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第二章 騎士学園編
026「入学式」
しおりを挟む——一週間後
今日はクラリオン王国騎士学園の入学式。
子供の晴れの舞台ということもあり、正門のほうには入学する子供の親や関係者でごった返していた。
俺は一週間前から寮に入っていたが、通常、入学式当日に学生たちはやってきて、入学式とホームルームが終わったら入寮するのが一般的らしい。
俺は今、寮の自室の窓から正門付近を眺めている。
「いよいよ⋯⋯だな」
俺は目を輝かせながら颯爽とドアを開け、式典会場の体育館へと向かった。
*********************
「新入生諸君、入学おめでとう⋯⋯」
入学式が始まった。
壇上では、このクラリオン王国騎士学園の学園長が話をしていた。
「三年間の騎士学園生活で基礎をしっかりと学び、卒業試験を見事合格し騎士団へ入団できるように。あと⋯⋯」
学園長の名は『ハンニバル・シーザー』。
なんだか『猟奇殺人』を犯しそうな名前だが、壇上で話す姿はただのヨボヨボの爺さんで、しかも若干プルプル震えているのがわかる。こんな年齢まで働かせるなんて異世界大変だな⋯⋯。
話の内容はよくある入学式の校長先生と同じ感じだったので俺は流して聞いていたのだが、次に紹介された人物の名前を聞いて驚く。
「それでは、次に今年赴任してきた先生をご紹介します⋯⋯⋯⋯レコ・キャスヴェリー先生です」
えっ?!
レコ⋯⋯キャスヴェリー⋯⋯先生っ!!!!????
「はじめまして。ご紹介にあずかりました⋯⋯レコ・キャスヴェリーと申します」
「⋯⋯っ!?」
レ、レコ・キャスヴェリー⋯⋯っ!
俺が五歳の時、ウチに家庭教師でやってきたレコ・キャスヴェリーだ、間違いないっ!
た、たしか騎士団に入団していたはず⋯⋯なのに⋯⋯先生、だとっ?!
「「「「「キャアアアアアア!!!!!!!」」」」」
「「「「「うおおおおおおお!!!!!!!」」」」」
レコが挨拶すると、男子も女子も一斉に歓声を上げた。
ど、どどど、どゆこと⋯⋯?
「あれが『規格外の天才』レコ・キャスヴェリー様!」
「あれが、最年少の上級魔法士⋯⋯レコ・キャスヴェリー様!」
「年齢なんて、私たちと一つしか変わらないのに⋯⋯先生だなんて!」
「今の騎士団でも五本の指に入る実力者って聞いたぞ!」
「な、なんで、そんな人が学園の先生に⋯⋯?」
野次馬解説ありがとう。
そういえば、あの後レコはそのまま騎士団に戻って、その後はどうなったのか知らなかったが騎士団で五本の指に入るほどの実力者になっていたとは⋯⋯。『規格外の天才』は伊達じゃないということか。
あと、レコってかなり有名だったんだな。知らなかったわ。
「私もまだ未熟者ではございますが、少しでも皆様の成長のお役に立ちたいと思い、こうして今年から騎士学園の教師として赴任しました」
それにしても、言葉遣いや所作を見るとあの頃に比べて随分大人びたように感じる。以前はもっと年相応という感じだったが。
「これからよろしくお願いします⋯⋯⋯⋯(チラっ)」
「!」
「(ペロっ!)」
「っ!!!!」
レコは締めの挨拶をして、舞台袖に戻る直前、俺に目線を合わせるとペロっと舌を出した。
あ、あいつ、気づいてたのか!?
とりあえず、周囲にはそのレコの『合図』は気づかれてないようだ。
あ、危なかった⋯⋯。こんなホームルーム前の入学式から目立つのは流石に俺の予定にはない。
予定外のサプライズが終わり、ホッとしていると、
「次に、クラリオン王国騎士団、騎士団長アルフレッド・ヴェントレー様。よろしくお願いします」
「どうも。クラリオン王国騎士団、騎士団長アルフレッド・ヴェントレーです」
「「「「「きゃあああああああああ!!!!!!」」」」」
「「「「「うおおおおお!!!!」」」」」」
ベクターとジェーンの昔の騎士団の友人で、俺が五歳当時の『力』を知っている数少ない関係者の一人。
こんなに人気がある人だったんだな。特に女子人気が高いね。
「現在、我が国において⋯⋯君たちもわかると思うが騎士団は騎士の増員を図っている」
そう。この国の騎士団は全盛期に比べ、質はもちろんだが量も落ちている。その為、騎士学園の卒業試験の合格率も昔に比べて上がっているなど、人材確保を最優先としていた。
まあ、その分『質』のほうは上がっていないらしいが。
「これまで、人材確保を最優先に卒業試験を甘くしていたが、今年からは卒業試験の審査を厳しくする。その為、君たち一回生からはこれまでの甘い卒業試験という認識は改めて欲しい」
「「「「「ざわ⋯⋯ざわざわざわざわ⋯⋯」」」」」
アルフレッドの言葉に生徒たちが一気に動揺する。卒業試験は王族と上級貴族は関係ないので、動揺の声をあげているのは下級貴族と平民だけではあるが。
そんな⋯⋯会場が静まり返った中、次に壇上に上がったのは、
「では最後に⋯⋯クラリオン王国騎士学園、生徒会長エリナ・クインズベル」
「新入生諸君、入学おめでとう! 生徒会長のエリナ・クインズベルだ!」
「「「「「キャアアアアアアアアア!!!!!」」」」」
「「「「「うおおおお!!!」」」」」
さっきまでの静まり返った会場がまた盛り上がりをみせた。生徒会長は女性だが女性人気が高いようだ。
「ああ⋯⋯あれが上級貴族クインズベル家のエリナ・クインズベル様⋯⋯っ!」
「すげえ⋯⋯。初めて生で見たけど噂以上の美人だ⋯⋯」
「こ、神々しい⋯⋯。なんという美貌⋯⋯。神の寵愛を授かった女神の化身⋯⋯っ!!!!」
野次馬解説ありがとう。
なるほど。余程、生徒会長は有名人のようだな。
それにしても、確かに野次馬の話どおり、かなりの美人だ。とはいえ、異世界にきて女性はジェーンとレコと妹のアシュリーくらいしか見たことがないので、どれだけの美人かはわからないが、それでも相当な美人であることには間違いないだろう。
「みんな! 先程の騎士団長のアルフレッド様から厳しいお言葉をいただいて落ち込んだ者も多いだろうが、逆にその言葉を励みに精進して、この三年間の学園生活を有意義に過ごして欲しいっ! 何か、困ったことがあったら生徒会にいつでも相談に来たまえ!」
なんだろう⋯⋯このエリナ・クインズベルという生徒会長さん、まるで『宝塚の男役』みたいな感じだ。確かに美しい女性ではあるんだけど妙に男性っぽいというか⋯⋯。
このハキハキとした言葉とか仕草が男っぽいんだよね。「俺についてこい!」的な。女性人気が高いのも納得がいった。
入学式はこれで滞りなく終了。俺たち一回生は体育館から一回生の校舎へとゾロゾロと移動する。
それにしても、なろう的異世界展開であれば、入学式でもイベントがあったりするかと思ったが特に何もなかった。
肩透かしを食らった感はあるが、まあ、あまりサプライズ的なものは好まないので問題はない。
「さて、続いてはホームルームか。ここで、俺の今後の異世界チート生活に関わる生徒がいよいよ登場てわけか⋯⋯」
などと『舐めプ』な態度を取っていると、
<<一回生のカイト・シュタイナー君。一回生のカイト・シュタイナー君。入学式が終わったら至急、学園長室へ来てください。繰り返します。一回生のカイト・シュタイナー君、入学式が終わったら至急⋯⋯>>
へ? なんで?
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