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第一章
014「登校」
しおりを挟む「おはよう、タケル兄ぃ!」
「⋯⋯はよ⋯⋯タケ⋯⋯すぴー」
「おはよう。あと、由美立ったまま寝るのはやめなさい」
——朝、洗面所で亜美と由美にすれ違う。
長女でしっかり者の亜美は、朝も強くいつもの天真爛漫な笑顔とテンションである。一方、由美は朝にめちゃめちゃ弱く立ったまま寝るという離れ業をやってのけていた。ちなみに由美は今日も見た目通りのローテンション不思議少女全開である。
「おはよう、3人とも。さあ、早くご飯食べて学校行きなさい」
「わかった」
「はーい!」
「⋯⋯あぅ」
朝食を食べながら母さん⋯⋯結城 綾は三者三様のリアクションに苦笑いをする。ちなみに父親は亡くなったと聞いている。というのも俺が生まれてしばらくして亡くなったからだ。なので、俺も妹たちも父親の顔は仏壇の遺影で知っているだけで実際に話したことがないので母さんの話で聞いたことくらいしかわからない。
なので、生活は母さんと俺たち兄妹3人の母子家庭だが、幸いにも父さんの亡くなった時の保険金があるので母さんは専業主婦として生活が成り立っていた。
とはいえ、保険金なんていつまでもあるわけじゃないし、ましてや俺や妹たちはこれから一番お金がかかる時期なのだ。だから、俺はそういった生活面も含めて高校卒業したらすぐに働こうと当時から思っていた。
まー今はもちろん『探索者で稼ぐこと』一択だけどな!
「「「いってきます!(⋯⋯いってき、むにゃむにゃ)」」」
「はい、いってらっしゃい! あと由美、しっかりしなさい!」
そうして俺たちは3人一緒に学校へと向かう。そういえば、3人で学校に登校するのっていつ以来だろ? 中学以来か?
たしか、中学までは一緒に登校していたが高校生になった俺が「妹と一緒に登校するのは恥ずかしいからやめる」と言った⋯⋯それ以来か。
当時は妹たちと学校に行くのが嫌だったが、今の俺は異世界で5年生きているので実質『22歳』。なので、この歳で妹たちと一緒に学校に行くのは今は大して気にならない。
むしろ、1歳しか離れていない妹たちだが実際俺の中では『6歳離れた妹』という感覚なので、妹たちは愛しく感じるくらいだ。ちょっと親目線な気分である。
ちなみに、二人もそう感じているのか、
「何かタケル兄ぃ、いきなり大人っぽくなってない?」
「うん。前のタケル兄ぃもよかったけど、今もこれはこれで⋯⋯グッ!」
「ちょっと何言ってんのよ、由美。やめてよね、朝っぱらから⋯⋯」
「大丈夫。タケル兄ぃに関しては朝でもイケる口。そこは亜美も一緒⋯⋯」
「わ、わぁぁぁ~!? し、しぃぃ~~~!! ゆ、由美、声大きいって!」
「大丈夫。聞こえるくらいがちょうどいい」
「よくな~~~いっ!!!!」
ふむ。妹たちにも今の俺は割と好評のようらしい。よかった、よかった。
そんなことを言っている間にすぐに学校に着いた。
——県立魁星高校
俺の通っている学校だ。まーどこにでもあるような男女共学の普通校である。
「⋯⋯学校か」
俺はいじめられていた当時を思い出す。
そう、俺が戻った現代は5年前の世界。つまり『絶賛いじめ継続中』の世界である。
「タケル兄ぃ⋯⋯大丈夫?」
「タケル兄ぃ⋯⋯教室まで私が一緒に行ってあげる」
亜美と由美が心配そうな顔で俺に優しい言葉をかける。
「ありがとう、亜美、由美。でも俺はもう大丈夫だから」
二人を安心させようと俺は優しく二人に笑顔で返事をする。
「っ! そ、そそそ、そっか、そっかぁ! あは、あはは⋯⋯」
「ぶっ!! い、いいい、今の不意打ちは、効いた⋯⋯!」
「???」
なぜか亜美と由美が悶絶している。それに、
「お、おい由美、お前鼻血出てるぞ? 保健室一緒行くか?」
俺は由美の様子を見て保健室に一緒に付き添おうかと提言する。
「(ぶんぶんぶんぶんぶんぶん⋯⋯!)」
しかし、由美はなぜか猛烈に両手を目の前に掲げ、ぶんぶんぶんと全力で抵抗する。
え? 何? お兄ちゃん嫌われるようなことした?
「だ、大丈夫、大丈夫だから⋯⋯っ!! 由美は私が保健室に連れていくからタケル兄ぃは先行ってて!」
亜美が何やら慌てながら俺にそう言ってくる。
「わ、わかった⋯⋯?」
とりあえず、俺は亜美の言葉どおり、由美を亜美にまかせて校舎の中へ入っていった。
********************
「さ~て、いよいよご対面⋯⋯か」
正直、昨日——ダンジョンでゴブリンに襲われるまでは、現代ではレベルリセットされ『レベル1』の最弱な状態からスタートする生活を考えていた。そして、学校ではまた佐川たちにいじめられる毎日が始まるのだろうと覚悟もしていた。
当然、当時のいじめは覚えているし、思い出すと軽くフラッシュバックして今でも冷や汗をかくことがある。
でも、俺は「自分の人生からはもう逃げない」と決めて元の世界に戻ってきたのだ。だから、佐川たちにいくら暴力を振るわれても決して屈せず立ち向かおうと覚悟してこれからの学校生活を臨むつもりでいる。
しかし、しかしである。
俺のステータスは、たしかに『レベル1』にリセットはされたが、実際は異世界で獲得した『魔法』『スキル』『アイテム』はすべて継承されていた。
グシャビチョ女神による『さぷら~いず』である。
ぶっちゃけ、その時はグシャビチョ女神に初めて感謝の想いを口にした。
というわけで、俺は女神の粋な計らいにより、この世界で『チート能力者』として爆誕した。
そんなレベル以外の能力やアイテムが継承されチートキャラとなった今の俺にとって、これからの学校生活は『辛くて苦しい場所』ではなく、むしろ『楽しくて仕方ない場所』へと切り替わっていた。
「さて、しっかりと『ざまぁ』させていただきますか」
********************
——遡ること、タケルと別れる前の亜美と由美
「だ、大丈夫、大丈夫だから⋯⋯!? 由美は私が保健室に連れていくからタケル兄ぃは先行ってて⋯⋯!」
「わ、わかった⋯⋯?」
そう言って、タケル兄ぃが一人校舎へと歩いて行ったのを見届けて、
「ちょ、ちょっと、由美! 大丈夫?!」
「ダ、ダメ⋯⋯。あの不意打ちは卑怯。でも⋯⋯あざぁぁっす!!」
「あざぁぁっす、じゃないわよ! あと、あんたいつもいつも言葉が変態ちっくなのよ!⋯⋯まー変態だけど」
「おい我が姉。変態とはひどいじゃないか。私はただタケル兄ぃを血のつながりを乗り越え生涯愛し続け、まとわり続ける存在でありたいと願っているだけじゃないか」
「それが変態ちっくだって言ってんのよ!」
「でも、亜美だって⋯⋯嫌いじゃないだろう? んん~?」
「っ!? そ、それ⋯⋯は⋯⋯」
「んん~? どうなんだ、んんんん~?」
「う⋯⋯」
「う?」
「うるさい! この変態バカ由美ぃぃ!!」
そう言って、亜美が由美を置いて猛ダッシュで校舎に入っていった。
「フッ⋯⋯若いな、亜美」
「お前もな」
「⋯⋯え?」
「遅刻だ。結城亜美」
「が~~ん」
調子に乗った亜美に、生徒指導の先生が『遅刻』の烙印を叩き落としたとさ。
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