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第三章

118「ファンタジー要素のある世界の真実①」

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「せ、洗脳⋯⋯っ!?」
「そ、そんな⋯⋯なんで⋯⋯」
「それは、そのほうが『都合がいいから』だ」
「! つ、都合⋯⋯っ?!」
「な、何の⋯⋯誰に対して、都合がいいっていうのっ?!」
「⋯⋯⋯⋯」

 賢者ワイズマンの衝撃な言葉に、唐沢と胡桃沢が動揺しながら答えを求める。しかし、その横でソラは冷静にその賢者ワイズマンの言葉の真意を考えていた。

「その話をする前に、これから私が話すことは『この世界の真実』の話となる。この話を聞けば、唐沢君も胡桃沢君も後には戻れなくなるが⋯⋯⋯⋯それでもいいかね?」
「「せ、世界の⋯⋯真実⋯⋯?」」

 賢者ワイズマンがそう言って二人に迫る。

「そうだ。正直、『ソラや私が転移者であること』という話までならまだ問題ないが、これ以上の話は『世界の真実』を知る話となる。そして、それを知れば君たちは我々『天罰ラース』の活動から抜け出せなくなるよ?」
「「⋯⋯え?」」
「もし、抜けるとなっても抜けた後は『死ぬまで監視される』こととなる。つまり、発言や行動を制限される生活を余儀なくされるということだ。それでもいいのかい?」
「そ、それは⋯⋯」
「そ、そんなこと⋯⋯急に言われても⋯⋯」

 唐沢と胡桃沢が賢者ワイズマンの『脅し』のような言葉にたじろぐ。すると、

「⋯⋯おい、賢者ワイズマン
「なんだ?」
「あんたの今言った話は、俺はあんたから聞く前から知っているぞ? そんな話、ネットで調べれば出てきたからな。なのに、それをネタに二人を脅すようなその言い方は正直どうなんだ?」

 と、ソラが賢者ワイズマンを睨みつけながら牽制する。しかし、

「ああ、そうだな。たしかにネットで調べれば出てくるだろう。しかし、ソラ君がみつけた情報は世間的には『何の根拠もないオカルトや陰謀論扱いされている話』となっていただろ? 違うかい?」
「⋯⋯⋯⋯」
「『沈黙は肯定』てことだな」
「⋯⋯だとしてもだ。そういうことを言っている奴らはネットには少なからず一定数はいるし、情報も出回っている。だから、そんなのあんたから話聞いたって同じだろっ?!」

 ソラは元々賢者ワイズマンのことを信用していない部分もあったためか、普段あまり見せない感情をのせた言葉をぶつける。

「違うな」
「どうしてっ!?」
「なぜなら、私はちゃんと『根拠ソース』を持っているからだ。そして、その『根拠ソース』を持っている人間から聞く情報は『正しい情報』だ。であれば、これから私が話す内容が君たちにとっても、そして私や『天罰ラース』にとっても『いかに危険な情報』かはわかるだろ?」
「⋯⋯⋯⋯」

『沈黙』するソラ。

「ちなみに、ソラ君が言った『二人に対しての脅し』というのも間違っているからね?」
「何っ?!」
「二人よりも私はむしろ君に言っているんだよ?⋯⋯⋯⋯新屋敷ソラ」
「っ!? どういう⋯⋯」
「だって、本来君は『転移者』と言っても我々に関わる必要はないだろ? 君の持つ能力『恩寵ギフト』があれば、探索者シーカーを仕事にすればこの世界で生きていけるだろ?」
「いや、あんたらが俺に接触してきたんじゃねーか!」
「ああ、そうだ。でも、断ることもできるだろ? 私が今言っているのは『これからする話』を聞くと、我々の活動からは離脱できなくなるリスクを抱えるよって言ってるんだ」
「⋯⋯⋯⋯」
「ちなみに、私としてはソラ君や転移者である鏑木君と早乙女君も正式な『天罰ラース』の仲間にしたいと思っている。もちろん、唐沢君や胡桃沢君もだ。理由は、前から言っているように『おぼろ首領ドン裁定者ジャッジメントを捕まえる』という目的があるためだ」
「「「⋯⋯⋯⋯」」」
「だから、唐沢君や胡桃沢君には『新屋敷ソラ』に深く関わるということはそういうことだという話をし、ソラ君には君自身がどうしたいのかという話を今している」
「で、でも、そんなこと、今いきなり言われても⋯⋯」
「そうだ。だから段階を踏む予定だったのだよ、ソラ君。本来なら『ソラ君が転移者』という話はこのタイミングでするつもりもなかったし、ソラ君にはもう少しこの世界のことを自分自身の目で知ってからのほうがいいと思っていた。しかし、『おぼろの襲撃』『他の転移者の出現』によって状況は一変した。⋯⋯⋯⋯ソラ君もわかるだろ? なんせ、君の友人である唐沢君や胡桃沢君に『新屋敷ソラは転移者』という事実を知られたわけだから」
「⋯⋯ああ」
「だから、私は今この話をしている。直接的で重い言い方をすれば、ソラ君を含めた『3人の覚悟』を聞いているのだ」


——場にしばし沈黙が流れる。


「⋯⋯なあ、ソラ」
「何だ?」
「俺はお前のことを友達と⋯⋯⋯⋯いや親友だと思っている」
「⋯⋯唐沢」
「でも、賢者ワイズマンの話にこれ以上首を突っ込むのはマズイってことも理解している」
「⋯⋯ああ」
「だが、それでも俺は親友としてお前の助けになりたいというのが一番の気持ちだ!」
「え?」
「だから、俺はソラがどうしたいのかを聞きたい。それでソラが賢者ワイズマンが言うように『天罰ラース』にがっつり関わりたいのか、これ以上話を聞かずに『天罰ラース』にもこれまで通りの協力程度に止まっておくのか⋯⋯」
「唐沢⋯⋯」
「私も同じよ。ソラ君は親友だと思っているわ。確かに私はお父様が『天罰ラース』に深く関わっているけど、そのことと私は別よ。だって、お父様自身からそんなこと言われたことはないのだから。だから、ソラ君がどうしたいのかを私も聞きたい」
「胡桃沢⋯⋯」
「ま、ぶっちゃけ、お前にそんな答えを委ねるのは悪いとは思っている。でも、やっぱりお前の転移者の話を聞いたら、お前がどうしたいのかっていう気持ちが一番大事だと思うんだ。⋯⋯⋯⋯だから、どうなんだ? ソラはこの世界でどうしたいんだ?」
「⋯⋯俺は」
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