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第二章 騎士学園編
029「ザック・カーマイン」
しおりを挟むガラ⋯⋯。
「お、遅くなりました!」
俺は教室のドアを開けて早々、開口一番に謝罪の言葉を言って頭を下げた。
「ああ⋯⋯カイト・シュタイナーだな。学園長から話は聞いている。問題ない。席につきたまえ。君の席は窓際の右奥の席だ」
「は、はい⋯⋯っ!!!!」
担任の女性がそう言って俺に席に着くよう言う。俺は自分の席に歩いて行く時、チラッと周囲に目を向けた。
「「「「「ジーーーーーーーーーーーーーーーー」」」」」
めっちゃ、見てりゅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!
すぐに顔を伏せて、俺は自分の席へと一目散に向かった。
「さて⋯⋯とりあえず、皆の自己紹介は終わったからカイト・シュタイナー⋯⋯軽く自己紹介してくれ。他の生徒は時間がある時にカイト・シュタイナーに自己紹介するように。じゃあ、カイト・シュタイナー⋯⋯立って自己紹介しろ」
パープルロングヘアーメガネ美人先生は雑な感じで俺に自己紹介するよう言った。
「あ、カイト・シュタイナーといいます。ここからだいぶ遠い田舎のシュタイナー領出身です。よろしくお願いします」
挨拶をして皆に目を向けると、ほとんどの生徒が「俺に話しかけたいオーラ」を発している。「あー、そりゃあ入学初日に学園長室に呼ばれたらね⋯⋯」と半ば、諦めて俺は一礼して席に着いた。
「よし。では、次に私の自己紹介をするぞ。私の名はアンジェラ・ガリウス。皆も知っての通り、ガリウス家の者だ。まあ、だからといって特にお前らに強制的に何かをさせるといったことはしないので安心してくれ。ただし! 私は武闘術を教えている⋯⋯指導は厳しくいくから覚悟するように!」
そう言って、パープルロングヘアー・パイオツカイデーメガネ美人先生ことアンジェラ先生が『ニチャア⋯⋯』と不敵な笑みを浮かべた。
あれ? なんだろう? 学園長と同じ匂いが⋯⋯。
「では、ホームルームはこれで終了だ。この後は自由行動となっている。まあ、寮に行って荷解きをする時間になると思うが、特に決まりはない。学園内の見学や街に必要な物の買い出しをするのもいいが寮には遅くとも18時までには戻るように! そして、明日から本格的に授業が始まるので気を引き締めるように! では解散!」
かくして、教室に戻ったらすぐにホームルームが終了した。
********************
「よー! カイト・シュタイナー!」
「え? あ、ども⋯⋯」
ホームルームが終わると早速、男子が声をかけてきた。
「入学初日に学園長室呼び出しとか、お前何やったんだよ!」
「いや、何と言われても⋯⋯はは」
予想通りの質問をしてきたのは短髪赤髪くん。
しかし、困った。なんて言い訳をしよう?
「何だよ、教えろよ」
「えーと⋯⋯あの⋯⋯あ、うん! 実は一週間くらい前にあった地震のとき、僕、寮に既に着いていてね⋯⋯それで地震の時ケガしなかったかとか、いろいろ僕の体調が心配だったからって⋯⋯それで呼ばれたんだ」
「え? 体調?」
く、苦しいか? さすがにちょっと⋯⋯。
「なーんだ! そうだったのか! で、大丈夫なのか、体調は?」
「ん? あ、ああ。何ともないよ」
「そっか! あ、俺はザック・カーマイン。下級貴族の次男だ。ザックって呼んでくれ!」
「ぼ、僕はカイト・シュタイナー。シュタイナー領領主の長男。あ、でも下級貴族だよ。カイトでいいよ」
「え? 領主なのに下級貴族? 嘘?」
「え? 嘘じゃないよ。なんで?」
「え? あ、いや⋯⋯普通、領主は上級貴族がなるもんだと思うんだけど⋯⋯」
「え、そうなの? あ、もしかしたら、ウチが王都からだいぶ離れた小領地の田舎だから下級貴族の両親が領主になっているのかも!」
「あー⋯⋯小領地か。でも、すごいよ! 下級貴族で領主だなんて!」
「あ、ありがとう」
ザック・カーマインか。こいつ、何か良い奴だな。喋りやすいし。
「そういや、カイト。この後何か用事あるか?」
「え? いや、特には⋯⋯」
「そうか。じゃあ、ちょっと一緒に街に出かけないか?」
「い、いいけど。寮のほう⋯⋯荷解きとか部屋の整理とかは大丈夫なの?」
「へーき、へーき!」
「うん。ザックが大丈夫なら⋯⋯いいよ!」
「よし! あ! あと、別のクラスにいる友達も誘っていいか?」
「え? あ、うん。もちろん!」
「じゃあ、俺いまから友達呼びに行くから正門のところで待っててくれ!」
「うん、わかった」
そう言って、ザックは足早に教室を出ていった。
おお。入学初日にさっそく友達ができたぞ!
これは幸先良さそうだ!
俺は入学初日に学園長室に呼ばれるという派手なデビューをしたので、教室で浮いてしまわないか心配だったがどうやらそれは杞憂のようだ。
「街かぁ~。クラリオン・シティーはまだちゃんといろいろ見回っていないから楽しみだ。でも、どこに行くんだろう? 平民エリア? 下級貴族エリア? まあ、どっちでもいいな」
俺はウキウキ足を弾ませながら正門へと向かった。
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