「自重知らずの異世界転生者-膨大な魔力を引っさげて異世界デビューしたら、規格外過ぎて自重を求められています-」

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第一章 幼少編

016「秘密会議(前編)」

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——次の日

 クラリオン騎士団団長のアルフレッド・ヴェントレーが屋敷にやってきた。

「久しぶりね、アル」
「ああ、久しぶり⋯⋯ジェーン。それにしても⋯⋯まったく、お前は相変わらず唐突だな、ベクター。おかげで調整が大変だったんだぞ!」
「うむ、すまない。まあ、お前だって私のことは勝手知ったる⋯⋯だろ?」
「本人がそれを言うかね。はぁ⋯⋯」
「お、お疲れ様です⋯⋯団長」
「ああ、レコ君。すまないね、巻き込むような形になってしまって⋯⋯」
「と、とんでもありませんっ?!」
「は、初めまして⋯⋯カイト・シュタイナーです」
「うむ。君がベクターとジェーンの息子のカイト君だね。話は聞いているよ。よろしく」
「よ、よろしくお願いします」

 俺はもちろんだが、レコもまた緊張しているようだった。実際、レコの今の状況をサラリーマンで例えれば、社員の出向先に社長が訪ねてきたようなものだから緊張するのも無理ないだろうな。

 俺たちは、昨日と同じ居間に集まっていた。ベクターとジェーンはいつも通りだが、俺とレコはこれから何の話し合いが始まるのかわからないということもあり、かなり緊張していた。

「では、会議を始めよう。もちろんこの会議は非公式。秘密会議とでも思ってくれたまえ、諸君」

 そんなベクター主体の秘密会議なるものが始まった。


*********************


「⋯⋯というわけだ」

 ベクターは、昨日の俺の力の話をアルフレッドに具体的に説明をした。

「こ、こりゃ、また⋯⋯どえらい話だな。正直、全く信じられんが」
「そうよね。でもねアル、今の話はすべて本当のことなの。ウチの子、すごいの! 当時の私たちよりも遥かにすごいの! もう、あたし⋯⋯声を大にしてカイトのこと自慢したいの!」
「あ、ああ⋯⋯ジェーン。それは絶対にやめような」
「だって~! 自分の息子がこんなに規格外なのよ! 親だったら子供の自慢をするのは当然じゃない!」
「いや、だから、それはマズイってことはお前もわかるだろ、ジェーン?」
「そ、そりゃ、わかるけど⋯⋯。でも、ベクターだってカイトのこと自慢したいでしょ?」
「うむ、そうだな」
「おい、そこの親バカ二人! お前らもう少し危機感持てよ!」
「さて、そこでだ⋯⋯アル。今回の会議は私たちがカイトを自慢できるような立ち位置を用意するということが議題だ」
「な、なにっ?! お、お前ら、そんなことを考えていたのか!?」
「もちろんだ。だから、お前の協力が必要で呼んだんだよ」
「な、なんて、はた迷惑な⋯⋯」
「まあ、当然それだけではないぞ? 例えば⋯⋯⋯⋯『クラリオン王国騎士団の大掃除』も同時進行で考えている」
「っ?! まったく⋯⋯相変わらず食えないやつだ」
「何をいまさら」
「ふふ、何だか思い出すわね⋯⋯騎士団時代を」
「フッ⋯⋯まったくだ」
「まあ、だいたい俺が一番お前らの被害者でもあるがな⋯⋯」
「「「⋯⋯プッ! あっはっはっはっ!!!!!!!」」」

 アルフレッドがそう言うと、三人は高らかに笑った。

 おーい。

 主人公が置いてけぼりですよー。


*********************


「⋯⋯さて、早速結論だが⋯⋯アル! カイトのことは騎士団には黙ってて欲しい」
「ああ、もちろんだ。今の騎士団にカイト君の情報は渡せない。当然だ」
「ありがとう、アル」

 三人が俺とレコを完全に置いてけぼりにして話を進めていく。

「す、すみません、アルフレッドさん」
「ん? なんだい、カイト君?」
「どうして⋯⋯『今の騎士団』に僕の情報は渡せないのですか?」
「ん? ああ⋯⋯それは⋯⋯」

 そう言って、アルフレッドはチラッとベクターとジェーンに目配せをする。すると、

「今の騎士団は秩序が乱れているからだ」
「秩序?」

 と、ベクターがアルフレッドの代わりに説明を始めた。

「現在の騎士団は国を守ることよりも、上級貴族や一部の王族と裏でよこしまな繋がりを持ち、保身や金集めに執着しているのが多いからな。そんな有象無象の中にお前が入っても何の勉強にもならんし、下手すれば悪影響を受ける可能性もある」
「そ、そんな⋯⋯クラリオン王国の剣であり盾でもあるのに⋯⋯」

 おいおい、クラリオン王国大丈夫か?

「まあ、今は平和な時代でもあるから、すぐにどうこうということはないからね。ただ、だからこそ、騎士団のこの『うみ』を出すのは容易でもないけれど⋯⋯」

 そう言って、アルフレッドが大きなため息を吐く。

「いや、考え方としては逆だぞ、アル。平和の時代である今だからこそ、騎士団の膿を完全に抜いて、将来の戦時に備えることが大事だ」
「なるほど⋯⋯確かに。これが戦時中だったら最悪だな」

 アルフレッドはベクターの話に納得する。

「さて、そんなわけでアル⋯⋯。今後のカイトの立ち位置の話だが、私は騎士学園入学まではカイトの力を隠そうと思っている」
「ま、当然だな」
「ただし、入学したらカイトには力を大いに奮って派手に動いてもらい、最終的には騎士学園の生徒をまとめて欲しいと思っている」
「え? えええええええええ!!!!! ちょ、ちょっとお父様っ!!!!!!!!」

 おいおい⋯⋯『寝耳に水』だっての!
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