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第二章 騎士学園編

055「揺れる騎士学園〜第三者side〜(3)」

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【学園長室side】

——放課後

「さて、本日皆に集まってもらったのは他でもないカイト・シュタイナー君についての話じゃ」

 現在、学園長室にいるのは学園長ハンニバル・シーザーと、騎士団長アルフレッド・ヴェントレー、Cクラスの魔法授業を担任するレコ・キャスヴェリー、そして⋯⋯、

「あら? 私もですか、学園長?」

 一回生Cクラス担任で武闘術担任のアンジェラ・ガリウス。

「もちろん。お主はCクラスの担任じゃろが」
「あら? そうでしたね⋯⋯フフフ」

 相変わらず、とぼけた態度を示すアンジェラ。そして、

「が、学園長。騎士団長のアルフレッド・ヴェントレー様がここにいらっしゃるのは⋯⋯一体どういう集まりなのですか、これは?」
「はわわ⋯⋯何か嫌な予感しかしないですぅ~」

 Aクラスの担任と魔法授業を担任する、少し頭頂部がお禿げになられている『ふくよかぽっこり体型』のニコラス・タンゼントと、Bクラスの担任と魔法授業を担任する、ピンクのおさげ髪でパッと見、幼女だがちゃんと成人している、いわゆる『合法ロリ』のミモザ・ジャガーといった⋯⋯昨日の一回生の『合同魔法授業』でその場にいた二人のクラス担任も呼び出されていた。

 その中でAクラス担任のニコラスは、騎士団長がこの場にいることに怪訝な表情をしていたので、すかさずニコラスに学園長が説明する。

「ニコラス先生、実は今回の集まりはアルフレッド君が昨日の一回生の合同魔法授業についての話を、その場にいた先生方から直接聞きたいということでこの場を設けさせた次第なのじゃよ」
「はい。突然、押しかけてしまい申し訳ございません」
「なるほど、そうでしたか! あ、いえ、そういうことでしたら、こちらも全面的に協力させていただきます」
「ありがとうございます」

 ハンニバルが、ニコラスにアルフレッドの同席の理由と今回の集まりの主旨を告げたことで誤解が溶ける。その後、職員がお茶を持ってきたので皆で一度口に含み、場が落ち着いた後、改めて昨日の合同魔法授業の話が始まった。

「⋯⋯つまり、カイト・シュタイナー君が昨日、超級魔法を打とうとしていたという話⋯⋯いわゆる『超級魔法の使い手』だという噂は誤りだということですか?」
「ええ、その通りです。あれは魔力が単に暴走していただけに過ぎないと私は思います。どう考えても、下級貴族が超級魔法を使うなどというのはあり得ませんからね。はっはっは!」

 ニコラスはカイトのあの『巨大化した炎の塊』は単なる魔力暴走だと説明すると同時に、常識的にも下級貴族の、しかも一回生の生徒が『超級魔法の使い手』などというのは、あまりに現実離れしており話にならないとも付け足し説明した。

「はわわ⋯⋯。そ、そう、ですね。私も見ていましたが、あれは魔力暴走だったのではないかと⋯⋯。でも、その魔力暴走を抑えたカイト・シュタイナー君は、それはそれで魔力コントロールに長けている優秀な子だと感心しましたぁ~」

 ミモザは、魔力暴走を抑えたカイトは魔力コントロールに長けた優秀な子だとほんわかと感心しながら説明した。

「わ、私はかなり近くで⋯⋯カイト・シュタイナー君を見ていましたが、あ、あれは⋯⋯あれは魔力暴走だったと⋯⋯思います⋯⋯です」

 そうして、レコもまた・・・・・アルフレッドに「あれは単なる魔力暴走だった」と説明する。

「⋯⋯ふむ。ニコラス先生、ミモザ先生、レコ君⋯⋯失礼、レコ先生⋯⋯ともに、カイト・シュタイナーが『超級魔法を使おうとしたというのは誤りで、あれは単なる魔力暴走だった』とのことですが、アンジェラ先生はいかがですか? たしか、現場でアンジェラ先生が『超級魔法を打とうとしている』と言って、生徒に避難するよう指示したと聞いているのですが⋯⋯?」

 アルフレッドが、注意深くゆっくりとアンジェラ・ガリウスに質問をする。すると、

「いや~申し訳ない! たしかに現場では『カイト・シュタイナーが超級魔法『極致炎壊フレア・バースト』を打とうとしている』と思ったのですが、あれは私の単なる勘違いでした。いやはや、お恥ずかしい~!」

 アンジェラは、あっけらかんと笑いながら自分の発言が誤りだったことをあっさり認めた。

「なるほど。ということは、カイト・シュタイナーという生徒が『超級魔法の使い手』という噂は⋯⋯誤りだということですね?」
「はい。その通りです! 私の勘違いでご迷惑をおかけしました!」

 そう言うと、アンジェラはアルフレッドや学園長、その他の先生に向けて頭を下げた。

「わかりました。ありがとうございます」
「では、これでよいですかね、アルフレッド君?」
「はい。学園長、そして皆様、ご協力ありがとうございました!」


********************


——学園長室 深夜

「どうでしたでしょうか、ハンニバル様」
「うむ、まあ、あんなもんじゃろ。とりあえずは、これで学園内の噂も『魔力暴走』でカタがつくじゃろ」
「き、緊張しました~」
「おい、レコ。お前はもうちょっと演技力を磨け! なんだ、あの『思います⋯⋯です』という言葉。正直、周囲に気づかれていないかヒヤヒヤだったのだぞ!」
「だ、だって~⋯⋯団長ぉ~」
「だっても、くそもない! カイト少年と関わる以上、今後こういった『隠蔽ごまかし』は増えていくんだ! ちゃんと演技力を養いたまえ!」
「ええええええ~~~~!!!! わ、わかり⋯⋯ました⋯⋯」

 そう言って、レコが「はぁ~」と大きなため息を吐きながら肩を落とした。
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