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第一章 幼少編
010「魔獣遭遇」
しおりを挟む「今日は近くの森で課外授業をするわよ」
「課外授業?」
「そうよ。目的は薬草採取。薬学は知識として備わっているだけではダメだ。実際に調合ができて初めて理解したと言えるものよ!」
「なるほど。わかりました」
「とりあえず、薬学の知識も既に習得済みのようだから森の中で実際に必要な薬草を採取できるのかを見るから」
そうして俺は一歳年上の六歳の家庭教師レコ・キャスヴェリーとシュタイナー領の森へと入っていった。
レコが家庭教師としてウチに来た初日——たったの一歳しか違わないくせにクソ生意気な態度だったが、この一週間で少し態度が柔らかくなった気がする。
理由は不明だが、まあ、たぶん少しは俺のことを認めたからかもしれない。最初の一週間で基本的な学問すべてを講義したが、俺が理解しているとわかるや否や、自分の知っているさらに深堀した知識も話し始めた⋯⋯⋯⋯が、それもすべて俺が理解していたことを知ると少し青い顔をしていた。
それどころか、間違いが幾つかあったので訂正したら、今度はなんか顔を真っ赤にしてしばらく口を聞いてもらえなかった。
要するに「マウントを取ろうとした美少女を返り討ちにしてやったった」ということだ。
まったく、わかりやすい子である。
さて、そんなレコが薬草採取に森に行くと言い出した。
家庭教師初日は「適当に勉強を教えればいい」くらいに思っていたように見えたが、今では少し俺に興味を示してくれているようで、初日に比べてだいぶ会話ができるようになった。
ひとつとはいえ年上ということもあるので上から目線なのは変わらないが、でもまあ『勝ち気な先輩と後輩』くらいな関係性にはなったと思う。
正直、五歳になってやっと家族以外の人⋯⋯しかも同年代の子供と話すことができたので、個人的には嬉しかった。前世の記憶を持つ俺は本来『四十歳』という年齢だが、おそらく子供になったことが原因だろう⋯⋯なんだか『子供っぽい感情』が広がっているのを感じる。
恐らく、これは赤ちゃんのときに母親であるジェーンのおっぱいに性欲として興奮しなかった原因でもあるだろう。とりあえず今のこの世界での年齢に相応しい感情が備わっているのは間違いない。どういうシステムなのかはわからないが、そのほうが俺自身も生活しやすいので助かる。
まあ、性欲はいずれ時が経つにつれ出てくるだろうし、むしろ今、性欲があってもこの体じゃどうしようもない。ただ邪魔なだけだ⋯⋯⋯⋯て、性欲、性欲、と連呼しているが俺は別に性欲第一主義ではないということだけは言っておく。あくまで今、こんな話をしているのは状況説明に過ぎないので誤解しないように。
さて、そんなアホなことを自問自答しているとレコが話しかけてきた。
「じゃあ、この辺でいいかしらね。この周囲にはいろんな薬草があるんだけど⋯⋯とりあえず、回復薬であるポーションを作るからそのための薬草を探しなさい」
「わかりました。レコはどうするの?」
「レコ先生でしょ!」
「あ、ごめんなさい! レ、レコ先生⋯⋯」
「フン! 私より少し勉強ができるからって調子にならないでよね! 私はあなたよりも年上なんだから!」
「はあ⋯⋯わかりました」
「は、はやく行きなさいよ!」
どうやら、レコ本人も知識量での負けを認めたようだ。まあ、俺は前世の知識もあるし、ここは中世ヨーロッパ程度の教育水準ということもあるから一般的な知識や計算の勉強は簡単だった。
だから、レコよりもさらに深く勉強することができたのだが。まあ俺からすればレコの頭の良さこそ『規格外』だと評価しているがな。まあ、本人には言わないけどな。
そんなこんなで俺は今、森でポーションに使う薬草を探している。
「ふう、こんなもんか」
俺はポーションに使う薬草を一通り採取したのでレコのところに戻ろうとした⋯⋯⋯⋯その時だった。
「グルルル⋯⋯」
「!」
目の前に一匹の魔獣が現れた。
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