34 / 145
第二章 騎士学園編
034「舎弟誕生」
しおりを挟むとりあえず、ストックはここまでです。
もしかしたら、明日から毎日投稿難しくなるかもですが⋯⋯がむばりますっ!
********************
「ず⋯⋯ずびば⋯⋯ぜぇん⋯⋯でじぃだぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
今、俺の目の前にザック⋯⋯そして、その後ろにザックの手下であるチンピラ共が正座し、頭を床に擦り付けながら土下座をしていた。ていうかさせた。当然だ。
「おい、ザック。そして、後ろのチンピラ共⋯⋯」
「は、はい!!!!」
「「「「「はいぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」」」」」
「とりあえず、お前らにはいろいろ聞きたいことがある。ていうか早速、教えてほしいんだが⋯⋯」
「な、なん⋯⋯でしょう?」
ザックが代表して返事をする。
「あー⋯⋯ザックは別に敬語はいいよ。同い年だし。それに呼び名も『カイト』でいいから。いちいちフルネームなんてまどろっこしいし。それにお前とは話してて楽しいからそれくらいがちょうどいい」
「っ! あ、ああ⋯⋯わかった」
カイトは自分を騙してリンチしようとしたザックに対し、さも当たり前のように「話してて楽しい」と告げる。それを聞いたザックがそのカイトの言葉に思わず⋯⋯感動する。
一方、カイトはそんなザックの機微に特に気づくこともなく、さらに話を進める。
「⋯⋯で、だ。今回、俺をリンチしようとしたのは『主の命令』て言ってたけど、その主とザックはどういう関係なんだ? その前にその主って何者よ?」
「あ、主は、俺の家⋯⋯カーマイン家が仕事関係でお世話になっている上級貴族カスティーノ家の次男で、名前は⋯⋯⋯⋯イグナス・カスティーノ」
「⋯⋯イグナス・カスティーノ。上級貴族⋯⋯ね」
なるほど。つまり、ザックはこのイグナス・カスティーノの手下ってわけか。
「このイグナス・カスティーノが俺を恨む理由は『入学式で目立ったから』⋯⋯だけってこと?」
「あ、ああ。あいつは自分よりも目立つ奴を殊更嫌うからな⋯⋯」
「ザック⋯⋯⋯⋯お前、イグナスって奴、嫌いなのか?」
ザックは一瞬、言葉に詰まる⋯⋯が、すぐに口を開いた。
「お、俺だって本当は⋯⋯本当は⋯⋯お前にやったようなリンチなんてやりたかないっ! 俺は騎士になりたいんだっ! だから、イグナスに「こんなことはしたくない!」とも言った! だが、あいつは俺に『命令が聞けないならカーマイン家との関係はすべて反故にする』と言ってきた!」
「⋯⋯ザック」
ザックは、胸の内にあったものを一気に吐き出すかのように声を上げた。
「俺はこれからも一生あいつの命令に従う奴隷のような将来しかないのさ。イグナスの命令とはいえ、これまでいろいろ非道いことをしてきたんだ⋯⋯当然の報いさ。⋯⋯自業自得ってやつだ」
そう言って、ザックは「はは⋯⋯」と力無く笑った。
「⋯⋯坊ちゃん」
「坊ちゃん!」
チンピラ共が悲痛なザックの姿を見て、慰めるように声を掛ける。
「おい⋯⋯お前らもザックと同じ心境なのか?」
俺はチンピラ共に話を聞く。
「「「「「はい、もちろんです!」」」」」
「でも、お前ら俺をリンチするとき喜んでいたよな?」
「あ、あああ、あれは⋯⋯⋯⋯すみません。そうですね。確かに⋯⋯楽しんでました」
「⋯⋯すみません。こういうことを何度かやっていたら、つい自分が強くなった⋯⋯偉くなった⋯⋯そんな気がして⋯⋯」
そう言って、チンピラ共はザックと同様、これまでの自分たちの非道い行いに⋯⋯調子に乗っていたことに⋯⋯謝罪と後悔の言葉を吐く。
「ということは、今は反省しているんだな?」
「「「「「は、はい!!!! 本当はこういうことは、もうやりたくないですし、ザック坊ちゃんにはこれ以上こんなことはさせたくないですっ!!!!」」」」」
「お、お前ら⋯⋯」
ふむ。ザックは年上のチンピラ共からすげー信頼されているんだな。
「⋯⋯で、でも⋯⋯イグナス様がいる限り⋯⋯俺たちは⋯⋯この環境から逃れられないんです」
「たぶん⋯⋯今日、リンチが失敗したと分かれば⋯⋯イグナス様はまた同じ命令を出すか、別の手下どもに命令を出すか⋯⋯いずれにしても、今後もカイトさんにちょっかいを出してくると思います」
なるほど。中々、しつこい性格のようだな。面倒くさいタイプか。
「⋯⋯カイト。本当にすまなかった」
「ザック?」
「俺、もう一度、イグナスにカイトについて何とか諦めてもらうよう説得するよ」
「ザック、お前⋯⋯」
「お、俺⋯⋯けっこう頭も切れるし、口も達者だからさ! 大丈夫! うまいこと説得してみせるよ!」
「⋯⋯」
ザックは一際明るい口調でそう告げた。
いや、どう考えても玉砕覚悟じゃん。説得できずにリンチになるパターンじゃん。
「そ、それで! それですべてが片付いたら⋯⋯改めて、俺とダチに⋯⋯なって欲しい」
「「「「「坊ちゃんっ!!!!」」」」」
「今日初めて話したけど、俺もお前と話すとウマがあって楽しいからよ⋯⋯へへ」
「⋯⋯」
ザックは照れて鼻を擦りながらそう言った。
ザック、いいな。やっぱ、こいついい奴だな。これまで俺にやろうとしたことを他のやつにやってきたのであればそれは許されないことだ。でも、ザックや手下のチンピラ共はそんな悪いやつではない。
これまでの過ちは、今後『人のために役立てること』と『俺のために役立てること』で償ってもらおう、そうしよう。ということで、
「話は聞かせてもらった! では、ここからは俺がある提案をしよう!」
「「「「「提案?」」」」」
「お前ら今日から俺の舎弟になれっ!」
「しゃ、舎弟?」
「あ、舎弟⋯⋯て無いのかこの世界には。うーん、えーとだな⋯⋯⋯⋯」
「カ、カイト。もしかして、その舎弟てのは手下のことか?」
「うーん、まあ、近いんだが、もっとこう手下よりも仲間に近いというか⋯⋯うーん⋯⋯まあ、仲間の子分みたいなもんかな。うまく説明できないからそれでいいや」
「「「「「は、はあ⋯⋯」」」」」
「俺には野望がある! その為にお前たちにはキリキリ働いてもらう! そのかわり⋯⋯⋯⋯お前ら舎弟に何かあったらすべて俺が守ってやる!」
「「「「「⋯⋯え? そ、それって⋯⋯?」」」」」
「イグナス・カスティーノというクズとは縁を切ってお前ら俺につけっ!」
「「「「「え⋯⋯ええええええええええっ!!!!!!!!」」」」」
「カ、カイト! お前が強いのはわかった。だが、イグナス・カスティーノは上級貴族だ。お前よりももっと強い。それに上級貴族で性格も捻じ曲がっている! お前の気持ちは嬉しいが⋯⋯やはり、それではカイトを危険な目に⋯⋯」
「大丈夫だ、ザック。俺に考えがある」
「え? 考え?」
「ああ。何もイグナス・カスティーノに俺は戦いを挑もうとしているわけじゃない。むしろ⋯⋯利用するつもりだ」
「ええっ?! あ、あの、イグナス・カスティーノを利用する⋯⋯っ?!!!!」
ザックがカイトの思いがけない言葉に驚愕の顔を示す。
「まあ、そいつがどんな奴かは知らんが、いずれにしても俺の計画遂行の手伝いをしてもらうつもりだ⋯⋯ふっふっふ」
「カ、カイト⋯⋯君?」
カイトの不穏な笑みにゾッとしたザックは「カイト・シュタイナー⋯⋯こいつ、もしかしてイグナス・カスティーノよりやばい奴かも⋯⋯」と感じ、さっきのダチ宣言を早くも後悔し始めていた。
時すでに遅し。
こうして俺は『異世界に転生したらやりたいことリスト』を今後実現していく上で必要となる『人材』をまんまと獲得した。
よし、よし、いいぞー。これからもこの調子でどんどん舎弟増やしていくぜーっ!
ふっふっふっ⋯⋯入学早々、ついているな、俺。
すべて⋯⋯⋯⋯計算通りっ!(クワッ)
1
お気に入りに追加
427
あなたにおすすめの小説
世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜
ワキヤク
ファンタジー
その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。
そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。
創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。
普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。
魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。
まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。
制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。
これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。
異世界でいきなり経験値2億ポイント手に入れました
雪華慧太
ファンタジー
会社が倒産し無職になった俺は再就職が決まりかけたその日、あっけなく昇天した。
女神の手違いで死亡した俺は、無理やり異世界に飛ばされる。
強引な女神の加護に包まれて凄まじい勢いで異世界に飛ばされた結果、俺はとある王国を滅ぼしかけていた凶悪な邪竜に激突しそれを倒した。
くっころ系姫騎士、少し天然な聖女、ツンデレ魔法使い! アニメ顔負けの世界の中で、無職のままカンストした俺は思わぬ最強スキルを手にすることになったのだが……。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。
みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
えっ!?俺が神様になるの? チートで異世界修行物語。
偵察部隊 元リーコン
ファンタジー
主人公の名前は沢村尊流(さわむら たける)45歳。仕事に向かう途中にテロリストに感化された暴漢に遭遇、無差別殺人は防げたが、命を落としてしまう。
死んだ筈なのに先程とは違う場所に尊流は立って居た、知らない場所なのに何故か懐かしい感じがするその場所は、ある神様の神域だった。
そこで現れた神様によって驚愕の事実が告げられた。
沢村尊流は何度も転生して魂の位が上がり、もう少しで神と成れるというものだった。
そして神に成るべく、再度修行の為に転生することになるのであった。
とんでもチートを貰い転生した尊流ははたして神になれるのか、仲間と共に世界を旅するストーリーが始まる。
物語の進行は他の作品に比べかなり遅めかと思いますが、読んだ方が情景を思い浮かべられるように心掛けておりますので、一緒に異世界を旅して主人公の成長を見守り楽しんで頂けたらと思います。
処女作ですので、読みづらい事も有るかと思いますが、頑張って書いて行きますので宜しくお願い致します。
更新は不定期になると思います。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
せっかく異世界に転生できたんだから、急いで生きる必要なんてないよね?ー明日も俺はスローなライフを謳歌したいー
ジミー凌我
ファンタジー
日夜仕事に追われ続ける日常を毎日毎日繰り返していた。
仕事仕事の毎日、明日も明後日も仕事を積みたくないと生き急いでいた。
そんな俺はいつしか過労で倒れてしまった。
そのまま死んだ俺は、異世界に転生していた。
忙しすぎてうわさでしか聞いたことがないが、これが異世界転生というものなのだろう。
生き急いで死んでしまったんだ。俺はこの世界ではゆっくりと生きていきたいと思った。
ただ、この世界にはモンスターも魔王もいるみたい。
この世界で最初に出会ったクレハという女の子は、細かいことは気にしない自由奔放な可愛らしい子で、俺を助けてくれた。
冒険者としてゆったり生計を立てていこうと思ったら、以外と儲かる仕事だったからこれは楽な人生が始まると思った矢先。
なぜか2日目にして魔王軍の侵略に遭遇し…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる