イフライン・レコード ファンタジー地球に転移した俺は恩寵(ギフト)というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!

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第四章

153「ダンジョンここだけの噂スレ<本人降臨>パート7(1)」

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 終業を知らせるチャイムが鳴った。同時に機動部隊詰め所のドアが開けられた。

「はい!お仕事はおしまい!行くわよ!飲みに!」

 そう高らかに言い放って入ってきたのは、紺色の長い髪と糸目が目印のアメリア・グラウゼ少佐その人だった。

 明らかに場違いなショッキングピンクのTシャツに、デニムのタイトスカート。しかもTシャツには『浪花節なにわぶし』と毛筆体で書いてある。誠はこういう意味不明なTシャツが売っているのは知っていたが、こういう服を日常的に着ている人が目の前にいる事実に少し衝撃を受けた。

「少佐……」

 唖然とする誠の前でアメリアは細い目をさらに細くしてほほ笑む。

「そんな階級で呼ぶなんでダメ!そうねえ、アメリアさんで行きましょう。私、誠ちゃんより年上だし。そうしましょう」

 アメリアは立て板に水でそう言うと機動部隊室の他の三人の女パイロットに目をやる。誠も振り返って三人の奇妙な女性達を眺めた。

「有志の歓迎会の前にやるんだろ?アタシは車があるから、飲めねーし、アタシの悪口言うんだろ?言いたきゃ言えば?聞きたくないから行かない」

 ランは誠がこの部屋に戻ってきてからずっと将棋盤を見つめ考え事をしていた。

「どうせオメー等が行くのは『月島屋』に決まってるよな。あそこならアタシのツケで飲める。なーに、勘定の方はアタシが払うってことにしときな。ただし、西園寺が飲んだのはテメーが払え。あれはアタシの管轄外だ」

 机に置かれた将棋盤を前にしてクバルカ・ラン中佐は手に飛車を持ちながらそう言った。誠はこんな出来た上司が実在するという事に感動すると同時にこのプリティーな生き物が一日中結果的に将棋しかしていない事実に呆れていた。

「まあ、アタシの為だけにキープしている酒だから。アタシが払うのが筋ってのは分かるよ。でも……」

 そう言いながら、かなめが端末の電源を落として立ち上がった。

「グダグダ言っても仕方ないだろう」

 手を止めたカウラはそう言って立ち上がる。

「神前は本部の前でこの変な文字がプリントされたおばさんと一緒に待ってろ。アタシ等は着替えて裏道通ってカウラの車で二人を拾いに行く」

 かなめはそう言うと誠の脇を抜けて、ドアの前に立つアメリアに近づいていく。

「ちょっと……かなめちゃん。聞き違いでなければ『おばさん』とか言わなかった。間違いよね……」

 相変わらず、見えているのかどうかよくわからない細い目でアメリアはかなめをにらみつけた。

「アタシは28歳、オメエは30歳。アタシの年でも、そこら歩いてるガキには『おばさん』と呼ばれることがある。オメエは年上だから十分おばさんじゃん」

 そして、当然『カモ』となっている誠にその火の粉は降ってくる。かなめは誠に目を向けて指さして話を続ける。

「こいつは現在23歳。つまり、オメエより7歳若いってこと!つまり、こいつはオメエを『おばさん』と言う権利があるわけだ。神前この変なのをおばさんと言え。言わなきゃ射殺する。アタシが実弾入りのマガジンポーチを持ち歩いているのはこういう時に使うんだ。おばさんと言うか、死ぬか。選べ」

 そう言ってにんまりと笑うかなめ。この人ならやりかねない。そう思いながら、たれ目のかなめの視線を外すタイミングを誠は探していた。

「神前、安心しろ。西園寺は撃たない……と思う。これまでこういったケースは日常的にあるが、今まで撃ったことが無い。まあ、初めての被害者が神前の可能性は否定できないが」

 身の回りの物でも入っているのだろう、ハンドバックを引き出しから取り出したカウラがそのまま二人の間を通って部屋を出ていった。

「さあて、神前。おばさんと言うか死ぬか。選びな」

 相変わらずかなめはそう言いながら銃の入ったホルスターを叩いている。

「わかったわよ!私はおばさん!誠ちゃんの脳みそぶちまけるのを見たくないから!私が自分で言えば丸く収まるんでしょ!」

 そう叫んだアメリアは誠のそばまで行った。

「いろいろ、誠ちゃんに聞きたいことがあるの。仕事関係じゃなくて『趣味』のこと」

 誠の手を握ってにっこりとほほ笑むアメリア。

「趣味だ?野球以外の趣味あるんだ。まあ、好きにしな。お先!」

 そう言うとかなめはドアを開けて出ていった。

「アメリアさん……」

 誠が名を呼ぶと。嬉しそうにアメリアは微笑む。

「お姉さんも色々多趣味だから。合うと良いなあなんて思ってるわけ、趣味が」

 年上の女性、しかも美人からこう言われてうれしいのは事実だが。ここの隊員は全員どこか規格外なので、どんな結末になるのやら。ただ、誠は深く考えず場当たり的に生きていくことの必要性を実感していた。
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