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第一章 幼少編
019「幕間:アシュリー・シュタイナーはかく語りき(1)」
しおりを挟む私の名前はアシュリー・シュタイナー。
今年七歳になるシュタイナー家の長女だ。
私は三つ上の兄であるカイト・シュタイナーが大好きだ。いや、愛している。
『お兄様の生涯の伴侶として側に居続けるにはどうすればいいか計画』を常日頃考えるくらいには愛している。
ちなみに最近浮かんだアイデアとしては、この国の法務大臣になって『近親婚OK』という法律を作るのはどうか⋯⋯というアイデアだ。
うん。それは現実味があってとてもいいんじゃないかしら?
でも、ちょっと時間がかかりすぎるのが難点かな?
お兄様との婚姻のためなら手段は選びません!(キャピ!)
*********************
さて、そんな『お兄様愛第一主義』の私がこれから⋯⋯どうしてお兄様を好きになったのか、また、お兄様がいかに尊く、どれだけ崇高な存在で、下々の者はもっとお兄様を敬うべき理由をお話しさせていただきます。
私は物心ついた三歳頃からお兄様の存在を知りましたが、その頃はまだ特に大好きという印象はなく、単に『年上の優しい人』という認識でした。
というのも、お兄様は私のことを特に可愛がってくれていたので私も自然とお兄様のことを気に入ってましたが⋯⋯その頃は別に今ほどの愛情ではありませんでした。
——そんな私が『お兄様愛第一主義』となったのは五歳の時でした
お兄様がいつものように森に出かけていった後、お父様とお母様の三人で昼食後のお茶をしているときのことでした。
「それにしても、アシュリーは筋がいいな~⋯⋯」
「本当ね。まだ五歳というのにこんなにも才能に溢れてるなんて!」
「そ、そんな⋯⋯ありがとうございます、お父様、お母様っ!!!!」
私は五歳になってからお父様とお母様から剣術・武闘術・魔法を教えられていた。
ただ、魔法に関しては去年から魔力コントロールの練習をしていて、五歳になってやっと魔力コントロールができるようになったので剣術・武闘術と同じタイミングで教わることとなった。
ちなみに、五歳で魔力コントロールができるようになるのは「規格外だ!」と言って、お父様とお母様に驚かれた。
そんなこともあって「今から特訓を始めよう」とお父様とお母様に言われた。私も「自分には才能があるんだ!」と嬉しかったこともあり、二つ返事で了承した。
そんな、両親との訓練が始まって半年が経った頃、お父様曰く⋯⋯「アシュリーと同じ五歳児でここまで成長している子は他にいないだろうな」ととても褒めてくれた。
お父様はお世辞を言う人ではないことを知っていたので、私はお父様の言葉がかなり嬉しかった。また、お母様も、
「すごいわ、アシュリー! あなたは剣術・武闘術だけじゃなくて魔法にも才能があるわっ!」
そう言って、手放しで喜びを言葉にしてくれた。
そんな両親からベタ褒めされていたこの頃の私は「自分は他の子とは違って優秀なんだ」と正直⋯⋯かなり自惚れていた。
そんな、天狗になったこの頃の私はお兄様をあまり良いようには思っていなかった。というより⋯⋯見下していた。
お兄様はいつも朝早くから森に入っては夜遅くに帰ってくる⋯⋯という毎日だったし、そのお兄様の行動にお父様とお母様も特に注意することはなかったので、私の目にはその頃のお兄様は「剣術も魔法も才能が無い、両親から見放された子供」という認識となっていた。
ちなみに、その頃お父様やお母様にお兄様のことを聞くと、
「ああ⋯⋯カイトはいいんだ。カイトは私たちの手には負えないから。我々にはアシュリーくらいの天才がちょうどいい」
「ええ。だからお兄ちゃんは気にしなくていいのよ、アシュリー。あなたは私たちでしっかりと強くしてあげるわ」
そんな答えが返ってきた。
今思えば「言葉足らずで誤解を招きやすい表現です!」と両親に注意したいところですが⋯⋯あ、いえ、一度、ちゃんとお説教はしましたが⋯⋯。
とにかく! その頃の私はその両親の言葉を聞いて、なおさら「お兄様は両親に見捨てられた子供なんだ」という目で見ていた。
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