イフライン・レコード ファンタジー地球に転移した俺は恩寵(ギフト)というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!

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第三章

108「朧十二衆②」

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「お、おぼろ⋯⋯たつ⋯⋯」

(き、聞いたことがある。確か『朧十二衆最強』と言われている⋯⋯⋯⋯朧十二衆の第一席!)

 明凛はさっきからずっと朧辰と対峙してから体の震えと冷や汗が止まらないでいた。

 実は朧辰はさっきからずっと朧卯を遥かに上回る威圧を放っていたのだが、はたから見ると、ただの冴えない青年がボーッと突っ立っているようにしか見えないほどの自然体だった。

 こんな威圧を平然とやってのける朧辰に明凛は恐怖を覚えていた。

(こ、これが、朧十二衆⋯⋯最強の男『朧辰』)

「ゴルァァアァアァァァっ?! 離しやがれぇぇ、クソ辰ぅぅうぅぅうぅぅ~~~っ!!!!」

 トン⋯⋯。

「え? カハッ!⋯⋯(ガクン)」
「っ!?」

 抱き抱える朧辰に対して、動けない体でも激しく抵抗する朧卯だったが、朧辰がトンと朧卯の額を人差し指一本で軽く小突くと朧卯は意識を失った。

「な⋯⋯な⋯⋯今⋯⋯何をしたの?」

 朧辰が何をしたのかまるで理解できなかった明凛が激しく動揺する。しかし、

「ああ、大丈夫、大丈夫。特に気にしなくていいですから。朧卯さんはもらっていきますね」

 そう言うと、朧辰は近くにきた組織の部下に朧卯を渡す。

「さて⋯⋯⋯⋯というわけで、とりあえず私たちの目的はあなた⋯⋯王明凛とメイベル・ホワイト、そして新屋敷ソラを連れ出すのが目的でして。手荒な真似はしたくありませんので大人しくついていってもらえないでしょうか?」

 朧辰は「タハハ⋯⋯」と『しがないサラリーマン風』な笑みを浮かべながら、そんな言葉を明凛に呟く。

「嫌⋯⋯⋯⋯だと言ったら?」
「ええっ!? そ、そうですね~。その場合仕方がないので⋯⋯⋯⋯腕づく・・・ということになりますね」
「!」

 そう言って、朧辰のヘラヘラ顔が一瞬で感情の無くなった無味乾燥な表情へと豹変する。

 そんな朧辰に明凛の体はさらに震えるが、

「フン⋯⋯やれるものならやってみなさいよ」

 と、体の『防衛反応』を強い気持ちで否定し、朧辰を真っ直ぐに見据える。

「そうですか。さすが世界トップランカーといったところですね、さすがです。ですが⋯⋯⋯⋯⋯⋯相手を見極めることも大事ですよ?」

 もはや、朧辰も先ほどのヘラヘラな感じは一切消え、感情を消した表情で淡々と明凛に言葉をかける。

「そうね。でも、悪いけど私は別に玉砕覚悟であなたに挑むわけではないわ」
「何?」
「つまり、やってみないとわからないこともあるってことよ」
「⋯⋯いいでしょう。では少し痛い目にあっていただきましょうか」

 そう言って、朧辰が明凛へと近づく⋯⋯⋯⋯⋯⋯その時だった。

「!」

 ババッ!

 朧辰が咄嗟にその場から離れると、次の瞬間——、


 ズドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンンっ!!!!


 何者かがさっきまで朧辰がいた場所に拳を放っていた。

「むぅ~。これに反応するか」
「! き、貴様は⋯⋯っ!?」
「よー明凛! 何やら楽しそうな相手じゃあないか!」
「⋯⋯フン! これを『楽しい』と感じるあんたに心底呆れるけど⋯⋯⋯⋯⋯⋯助かったわ、ジョー」
「なるほど。あなたが、あの⋯⋯⋯⋯ジョー・ウェイン」
「ワハハハ⋯⋯! というわけで、ここからは私がお相手つかまつろうっ!!」

 二人の間に立ちはだかったのは探索者シーカー世界ランキング3位のジョー・ウェイン。


「これは、また大物が⋯⋯⋯⋯困りましたね、ホント」


 そう言いながら、ワクワクした表情を浮かべる朧辰であった。


********************


聖なる射手ホーリー・アーチャーっ!!」
「へっ!」

 ヒュン、ヒュン、ヒュン、ヒュン⋯⋯!

 メイベルの無数の魔力の矢を難なく交わす朧申おぼろさる

「やるじゃない、サルのくせに」
「そりゃ、こっちのセリフだぜ、メイベル・ホワイト! お嬢様の割にやるじゃねーか!『魔硬礫マギカ・グラベル』っ!!」

 そして、朧申おぼろさるはメイベルに返事をしながら土属性中級魔法を打ち付ける。

 そうして二人は一進一退の攻防を繰り広げている。

「ベ、ベロニカ様。これってやっぱり助太刀⋯⋯したらダメ⋯⋯な⋯⋯のでしょうかっ?!」
「そうね。ダメね。メイベル様の命令⋯⋯だもの!」
「で、ですが、私たちが加われば確実に⋯⋯倒せそうな⋯⋯相手ですよ!」
「そうね。でもね、ここはメイベル様の⋯⋯プライドが⋯⋯優先⋯⋯されるからダメよ! まーもしメイベル様が手に負えない⋯⋯相手であれば別だけど⋯⋯! まーとにかく我々はメイベル様の邪魔をしないようにすることと、邪魔をしようとする奴らを刈り取ればいいのよ」
「はーい! でも、この『おぼろ』って何者なんです⋯⋯かねっ!!」

 ベロニカとチェリーはそんな会話をしながら、襲ってくる『おぼろ』の者たちや魔物を次々に潰していた。

「死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね!」

 そして、二人とは少し離れたところでは『取扱危険美少女』プラチナが嬉々として敵を屠っている。

「さあ、私も詳しいことはわかりませんが⋯⋯⋯⋯でも、まあ少なくともメイベル様の敵であるか否かなので、敵であればそれ以上もそれ以下でもないです。なので、排除するだけです」
「なーるほどー! わっかりやすっ!!」

 そう言って、ニッコリ納得したチェリーがプラチナ顔負けに敵を屠っていく。



「そろそろ、諦めたらどう? あなたの部下も魔物たちもやられてるわよ?」
「へっ! まー確かにあんたの言うとおり、このまま・・・・じゃ、ジリ貧のようだな⋯⋯」
「じゃーとっと帰って⋯⋯」
「だが!⋯⋯⋯⋯⋯⋯あと一人・・・・いたら解決だよな?」
「っ!?」
「何をいつまでもチンタラやっとるかぁぁ! 朧申おぼろさるぅぅっ!!!!」


 ドゴォォォォォォォォォォンンッ!!!!


 メイベルと朧申おぼろさるの間に突如乱入してきた男がメイベルに拳を振るった。

「ぐ、ぐうぅ⋯⋯っ!?」

 メイベルはその男の乱入に気づいてはいたものの、彼の拳が予想以上の威力だったためガードしたもののその威力を完全には吸収することができず体ごと壁まで吹き飛ばされてしまった。

「というわけで、こちら待望の二人目・・・⋯⋯⋯⋯⋯⋯『朧丑おぼろうし』さんで~す!」
「敵と何を話しとるかぁぁ!」

 そこには170センチ前後の朧申よりもだいぶ高い⋯⋯⋯⋯2メートル以上はある筋骨隆々な体躯で仁王立ちする男、朧十二衆『朧丑おぼろうし』がいた。

「サルの次はウシ⋯⋯ですか」

 グラ⋯⋯。

 そう言って、メイベルが立ち上がろうとすると、先ほどの朧丑おぼろうしの攻撃が思ったよりも効いているのか少しフラついた。

 ガシ!

「! ベ、ベロニカ⋯⋯」
「お嬢様。ここからは私とチェリーも混ざります」
「メイベル様~!」
「フン、余計なお世話よ。それに雑魚どもの処理は大丈夫なの?」
「はい。プラチナだけで十分⋯⋯⋯⋯いえ、戦力過多かと」
「⋯⋯あ、そ。じゃあ、お願いしようかしら?」
「「よろこんで!!」」
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