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第二章 騎士学園編

045「ガス・ジャガーとジャガー財閥」

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「何?! どういうこと、カイト!」
「お、お前⋯⋯カイトっ! レイア姫様とどんな関係だよ!」
「いや、僕だって知らないよ。あっちが勝手に声をかけてきただけで⋯⋯」

「レイア姫様のただの気まぐれだよ」と俺は二人にそう説明し、はぐらかした。すると、

「おい、お前」
「はい?」

 また、知らない奴に声をかけられた。今度は三人組の野郎だけど。

「貴様、随分親しげにレイア姫様に話しかけていたようだが何者だ?」

 三人組の中のボスっぽい体格のいい男(190センチくらいはあるだろうか。本当に十歳だよね?)が、上から目線で話しかけてきた。

「え? えーと、僕は下級貴族のカイト・シュタイナーです」
「下級貴族? そんな身分の者がなぜレイア姫様と親しい?」

 次に、『子分その1』がこれまた高圧的に話しかけてくる。

「し、知りません。レイア姫様からいきなり声をかけられただけで。たぶん、気まぐれではないかと⋯⋯」
「貴様、無礼な! レイア姫様をバカにしているのか!」

 え~~~~~⋯⋯。

 三人目の『子分その2』には、もはや意味のわからないことで叱責された。何なんの、こいつら。

「おい、やめろ、お前ら」
「あぁ?」
「っ! お、お前は⋯⋯!!!!」
「ガ、ガス様っ! イグナスです! イグナス・カスティーノです!!!!」

 おや? こいつらイグナスのことを知っているのか?


********************


「こいつは、単にレイア姫様にたまたま話しかけられただけだ。お前らが気にすることじゃない」
「び、Bクラスの生徒程度・・の実力しかないくせに、俺たちに対等に話しかけてんじゃねー!」

 子分その2が、多少、ビビりながらもイグナスに文句を吐く。「Bクラスの生徒程度」⋯⋯ということは、こいつら、Aクラスの生徒か。

「イグナス。お前の『家』は確かに表でも裏でも名の通った『カスティーノ総合商社』なのは知っている。だがな、商売敵・・・である『ジャガー財閥』の俺にそんな家の影響力が通用するとでも思っているのか?」
「別にそういうつもりで言ったわけじゃない。ただ、事実を述べたまでだ」
「ほう? じゃあ、俺も一つ事実・・を述べさせていただこう。お前は上級貴族のくせに一人だけBクラスだ。その理由はシンプルに『魔力が少ない』から。要するに『弱い』からだ。Aクラスでもない弱者が俺様に調子こくんじゃねー!」
「⋯⋯く!」

 イグナスが『ガス』という男の言葉に黙らせた。

「へへへ。ガス様の正論にイグナスの奴、黙りましたね」

 子分その2が、生意気な調子を取り戻した。

「ふん。ガス様以前に、俺たちにさえ魔力が敵わない奴が大きい口を叩くな!」

 子分その1は、冷徹な眼差しをイグナスに向けながら恫喝する。

「フン、まあいいだろう。とにかく、イグナス! お前の魔力量の少なさはカスティーノ家だけでなく、上級貴族自体の『恥』だ。騎士学園の三年間は隅っこにでも隠れてネズミのようにおとなしくしていろっ! 二度と俺の前で調子こいたマネすんじゃねー! 行くぞ!」

 ガスと言う男は、大きな声で恫喝して去っていった。体と声が比例しているのか大音量での恫喝だっただけに、さっきまでの『レイア姫騒動』の空気を完全に消し飛ばしてくれた。その一点に対しては感謝を申し上げよう。それにしても、

「イグナス。大丈夫か?」
「⋯⋯ほっといてくれ」
「あ、イグナス!」

 そう言って、イグナスは並んでいた列から離れ、一人どこかへ去っていった。


********************


「ザック。あの『ガス』て男のこと、教えてくれるか?」
「あ、ああ。あいつの名前はガス・ジャガー。ジャガー財閥の三男だ」
「ジャガー財閥?」
「ああ⋯⋯」

 ザックの話だと、こういうことらしい。

——————————————————

【ジャガー家/ジャガー財閥】

1.ジャガー財閥とは、クラリオン王国に古くからある組織で、他国との輸出入貿易や国内の物販事業、また国内で様々なサービスを展開する商会をこれまずずっとまとめてきた巨大組織
2.ガス・ジャガーはそんな巨大組織ジャガー財閥の当主を父に持つジャガー家の三男
3.同じ内容で事業を展開するイグナスの家の『カスティーノ総合商社』とは商売敵であり、国内で『二大総合商社』と言われている
4.ジャガー財閥は国の重鎮といった権力を持つ王族や貴族全般にコネクションを持つ組織

——————————————————

「おいおい、あの図体デカイ奴⋯⋯すごいトコのお坊ちゃんじゃねーか」
「いや、それを言ったらイグナスも同じだけどね」
「え⋯⋯? イグナスの家のカスティーノ家って、そんなにすごいの!」
「えっ?! カイト、カスティーノ家のこと知らないでイグナスに喧嘩売ったの!」
「あ、いや~⋯⋯たはは」
「は~⋯⋯。『知らない』て、ある意味幸せなのかもね」

 ザックがしっかり教えてくれた。

——————————————————

【カスティーノ家/カスティーノ総合商社】

1.クラリオン王国の『二大総合商社』として君臨するカスティーノ総合商社。クラリオン王国に最近できた新興の総合商社ではあるが、スピード重視の経営力とコネクション構築を武器に、あっという間に国内で独占状態だった『ジャガー財閥』と並ぶ組織へと発展。
2.事業内容はジャガー財閥と同じく、他国との輸出入貿易や国内の物販事業、国内で様々なサービスを展開する商会をまとめているこちらも巨大組織
2.イグナスは、そんな巨大組織の当主を父に持つカスティーノ家の次男
3.カスティーノ総合商社は、ジャガー財閥とは逆の若い王族や貴族全般にコネクションを持つ組織

——————————————————

「すげー! イグナス、やばいじゃん!」
「いや、いまさら! まあ、そのおかげで俺はイグナスと友達になれたからいいけど⋯⋯」

 一応、前にザックがイグナスの話を少ししていたけど、最初は『カーマイン家の仕事関係で逆らえない上級貴族』くらいにしか思っていなかった。でも、こうやってザックに詳しく話を聞いた後だったら、イグナスにあそこまでグイグイ煽ることはできなかったかもなー。

 いやー、結果的にはイグナスとは友達になれたからよかったけど『無知』て怖ぇ~。

 それにしても、あの同い年とは思えんガス・ジャガーも『ジャガー財閥』とかいう何か凄そうな家柄の御曹司なんだな。そんなのにちょっかい出すどころか、目をつけられるだけでも、かなりやばいんだろうな~。

 そうか~。それじゃあ、迂闊には手を出せないな~(棒)。
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