23 / 145
第二章 騎士学園編
023「クラリオン王国騎士学園編、スタートっ!」
しおりを挟む「あ、あれが、王都クラリオン・シティーか⋯⋯⋯⋯広っ!」
俺は今、馬車に乗りながら窓の外を眺めている。
馬車が、少し丘の上を走っていることもあって、窓の外からちょうど王都の全体が見下ろせた。
王都からはまだかなり距離が離れているはずだが、王都のあまりの広大さに実際の距離よりも近くに感じる。それくらい、王都クラリオン・シティーに俺は圧倒された。
「知識としては知っていたが、実際に見るとやはりいろんな発見があるな⋯⋯」
これまで暮らしていたシュタイナー領は小領地ということもあったので驚きはひとしおである。俺は領地の外に初めて出たということもありかなり興奮した。
*********************
俺は騎士学園から送られてきた入学前に目を通すよう言われている騎士学園での生活やルールなどを書いた『入学資料』を開いた。
「えーと、騎士学園があるのは⋯⋯⋯⋯下級貴族エリア、か」
クラリオン王国騎士学園は王都クラリオン・シティーにあるクラリオン王国騎士団の養成機関である。
その騎士学園を話す前にまずは王都クラリオン・シティーについて話そう。
王都クラリオン・シティーはクラリオン王国の中心に位置する場所にあり、そこは王族が生活する『王族エリア』、上級貴族が生活する『上級貴族エリア』、下級貴族が生活する『下級貴族エリア』、平民が生活する『平民エリア』と同心円状に区分けされている。
そして、騎士学園はその中の『下級貴族エリア』に設置されている。理由は「一部の高い魔力を持った平民が通うから」だ。
この世界では生活魔法以上の魔法を使える魔力を持った者は王族・貴族がほとんどであるのだが、稀に平民の中に魔力の高い者が生まれることもある。
その場合、平民も騎士学園に通えるようにする為として『下級貴族エリア』に騎士学園が造られることとなった。なぜ王族や上級貴族も通う騎士学園を下級貴族エリアに設置したのか⋯⋯表向きの理由としては『防犯上』ということになっているが、
「⋯⋯いわゆる『身分による線引き』ということだろうな。職業にもよるが基本、平民は下級貴族エリアでさえ入ることは生涯で数回程度しかないと本で書いてあった。そんな平民の身分で騎士学園に通わせるのなら下級貴族エリアまで⋯⋯王族や上級貴族と同じエリアに踏み入れるなどあってはならない⋯⋯みたいな、そういう理由なんだろうな」
異世界あるあるの『ザ・階級社会』といったところか。
「さて、そんな階級社会の中での俺の立ち位置はというと⋯⋯まずベクターは下級貴族だから俺はまあ一応貴族ということになる。ただ、身分的には貴族の中では『下』なので、おそらく学園カーストは底辺に近いところだろう⋯⋯」
俺は、早速入学後のイメージトレーニングをはじめる。
「一応、平民の生徒も何人かはいるはずだから学園カーストの最底辺は『平民の生徒』ということになるかな? あとは、同じ学年に権力を持った王族や上級貴族の子供がどれだけいるか⋯⋯この辺は特に重要になるな。他にも⋯⋯」
俺は王都クラリオン・シティーや騎士学園に通う、といったことでも興奮していたが、それよりも何よりも一番楽しみにしているのが『異世界に転生したらやりたいことリスト』を実行に移す環境がやってきたことだ。
「フッフッフッ⋯⋯⋯⋯俺の野望はこの騎士学園から始まる」
この日の為に、必死に特訓して身につけた力を奮う時がやってきたのだ。俺は異世界チート転生者の『王道を行く者』として全力でこれから楽しんでいく所存でございます。
「⋯⋯クラリオン王国騎士学園編、スタートっ!」
俺は一人『タイトルコール』を叫んだ。
馬車の御者さんが俺のタイトルコールに驚いた後、思いっきり可哀想な子を見るような目を向けた。
大丈夫ですよ、おじさん。僕はまともです!
*********************
——さて、クラリオン王国騎士学園についてもう少し説明しよう
クラリオン王国騎士学園の在籍期間は三年。そして三年間の教育や実習課程を終え、最後の卒業試験にて合格を認められた者だけが騎士団への入団が許される。
しかし、その卒業試験の合格基準の厳しさは有名で卒業試験の合格率は一割弱⋯⋯と言われている。わかりやすくいうと、百人いたら十人くらいしか合格できないというレベルだ。
そこで卒業できなかった者は、留年して卒業試験を再挑戦するか、王国の認可を持つ冒険者ギルドに入り冒険者となるか、はたまた王国非認可の民間の冒険者ギルドへ入り冒険者となる⋯⋯などといった進路を選ぶこととなる。
ただ、昨今の『騎士団弱体化』が問題視されている現在、以前に比べて卒業試験の合格基準が甘くなった。どれくらい甘くなったかというと、なんと合格率が『50%強』にまで跳ね上がったのだ。
つまり二人に一人は合格できるという⋯⋯『激甘』状態となっているのだ。
まあ⋯⋯「騎士団に入れば将来は安泰」と言われるくらい、国から高い給料や手厚い保障、さらに権力も多少得られるということもあり、下級貴族や平民にとっては現在の激甘状態は大歓迎なのだ。
ちなみに、王族や上級貴族は以前と変わらず現在も卒業試験は免除される。
理由は『国の中で最も高い魔力と権力を持つ者たち』なので「卒業試験など不要」という理屈である。
中々の力技ではあるが、実際、王族や上級貴族は元から本当に高い魔力と権力を持っているので、卒業後は自動的に上の役職に着くことが決まっている。
「財閥の御曹司が一流大学を卒業したら、とりあえず、系列の子会社で『部長』から始める⋯⋯感じ?」
まあ、とにかく優遇されているということだ。
そんな身分・階級がモノを言う異世界の騎士学園から俺の物語は始まる。
「クラリオン王国騎士学園編、スタートぉぉぉぉっ!!!!!」
俺はさっきよりも元気に『タイトルコール』を叫んだ。
馬車の御者さんは、今度は可哀想な目ではなく、生温かな目とサムズアップをくれた。
励ましてくれたのかな? ありがとう、おじさん!
——三十分後、馬車が王都クラリオン・シティーに到着した
1
お気に入りに追加
427
あなたにおすすめの小説
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。
破滅の女神
ファンタジー
18歳の誕生日…先月死んだ、おじぃちゃんから1冊の本が届いた。
小さい頃の思い出で1ページ目に『この本は異世界冒険記、あなたの物語です。』と書かれてるだけで後は真っ白だった本だと思い出す。
本の表紙にはドラゴンが描かれており、指輪が付属されていた。
お遊び気分で指輪をはめて本を開くと、そこには2ページ目に短い文章が書き加えられていた。
その文章とは『さぁ、あなたの物語の始まりです。』と…。
次の瞬間、僕は気を失い、異世界冒険の旅が始まったのだった…。
本作品は『カクヨム』で掲載している物を『アルファポリス』用に少しだけ修正した物となります。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
異世界召喚された俺は余分な子でした
KeyBow
ファンタジー
異世界召喚を行うも本来の人数よりも1人多かった。召喚時にエラーが発生し余分な1人とは召喚に巻き込まれたおっさんだ。そして何故か若返った!また、理由が分からぬまま冤罪で捕らえられ、余分な異分子として処刑の為に危険な場所への放逐を実行される。果たしてその流刑された所から生きて出られるか?己の身に起こったエラーに苦しむ事になる。
サブタイトル
〜異世界召喚されたおっさんにはエラーがあり処刑の為放逐された!しかし真の勇者だった〜
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
異世界でいきなり経験値2億ポイント手に入れました
雪華慧太
ファンタジー
会社が倒産し無職になった俺は再就職が決まりかけたその日、あっけなく昇天した。
女神の手違いで死亡した俺は、無理やり異世界に飛ばされる。
強引な女神の加護に包まれて凄まじい勢いで異世界に飛ばされた結果、俺はとある王国を滅ぼしかけていた凶悪な邪竜に激突しそれを倒した。
くっころ系姫騎士、少し天然な聖女、ツンデレ魔法使い! アニメ顔負けの世界の中で、無職のままカンストした俺は思わぬ最強スキルを手にすることになったのだが……。
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる