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第三章

124「探索者集団《シーカー・クラン》『乾坤一擲』」

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「い、いや~緊張するな~⋯⋯」
「う、うん。私ナマで見るの初めてだし⋯⋯」

 俺たちは今、探索者シーカーギルドのギルドマスターの部屋⋯⋯つまり、炎呪の部屋へ向かっていた。先日、賢者ワイズマンとの話し合いで日本の有名探索者集団シーカー・クラン『乾坤一擲』と帯同する話となり、今日はその帯同の日ということで炎呪のところへ足を運んだ。

「おい、ソラ。お前『乾坤一擲』や『蓮二さん』はさすがに知ってるよな?」
「も、もちろん。テレビでもよく見かけるし、ウチの家族も全員その『蓮二』って人のファンだ」
「え? それだけ? ソラ君、『乾坤一擲』の凄さとか『蓮二様』の凄さは知らないの?」
「ん? あ、えーと、まあ⋯⋯」
「「ソラ(ソラ君)っ!!」」

 と、二人が俺のあまりの知らなさぶりにキレて、『乾坤一擲』と会う前に二人からレクチャーを強制的・・・に受けることとなった。

 二人によると⋯⋯探索者集団シーカー・クラン『乾坤一擲』とは、『蓮二』こと、『風間蓮二かざまれんじ』をリーダーとするS級ランカーの探索者集団シーカー・クランだ。

 ただ、蓮二さん以外のクランメンバーは全員A級ランカーとのこと。そう聞くと、S級ランカーの探索者集団シーカー・クランとしては実力的に下のほうかと思いきや、むしろ国内の他のS級ランカーの探索者集団シーカー・クランに比べて、圧倒的に実力が高いらしい。

 その為、噂では「本当は全員S級ランカークラスの探索者シーカーレベルなんじゃないか?」と言われている。

「へ~。でも、だとしたら何で実力を隠しているんだ?」
「さあな。色々あるんだろ?」
「ちょ、ちょっと! ソラ君、お願いだからそんなこと聞かないでよねっ!?」
「え?⋯⋯⋯⋯あーうん」

 えーと⋯⋯⋯⋯⋯⋯『フリ』かな?

「フリじゃないからね?」
「うっ!? は、はい⋯⋯」

 胡桃沢が俺の思考をまるで読んだかのように、先回りで注意された。あと顔怖い。

 そんな話をしているうちに、部屋の扉の前まできた。

「じゃ、じゃあ、入るぞ(ゴクリ)」
「う、うん(ゴクリ)」
「ああ⋯⋯」

 俺たちは炎呪の部屋に入った。


********************


「やー、みんな! 時間通りだね!」

 部屋に入ると、開口一番出迎えたのは炎呪。そして、

「こんにちは⋯⋯。大物ルーキーの新屋敷ソラ君。それと大型新人クラン『新進気鋭アップスタート』の唐沢君と胡桃沢君だね」

 次に声をかけたのは、蓮二こと『風間蓮二かざまれんじ』。

「お、俺たちのことを⋯⋯! は、初めまして! 唐沢利樹と言います!」
「は、初めまして! く、胡桃沢星蘭と言います!」
「⋯⋯あ、新屋敷ソラです」

 俺たちは部屋に入って、すぐに蓮二って人に声をかけられるとは思っていなかったので少々焦った。

「へ~、これが『新進気鋭アップスタート』か~。さすが元高校生⋯⋯⋯⋯若いね~」

 すると、蓮二の横にいるチンピラ風の金髪女性に声をかけられた。なんか『姉御』とか『あねさん』って言われていそうなイメージの女性だ。

「⋯⋯不思議。その若さでA級ランカーの探索者集団シーカー・クランになるなんて⋯⋯不思議」
「いや、こんなときくらい前に出てしゃべりなよ、ミズホ⋯⋯」

 そして、その金髪女性の後ろに隠れながらボソボソ話しかけたのは『ミズホ』と呼ばれる前髪が目にかかるほど長く、後ろ髪も背中くらいまである女性⋯⋯⋯⋯というか、同い年くらいの『女の子』っぽい人だった。俺たちを見て「不思議」とか連呼していたが「そりゃこっちのセリフだ」ってツッコミたいくらいには、その人がよっぽど『不思議ちゃん』な感じだ。

「ひゅ~、すげえな~。その若さでA級ランカーか。パッと見は強そうに見えないが⋯⋯⋯⋯だが、逆にそれがいいな!」

 そして、ディスられているのか褒められているのかよくわからないことを言ってきたのは、銀髪で短髪⋯⋯ウルフヘアーの男性。すごい長身で筋骨隆々だがゴツイという感じではなく、無駄な肉がないシュッとしたゴツイ兄さんだった。

「はいはい、ちょっと待ってね~。彼らが来て早々、話しすぎだよ~」

 すると、俺たちが話しかけられて唖然としたのを察してか、炎呪が蓮二たちに軽く注意をする。

「ごめんね、みんな。改めて紹介するね。こちらがS級ランカーの探索者集団シーカー・クラン『乾坤一擲』のみんなで、今日からしばらく唐沢君と胡桃沢君が帯同するメンバーだ。僕の横にいるのがリーダーの蓮二⋯⋯こと『風間蓮二かざまれんじ』。で、その横のお姉さんが『白石美鶴しらいしみづる』。そして、その美鶴の後ろに隠れているのが『姫路ひめじミズホ』。で、最後の暑苦しくて口の悪い男が『獅子神伊月ししがみいつき』だ」
「おい、炎呪! 口悪いとかやめろよ。誤解するだろ?!」
「え? 的確だよね?」
「的確だな」
「的確ね」
「これ以上ないほど的確⋯⋯」
「辛辣っ!? 俺の仲間がことさら辛辣すぎる!」

 会って早々、炎呪と『乾坤一擲』のコントを見せられた。とりあえず『乾坤一擲』のメンバーが皆、仲が良いことだけはわかった。
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