異世界帰りの英雄は理不尽な現代でそこそこ無双する〜やりすぎはいかんよ、やりすぎは〜

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第一章

031「炎上」

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「ど、同接数⋯⋯『1万人』?!」

——————————————————

:お? いつの間にこんなに同接数が増えていたとは⋯⋯
:おお! これは期待持てるチャンネルかも!
:今から自分、古参勢名乗らせていただきやす
:俺も!
:おいも!
:おらもー!

——————————————————

 視聴者のコメントを観る限り、どうやら受け入れられている⋯⋯ように見える。

 そ、そうだ! まずは自己紹介しなきゃ!?

「え、え~と⋯⋯初めまして! 今日から『オメガちゃんねる』というダンジョン探索の配信を始めましたDストリーマーのオメガです!」

 そう言って、俺はカメラに向かって深々と頭を下げる。

 いやいや、めっちゃパニくってるんですけどぉぉぉ!

——————————————————

:あ、やっぱ初めてのダンジョン配信なんだw
:え? てことは、もしかして⋯⋯F級探索者シーカー

——————————————————

「はい、そうです。今日F級探索者シーカーの登録証もらってきました」

 俺はその質問に普通に答えた。すると、

——————————————————

:は? はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!????
:う、嘘だろ?!
:F  級  探  索  者
:ハァァァァァ?????
:おかしい! そんなのあり得ない!
:いやいやいやいやww フカし過ぎワロタwwww
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯

——————————————————

 コメントがいきなりダーーっと流れる。しかも観た感じ、俺がF級探索者シーカーということが信じられないようだ。

「そ、そんな⋯⋯嘘じゃないですよ?! だって、ほらこれ⋯⋯」

 と、俺は首からぶら下がっているF級探索者シーカーの『鉄製』の登録証を見せた。もちろん名前や顔写真の部分は伏せてある。

——————————————————

:ほ、本当だ⋯⋯
:嘘⋯⋯?
:オーマイッガー
:あの鉄製の登録証は間違いなくF級の登録証⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯

——————————————————

 登録証を観せるとやっとみんな信じてくれた。

⋯⋯と思ったら、

——————————————————

:あーなるほど。これ、CGで仕上げた配信風ニセ映像だわwww

——————————————————

 え? CG?

「い、いやいやいや、CGじゃないですよ? ちゃんとリアルですよ?」

 俺はみんなが勘違いしないようすぐに訂正を入れる。しかし、

——————————————————

:あ、なーんだ。やっぱCGかよ!?
:だっせ
:は~?! マジか!
:最悪だわ
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯

——————————————————

 一人の視聴者が「CG」と言った途端、ほとんどの視聴者がそんなことを言い出した。

「そ、そんな!? 違いますよ! CGじゃないですって! 今、ちゃんと戦うんで観ててくださいね!」

 俺は少し頭に来たので、この件をさっさと終わらようとちょうど29階層の階層ボスである『レッドオーク』を発見すると、視聴者も魔物も視認できる程度のスピードで近づき、レッドオークの魔力を込めたそこそこ・・・・鋭い攻撃をギリギリで躱すと、同時にそのまま飛びつき素手でレッドオークの頭を破裂させた。

 パーーーン!

「ど、どうですかっ!? 今のを観ればCGじゃなくて本物の映像だってことがわかりましたよね!!」

 視聴者はたぶん俺の動くスピードが速すぎてCGだと思っているのだろう。なので、今度は魔物も視聴者も視認できるスピードで接近し、レッドオークを倒した。

 ふぅ~、これでCG問題は解決⋯⋯、

——————————————————

:やっぱ、CGだなwww
:だよな。レッドオークが一撃⋯⋯しかも頭を破裂させるなんてあり得ないからww
:本当にCGなんだよな? これ、もしもガチのリアル配信ならB級か、下手したらA級に近い強さってことになるぞ?
:ないないないないww そんな有名探索者シーカーなら探索者シーカーギルドが黙ってないってww
:そうそう。それに、そこは新宿御苑ダンジョンだぞ? ギルドはギルドでも『日本ギルド本部』の管轄だぞ? こんなケタ違いな強さだったら大々的にテレビで広告塔として利用してるって!
:だな! 日本ギルド本部は少しでも探索者シーカーを増やしたいだろうから、こんな凄い新人が現れたら絶対に利用するなww
:たしかに。じゃあやっぱこれってCGなんだな。はぁ、ちょっと凄い新人が現れたと期待したのに⋯⋯
:世界でも日本の探索者シーカーはレベルが低いって外国人からバカにされていたから、こんなすげえ新人ルーキーが現れたって知って最初はめちゃめちゃ期待したのに⋯⋯最悪だよ
:よって、オメガ君はギルティ
:はい、ギルティ!
:うむ、ギルティ!
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯

——————————————————

「い、いや、違っ⋯⋯!?」

 俺は否定しようとしたが、流れてくるコメントはほとんどが「CG」「最低」「情けない」といった内容ばかりだった。しまいには、

——————————————————

:あとオメガ君さぁ~、そんな『90年代のオタク格好』して、さらにCGでごまかした映像まで流して何が楽しいん? 人として最低だわ
:ホントだよ! マジでこんなことして恥ずかしくないのかよ!
:まあまあ、いいじゃないか諸君。目立ちかったんだよな、オメガ君は? わかる、わかるよ~www
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯

——————————————————

 チャット欄は「情けない」だの「新人でそんなニセ配信してどうすんの?」だの、こっちの話を聞かずに一方的に『配信風CGニセ動画』ということで進んでいった。⋯⋯何か最近学校をやめたあのクズ先公を彷彿とさせる。

 しかし、そんな中、ごく少数ではあるが俺を擁護するコメントも上がっていた。

——————————————————

:これがCG? そんなわけないじゃない!?
:見る目ない人多過ぎww これがCGって思わせるくらい異常な強さだということがどうしてわからないの!?
:CGじゃないよ? これ全部この人のリアルの強さだよ? ていうか、こんな人が今の今まで無名であるはずないから!『Dストリーマーウォッチャー』の私が断言する! これ、本当に新人のF級探索者シーカーで間違いないから!

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 しかし、チャット欄はそれ以上に『配信風CGニセ動画勢』のコメントで塗りつぶされていく。そして、俺はここまでほぼ全員の視聴者のコメントを観て、心が⋯⋯折れた。

「⋯⋯そうですか。じゃあもういいです。もうチャット機能は『オフ』にします。一応、ダンジョン探索は続けていきますけど観たい人だけ観てください。それじゃ、そういうことで。さよならです」

——————————————————

:望むところだってのww
:はいはい、さよ~ならww
:いや~、すっかり心折れたようでなにより
:だな。ということで、これに懲りて『配信風CGニセ動画』なんてやめなさいww
:F級探索者シーカーか。俺もF級だからお前探して説教したるわww
:え?! チャット機能オフっ!? そ、そんな⋯⋯!!
:私はちゃんとこれからオメガさんの配信を観続けますし応援していきます。でも、できればチャット機能はオフにして欲しくないです! チャットを通してつながりたいですっ!!
:はいはいww ブスブスwww
:こんなCG動画に騙される女子とか、どうせコミュ障腐女子だからww
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯

——————————————————

「⋯⋯」

 チャット欄では、数人の理解ある視聴者さんを『配信風CGニセ動画勢』がフルボッコにしていた。俺は数人の理解ある視聴者さんに申し訳ないと思いつつもチャット機能をオフにした。

「はぁぁぁ~。まさか、Dストリーマーデビューでいきなり視聴者さんとケンカになるなんて⋯⋯」

 ついていない。

 どうしてこうなった?

「とりあえず、今日観てくれた視聴者さんのほとんどはもう観に来てくれないだろうな⋯⋯。でも、数人の理解ある視聴者さんたちは観に来てくれる⋯⋯いや、厳しいか?」

 実際、配信の『同接数』がみるみると減っていってる。

「さ、さっきまで、1万とかだったのに⋯⋯ほんの数分で1500って⋯⋯」

 また、チャンネル登録者数も同接1万のときは『1300人』くらいいたのに、今では『11人』と激減している有様。

「はぁぁ~、これでDストリーマーの収益化はあて・・にできなくなったか」

 俺は視聴者さんとのやり取りに疲れ果てたため、結局その後はダンジョン探索はやめて家に戻った。
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