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第四章
135「スカウト①」
しおりを挟むその後、SNS配信をするということで決まり、その主戦場を『Yo!Tube』ということになった後、
「じゃあ、あとよろしく」
「「「「「はっ! かしこまりました、マスター!」」」」
突然、どこからともなく数人の黒装束が現れ、明凛の指示に返事をするとまたどこかへと消えていった。
「いや、今の誰っ!? ていうか、何っ!?」
「ああ、中国ギルドの秘密部隊だ。主に通信関連の部隊だな」
「そんなのいんの!?」
「え? こんなの普通だよ⋯⋯なー?」
と、メイベルに話を振る明凛。
「ええ。普通ね」
そして、即答で肯定するメイベル。
「や、やっぱ、お前らとは根本的に生きているステージが違うと改めて実感したわ⋯⋯」
俺がそんなことをボソッと呟くと、
「ふ~ん、やっと『地』が出てきたようね~⋯⋯新屋敷ソラ」
「何だよ? やっぱ最初みたいな言葉遣いがよかったってか?」
「これでいいわよ。変に畏まった喋るなんて私キライだし⋯⋯」
「同じく」
そう言って、メイベルと明凛がニッと笑う。
「!⋯⋯あ、ああ」
もっと二人がいじってくると思っていたら、意外にも受け入れの言葉を二人からもらった俺はちょっと拍子抜けしてつい返事が吃ってしまった。
「あら? 何? もしかして、私たちのこと『優しい~』なんて思った?」
「べ、別に⋯⋯思うか、そんなのっ?!」
「ふ~ん、本当~? 新屋敷ソラ、あんたちょっと戸惑ってない?」
「と、戸惑ってなんかいねーよ!」
「「ふ~~ん」」
「っ!?」
くっ?! 何だろう⋯⋯すごい屈辱だ!
何となく、二人との今後の活動について暗示しているようなやり取りに感じて、俺の中で不安が広がった。
「絶対、主導権は俺が取ってやる⋯⋯(ボソ)」
********************
「さて、それじゃあ次にギルドに行くわよ」
と、明凛がおもむろにそんなことを言ってきた。
「え? ギルド? ダンジョンじゃなくて?」
そんな明凛の言葉にメイベルが怪訝な表情で尋ねる。
「そうよ。だって、ギルドに行くのは『スカウト』に行くんだから」
「「スカウト?」」
明凛の話によると、今後の配信活動する上での人材スカウトとのことだった。
「まー色々と必要なメンバーは中国ギルドのほうで揃えるけど、やっぱり何と言ってもカメラマンよ」
「「カメラマン?」」
「そう。だって、私たちは『演者』なんだから。撮影するカメラマンは別の人に頼まないといけないでしょ?」
「あ、そうか」
自撮り⋯⋯じゃダメなのだろうか?
「ソラ。あんた今『自撮りじゃダメなのか?』な~んて考えてたでしょ? 甘い! 甘いわよ、ソラ!」
そう言って、ずいっと詰め寄る明凛。
「お、おう⋯⋯」
近い。近い。
あ⋯⋯良い匂い。
「カメラマンは別で用意したほうが綺麗に撮影できるのはもちろんだけど、それだけじゃなくカメラマンとのやり取りもまた視聴者には受けがいいのよ」
「ほう? カメラマンとのやり取り⋯⋯」
「ただ、大きな問題が一つあるのよね⋯⋯」
「「大きな問題?」」
「だって、私たちがダンジョン探索する場所は『Sランクダンジョン』なのよ? そんなところについてこれるカメラマンなんて正直⋯⋯そうそういないわよ」
「「た、たしかに⋯⋯」」
さもありなん。言い得て妙である。
「だったら、明凛んとこにいる探索者出しなさいよ」
とメイベル。
「まーそれでもいいけど⋯⋯。できれば中国人ではなく日本人のほうがいいわ。だって、Yo!Tube配信するのは日本語でやるんだから。私とメイベルは日本語喋れるからいいけど、カメラマンが中国語しか話せないとなると、さっき言ったカメラマンとのやり取りができないよね⋯⋯」
「「う~~ん⋯⋯」」
ということで、再び腕を組んで考える俺とメイベル。しかし、そんな素人二人とは違って、
「大丈夫よ。探索者ギルドに行けばきっと見つかるわ」
と明凛。頼もしい。
「とりあえず、カメラマンの条件としては『B級ランク以上の探索者』で『撮影技術のある人』といったところかしら?」
「そ、そんな条件の揃った探索者なんているわけないじゃないっ!!」
とメイベル。いや、これは確かにその通りだと思う。
「まー『撮影技術のある人』はおまけみたいなものよ。あと、カメラマンの探索者ランクも必ずしも『B級ランク以上』である必要はないわ。まー危ない時は私たちがフォローすればいいし。でも、できれば最低限自分の身を守れる技術を持った人が望ましいわね。身を守れる技術・もしくは逃げる技術を持っている人であれば、『B級ランク以上』じゃなくても問題ないわ」
なるほど。確かにそれなら見つかるかもしれないな⋯⋯。とはいえ、簡単ではないのは確かだろう。
「さ、とりあえずゴタクはいいからさっさと探索者ギルド⋯⋯インフィニティ日本本部に行くわよぉー!」
そう言って、明凛が俺とメイベルの手を掴んで玄関を飛び出した。
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