異世界帰りの英雄は理不尽な現代でそこそこ無双する〜やりすぎはいかんよ、やりすぎは〜

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第一章

055「オメガ様ガチつよ勢」

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「あーーーー! 思い出したぁー!『オメガ様』だぁーっ!!」
「⋯⋯オメガ? ああ、どっかで聞いたことあるなと思ったらあの炎上中のDストリーマー!」
「オ、オメガ様が、デスマスクを⋯⋯! か、かっこ⋯⋯いいっ!!」

 渚、有紀、琴乃がそれぞれ異なるリアクションを見せる。そんな3人を見て、

「え? オ、オメガ⋯⋯『様』? オメガ君のこと、みんな⋯⋯知ってるの?」

 と、亜由美が3人に恐る恐る聞いてみると、

「もちろん! ていうか、亜由美知らないの?!」
「ええ?! 知らないのかよ!」
「えっ!? 亜由美ちゃん、知らないの!」

 3人から「嘘でしょ?」とかなり呆れられてしまう亜由美。特に普段そこまでテンションが高くない琴乃がここまで派手に驚くのを見た亜由美は、自分が『オメガ様』を知らないことがよっぽど世間知らずなことだったんだと認識する。

「しょ、しょうがないでしょ!? 先週は階層ボス攻略の作戦を考えていてそんな暇なかったんだから⋯⋯!」

 と、3人の「嘘でしょリアクション」に抵抗する亜由美。

「そ、それは、ありがたく思ってるけど⋯⋯。でも先週の『オメガ様炎上』ってかなり騒がられてたわよ?!」
「炎上した探索者シーカーがいたってことは知ってたけど、で、でも、名前までは⋯⋯知らなかった⋯⋯のよ」

 特段、悪いことをしたわけではないが『オメガ様』を知らなかったことに居心地が悪くなった亜由美の声が小さくなっていく。しかし、

「て、ていうか! それじゃあんたたちは何で『オメガ様炎上』を知っててオメガ君を見た時にすぐに気づかなかったのよ!」

 と、再度自分を奮い立たせてファイティングポーズを取る亜由美⋯⋯だったが、

「だって、先週はその真っ白いお面なんてかぶってなかったし」
「だって、先週はこんな黒い服装やマントなんてしてなかったし」
「え? あ、そ、そう⋯⋯なんだ⋯⋯」

「なるほど、それならわからないのは仕方ないか」と有紀と渚の返答に納得してしまった亜由美。事実上の敗北であった。そんな3人への抵抗を早々と諦めた亜由美は直接タケルに問いかける。

「先週はこんなお面や黒い衣装じゃなかったの?」
「あ、はい。先週はサングラスと口元をマスクで隠していただけだったので。なので、このデスマスクの仮面と衣装は今日が初お披露目なんですよ~」
「へ~そうなんだぁ~」

 亜由美とタケルのやり取りが何ともほのぼのとしたものだったので、それだけ見るとダンジョンの⋯⋯しかも下層最深部であることを忘れてしまうような⋯⋯そんな空気が流れていた。

「で、先週Dストリーマーデビューして初めての配信だったんですけど、その第1回目の配信でやらかしまして⋯⋯」
「ああ、炎上したのよね?」
「はい。それで今日は炎上以来の配信になるんですけど⋯⋯。で、この格好は今日からだったのでそれで渚さんや有紀さん、琴乃さんがすぐに俺とわからなかったのは無理ないんですよね⋯⋯ははは」
「あ~たしかにそうだよねぇ⋯⋯⋯⋯んんんんっ?! ちょ、ちょっと待って!」
「はい?」

 これまでのほのぼのとしていた空気が一変する。

「え、え~と⋯⋯今日が2回目の配信で先週が初配信ってことは、それって探索者シーカーとしてダンジョン探索したのも先週からってこと?」
「はい。ほら、さっきも見せましたけど、俺はまだ『F級探索者シーカー』になったばかりの新人探索者シーカーですから。Dストリーマーのことだってあまりよくわかってないペーペーなんですよぉ~⋯⋯ははは」

 そういって、首から下げているF級探索者シーカーの『鉄の登録証』をプラプラと見せるタケル。すると、

「え、F級⋯⋯探索者シーカーぁぁぁっ!!!!」

 タケルの言葉を聞いて思わず大声を上げる亜由美。だがそんな亜由美を見て、

「いや、それさっきオメガ様が救出に来た時言ってたじゃん」
「そうだよ亜由美ちゃん。オメガ様ちゃんと『鉄の登録証』見せてたでしょ」

 と、渚と琴乃が冷静にツッコむ。

「い、いや、あの時は命の危機を救われたのと⋯⋯まだどうなるかわからない状況で冷静じゃなかったから⋯⋯だからそのことをすっかり忘れてて。ご、ごめんなさい、オメガ君」
「い、いえ、そんな⋯⋯! 別に謝れるほどのことじゃないので気にしないでください。っていうか頭上げてください、亜由美さん!?」

 頭を下げて謝罪する亜由美を見て、タケルは慌てて頭を上げるよう促す。

「で、でも、今冷静になって、オメガ君が『F級探索者シーカー』っていう事実を突きつけられると、オメガ君がいかに異常な存在であるかを⋯⋯やっと実感したわ」

 そんな一人『オメガ様』を知らなかった亜由美が告白すると、

「「「うんうん、わかるぅぅ~~~!!!!」」」

 と、3人が腕組みしながらうんうんとうなずき、そして、

「「「ようこそ! オメガ様の世界へ!!」」」

 満面の笑みで亜由美を迎える3人であった。


********************


「どうやら、ようやく亜由美も私たちと『同じ土俵』に立てたようね。歓迎するわ!」
「え? あ、うん⋯⋯」

 こうして『オメガ様』を共有することができた亜由美に渚がドヤ顔で上から言ってきたが、亜由美は「とりあえず、このまま渚のノリについていこう」と決め、特に渚にツッコむことはなかった。

「ということで、これからオメガ様にいろいろと質問したいんだけど⋯⋯その前にオメガ様は今配信はしてるんですか?」
「な、渚さん! オメガ様ってやめてくださいよ!! 最初みたいに『オメガ君』でいいですから⋯⋯」
「いえダメです。それは却下です。だって私も『オメガ様ガチつよ勢』ですから」
「え? ガチつよ勢?」
「あ、そこは気にしないでください。それよりも『オメガちゃんねる』は今配信されてるんですか?」
「え、あ、はい。一応⋯⋯」
「そうですか。ちなみに今もチャット機能は⋯⋯」
「オフのままです」
「⋯⋯そうなんですね。実は今、私たち『戦乙女ヴァルキュリーチャンネル』の同接視聴者と、あとDストリーマー掲示板の住人たちが私たちのチャンネルとオメガ様の『オメガちゃんねる』を視聴しているんです」
「え? 俺のチャンネルも⋯⋯ですか?」
「はい。なので恐らくオメガ様のチャンネルもバズっていると思いますよ」
「い、いや~、さすがに無いと思いますよ。戦乙女ヴァルキュリーさんたちのこのチャンネルはバズっているかもしれませんが、俺のチャンネルなんてチャット機能オフにしたダンジョン探索をただたれ流しているだけの配信ですから。だからバズってるなんてそんなこと⋯⋯」
「どうぞ、オメガ様」
「え? ちょ⋯⋯琴乃さんっ?!」

 すると、今度は琴乃が横に来てタケルにスマホを差し出す。⋯⋯膝をつきながら。

「ひ、膝ついて何やってんすか!」
「⋯⋯大丈夫。私も『オメガ様ガチつよ勢』。そしてオメガ様はそんな些細な小事気にしなくていい。それよりもスマホを観てください」

 何を言っても膝を崩すことをやめないようだったので、タケルは仕方なくそのまま琴乃が差し出したスマホの画面を観てみた。すると、

「⋯⋯え?」

——————————————————

93:Dストリーマー名無し
おーい、オメガ様~~!
観てますよ、オメガちゃんねる!!

94:Dストリーマー名無し
強いオメガ様、かっこいい~!

95:Dストリーマー名無し
オメガ様ぁぁ!!!!

96:Dストリーマー名無し
かっこよかったです、オメガ様!

⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯

——————————————————

 そこには『Dストリーマー掲示板』が映っており、掲示板住人たちによる『オメガちゃんねる観ています』といった書き込みがいくつもあった。
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