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第二章 騎士学園編

065「魔力特訓(5)」

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「はい、皆さん、ちゅーもーく!」
「なによ?」
「どした、ザック?」
「カイトがふてくされてまーす」
「「「「⋯⋯は?」」」」

「(ズーーーーン)俺なんて⋯⋯俺なんて⋯⋯しょせん⋯⋯ドジでノロマな亀だよな⋯⋯」

 俺は『スチュ○ーデス物語』の『堀○えみ』ばりに、落ち込み具合を皆に絶賛アピっていた。

「うわー、マジかよ⋯⋯」
「ちょ、ちょっと、カート様! そんなリアクションしないでくださいよ! カイトが余計落ち込みますから!」
「いやだってよー。イグナスが習得したんだから喜ぶのは普通だし、カイトも一緒に普通に混ざればよかったじゃねーか」
「そ、それを言っちゃダメです! カイトはかまってほしいんですから!」
「⋯⋯おい、ザック。お前が一番、クリティカルに非道いこと言ってるぞ?」
「⋯⋯あ」
「ザ、ザッきゅんのバカーーーっ!!!!」


********************


「⋯⋯とまあ、茶番はこのくらいにして、それにしても思っていた以上に『マンガ』の効果があって俺自身ビックリしてます」

 カイトは、悲しみを乗り越えて、再び話を始めた。

「で! ここで、一つ気になることがあるのでそれも試してみたいと思います。ガス、次はお前がマンガを読んでみてくれ」
「お? いいのか、俺で? シャテーの序列でいったら、次はザックじゃないのか?」

 お? こいつ、やっぱ律儀だよな、こういうところ。いいね!

「いや、とりあえず、確かめたい・・・・・ことがあるからガスが先に試して欲しい。いいよな、ザック?」
「もちろん! ガス様、先にどうぞ」
「そうか。わかった、ありがとう」

 そう言って、ガスにマンガを渡し読んでもらった。

——三分後

「どうだ、ガス?」
「⋯⋯師匠。俺は必ず⋯⋯必ず⋯⋯成功してみせる。見ててくれ!」

 おっと。どうやらガスも中々の厨二病才能の持ち主のようだ。しかし⋯⋯うまくいくかな?

「うぉぉぉぉぉぉ~~~!!!!」

 ガスもまたイグナスと同じように、体内で魔力循環をやり始めた。しかし、

「んん?! ちょ、え⋯⋯? あ、あれ⋯⋯? これ、どうすりゃ⋯⋯いいんだ?」

 ふむ。やはり、予想どおりの反応だな。


********************


「え? 魔力を圧縮?」
「ああ」

 俺はガスだけでなく全員に向けて説明をする。

「これは俺も経験したものだし、いずれ、他の奴らも必要となることだから聞いてくれ。まず、ガス⋯⋯今、お前がうまくいかなかったのは『魔力の球体』が確認できなかったからだよな?」
「あ、ああ」
「その理由は、上級貴族くらいになると『魔力の球体』の大きさが下腹部を遥かに超えて、体全体に魔力が広がっているため、『魔力』が『球体』となっていないからこういう結果になるんだ。これは一見、魔力が多いように感じるだろうが、実は、それは広がっているだけで『魔力の濃さ』としては⋯⋯薄い」
「薄い? 魔力の濃さ? な、なんだ、そりゃ?」
「ズバリ!『魔力の濃さ』は『魔法の威力』に比例する」
「「「「「えっ?!」」」」」

 皆、知らなかったようで一様に驚いている。そりゃ、そうだろう。俺が家で読んでいた魔法や魔力に関する書物にはそんなことは書いていなかったもの。

 俺が気づいたのは、ズバリ『なろう脳』⋯⋯つまり前世の『アニメやマンガの知識』によるものだった。マンガやアニメでは『魔力濃度』と『魔法の威力』が比例するのはよくあるネタの一つでもあったので、俺は最初、魔力コントロールを試したとき、同時にこの『魔力濃度』の可能性も探っていた。すると、この世界でも『魔力濃度=魔法威力』であることを発見した。

 それにしても、俺が今みんなに教えている魔力コントロールは、生後六ヶ月のときに数時間でできた。最初はそういうものかと思っていたが、その後、この世界の魔力コントロールの常識を知ったとき、自分は特殊なんだと理解した。

 そして、その特殊な理由というのが、おそらく神様から貰った『魔力膨大インフレーション』によるものだろうと俺は結論づけている。

 そうなってくると、このスキル『魔力膨大インフレーション』は、『魔力に関するもの』でまだ発見していない効果が他にもあるんじゃないかと俺は考えているので、今後もその辺のアンテナは張っていく所存である。

 まあ、とにかく、そんなわけで、この世界では『魔力濃度=魔法威力』は『未知の理論』であるため、皆が知らないのも、驚愕するのも、無理もない話である。

「三日前——このことをガスたちに話さなかったのは単純に俺がど忘れしていたのもあるが、まあ、その頃は魔力循環のイメージさえ掴めてなかったから問題ないだろう。で、今はというと、とりあえずマンガを読んでガスも魔力循環のイメージは掴めたと俺は感じている。ただ、そうなると、ガスやディーノ、カートといった上級貴族組はまず、この『魔力圧縮』を成功させなきゃいけない」
「マ、マジかよ⋯⋯」
「ただ、これは後にイグナスやザックも必要となるものだ。理由は、この魔力循環ができるようになると『魔法の威力』が上がるだけでなく『魔力量』も増えていくからだ。だから、見方を変えれば、ガスたちは『魔力圧縮』さえできるようになれば、マンガで魔力循環のイメージは掴めているからすぐにイグナスやザックたちに追いつく、あるいは、追い越す可能性だってあると思うぞ?」
「おお! マジか!」
「ああ。だから、ガスとディーノとカートは魔力を自分の下腹部に『球体』となるまで圧縮してみてくれ。もし、うまくイメージできなさそうなら、それも『マンガ』にしてやるよ」
「わ、わかった⋯⋯」

 そう言って、ガスが魔力圧縮を始め、ディーノとカートはマンガを読んで魔力循環のイメージを掴んだ後、ガスと同じように魔力圧縮を始めた。ちなみにこの二人も厨二病全開だったのは言うまでもない。

 その後ザックにもマンガを読ませた。すると、ザックもまたみんなと同じく『厨二病』の才能を見せ、魔力循環のイメージを掴み、カイト式魔力コントロールをすぐに習得した。やはり、魔力量の少ないザックとイグナスの二人は魔力循環の習得が他の奴らに比べてかなり早かった。

 それにしても、最初イグナスだけが厨二病なのかと思ったが、他のみんなも同じようにマンガの影響を受けて『主人公』のごとき振る舞いを見せた。

 もしかすると、この世界の男の子は『マンガ』の影響を受けやすい『厨二病脳』で構成されているのかもしれない。実際、神様も『異世界転生システムは日本人の厨二病発想が原点』と言っていたしな。

 となると、今、俺が『魔力循環のイメージ』として利用したこの『マンガ』は、いろいろと使い道があるかもしれない。少し時間ができたら『マンガ』の使い道も考えてみよう。

 そんなことを考えながら、俺はガスたち『上級貴族組』に魔力圧縮のコツを教えた。

——三時間後

 結局、この日ガスたち上級貴族組は誰も魔力圧縮に成功しなかった。ちなみに、俺の『世界一かわいい妹アシュリー』は魔力圧縮は、少し教えただけですぐに出来ていたのでガスたちもすぐにできるかと思っていたが、そんなことはなかった。

 まあ、うちの妹は『世界一かわいい天才』なので仕方ない。

 しかし、次の日から訓練を続けていくと三日後にガスが、一週間後にディーノ、そしてディーノのさらに三日後にカートが魔力圧縮を成功させ、その後のカイト式魔力コントロールもあっさりと習得した。

 こうして『クラス編成トーナメント』大会三日前に、なんとか全員が『カイト式魔力コントロール』の習得に成功した。
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