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第二章 騎士学園編
049「道化」
しおりを挟む「よろしくお願いします!」
俺は甲斐甲斐しく、ガス・ジャガーに礼をする。
「ガス様、じゃあ、まず俺から行きますよ! ガス様やディーノ様のお手を煩わすことはさせません」
「ふむ。そうだな、頼んだぞ、カート」
子分その1のディーノ・バレンチノという男がカート・マロンに返事をする。二人のやりとりを見る限り、同じ上級貴族でもカート・マロンとディーノ・バレンチノの間では上下関係があるようだな。
ディーノ・バレンチノが上っぽいな。まあ、そりゃそうか。
そんなことを考えている間に、子分その2カート・マロンが目の前にきた。
「よろしくお願いします!」
「おう。あー、ちょっといいか?」
「はい?」
そう言って、カート・マロンがちょいちょいと俺に手招きをした。俺は「何だろう?」と思い、近づく。
すると、カート・マロンが俺の肩に手を置いて、
「悪いが、お前のままごとに付き合うほど、俺は⋯⋯⋯⋯暇じゃねーんだよ!」
「へ?」
「氷結爆砕っ!」
カッチーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!
カート・マロンが氷属性中級魔法『氷結爆砕』を不意打ちで発動。俺の体は一瞬で氷漬けにされた。
「ひゃっははは! はい、これでおしまーい! おつかれさ~⋯⋯」
ジュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ⋯⋯パキーーーーン!!!!
「え?」
「何っ!?」
「何だとっ?!」
体全体に覆っていた氷を俺は数秒ほどで蒸発、爆散させた。
「な⋯⋯っ!? な、ななな、何をやった、お前!」
「え? えーと⋯⋯火属性初級魔法炎球を体全体から照射させました」
「「「⋯⋯は?」」」
「「「「「⋯⋯は?」」」」」
俺の説明に三人が「ちょっと何言ってるか分からない」と、サンドのボケのような表情を浮かべる。あ、レコや周囲の生徒も同じ顔してる。
というわけで、俺はゆっくりと説明してあげた。
「えーと⋯⋯初級魔法の炎球あるでしょ? あれを~、こう、体全体からボーン! て、弾け飛ばした感じです。わかります?」
「い、いやいやいや!? そもそも、なんで炎球を体全体から弾け飛ばすことができるんだよ! それだけじゃねー! 初級魔法の炎球の火の威力で、何で氷属性中級魔法の氷結爆砕の氷が数秒程度で溶けてしまうんだよっ!」
「え? さあ?」
「「「「「えええええええええええええ!!!!」」」」」
俺の答えに、その場の生徒、あと先生も含めて全員が納得いかない表情を浮かべながら、ブーイングのような「ええ」を響かせた。
まあ、たぶん、俺の魔法の威力がかなり高いから、初級魔法でも他の人の中級魔法の威力を超えているのだろう。それ以外、説明がつかないしね。
とはいえ、そこまで俺が言う義理も必要もないのでお口をチャック。
それに、こいつら三人は俺の舎弟であるイグナスに対して、中々ふざけた態度を取っていたので、最初からぶっ飛ばすことだけを考えて俺は『道化』を演じている。
一瞬、ここで力を見せるのはどうかと思ったが⋯⋯それ以上に、俺の舎弟であり、家族であるイグナスを傷つける姿を見た俺には、もはや『力を隠す・隠さない』はどうでもよくなっていた。
ま、どうにかなるだろうし、最悪⋯⋯⋯⋯強引にどうにかするっ!
「カート様。今、不意打ちでしたよね? 上級貴族が下級貴族に対して、不意打ちなんてそれはちょっと⋯⋯カッコ悪い⋯⋯というか、情けない⋯⋯というか」
「う、うううう、うるせーーーーーっ!!!! 火炎弾!」
そう言って、カート様は怒りの形相で火属性中級魔法『火炎弾』を発動。無数の『火の弾』が襲う。
「氷連矢」
俺は、氷属性下級魔法『氷連矢』を発動。氷の矢が火炎弾の火の弾を相殺するべく向かっていく⋯⋯が、
「バ、バカなっ!? 下級魔法の氷連矢で、俺の中級魔法の火の弾を相殺する⋯⋯どころか威力が勝っているだとぉぉぉぉ!!!!」
そう。俺の放った氷連矢は、カートの火の弾を相殺するどころか、その火の弾を打ち消して、威力そのままにカートに突き刺さった。
ザクザクザクザクっ!!!!
「がっ!? かは⋯⋯っ!!!!」
カートの体に俺が放った無数の氷の矢が突き刺さると、そのまま後ろへ倒れた。
「治癒!」
俺は氷の矢を消した後、すぐさま倒れているカートに近づき、治癒魔法を展開。カートの傷を完治させた。カートは気絶しているようだが、まあ、傷は完治しているので問題ないだろう。
「ふう⋯⋯」
俺は一度、深く息を吸う。そして、
「す、すみません。なんか⋯⋯勝てちゃいました(テヘペロ)」
俺の道化は続く。
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