしたが、冷静じゃなかったと思いやす……」
シャーリィから視線を向けられてクレオさんが耐えきれず視線を逸らして反省の言葉を口にする。
あの時、シャーリィは足を失うわけにはいかないと答えたが、こういう意味でも制止させたのだろう。
……まさか、アレが思っていたよりも危険な提案だったとは。シャーリィが止めなかったら俺は危険なんて知らずに彼の背中を押していたに違いない。
やっぱり俺達とシャーリィ達ではそういう一般常識への認識にズレがある。そのズレとやらは、思ってたよりも深刻で、間違えれば致命的な様子。
もっと、もっと社会的な“当たり前”とやらを知らなくては――
「そんなわけで、辺境の集落で何か外注したい事があれば申請書を領主に出すの。備えが不足しているから商人を要請したいだとか、ギルドに依頼を出したいだとかをね」
……確か、「事務的な手続きに一日かかる」と彼女は言っていたが、アレはギルドのことじゃなくて領主に対してだったのか。それなら不自然だと思えた話が分かる気がする。
「それがあの時の話に出てきた申請書ってやつか。じゃあ、話を聞く限りそこの工程で偽装されたんじゃないか? 誰かが偽造して領主に申請書を出したとか」
「まあ、できなくもない……けど、難しいんじゃない? 村を治める人には例外なく
領主から渡された“証明印”ってのを持っているんだけど、その印を押さないと申請書はまず認可されない。門前払いってやつね。印を押された申請書を届けることで、初めて領主がそれを認可するかの判断をする」
……つまり、偽物対策はされているという訳か。
その証明印とやらを盗んでしまえば可能だと思うが……そんな村の存命に関わるほどに大切な物、隠すなり常に肌身離さず持ち歩くなりしているだろうし、もし盗まれていれば村は騒ぎになっている筈だ。
「で、必要な申請だと領主が判断して認可された依頼は、ここでやっとギルドに向けて送られるって訳。それをギルドが確認、申請書を保管した上で、申請書を元に依頼書を書き上げる。それをこうして私達や仕事人が請け負うって訳……以上が依頼に関する細かな仕組みの説明よ」
そう言うとシャーリィはポーチの中から封筒のようなものを取り出した。相変わらず何が書いてあるのか分からないが、ちょっとだけ見覚えがある文字な気がした。レイラさんの文字かな。
「それがシャーリィさんの受け取った依頼書ですか。確認させて頂いても?」
「ええ、どうぞ。でもこれはギルドが書いたものだからね。本当に証拠となるのはギルドが持っている申請書――村の村長が押した証明印と、領主の認可を示す承認印の二つが押されている方の紙じゃないと真偽は不明って訳」
「……確かに、これでは何も分かりませんね」
「そ。だから明日の朝に領主に向けて手紙を送ることにする。『貴殿がギルドに届け出した依頼をこなしに来たが、現地の住民と話が食い違っている。至急、申請書の文面確認のためにギルドへの連絡を願う』……みたいな感じに書けば良いでしょ。私達はあくまでただの仕事人で、仕事の契約にトラブルが起きたから領主に確認を求める。こういう立ち位置で動けば、領主から要らない恨みを買わなくて済む」
「……何て言うか、ずいぶんと慎重だな」
事情はわかるが、シャーリィにしてはかなり慎重な対応だ。普段ならもう少し大胆というか、強引で大雑把なやり方で事を進めそうなものだが。
「言ったでしょ、危ない橋は渡らないって。それに今の私は王女じゃなくて一つの組織の人間だもの。今後ももっと名声も規模も大きくなる予定なんだから、その辺の立ち回りは特に気を遣ってるわ」
「……因みに、領主がシャーリィさんの申し出に応じなかった場合はどうするのですか?」
「まずあり得ないけど……もしそうなったらこの件、間違いなく領主が黒よ。今回みたいな契約上のトラブルへの責任は領主にもあるからね。普通なら領主も適切に対応して原因の解明に努めるわ。理由も無く応じない事はまず無い」
「……! もしも応じなかったら、領主が何かしらの理由を隠してるってことか?」
「そうね。今回の件、もしも領主側が仕組んで引き起こしたことだというのなら、原因の解明なんて自身のボロが出る恐れのあることをするわけがないわ。そういう時は大体、断った上で平民に対して圧力をかけて黙らせるでしょうね……証拠を偽造するよりも、その方が領主からすれば楽だし。で、そうなったら私は王女として権力をかざして殴り込めば良い」
「わはぁ、おっかない」
しかし、そういう場合ではちゃんと動ける考えがあるというのは安心できる。
政治的な関係で問題が起こった時には彼女ほど頼りになる人はそうそう居ない。何と言ったって、今まで王女として政治に関わってきた人――いわば専門家みたいなものだ。その辺は全て彼女に任せた方が良いだろう
……そう、原因についての考察はこのあたりで十分だ。
どちらにせよ、三日後じゃないと詳細は分からないのだから。それよりも――
「……とりあえず、嬢ちゃんが偽物の依頼を掴まされたってのは分かった。やり方は分からないが、連絡の行き違いみたいな事故じゃなくて、誰かが意図してやったんだろうな……で、そんなことよりも――って言って良いか分からないが、それよりも考えなきゃならないのが……」
「ああ……結局、その犯人とやらは何が目的なんだ?」
クレオさんの言葉に続いて、二つ目の疑問点を口にする。
今まではこの混乱の原因を推察していたが、それよりも当事者としては何故このような事に巻き込まれたのか――犯人が何を狙ってこんなことを起こしたのかを考えるべきだろう。
「それも重要な点よね……あ、そうだ。さっき聞かれたから私の事情を言っておくと、今回の依頼は相手を問わず出されていたものよ。異世界絡みだったからギルドマスターが偶然選んだだけで、この件の犯人が私達に対して何かを狙っている訳じゃないと思うわ。私達は偶々巻き込まれただけ」
「そう、なのか……俺がパッと思い浮かべたのは、犯人とやらは転生使いを集めるのが目的なんじゃないか~って感じなんだけど。ほら、希少で重要なんだろ? 転生使いって」
「……ツッコミ所は多いけど、まあ仮に目的が転生使いを集めることだとするわ。でも、転生使いを集めてどうするのよ。こんな人間兵器みたいなのを集めたりなんてしたら、悪巧みがバレた瞬間文字通りぶっ飛ばされるわよ」
「……む」
それは……確かに。
皆が皆、転生使いを欲しているって話を聞いていたからそういうものかと思っていたが……言われてみれば確かに狙ってこんな状況になったとは思えない。
実際、今回の件が不審だと分かった身からすれば、内心では黒幕を突き止めてぶっ飛ばす気満々だったし。こんな感じにわざわざ喧嘩を売って敵を作る意味が無い、といった感じか。
「私達が偶然選んだだけで、本来なら腕っ節が良い普通の人が集まると思います……この依頼書を読む限り、転生使いを集めようとする意図は感じられませんでした」
「じゃあ、呼び込むのが目的って部分は同じで、呼び込む相手は誰でも良かったとか……?」
「確かにそれならあり得るけど……駄目ね、現状だと推測の域を出ないわ。結局呼び込んだ目的が不鮮明だし」
カラン、と焚き火に薪を放り込んで、シャーリィは諦めたように言う。
続いてクレオさんも頭をガシガシと掻いて足を崩すし、アザミも小さく息を吐いて目を瞑っている。詰まるところ、皆シャーリィと同じ考えのようだ。
「さて、私は紅茶でも飲もうと思ってるんだけど、皆はどう?」
「俺さんは……いいや。遠慮しておく」
「私も遠慮します……夜遅くに飲むと寝れなくなっちゃうので」
「そう。んじゃ、ユウマ――」
立ち上がってふらりと歩き出したシャーリィはクレオさんとアザミに確認を取ると、通りすがりに俺の肩に手を置いて、名を呼んだ。
「……ベルと話し合って、何か考えが無いか後で聞かせて」
「……ああ。それと、紅茶は俺もいらない」
「そう……んじゃ、一人で飲んでるから何かあったら私の馬車に来て」
彼女の小声での申し出に、俺も小さく答える。
俺の返答を聞くと、シャーリィは笑みを浮かべてそのまま通り過ぎ、肩に乗せられた手は引っ張られるように離れた。
「? 兄ちゃん、何を話してたんだ?」
「……シャーリィに圧をかけられた。“私の紅茶が飲めないのか”って」
会話の内容は聞こえていないが、内緒話をしたことはどうしてもバレる。だから俺は目を逸らして、誤魔化しの言葉をでっち上げた。
当然だがまだこの場にはアザミが居る。ベルについては不本意ながら存在を誤魔化さなければならない。
「し、シャーリィさんってそんなことを言う人なんですか……?」
「ああ、そうだぞ。シャーリィとの交流はアザミの方が先輩だが、リアルの付き合いじゃ俺の方が先輩だ。だから忠告しておくが、アイツはこわ~い紅茶の魔女なんだ」
「こ、紅茶の魔女」
「ああ。アイツは紅茶に関しては血も涙も無い人間になる。ああいや、もしかしたら血の代わりに紅茶が流れているのかも――」
「――聞こえてるわよユウマァアッ!!」
「――って冗談だから許してくれないかなァシャーリィ!? ……返事が無いな! 許さないってか!? そっか!」
……まあ、うん。
慣れない嘘はつくものじゃないなって思った。特にシャーリィに関しては。
「うひょー……兄ちゃん、嬢ちゃんを怒らせたみたいだな」
「……まさか、この距離、馬車の壁越しに聞こえてるだなんて。アザミ、今話したことは冗談だ。だけど前に話したが、シャーリィと打ち解け合うってのはこういうことだ。これぐらいのお遊びで殴り合う距離感でいいんだ……正直、後が怖いけど」
「あ、あはは……」
シャーリィの圧に若干ビビり倒しながらそう言うと、アザミは俺に同情するような愛想笑いを浮かべていた。
まあ、なんだ。後で会う時がちょっと怖いなぁ……
■□■□■
適当に理由をつけて、俺達は人気の無い森の中に踏み込んでいた。
俺の馬車は現在アザミの作業拠点でもあるし、馬車に防音性はほとんどない。だから隠れてベルと話をするにはここしかないと思ったのだが……
『……結論から言うが、私も推測の域を出る答えは出せそうに無いよ』
キッパリと。
わざわざ場所を選んだことが徒労に感じてしまうぐらいに言い切られてしまったのだった。
「シャーリィと同じ結論だな……やっぱり現状の情報だけだと分からないか?」
『そうだな……私は初め、この村に原因が潜んでいると思っていたんだ。だが、シャーリィから領主の話を聞いてからは分からなくなってしまったよ』
「領主も怪しいと?」
『うん。領主という存在自体がブラックボックス――わかりやすく言うなら、内部で何をしているかが何も分からない状態だからな。領主がやろうと思えば、この領地内に関しては好き勝手を振る舞えるだろうさ』
つまり、目星をつけていたところでもっと怪しい存在が明るみに出て選択肢に迷っている……って感じか。
「好き勝手って……でもさ、ギルドに届け出るには“村の証明印”と“領主の印”の二つが必要なんだろ? 領主の印は本人が押せるとして、村の証明印はどうするんだ? 村長の話を聞くところ、届け出はまだ出してない……つまり、証明印は使ってないってことだろ? 領主だけじゃ好き勝手もなにもできないんじゃないのか?」
ベルが表に出られないんだ。浅はかでも、俺だって考えるところは考えている。
この“二つの印”のシステムがある以上、村と領主どちらかが独断で動くことはできない……と思う。
『そうだな。だがユウマ、その証明印は誰が渡すってシャーリィは言っていた?』
「シャーリィは、確か……」
……領主から渡される、だったか。
でも、じゃあなんだ。領主の手元には村の証明印があって、やろうと思えば自分で“村から届けられた申請書を偽造する”ことができる――そうベルは言いたいのか。
『話を聞く限り、村に渡される証明印という物は“権利の象徴”だと私は解釈しているよ。村という小さなコミュニティから、地位の高い貴族に対して物申すためのね』
「権利の象徴?」
『そうだ。仮にもしこれが国王側――例えばギルドから証明印を発行しているのなら、“正当性の証明”って私は言っていたよ。だけどこのシステムは領主の管轄内だけで完結している。これを考察するに、つまりこれは貴族に領主という立ち位置を設けるためだけの仕組みであって――』
「ううん……? ちょっと待ってベル、話が難しくなってきた。もうちょっと簡潔にお願い……」
『了解したよ。そうだな……まず、国王は貴族に対して領主という役割を与えた。それだけじゃなく、仕事に関しても一任しているんだろう。シャーリィの言葉から解釈するに、花を持たせるって意味合いで』
――――領主にとって自分の管理している集落の保護は“国王から任せられた義務であり、誇りでもある”――これが少々、私達みたいな部外者からすれば厄介でね。誰だって自分の仕事を――それも、名誉に関わる内容を他人に横取りされたくないでしょ?
さっきシャーリィが話していたことをぼんやりと思い返す。
……誇り云々は本当かどうか置いておくとして、領主の名誉ために仕事を一任しているという考えは筋が通っている……と思う。
『国王は信用して領主に仕事を一任した訳だけど、悪心を持った領主がその一任された信用を苗床にしている……って感じかな。要はアレだ、優しくしたら相手がツケあがったってやつだよ』
「そんな……いや、言っていることは分かりやすかった。でもそんなことが本当にあるのか……? そんなことをしたら自分は当然、他の領主の立場はどうなる? やることがあまりに無責任すぎないか?」
ベルの言いたいことは分かるが、そんなの滅茶苦茶だ。せっかくのセキュリティの厳重さが、まるで信頼性を持っていないじゃないか。
それにこれは“領主”という立ち位置そのものへの信頼に関わる。そんなことがあってしまって良いのか……いや、良くないだろう。そんなこと、あって良いわけが――
『……まだまだ純粋だな。悪人には致命的に向いていないよ、君は』
「な――あ、え……?」
何か駄目出しされた――ような感じがする一方、何か安心されている気がする。
悪人に向いていない……? まあ、確かにこれから悪事を働く予定はまったく無いけれど、そう断言されると何か反論したくなってしまう。
『いいか、ユウマ。悪事ってのは基本的に常識を――社会のルールを破って動いている。「社会の中で生きているのに、それをやっちゃ駄目だろう」だとか、「あまりにも後先を考えていなすぎる」とか、客観的に見ればそう思えることを平然とやってみせるのが悪人だ』
「…………」
『目先の利益しか見ていないから、秩序を壊して好き勝手に振る舞い、仕組みを腐敗させる……目先の甘い蜜に比べたら身を滅ぼす危険なんてどうでもいいと思えてしまう、“甘い蜜”への中毒者。だから連中は“甘い蜜”に目が眩み、公平な損得に囚われない動きをする』
フン、と鼻を鳴らしてベルはそう言い切る。
なにやら思うところでもあるのか、露骨に嫌そうな言い方だが……まあ、とりあえずは参考になった。
『少し話が逸れたな……まあ、そもそも領主が黒だって断定できた訳じゃない。シャーリィの言うとおり、それは三日後にわかることだ。――ああ、そうそう。現状で断言できることが一つあった。この村に紛れているかもとは言ったが、住民そのもの……これについてだが、私は怪しくないって思ってる。彼らはユウマの次に犯人にはなれない人間だ』
「断言か……その理由は?」
『彼らの対応に犯人としてのメリットがまるで無いからだ。「まだ依頼を出していない」……この告白をする理由が思い浮かばない。腹に一物あるのなら、相手を警戒させるような発言をしないだろう』
「……確かに、その言葉がなかったらこんな状況にならなかったからな」
パッと浮かんだ考えは“俺達を足止めする”ことだが……そんなことを言わなくても、上手いこと言いくるめたら俺達をこの村に引き留めることはできただろう。
ベルの言うとおり、俺達をわざわざ疑心暗鬼にさせることはない。もしも裏があるならもっと良い方法がいくらでもあるはずだ。
『そうだ。それにもし私なら、振る舞った料理に眠り薬でも混ぜ込んで、眠ったところを牢に放り込んでる。拉致して実験か、奴隷として売り飛ばすか、食人文化か……思いついたのはその辺だが、村長の対応はこのどれにも当てはまらない』
「ぉぅ…………」
確かに、方法がいくらでもあるはずだとは思ったけど……その淡々とした計画性が怖い。
言われてみればその通りだし、彼女の言っていることは変じゃない……けど、やろうと思えば本当に計画してそうな雰囲気と言えば良いのか。こういう意味でも彼女を敵に回したくないと常々思う。
『だから思うんだ……犯人が居るとしたら、この村に近いところ――潜伏でもしているんじゃないかって』
「村長の身近な人とかか? それならこっそり証明印を盗み出すことができそうだけど……」
『いいや、逆だ。その可能性は低いと思う。確かに身近な人なら盗みやすいだろうが、それと同じくらい企みが相手にバレやすい。何を企んでいるかは分かりかねるが、何であれ隠し通すのは難しいだろうな』
「……そういうもんなのか?」
『“深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いている”……そこまで大層な事ではないが、大まかな意味ではそういうもんさ』
「……?」
『あー、ようはアレだ。トランプ遊びなんかでさ、相手の手の内を覗こうと近づきすぎると、逆に自分の手の内が相手に覗かれるってことさ。隠し事が大きければ大きいほど、相手に見られないように――今回の場合は、村長とかから距離を遠く離す必要がある』
……時々ベルは難しい言葉を引っ張ってくる。
とりあえず俺が理解しないと話が進まないみたいなので、とりあえず頷いて“分かってますよ”感を出しておく。
『……という訳で結論だが、怪しいのは近からず遠からずの立ち位置の人だ。村長みたいに政に関わらなくて、私達みたいな部外者じゃない人……』
「当てはまりそうな人は――まだ思いつかないな……村の中に転生使いとか魔術使いがこっそり紛れ込んでいるとか?」
『便利な言葉だな、その二つは。それを出されたら私からは「可能かもしれない」としか言えないじゃないか。反則さ反則』
雑すぎる思いつきにベルの反応も雑になってきた。
そもそも、そんな転生使いや魔術使いが居ればシャーリィが何らかの情報を掴んでいる筈だ。
じゃあ、他に怪しいこととなると……怪しい、こと……
「……じゃあ、あの噂話は?」
『噂? そんなの……ああ、あの子供が言っていたことか?』
白い姿をしていて、子供を攫う……だっけ?
内容から関連性は多分無いが、怪しさでは上位に入る話だ。あくまで“噂”話であるのだが。
『確かにあの話は気になるな……この村特有の郷土信仰の類いなのか、本当に目撃情報なのか。でもそれは二の次で良い。噂話の域を出ない以上、こちらから何か手を打つことはできない』
「そうだな……と言う訳でシャーリィに報告するか?」
『シャーリィへの報告は……した方が良いんだろうけど……うーん』
「どうした?」
『ああいや、なんて言うかさ……こんな中身も成果も無い話をしに行くのがなんか恥ずかしく思えて。私は物事を考える担当――いや、それしかできないのにこんなずさんな結論しか用意できないのはなんだか……』
俺にはイマイチ分からない感想だが、ベルはベルなりに自分の役割に職人気質――こだわりみたいなものを持っている様子。
「――――!」
……だが、今の俺はそんな彼女の言葉に耳を傾けていられなかった。
片手を添えるように差し出して、彼女の言葉を遮る。
『? どうしたんだユウマ?』
「……ベル、少し静かに」
『……? ああ』
元々小さな声の会話だったが、それも止まることで森がより一掃静かになる。
『……どうかしたのか? 何か聞こえたとかか?』
「声がした……もう少し掘り下げるなら、何か話し声だ。人に声をかけるような……」
『話し声? 相変わらず耳が良いな……だが、こんな夜中に会話? それはなんというか、妙だな』
ベルの指摘はごもっともだ。
こんな夜中の森の中で会話だなんて、まるで隠し事をしているみたいじゃないか――まるで今の俺達みたいに。
「……今の声色、は」
ピンと来た感覚と、ベルからの急かしで慌ててしまいそうな喉をグッと飲み込んで、一度冷静さを取り戻す。
『もしかして聞き覚えのある声か?』
「……今から声のした方向へ進む。焦らなくても、それでわかる……」
まるで自分に言い聞かせるように呟きを口にして、俺は音を殺して歩み始めた。
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