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第二章 騎士学園編
105「決勝トーナメント一回戦(15)」
しおりを挟む「⋯⋯はい。父ベクター・シュタイナーはシュタイナー領にて領地運営をしており、母は専業主婦です。あと、父は元クラリオン王国騎士団団長で母ジェーンは副団長⋯⋯でした」
「「「「「は⋯⋯???????」」」」」
カイトの発言に、リリアナだけでなく、生徒、教師、観客全員が⋯⋯⋯⋯固まった。
「も、もももも、もう一度⋯⋯聞きますっ! カイトの両親はどういった人物ですか?!」
「はい。父ベクター・シュタイナーはシュタイナー領にて領地運営をしており、母は専業主婦です。あと、父は元クラリオン王国騎士団団長で母ジェーンは副団長でした」
「「「「「えええええええええええーーーーー!!!!!!!!」」」」」
リリアナが二度聞きしてやっと、リリアナ本人も周囲もカイトの発言を理解したと同時に、飛び出した『ビッグネーム』に悲鳴にも似た発狂まじりの歓声が上がると会場が大きく揺れた。
「ベ、ベクター・シュタイナー⋯⋯き、聞いたことありますわ! た、たしか、現・騎士団長アルフレッド・ヴェントレー様の前任だった方で『クラリオン王国騎士団最強時代』の⋯⋯最後の団長様。『二つ名』は『Mr.完璧』⋯⋯っ!!!! そして、その妻であるジェーン・シュタイナーは⋯⋯『二つ名』を『惨禍の女王』という『騎士団史上最強』と言われた『女性上級魔法士』! そ、それがカイトのご両親⋯⋯。な、なんという⋯⋯血統⋯⋯っ!!!!」
リリアナがカイトの発言に激しく動揺する。しかし、そんな中、そのリリアナ以上に熱量増し増しで熱弁を振るう男がいた。
「う、嘘だろっ!? ま、まさか⋯⋯あの⋯⋯『Mr.完璧』がカイトの父親⋯⋯だって!?——かつて、騎士団最強時代を築いた騎士団長で現・学園長のハンニバル・シーザー様の後を引き継ぎ、その後のクラリオン騎士団を五大国に轟かせた立役者! 中心人物! そして、そのベクター様の妻であり、元騎士団副団長のジェーン・シュタイナー様が母親⋯⋯。は、はは、すげえ⋯⋯すごすぎるぜ。マジかよ⋯⋯、マジかよ、カイトォォォォォォォーーーーっ!!!! 今度、実家連れてけぇぇぇーーーー!!!! いや、マジで! マジでお願いしますぅぅぅーーーっ!!!!」
カイトの両親を熱く饒舌に語ったのは、まさかのカート・マロンだった。カートは、ああ見えて騎士団の歴史に詳しい。というより、はっきり言うと『騎士団オタク』である。
さらに、カイトの両親である『ベクター』と『ジェーン』の大ファンということもあって、このような発狂じみた状態となった。そして、そんな、カートの説明を聞いて周囲から様々な声が上がり始める。
「ま、まさか、あの、ベクター様とジェーン様のご子息だとは⋯⋯」
「うぉぉーー! マジか! 俺、惨禍の女王⋯⋯ジェーン様の大ファンなんですけどぉぉぉぉーーー!!!!」
「な、なんてこった!? あの二人の息子って⋯⋯⋯⋯そりゃ、強えーわけだわ」
「し、しかし⋯⋯かつての英雄であるお二人のご子息だなんて⋯⋯そんな『おめでたい話』をどうして国民である俺たちに一切知らされていないんだ?」
「バカ! できるわけねーだろっ! 今の騎士団の現状で! そもそも、今の騎士団を管轄しているのは、ベクター様を騎士団から追いやった張本人である、あの宰相様だぞ。そして、ベクター様が退団してからの十五年間、ベクター様の『栄光』や『ベクター様自身』を国民に知らせないようにしたのも宰相様だ。そりゃ、お二人の所在が俺たちに知らされるわけねーだろ!」
「え? そ、それじゃあ、今のカイト・シュタイナーの発言って⋯⋯⋯⋯やばくね?」
「ああ⋯⋯⋯⋯激ヤバだ」
そんな周囲の騒ぎの中、リリアナはさらにカイトに質問を続ける。
「⋯⋯な、なるほど。カイト、あなたのその強さ⋯⋯両親から教えられたものなのですね?」
観客も周囲もリリアナのように思っていたが
「⋯⋯違います」
否定。
「違う⋯⋯だとっ!? で、では、誰に習ってそこまで強くなったのですか?」
「⋯⋯独学」
「ど、独学!? ど、どうやって、独学でそんなに強くなったのですか?!」
「独自の、魔力コントロールで、魔力、増やしました⋯⋯」
「ど、独自の魔力コントロールで⋯⋯魔力を増やした⋯⋯ですって?!」
「⋯⋯はい。両親には、五歳まで、剣術、体術、魔法を教わってましたが、二人を超えてしまったので、入学までの、五年間は、魔物討伐も、兼ねて、一人で森に入って、独自で、訓練、してました」
「⋯⋯なっ!?」
「「「「「へ⋯⋯????」」」」」
リリアナ絶句。観客も絶句。それもそのはず、カイトの告白があまりに『ツッコミどころ』が多すぎた為である。
「え? え? ご、五歳で元騎士団長と副団長の教えを受け、さらにその二人を超えた? しかも、その後、独自訓練で魔物討伐を⋯⋯単騎で?」
「⋯⋯はい」
「そ、そん⋯⋯な⋯⋯そんなことが⋯⋯」
リリアナが驚くのも無理はなかった。魔物討伐は基本、騎士学園入学前に行うことは許されてないからだ。理由はもちろん危険だからである。
ただし、入学前に魔物討伐を認められるほどの実力を持つ子供⋯⋯例えばレイア姫のような実力者であれば入学前に魔物討伐に参加することもあるが、それでも集団参加での話である。
しかし、カイトの場合は⋯⋯⋯⋯『単騎』。これが如何に異常かということが、リリアナの絶句につながる。そして、
「お、おい⋯⋯今のマジかよ?」
「いやマジだろ? だって、カイト・シュタイナーは今、あのリリアナ様の魅了魔法をかけられているんだぜ? ハッタリなんてつけねーだろ」
「てことは、やばすぎだろ? カイト・シュタイナー? 五歳の時点で、あの元騎士団長と副団長を超える強さなんて⋯⋯しかも、その後は独自訓練で単騎で魔物討伐とか⋯⋯意味わかんねーよ」
生徒や観客もまた、カイトの告白に激しく動揺していた。無理もない。
「で、では、カイトのこの強さは、あなたが自分で生み出した独自の魔力コントロールによるものだと⋯⋯」
「⋯⋯はい」
「で、では! そ、その、カイト独自の魔力コントロール⋯⋯これがどういうものなのか⋯⋯教えなさい!」
「「「「「っ!!!!!!!!」」」」」
リリアナがカイトに出した命令に観客が大きく反応。カイトの発言に注目が集まる。
「⋯⋯それは」
「それは?」
「それは⋯⋯⋯⋯教えることはできないですね」
「っ!? あ、あなた⋯⋯」
「とりあえず、試合⋯⋯終わらせますね?」
「え?」
ニカッとイタズラな笑みを浮かべるカイト。そして、
トン。
「か⋯⋯っ!?」
ガク⋯⋯。
カイトは横にいるリリアナの首筋に手刀を当てる。一瞬で意識を刈り取られたリリアナは、そのままストンと膝から崩れ倒れた。
「レフリー⋯⋯」
「えっ?! あ、え、えーと⋯⋯リリアナ選手、気絶。よって、カ、カイト・シュタイナー選手の勝利⋯⋯です」
「いやー、危なかったー。ギリギリのところで魔法解くことができてよかったですー(棒)」
シーン⋯⋯。
「え? あ、えーと、だ、第六試合は⋯⋯リリアナ・ハルカラニ選手の相伝魔法を解いたカイト・シュタイナー選手の勝利⋯⋯でした。こ、これで⋯⋯決勝トーナメント一回戦はすべて終了⋯⋯です」
「ありがとうございましたー」
レフリー、司会のフェリシア、その他周囲の戸惑いやざわつきを特に気に留めることなく、カイトは一言挨拶すると、そのまま舞台裏へスタスタ帰っていった。
ざわ⋯⋯。
ざわざわざわ⋯⋯。
ざわざわざわざわ⋯⋯ざっわぁぁぁーーー!!!!
こうして、周囲に大きな疑問と波紋を残して、決勝トーナメント一回戦が終了した。
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