2 / 17
釣りと彼女②
しおりを挟む
初めに······
少しだけ今回の用語の説明だけさせてもらいます。
サビキ······釣り糸に針が数個着いている仕掛けです。
天秤······重りに針金が二股に着いており、その先端に仕掛けを針の付いた糸を結ぶ仕掛けです。
もし分からないことがあれば、コメントやTwitterのDMまでお願いします。(多分調べれば画像付きで説明が載っていると思いますが······)
それでは本編をどうぞ!
──────────
車で40分、トンネルを抜けると海が一面に広がっていた。
家の近くに海がないので少しだけ興奮していた。
窓を開けると潮の香りが微かに鼻をぬけ、カモメ達が空を優雅に飛びながら鳴いている。
道中釣具屋に車を停め、準備をする。
「今日は何狙うんだ?」
「うーん、まあアジでいいんじゃない」
サビキ用のオキアミを買い、仕掛けを4つほど買っていく。
絢香は何故か、大きめの針を見ていた。
「こんなんじゃアジ釣れないよ」
「まあ、とりあえず買っとく」
大きめの針を、カゴに中に投げ込んだ。
合計金額は3500円ほど。
連れてって貰ってるんだ、これくらいは払わないと。
財布を取り出そうとする。
「カードでお願いします」
そう言って店員にクレジットカードを渡したのは、絢香だった。
「いいよ、連れてってもらってるんだしこれくらい」
「大丈夫だって、誘ったのは私、それにいつも家事とか頼むじゃん。たまには私の顔を立てさせてよ」
上手く言いくるめられた気がするが、ここは一旦引き下がる。
古臭いと言われるかもしれないが、運転してもらったり、お金を払ってもらったりすると男としてのプライドが傷つく。
買った荷物をクーラーボックスの中に入れて、再び出発する。
「今日はどこで釣るんだ?」
「この前穴場の堤防教えてもらったから、そこにしようかなと。ただ、赤潮とか青潮があったら流石に移動かな」
「了解」
車を動かしてから釣り場までは5分もかからなかった。
車から降り、声を出しながら伸びをする。
堤防は100メートルほど続いており、釣りをしている人が数人いた。
「さて、じゃあ釣りを始めますか。多分2時間もあれば100匹は釣れると思うよ」
「そんなに釣れるものなのか?」
「まあ大丈夫、今年はまだ来たことないけど」
そう言いつつ、堤防の先端付近へと向かっていく。
海を覗き込むと、そこには小さな魚の群れがいた。
「あれはアジなのか?」
「うーん、あれはアイゴだね。ヒレに毒があって刺さるとライターで炙られるくらい痛いよ」
そんな魚もいるのか。
アジ釣は比較的簡単なので家族連れも多い。
こんな魚が釣れたら子供が危ないだろう。
堤防の先端から20メートル手前のところで足を止める。
「よし、ここにしよっか」
まずは日焼けをしないように、日焼け止めを塗る。
一方彩花は長袖に短パンその下にスパッツを履いて完全防備だ。
麦わら帽子にサングラスまでしている。
絢香は分解してある竿を繋げ、糸を通していく。糸に仕掛けを付け準備完了だ。
流石に慣れているだけあって準備には5分もかからなかった。
素人がやると、糸を結ぶのに時間を取られ、こうはいかない。
「はい、これ使って」
次の竿の用意を始める。その動きに淀みはない。
あっという間に3本目の準備に入る。
最後の竿は仕掛けが違った。
「それはなんだ?」
「ああーこれは天秤ってやつ。根魚とかに有効な仕掛けだよ」
説明を聞いてもなかなか理解出来ない。
あんな大きい重りと針金なんかつけて魚が寄ってくるのだろうか。
「じゃあエサをカゴに入れて」
仕掛けの一番下に、小さいカゴが着いているのでそこに餌を入れる。
準備が終わるとそれを足元に垂らしていく。
すると10秒もしないうちに竿に反応があった。
「おい、来てるぞ。まだあげないのか?」
「まだダメだよ、もう少し待ってて」
絢香はずっと竿の先端に視線を向ける。
すると竿先が一気に曲がる。
「いいよ、ゆっくり巻いていって」
リールを巻いていくと、仕掛けに7から10センチ程のアジが3匹掛かっていた。
初めて魚を釣ったため思わずガッツポーズをした。
「釣り童貞卒業おめでとー」
「なんか嬉しくない」
「さっきまでガッツポーズしてたじゃん」
我に返り、慎重に魚から針を外し、クーラーボックスの中に入れる。
にしても暑い、汗が止まらない。
「はいこれ、飲みかけだけど我慢して」
渡されたのは、2リットル容量のペットボトルに入ったスポーツ飲料だった。
躊躇するとどうせまたからかわれると思って、できるだけ意識しないようにペットボトルに口をつけ飲む。
絢香の方に目をやると、暑さのせいか、顔が赤かった。
「悪いな、ありがと」
「いいよ別に、天下の童貞さんだから、意識しちゃって飲めないとか言うかと思った」
「うるせー」
図星だった。
やっぱそういうのって分ってしまうものなのか。
そう思いつつ、釣りを再開した。
「そういや、最近どうなの?」
釣りも少し落ち着いてきて暇になってきたのか、絢香が口を開く。
「まあぼちぼちかな。デザイナーの方は順調だよ」
「そっか、そりゃ良かったじゃん。小説の方は残念だけど」
「まあ小説家もそんな簡単に行かないってことだ」
「私はすぐになれたけどね~」
絢香は元は小説家だった。
大学に通っている時たまたま書いた小説が、新人賞を獲得し、その後も2回最優秀賞を獲得。
恋愛小説『白日の世界』が58万部を販売するベストセラー作品となり、一時期天才学生として名を挙げていた。
ただ、彼女はあくまでも漫画を書くための過程と言って、小説業界から姿を消した。
それが今となっては売れない漫画家だ。
その才能が羨ましい。
代われるものなら代わりたい。
だが皮肉にもこれが現実だ。
生きていく上では困ることは無いが、夢を叶え、より豊かな人生を送るという点では何一つ進んでいない。
「お前が羨ましいよ」
「私もまさかここまで小説が売れるとは思ってなかったからね。まあその分、今は漫画家として切磋琢磨してる」
それは違うことは分かっているが、そんな絢香が少しだけ妬ましい。
「それに幸樹は本当に今努力してる? 私にはあなたの努力が見えてこない」
「なんでお前にそんなことがわかるんだよ」
「だって幸樹って自分に恋愛経験がないのを言い訳に、小説の限界を自分で決めてるよね」
質問されているんじゃない、はっきりと断言されているのだ。
「私だってそりゃ戦闘シーンは得意じゃないよ。でもこうして幸樹に会ってそこから学んだり、少年漫画だっていっぱい読んでる。私は自分の可能性を信じてるからね」
確かにそうだ、絢香は何かと理由をつけて来るが、そのほとんどが戦闘描写の質問ばかりだ。
「そりゃ幸樹にだってプライドがあると思う、でもそんなプライド何の役にも立たないよ。今大事なのは己を知り、改善をしていくことだと思うの。自分で言うのもなんだけど、私だって一応恋愛小説家として、それなりに活躍をしてきた。疑問をぶつける相手としてはちょうどいいんじゃない?」
「ああ、そうだな」
何も言い返せない、頷くことしかできない。それがとても悔しかった。
「大丈夫、幸樹ならきっといい作家になれる。そのためなら私を利用してくれたっていい。今回の釣りだって何かの材料になるかもしれない。とにかく勉強することを止めちゃダメだよ」
ここまで親身になってくれる人がいたとは驚きだ、少しだけ泣きそうになった。
「そうだな、じゃあこれからも小説の材料として遊ばせてもらうぞ」
「うん、それでいいじゃん、私に出来ることならなんでも言って」
ついさっきまで悩んでいたのが嘘みたいだ。
今回の釣りはいいきっかけになったかもしれない。
「それじゃあ再開しますか」
いつの間にか止まっていた釣りを再開する。
少しだけ今回の用語の説明だけさせてもらいます。
サビキ······釣り糸に針が数個着いている仕掛けです。
天秤······重りに針金が二股に着いており、その先端に仕掛けを針の付いた糸を結ぶ仕掛けです。
もし分からないことがあれば、コメントやTwitterのDMまでお願いします。(多分調べれば画像付きで説明が載っていると思いますが······)
それでは本編をどうぞ!
──────────
車で40分、トンネルを抜けると海が一面に広がっていた。
家の近くに海がないので少しだけ興奮していた。
窓を開けると潮の香りが微かに鼻をぬけ、カモメ達が空を優雅に飛びながら鳴いている。
道中釣具屋に車を停め、準備をする。
「今日は何狙うんだ?」
「うーん、まあアジでいいんじゃない」
サビキ用のオキアミを買い、仕掛けを4つほど買っていく。
絢香は何故か、大きめの針を見ていた。
「こんなんじゃアジ釣れないよ」
「まあ、とりあえず買っとく」
大きめの針を、カゴに中に投げ込んだ。
合計金額は3500円ほど。
連れてって貰ってるんだ、これくらいは払わないと。
財布を取り出そうとする。
「カードでお願いします」
そう言って店員にクレジットカードを渡したのは、絢香だった。
「いいよ、連れてってもらってるんだしこれくらい」
「大丈夫だって、誘ったのは私、それにいつも家事とか頼むじゃん。たまには私の顔を立てさせてよ」
上手く言いくるめられた気がするが、ここは一旦引き下がる。
古臭いと言われるかもしれないが、運転してもらったり、お金を払ってもらったりすると男としてのプライドが傷つく。
買った荷物をクーラーボックスの中に入れて、再び出発する。
「今日はどこで釣るんだ?」
「この前穴場の堤防教えてもらったから、そこにしようかなと。ただ、赤潮とか青潮があったら流石に移動かな」
「了解」
車を動かしてから釣り場までは5分もかからなかった。
車から降り、声を出しながら伸びをする。
堤防は100メートルほど続いており、釣りをしている人が数人いた。
「さて、じゃあ釣りを始めますか。多分2時間もあれば100匹は釣れると思うよ」
「そんなに釣れるものなのか?」
「まあ大丈夫、今年はまだ来たことないけど」
そう言いつつ、堤防の先端付近へと向かっていく。
海を覗き込むと、そこには小さな魚の群れがいた。
「あれはアジなのか?」
「うーん、あれはアイゴだね。ヒレに毒があって刺さるとライターで炙られるくらい痛いよ」
そんな魚もいるのか。
アジ釣は比較的簡単なので家族連れも多い。
こんな魚が釣れたら子供が危ないだろう。
堤防の先端から20メートル手前のところで足を止める。
「よし、ここにしよっか」
まずは日焼けをしないように、日焼け止めを塗る。
一方彩花は長袖に短パンその下にスパッツを履いて完全防備だ。
麦わら帽子にサングラスまでしている。
絢香は分解してある竿を繋げ、糸を通していく。糸に仕掛けを付け準備完了だ。
流石に慣れているだけあって準備には5分もかからなかった。
素人がやると、糸を結ぶのに時間を取られ、こうはいかない。
「はい、これ使って」
次の竿の用意を始める。その動きに淀みはない。
あっという間に3本目の準備に入る。
最後の竿は仕掛けが違った。
「それはなんだ?」
「ああーこれは天秤ってやつ。根魚とかに有効な仕掛けだよ」
説明を聞いてもなかなか理解出来ない。
あんな大きい重りと針金なんかつけて魚が寄ってくるのだろうか。
「じゃあエサをカゴに入れて」
仕掛けの一番下に、小さいカゴが着いているのでそこに餌を入れる。
準備が終わるとそれを足元に垂らしていく。
すると10秒もしないうちに竿に反応があった。
「おい、来てるぞ。まだあげないのか?」
「まだダメだよ、もう少し待ってて」
絢香はずっと竿の先端に視線を向ける。
すると竿先が一気に曲がる。
「いいよ、ゆっくり巻いていって」
リールを巻いていくと、仕掛けに7から10センチ程のアジが3匹掛かっていた。
初めて魚を釣ったため思わずガッツポーズをした。
「釣り童貞卒業おめでとー」
「なんか嬉しくない」
「さっきまでガッツポーズしてたじゃん」
我に返り、慎重に魚から針を外し、クーラーボックスの中に入れる。
にしても暑い、汗が止まらない。
「はいこれ、飲みかけだけど我慢して」
渡されたのは、2リットル容量のペットボトルに入ったスポーツ飲料だった。
躊躇するとどうせまたからかわれると思って、できるだけ意識しないようにペットボトルに口をつけ飲む。
絢香の方に目をやると、暑さのせいか、顔が赤かった。
「悪いな、ありがと」
「いいよ別に、天下の童貞さんだから、意識しちゃって飲めないとか言うかと思った」
「うるせー」
図星だった。
やっぱそういうのって分ってしまうものなのか。
そう思いつつ、釣りを再開した。
「そういや、最近どうなの?」
釣りも少し落ち着いてきて暇になってきたのか、絢香が口を開く。
「まあぼちぼちかな。デザイナーの方は順調だよ」
「そっか、そりゃ良かったじゃん。小説の方は残念だけど」
「まあ小説家もそんな簡単に行かないってことだ」
「私はすぐになれたけどね~」
絢香は元は小説家だった。
大学に通っている時たまたま書いた小説が、新人賞を獲得し、その後も2回最優秀賞を獲得。
恋愛小説『白日の世界』が58万部を販売するベストセラー作品となり、一時期天才学生として名を挙げていた。
ただ、彼女はあくまでも漫画を書くための過程と言って、小説業界から姿を消した。
それが今となっては売れない漫画家だ。
その才能が羨ましい。
代われるものなら代わりたい。
だが皮肉にもこれが現実だ。
生きていく上では困ることは無いが、夢を叶え、より豊かな人生を送るという点では何一つ進んでいない。
「お前が羨ましいよ」
「私もまさかここまで小説が売れるとは思ってなかったからね。まあその分、今は漫画家として切磋琢磨してる」
それは違うことは分かっているが、そんな絢香が少しだけ妬ましい。
「それに幸樹は本当に今努力してる? 私にはあなたの努力が見えてこない」
「なんでお前にそんなことがわかるんだよ」
「だって幸樹って自分に恋愛経験がないのを言い訳に、小説の限界を自分で決めてるよね」
質問されているんじゃない、はっきりと断言されているのだ。
「私だってそりゃ戦闘シーンは得意じゃないよ。でもこうして幸樹に会ってそこから学んだり、少年漫画だっていっぱい読んでる。私は自分の可能性を信じてるからね」
確かにそうだ、絢香は何かと理由をつけて来るが、そのほとんどが戦闘描写の質問ばかりだ。
「そりゃ幸樹にだってプライドがあると思う、でもそんなプライド何の役にも立たないよ。今大事なのは己を知り、改善をしていくことだと思うの。自分で言うのもなんだけど、私だって一応恋愛小説家として、それなりに活躍をしてきた。疑問をぶつける相手としてはちょうどいいんじゃない?」
「ああ、そうだな」
何も言い返せない、頷くことしかできない。それがとても悔しかった。
「大丈夫、幸樹ならきっといい作家になれる。そのためなら私を利用してくれたっていい。今回の釣りだって何かの材料になるかもしれない。とにかく勉強することを止めちゃダメだよ」
ここまで親身になってくれる人がいたとは驚きだ、少しだけ泣きそうになった。
「そうだな、じゃあこれからも小説の材料として遊ばせてもらうぞ」
「うん、それでいいじゃん、私に出来ることならなんでも言って」
ついさっきまで悩んでいたのが嘘みたいだ。
今回の釣りはいいきっかけになったかもしれない。
「それじゃあ再開しますか」
いつの間にか止まっていた釣りを再開する。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?
春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。
しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。
美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……?
2021.08.13
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる