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第二章 騎士学園編

023「クラリオン王国騎士学園編、スタートっ!」

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「あ、あれが、王都クラリオン・シティーか⋯⋯⋯⋯広っ!」

 俺は今、馬車に乗りながら窓の外を眺めている。

 馬車が、少し丘の上を走っていることもあって、窓の外からちょうど王都の全体が見下ろせた。

 王都からはまだかなり距離が離れているはずだが、王都のあまりの広大さに実際の距離よりも近くに感じる。それくらい、王都クラリオン・シティーに俺は圧倒された。

「知識としては知っていたが、実際に見るとやはりいろんな発見があるな⋯⋯」

 これまで暮らしていたシュタイナー領は小領地ということもあったので驚きはひとしおである。俺は領地の外に初めて出たということもありかなり興奮した。


*********************


 俺は騎士学園から送られてきた入学前に目を通すよう言われている騎士学園での生活やルールなどを書いた『入学資料』を開いた。

「えーと、騎士学園があるのは⋯⋯⋯⋯下級貴族エリア、か」

 クラリオン王国騎士学園は王都クラリオン・シティーにあるクラリオン王国騎士団の養成機関である。

 その騎士学園を話す前にまずは王都クラリオン・シティーについて話そう。

 王都クラリオン・シティーはクラリオン王国の中心に位置する場所にあり、そこは王族が生活する『王族エリア』、上級貴族が生活する『上級貴族エリア』、下級貴族が生活する『下級貴族エリア』、平民が生活する『平民エリア』と同心円状に区分けされている。

 そして、騎士学園はその中の『下級貴族エリア』に設置されている。理由は「一部の高い魔力を持った平民が通うから」だ。

 この世界では生活魔法以上の魔法を使える魔力を持った者は王族・貴族がほとんどであるのだが、稀に平民の中に魔力の高い者が生まれることもある。

 その場合、平民も騎士学園に通えるようにする為として『下級貴族エリア』に騎士学園が造られることとなった。なぜ王族や上級貴族も通う騎士学園を下級貴族エリアに設置したのか⋯⋯表向きの理由としては『防犯上』ということになっているが、

「⋯⋯いわゆる『身分による線引き・・・』ということだろうな。職業にもよるが基本、平民は下級貴族エリアでさえ入ることは生涯で数回程度しかないと本で書いてあった。そんな平民の身分で騎士学園に通わせるのなら下級貴族エリアまで⋯⋯王族や上級貴族と同じエリアに踏み入れるなどあってはならない⋯⋯みたいな、そういう理由なんだろうな」

 異世界あるあるの『ザ・階級社会』といったところか。

「さて、そんな階級社会の中での俺の立ち位置はというと⋯⋯まずベクターは下級貴族だから俺はまあ一応貴族ということになる。ただ、身分的には貴族の中では『下』なので、おそらく学園カーストは底辺に近いところだろう⋯⋯」

 俺は、早速入学後のイメージトレーニングをはじめる。

「一応、平民の生徒も何人かはいるはずだから学園カーストの最底辺は『平民の生徒』ということになるかな? あとは、同じ学年に権力を持った王族や上級貴族の子供がどれだけいるか⋯⋯この辺は特に重要になるな。他にも⋯⋯」

 俺は王都クラリオン・シティーや騎士学園に通う、といったことでも興奮していたが、それよりも何よりも一番楽しみにしているのが『異世界に転生したらやりたいことリスト』を実行に移す環境がやってきたことだ。

「フッフッフッ⋯⋯⋯⋯俺の野望はこの騎士学園から始まる」

 この日の為に、必死に特訓して身につけた力を奮う時がやってきたのだ。俺は異世界チート転生者の『王道を行く者』として全力でこれから楽しんでいく所存でございます。

「⋯⋯クラリオン王国騎士学園編、スタートっ!」

 俺は一人『タイトルコール』を叫んだ。

 馬車の御者さんが俺のタイトルコールに驚いた後、思いっきり可哀想な子を見るような目を向けた。

 大丈夫ですよ、おじさん。僕はまともです!


*********************


——さて、クラリオン王国騎士学園についてもう少し説明しよう

 クラリオン王国騎士学園の在籍期間は三年。そして三年間の教育や実習課程を終え、最後の卒業試験にて合格を認められた者だけが騎士団への入団が許される。

 しかし、その卒業試験の合格基準の厳しさは有名で卒業試験の合格率は一割弱⋯⋯と言われている。わかりやすくいうと、百人いたら十人くらいしか合格できないというレベルだ。

 そこで卒業できなかった者は、留年して卒業試験を再挑戦するか、王国の認可を持つ冒険者ギルドに入り冒険者となるか、はたまた王国非認可の民間の冒険者ギルドへ入り冒険者となる⋯⋯などといった進路を選ぶこととなる。

 ただ、昨今の『騎士団弱体化』が問題視されている現在、以前に比べて卒業試験の合格基準が甘くなった。どれくらい甘くなったかというと、なんと合格率が『50%強』にまで跳ね上がったのだ。

 つまり二人に一人は合格できるという⋯⋯『激甘』状態となっているのだ。

 まあ⋯⋯「騎士団に入れば将来は安泰」と言われるくらい、国から高い給料や手厚い保障、さらに権力も多少得られるということもあり、下級貴族や平民にとっては現在の激甘状態は大歓迎なのだ。

 ちなみに、王族や上級貴族は以前と変わらず現在も卒業試験は免除される。

 理由は『国の中で最も高い魔力と権力を持つ者たち』なので「卒業試験など不要」という理屈である。

 中々の力技ではあるが、実際、王族や上級貴族は元から本当に高い魔力と権力を持っているので、卒業後は自動的に上の役職に着くことが決まっている。

「財閥の御曹司が一流大学を卒業したら、とりあえず、系列の子会社で『部長』から始める⋯⋯感じ?」

 まあ、とにかく優遇されているということだ。

 そんな身分・階級がモノを言う異世界の騎士学園から俺の物語は始まる。

「クラリオン王国騎士学園編、スタートぉぉぉぉっ!!!!!」

 俺はさっきよりも元気に『タイトルコール』を叫んだ。

 馬車の御者さんは、今度は可哀想な目ではなく、生温かな目とサムズアップをくれた。

 励ましてくれたのかな? ありがとう、おじさん!

——三十分後、馬車が王都クラリオン・シティーに到着した
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