84 / 145
第二章 騎士学園編
084「予選トーナメント三回戦(8)」
しおりを挟む「下克上! 下克上です! 第七試合で下克上ぉぉ!!! しかも、平民の生徒が上級貴族を圧倒して破るという⋯⋯前代未聞の事態となりましたぁぁぁぁぁぁぁ!!!!! ちょ!? これ、マジどうすんのよぉぉーーー!!!!」
「「「「「⋯⋯⋯⋯」」」」」
会場は、司会のフェリシアの『アイドル』ではない素のフェリシア・ジャスミンの声が響くだけで、観覧席からは歓声もなく、ただ、静まり返っていた。
「な⋯⋯なんだ、あの生徒は?」
「名前はウキョウ⋯⋯と。姓はなかった」
「ああ⋯⋯つまり、ただの『平民』の生徒てことだ」
「こ、こんな、下克上が起こるとは⋯⋯」
「い、いくら、動天世代と言われる一回生とはいえ、平民にそのような実力者がいたとは⋯⋯!?」
観客席からは、歓声など一切なく、ただ、目の前の試合結果という『現実』に理解が追いついていなかった。それだけ『前代未聞の結果』ということである。
「⋯⋯な、何者⋯⋯でしょうか?」
俺はさっきまで『ひざまくら』をしていたが試合結果に驚き飛び起きたレイア姫に呟いた。
「わ、わからん。私もあの平民の生徒など⋯⋯全くのノーマークだった」
レイア姫もまた、この試合結果に目を白黒させている。
「これまでの大会で、平民が上級貴族を破るということはあったんですか?」
「い、いや、聞いたことがない。そもそも⋯⋯」
そう言って、レイア姫がいろいろと説明をしてくれた。
——————————————————
【レイア姫の説明】
・この世界で『貴族』と『平民』を大きく分けるのは『魔力量』で、魔力量が豊富であればあるほど、使用する魔法の数はもちろん、魔法威力も増す
・また、魔力量は『剣術』や『武闘術』にも影響を及ぶす。剣術も武闘術も『身体強化』が基本となり、さらに魔法効果も付与できるので、魔力量の差は実力の差にもなってくる
・そして、魔力量が豊富なのは王族や貴族で、平民の魔力量とは数十倍もの差がある。その為、貴族の中の下級貴族が上級貴族を倒す『下克上』はあっても、平民の下克上というのはこれまでの記録にはないはずだ
・たしかに、平民でもたまに魔力量の豊富な生徒が出てくるが、それでも下級貴族と良い勝負する程度。最もそれはそれで凄いことである
・よって、生活魔法程度しか扱えない平民が上級貴族を下すというこの試合結果が、いかに、常識を外れているかということだ
——————————————————
「なるほど。しかも、このウキョウという生徒⋯⋯その上級貴族の生徒相手に圧倒して勝ってましたね」
「うむ。しかも圧倒どころか一撃だった。先制したのは上級貴族の生徒だったにも関わらず、彼の攻撃が入る瞬間、目の前から消え、気づけば、背後から意識を刈り取っていた」
「ええ。もの凄いスピードで背後に回りましたね」
「⋯⋯正直、わたしはその奴の移動の軌跡を確認することはできなかったが⋯⋯⋯⋯カイトは見えていたんだな?」
「っ!? え、ええ、まあ⋯⋯」
俺は一瞬、「まずいこと言ったか?」と思ったが、「まあ、今さら隠さなくてもいいだろう」と開き直る。
「そうか、流石だな」
レイア姫がフッと笑う。
「それにしても、このウキョウという生徒、Cクラスのようだがカイトは知っているか?」
「い、いえ、僕も知らなかったです」
「ふむ。これほどの実力者が『平民』にいたとは。本来なら決勝トーナメントに備えてそろそろ準備しようとしていたが、このまま残りの試合もここで一緒に見てもいいか?」
「え?! あ、は、はい! もちろんです」
「⋯⋯ありがとう」
俺にとっては、目の前のレイア姫との交流が(しかも『ひざまくら』有り)、さっきの試合結果よりも重要案件だった。それにしても、レイア姫といつも一緒にいる『護衛』の生徒たちはどこに行ったのだろう?
「あ、あのレイア姫様。いつも一緒にいる護衛の方は?」
「お、おお! カ、カイト! 見ろ! 次の試合が始まるぞ!」
「え⋯⋯? あ、ああ、そうですね」
何だか誤魔化している感、満載だったが、俺は別に構わない⋯⋯というか、このままで一向に構わないのでそのまま誤魔化されることにした。
********************
「さ、先ほどの波乱の試合結果により、いまだ観覧席も先生方も動揺していますが、まだ試合は残っているのでこのまま予選トーナメントを進行します。それでは第八試合を開始しますので、ジェヌス・ピレリ、サラ選手は入場してください」
フェリシモ自身も若干動揺気味ではあるものの、『プロ根性?』を見せて、予選を進行した。
「あ⋯⋯! ステルス系幸薄美少女⋯⋯」
「え? な、何ですか? び、びびび、美少女⋯⋯?! あ、あ、あの舞台にいる女子生徒は、し、しし、知り合いなのか? それとも、こ、ここここ、恋人なのかぁぁぁぁ!!!!」
レイア姫のテンションがいきなりボアアップし、俺の胸ぐらを掴んで首をガクンガクン揺らしながら聞いてきた。
「い、いいい、いえ! そ、そんな訳ありません! た、たたた、ただのクラスメートですっ!!!!」
俺は首をシャウトしながら、全力で否定する。
「そ! そそそ、そうか! ただのクラスメートか! ふ、ふーん⋯⋯」
レイア姫はそう言うと、何とか胸ぐらから手を離してくれた。それにしてもすごい力だ。
「と、ところで! あの女子生徒の名は『サラ』とだけ司会が言っていたようだが、ということは、あの子も『平民』の子なのか?」
「はい」
「⋯⋯⋯⋯ま、まさか。い、いいい、いや、そんなことはないか!」
「ええ、そうですよ、レイア姫様。流石にいくら何でも二度も平民の生徒が上級貴族を負かすなんてこと、あるわけないですよ~」
「そ、そうだよな、はっはっは。いやまったく私としたことが⋯⋯。そんなさっきのような下克上などあるわけがない」
「ええ、そうですよ」
おっと。何やら『フラグ』のような気がしてならない。
「それでは、第八試合⋯⋯⋯⋯はじめーーーっ!!!!!」
1
お気に入りに追加
427
あなたにおすすめの小説
転生してテイマーになった僕の異世界冒険譚
ノデミチ
ファンタジー
田中六朗、18歳。
原因不明の発熱が続き、ほぼ寝たきりの生活。結果死亡。
気が付けば異世界。10歳の少年に!
女神が現れ話を聞くと、六朗は本来、この異世界ルーセリアに生まれるはずが、間違えて地球に生まれてしまったとの事。莫大な魔力を持ったが為に、地球では使う事が出来ず魔力過多で燃え尽きてしまったらしい。
お詫びの転生ということで、病気にならないチートな身体と莫大な魔力を授かり、「この世界では思う存分人生を楽しんでください」と。
寝たきりだった六朗は、ライトノベルやゲームが大好き。今、自分がその世界にいる!
勇者? 王様? 何になる? ライトノベルで好きだった「魔物使い=モンスターテイマー」をやってみよう!
六朗=ロックと名乗り、チートな身体と莫大な魔力で異世界を自由に生きる!
カクヨムでも公開しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
F級スキル持ちのモブ陰キャ、諦めきれず毎日のようにダンジョンに潜ってたら【Lv.99999】まで急成長して敵がいなくなりました
藍坂いつき
ファンタジー
ある日、世界に突如として現れた迷宮区《ダンジョン》と呼ばれる謎の地下迷宮。
同時にスキルと呼ばれる異能の能力、レベルという概念までが現れた。
各国の政府機関は国連と結託し、探索者ギルトというものを設立し、大探索者時代が到来する。
そんな中、長年引きこもりニート生活を極めていた高校生「國田元春」はニート生活から脱却すべく探索者免許を手に入れたのだが……開眼したスキルはF級と呼ばれる一番弱いスキルだった。
しかし、そのスキルには秘密があった。
それは、レベルが99999になると言うバグが発生すると言うもので……。
「え、俺のレベル高すぎない??」
※筆者は長年ラブコメを書いている恋愛厨です。恋愛要素が多く、ファンタジーが上手いわけではありません。お手柔らかにお願いします。
※カクヨムからの転載になります。カクヨムでは3000フォロワー、☆1000突破しました!
HOTランキングトップ5入りありがとうございます!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜
ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。
社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。
せめて「男」になって死にたかった……
そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった!
もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる