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第二章 騎士学園編
058「モテキ到来?(尚、いらないモテキも含まれる模様)前編」
しおりを挟む——次の日
俺はいつものように寮から校舎へと向かった。すると、
「あ! あいつだ! あいつが例の⋯⋯カイト・シュタイナーだ!」
「あの子よ! あのガス・ジャガーが認めたっていう下級貴族の一回生っ!」
学園に来ると何やら異様な雰囲気に包まれていた。というか、やたら周囲の生徒に顔を見られては「ヒソヒソ」と何か話し合っている。
うん。この周囲の反応、間違いなく、昨日レコが言っていた『合同魔法授業』が原因だよね。まあ、ある程度はこうなることは予想していたけど、想像以上の反応で俺自身も少し戸惑っている。
それにしても合同魔法授業では色々あったけど、何と言っても第二王女のレイア姫とお近づきになれたのはラッキーだったな。
しかし、不思議なもんで見た目はドストライクのサイドテール美少女のはずなのに、レイア姫から話しかけられた時、なぜかすぐにピンと来なかった。それどころか、体が無意識に『警戒』をしていた。まるで『獲物を虎視眈々と狙っている』ような⋯⋯。なぜだろう、不思議だ。
さて、そんなことを考えつつ、教室へ足を踏み入れると、その瞬間一斉に皆が俺に注目した。
「お、おはよう⋯⋯ございます⋯⋯」
教室の空気が一変したことを感じつつ、自席へとすごすご向かうと、
「カイト! 昨日はどうしたんだ?!」
「おい、カイト! もしかして合同魔法授業で体調崩したのか?!」
ザックとイグナスが俺に詰め寄った。
「え? あ、いや、まあ、うん。ちょっとね⋯⋯でも、今はもう何でもないよ」
「そうか、よかった」
「馬鹿野郎! あんま心配させんじゃねーよ」
「あ、うん」
どうやら、合同魔法授業の翌日に休んだということもあって、二人は俺の体調を心配していたようだ。イグナスのツンデレ振りが加速しているようだな。さて、
「ところで、昨日は何か変わったことでもあった?」
「「あった! ていうか、お前がその原因だ」」
そう言って、ザックとイグナスが色々細かく説明してくれた。
——————————————————
【昨日、学園であったこと】
・朝から合同魔法授業で俺が『ガス・ジャガーを圧倒した』ことや『超級魔法の使い手じゃないか?』という話題で、一回生だけでなく上級生も含めて学園全体でその話で持ちきりだった
・上級生が何人も教室の中を見にきたり、「カイト・シュタイナーはいるか?」と尋ねる人が後を絶たなかった
・学園長室に騎士団長のアルフレッド・ヴェントレーが来て、合同魔法授業に居合わせていた先生方を呼んで事情聴取していた
・ガス・ジャガーが俺に「舎弟になりたい」と言ってきた
——————————————————
ふむ、ふむ⋯⋯。昨日レコから話を聞いた内容と同じ⋯⋯んんっ?! な、なんだ?『ガス・ジャガーが俺に「舎弟になりたい」と言ってきた』だと? どゆことぉ~????
「昨日、ガス・ジャガーが俺のところに来てな⋯⋯」
イグナスの話によると、どうやら、俺の圧倒的な力に惚れたらしく、合同魔法授業のときに俺が言っていた『シャテー』というものに入れて欲しいとのことだった。
「おい、イグナス! 俺をお前らのBL展開に巻き込むんじゃねー!」
「いや、意味わかんねーよ! てか、リビドーってなんだよ?! それに俺だって断ったんだぞ!『シャテーって、上級貴族が下級貴族の下に付くってことだぞ!』てな。でも、奴は『いいじゃねーか! 俺は本当に強い奴ならそいつの下につくのは全然構わねーし、何よりお前らといるとこれから楽しくなりそうだしな!』とか言って、全然話にならなかったんだよ!」
うーん、これってどうなんだ? たしかガス・ジャガーはイグナスとは親同士が敵対関係にあると言ってたしな⋯⋯。
「⋯⋯正直、僕は別に構わないけど、でも⋯⋯イグナスはどう?」
「え?」
「イグナスがガス⋯⋯ガス・ジャガー様のことを嫌いならもちろんこの話ははっきりと断るけど⋯⋯」
「あ、いや、まあ、べ、別に、俺もあいつのことはそこまで嫌いではないが⋯⋯」
「そうなの? でも、合同魔法授業でイグナスの悪口を散々言っていたじゃないか」
「ま、まあ、そうなんだが⋯⋯」
「?」
俺はどうにも歯切れの悪い⋯⋯というか、正直、イグナスがそこまでガスのことを嫌っていないように感じた。どゆことだってばよ?
「助けて、ザッきゅん」
「ザッきゅん、やめろ」
ということで、我がチームの諜報部隊隊長であるザック・カーマイン隊長(通称:ザッきゅん隊長)にお話を伺った。
「えーと、イグナスとガス・ジャガー様はたしかに親同士は敵対関係にあるんだけど、個人間では実はそうでもないんだ」
「え? そうなの?」
「お、おい、やめろよ、ザック!」
「いや、これはちゃんと言わなきゃ、イグナス。実はね、カイト⋯⋯」
そう言って、ザックが話を始める。どうやら、ガスとイグナスは小さい頃はお互いを『親友』と呼ぶ仲だったそうだ。しかし、
「⋯⋯でも、ザックが上級貴族の子供は通うことのない、平民や下級貴族といった身分の低い子供が通う『子供教室』に通うことになったと聞いて、ガスがイグナスに一方的に『絶交だ!』と言って会うことは無くなったんだ」
「ん? それじゃあ、やっぱりガス・ジャガー様は嫌な奴てことじゃないの?」
「そうじゃないんだ、カイト。実はガス・ジャガー様はイグナスの魔法センスや武闘センスをすごく認めていたんだよ。でも、この『子供教室』に行くことになった理由が『イグナスの魔力量が上級貴族にしては少な過ぎる』ということでイグナスの親が強制的に『子供教室』に通わせたということを知って、ショックだったんだよ。『どうして魔法も武闘術も俺よりセンスがあるのに魔力量が少ないってだけで、イグナスがこんなひどい扱いを受けなきゃ何ないんだ!』てね」
「え? マジ?」
「ああ。ちなみにこの事はガス・ジャガー様から直接教えてもらったんだ。『カイト・シュタイナーのシャテーになる判断材料として活用して欲しい』て言われてね」
「そう⋯⋯なんだ」
いやいや、あれ~~~???? ガス・ジャガー、めっちゃいい奴やん? 男前ですやん? でも、合同魔法授業ではあれだけイグナスのことを罵倒していたのに⋯⋯。でも、今のザックの話から考えれば、ガスは逆にイグナスのことが好き過ぎて愛情が変な方向へ向いてしまったってことなのか? うーむ、わからん。まったく⋯⋯こんなBL恋愛事情など俺の範疇ではないので勘弁願いたいものである。ていうか、
「ザックはそれでいいのか?」
「え?」
「だから~、ガス・ジャガー様がシャテーになると~、ザック、イグナス、ガス・ジャガー様の三角関係てことになるんだよ? 波乱模様だよ?」
「ん? どういうこと? 三角関係て何? ていうか、別に俺としてはガス・ジャガー様を『シャテー』にしてあげて欲しいと思っているんだけど?」
「⋯⋯そっか。茨の道を行くか、ザッきゅん」
まあ、それもまたザッきゅんが選んだ道なら仕方あるまい。俺は草葉の陰からソッと見守ってあげよう。
「わかった。じゃあ、ガス・ジャガー様を舎弟にしよう。あ、でも⋯⋯イグナスはそれでいいのか?」
おっと、そうだった。イグイグの本心も聞いておかねば。
「べ、別に! お、おお、俺は、どっちでも構わねーよ!」
「ふーん? 本当は嬉しいくせに」
「う、ううう、うるせーなー、ザック! 別に嬉しくなんかねーよ、馬鹿野郎っ!!!!」
うんうん。聞くだけ野暮だったね、イグイグ。
ということで、ガス・ジャガーが舎弟となることが決定しました。
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