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第二章 騎士学園編

070「動天世代(アストロ・エイジ)と序列」

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「さて、もう一つ、今回の大会について話がある。カイト君は『動天世代アストロ・エイジ』という言葉を聞いたことはあるかな?」
動天世代アストロ・エイジ?」
「うむ。今年の一回生は近年、稀に見る実力者が揃っていてな。そういった世代のことを動天世代アストロ・エイジと呼んでおる」
「へー」
「ちなみに、カイト君はもともとそれには含まれていなかったのだがな。というのも、この動天世代アストロ・エイジと呼ばれる生徒たちは『前評判がある生徒』のことを指しているからの。まあ、合同魔法授業の一件から、カイト君も動天世代アストロ・エイジの一人として急遽見られることになっただろうがのぉ~」
「おいおい、大丈夫なのか? 俺みたいな前評判のない生徒を『シード枠』として担ぎ上げて?」
「ふぉふぉふぉ。だからより面白いんじゃよ」
「ふーん⋯⋯あ、そ」

 まあ、学園長本人がそれでいいのならいいか。

「カイト君にはもちろん優勝してほしいが、しかし『超級魔法を禁止』されている縛り・・の中で、そう簡単には勝たせてくれんと思うぞ?」
「いやいやいや。超級魔法を禁止しといてよくもそんなセリフをいけしゃあしゃあと。あんたは俺に本当に優勝させたいのか?」
「ふぉふぉふぉ。まあ、超級魔法については申し訳ないが、ただ、私個人としては、それでもいける・・・と思っとるぞ?」
「割合は?」
「4:6」

 おいおい、勝率予想、半分切ってんじゃねーか。

「まあ、懸念材料としては、カイト君以外で『前評判のない生徒』が決勝トーナメントに勝ち上がってくるようなことがあったら、カイト君の優勝もわからない⋯⋯といったところか」

 なるほど。たしかに把握していない『隠れた実力者の存在』がいれば、それは脅威だろうな。

「とりあえず、この動天世代アストロ・エイジて言われている奴らを教えてくれよ」
「そうじゃな。まあ、入学初日にAクラスに配置された生徒たちは少なくとも動天世代アストロ・エイジと呼ばれる生徒じゃ」
「じゃあ、ガス・ジャガーとかディーノとかカートなんかもそうなの?」
「そうじゃ。ちなみにガス・ジャガー君はこの動天世代アストロ・エイジの中でも優勝候補の一人として上げられるほどの実力者じゃ」
「へー」
「それもあるから、カイト君を『シード枠』として担ぎ上げられるんじゃよ?」
「なるほど」
「現在のAクラスは十名ほどだが、残りの七人のうち、特に注目するべきはハルカラニ家のリリアナ・ハルカラニ君、そして、レイア・クラリオン⋯⋯レイア姫様じゃろうな」
「え? レイア姫って強いんですか?」
「ふぉふぉふぉ。レイア姫様は外見によらず、かなりの実力者じゃぞ? しかも、得意なものは魔法ではなく、武闘術じゃからな」
「えっ!? 武闘術っ!! お、お姫様だよね? サイドテール美少女のレイア姫様だよね? あの子、武闘術得意な実力者なのっ!?」
「うむ。しかも魔法は得意じゃないと言っているが、実際、二つくらいは上級魔法が使えるらしいぞ?」
「お、おぅ⋯⋯」

 マジか。レイア姫様、ぱねーな!

「あと、実はAクラス以外にも何名か・・・気になる生徒もおるが、これは⋯⋯まあ⋯⋯伏せておくかのぉ~」
「はっ!? な、なんでだよ! 教えろよ!」
「ふぉふぉふぉ。試合は『予測不能』のほうが面白いじゃろ?」
「いやいやいや! 出る方の身にもなれよ! 情報は一つでも欲しいって!」
「えー、つまんなーい」

 いや、五歳児か!

「はーーーー。まあ、いいや。どうせ、ゴネても教えてくれないんだろ?」
「うむ。理解が早くて助かる」

 やかましいわ。

「ところでカイト君。君⋯⋯『序列』は知ってるよね?」
「『序列』?」
「ふむ。知らんか。『序列』とはな、クラス編成トーナメントで決まった後の『ABC各クラスの生徒十人』にだけ与えられる『称号』みたいなもんじゃ」
「称号?」
「ふむ。知らぬか⋯⋯」

 ということで、学園長直々に『序列』について教えてもらった。

——————————————————

【序列】

・『序列』はABC各クラスで『トップから十人』までの生徒に与えられる
・『称号』は『序列一位』からはじまり『序列十位』という称号名で与えられる
・それ以外のBクラス、Cクラスの生徒の『序列』については、個人間で『序列決闘ランク・デュエル』というやり方で決める(ただし、必要ないと思えば断ることは可能。両者の同意が必要)
・『序列決闘ランク・デュエル』は、下位のクラスの生徒が、Aクラスの生徒に対して仕掛けるのも可能(Aクラスの生徒は下位のクラスからの序列決闘ランク・デュエルは断れない)
・『序列決闘ランク・デュエル』は、Aクラスの生徒同士でも可能(両者の同意が必要)
・『序列決闘ランク・デュエル』を仕掛けた者は、その後一年間は自分から序列決闘ランク・デュエルは申し込めない(挑戦は受けることは可能)

——————————————————

「うわ~⋯⋯何これ? これってさ、大会終わってからも序列決闘ランク・デュエルていう、要するに喧嘩・・を吹っかけられ続けるってことだよな?」
「うむ。これもまた、この騎士学園の誇れる伝統であるからのぉ~」
「いやいやいや! それだったら入学資料にちゃんと書いといてくれよ!」
「いや~、あまりにも当たり前のことじゃからの。入学資料にわざわざ書くほどでもないし⋯⋯ていうか、『序列』のことも知らないなんていまどき珍しいのぉ~。『子供教室』に通っていれば、騎士学園の『序列』の話なんてよく聞くと思うのじゃが⋯⋯」
「あ、俺、『子供教室』行ってないんで⋯⋯」
「ほう? そりゃまた、なぜ?」
「まあ、自主訓練を森で少々⋯⋯」
「なるほど、なるほど。その頃からすでに『規格外』ということか。そりゃ、すまなんだ」

 つまり、『食○のソーマ』でいうところの『食○システム』ということですね。わかります。

 そんな感じで『序列』については何となく理解した。

「とにかく、まあ、優勝目指して頑張るように」
「うわ~。すげ~他人事満載な励まし方~」

 そうして俺は、学園長から『シード枠』をもらって大いに目立った上で、『超級魔法禁止』という縛りの中、大会に優勝するという⋯⋯中々の要求をいただき、学園長室を後にした。

——二日後『一回生クラス編成トーナメント』が幕を開けた。
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