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第二章 騎士学園編
095「決勝トーナメント一回戦(5)」
しおりを挟む「それでは、第三試合⋯⋯⋯⋯はじめぇぇぇーーーー!!!!」
ゴーーーーン!
「火炎弾! 猛襲風刃!」
「な、何っ!? 魔法構築が早いっ!? そ、それに、それは⋯⋯!!!!」
試合開始直後——素早く右手と左手に火属性と風属性の中級魔法を同時展開するというガス特有の魔法展開。それは、
「合体魔法『死の輪舞』っ!!!!」
ガス・ジャガー、必殺の合体魔法『死の輪舞』が放たれることを意味する。
「な、なんだ、その威力はっ!? 以前とはまるで⋯⋯!!!!」
「この一発で⋯⋯⋯⋯決めるっ!!!!」
ガスが、まさかの先制攻撃でいきなりの必殺技である合体魔法『死の輪舞』を展開。かまいたちの刃を内包した火の竜巻がレイアに襲いかかる。
「くっ!?『光陣防壁』!」
カッ!
レイアはすぐに光属性の防御魔法『光陣防壁』を発動。発光したレイアの体が光に包まれる中、さらにレイアは腕を交差させ防御に全集中した。
ドドドドドド⋯⋯!!!!!
「ぐぐっ!? き、厳しい⋯⋯か」
「へっ! そんなんで俺のパワーアップした『死の輪舞』に耐えられると思ってるのかぁぁぁぁーーーー!!!!」
バキン! ガガガガガガガ⋯⋯!!!!!!
「うぐぁ⋯⋯っ!!!!」
レイアはガスの『死の輪舞』の威力を多少は殺したものの、すべてを相殺することはできずそのまま直撃を受け、その勢いのまま舞台の壁のほうまで一瞬で吹き飛ばされた。
「ワーン、ツー⋯⋯」
レフリーがカウントを取るが、レイアは起き上がらない。
(た、頼むぜ、おい。できれば、そのまま眠っていてくれよ⋯⋯姫様。こっちも限界近いんだからな)
ガスが心の中で呟く。そう、ガスの攻撃は奇襲であり、それは成功した。だが、今の攻撃にはかなりの魔力を注ぎ込んだ⋯⋯まさに『一撃必殺』の攻撃だった。
故に、ここでレイアが立ち上がるとかなりの苦境に立たされる為、ガスは祈るような気持ちでレイアがそのまま倒れることを願う。⋯⋯しかし、
「フォー、ファーイブ、シッ⋯⋯っ!?」
ユラ⋯⋯。
レイアがゆっくりと立ち上がると、それを見たガスが苦い顔をする。
「くっ!?⋯⋯あれを受けて立つかよ」
「破ーーーーーーっ!!!!!」
パン⋯⋯っ!!!!!
「っ!?」
立ち上がるや否や、レイアが両手で自分の頬を叩く。
「油断したっ!!!!」
バッ!
そう一言呟くと、舞台端の壁際から一足で飛んで舞台に戻った。
「ガス・ジャガー⋯⋯驚いたよ。強くなったな。前とは、まるで比べ物にもならないくらいに」
「フン、ありがとよ。ていうか俺的には、あれをほぼまともに受けて立っている姫様にビックリだよ」
「あいにく、私は体の頑丈さにも自信があるんでな」
「⋯⋯化け物め」
レイアは攻撃を耐えたものの、しかし彼女の体操着がかまいたちの刃で数カ所破れていた。
「⋯⋯一時中断だ、姫様。すぐに体操着を着替え直せよ」
「フン、不要だ。戦場では男も女も関係ない、気にするな。それよりも⋯⋯」
「?」
「⋯⋯今から全力でお前を叩きのめす」
「っ!?」
「耐えられるものなら耐えてみろっ! 破っ!」
「ぐっ!!!!」
ドン!!!!
超スピードで懐に飛び込んだレイアが両手でガスの巨躯を壁へと突き飛ばす⋯⋯が、ガスは驚きはしたものの、冷静にその勢いを利用して壁を地面代わりに蹴って、その反動で舞台へと戻ろうとした。
「へ! 突き飛ばしたからなんだってん⋯⋯⋯⋯なっ?!!!!!」
しかし、
「ここからだ。見事受け切ってみせよ、ガス・ジャガー! 鋭拳・一ノ型『百華撃』!」
壁まで突き飛ばしたガスが壁を利用して戻ることを予測していたレイアは、それに合わせてガスに向かって飛び出し、まさにカウンターのタイミングで空中で技を繰り出した。
ドガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!!!!!!
「がっ! ごっ! ぎっ!?」
「まだまだぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!!!!」
ドガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!!!!!!
レイアは空中でのカウンターの瞬間で、まさに技名の通り、百に近い連撃を無呼吸で打ち切り、そして着地。
そんな、一度に百に近い連撃を、しかも攻撃力が倍以上になるカウンターで食らったガスは、そのまま、また壁へと強烈に叩きつけられた。
「かは⋯⋯っ!?」
「勝負あり! レイア・クラリオンの勝利!」
「「「「「ワァァァァァァ!!!!!!!」」」」」
壁に叩きつけられたガスは気絶していたが、実際は壁に叩きつけられる前のレイアの攻撃ですでに意識を刈り取られていたようだ。
すぐに、治癒スタッフが駆け込みガスを手当てする。傷は治ったものの、しかしガスは気絶したままだった。それは、それだけレイアの武闘術の威力が高いということを物語っている。
「レ、レイア姫様⋯⋯かなり強いな」
カイトは、カイト式魔力コントロールで魔力量が上がったガスの必殺攻撃にも耐え、且つ、あの頑丈なガスの意識を刈り取るだけの武闘術に驚いていた。
「まーな。ガスは同年代で最強といわれているが、それでもレイア姫様に一度も勝ったことがないからな」
「!⋯⋯イグナス」
「チッ! カイト式魔力コントロールを習得してから一段と力を増したあのガスの合体魔法『死の輪舞』に耐えられるとか、正直、信じられねーよ。カイト式魔力コントロール習得しないでその強さとか⋯⋯レイア姫様、やば過ぎだろっ!」
「イグナス、王族の人たちってみんなレイア姫様のように強いの?」
「まあ、王族は例外なく魔力量が豊富だ。それがベースだ。そして、魔力量が豊富だと、身体能力はもちろん、武闘術なんかのセンスも高くなるから結果、王族は誰もが強い。だがしかし、その中でもレイア姫様は⋯⋯⋯⋯別格だ」
「そ、そうか」
まーさすがに、レイア姫レベルが王族の魔力量の『平均』だとしたら、ここまでこの国の武力も低下していないか。
ん? あれ? ちょっと待て。今、イグナス⋯⋯なんつった?
「お、おい、イグナス。さっき言ったことだけど⋯⋯」
「? レイア姫の強さの話か?」
「その前!『魔力量が豊富だと、身体能力はもちろん、武闘術なんかのセンスも高くなる』ていう話。あれ本当なの?!」
「え? あ、ああ。魔力量が豊富であればあるほど、身体能力や格闘センス、魔法センスなんかも影響を受けて高くなる。常識だろ?」
「常識なの!?」
俺は、神様からもらった能力⋯⋯『魔力膨大』が、この世界で『いかにチートであるか』をまた一つ学びました。
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