106 / 157
第三章
106「秘密結社『朧《おぼろ》』」
しおりを挟む「うわぁぁぁぁ! ま、魔物だぁぁ! 魔物がいるぞぉぉっ!!!!」
現在、会場のあちらこちらで秘密結社『朧』と名乗る者たちが『魔物』を使って探索者たちを襲っていた。
本来、ダンジョンの外に魔物は出てこないというのが『常識』であっただけに、実力者と見なされるC級ランカー以上の探索者たちであっても、この目の前の魔物を見て戸惑い、混乱し、冷静にかけていたこともあり、魔物たちの襲撃に翻弄されていた。
「はっはー! 大したことねーなー、クソ探索者ども! お前ら本当にC級ランカー以上かぁ~? 弱過ぎっ!!」
黒装束の男がそう言って、魔物の襲撃に良いようにされている探索者を罵倒する。すると、
『『『『『グギャァァァァァァァァァァァァ~~~~~っ!!!!!!』』』』』
「っ!? なんだ⋯⋯?」
突然、黒装束の男の後ろで数匹の魔物の悲痛な呻き声が響き渡った。男はその声を聞いて後ろを振り向いた瞬間——、
斬っ!
「⋯⋯え?」
黒装束の男の胴体が真っ二つに分かれた。
「がはっ?! い、一体、何⋯⋯が⋯⋯?」
男は訳も分からず体が裂かれた理由を知ろうと、死に際、何とか意識を保って襲われた方向に視線を向けた。そこには、
「フン⋯⋯バカが! 雑魚の分際でイキがるなよ?」
自身の愛刀『遠雷』を携えたインフィニティ日本本部S級ランカー不知火不師斗が不機嫌そうな顔で立っていた。
「し⋯⋯不知⋯⋯火⋯⋯不師⋯⋯斗っ!?」
男は自分を襲ったのが不知火不師斗だと知って、ガクガクと恐怖に震えると怯えた表情のまま息を引き取る。
「おう、お前ら大丈夫か?」
「「「「「不師斗さん! はい、大丈夫です!!」」」」」
「いいか。こいつらは『朧』という秘密結社で簡単に言うと探索者を的にしている『敵』だ。あと、この魔物はあいつらが『人工的に作り出した魔物』だ。だから、ダンジョンの魔物というわけではない。だから、ダンジョンで当たり前のように魔物を討伐しろ。冷静になればアリゲートザウルスごとき、C級ランカー数人いれば倒せる。だから、まずは冷静になれ⋯⋯いいな?」
「「「「「は、はい⋯⋯っ!!!!」」」」」
不師斗が声を掛けると、さっきまで混乱していた探索者たちは徐々に落ち着きを取り戻す。それを確認した不師斗はその場を後にする。
「さて、幹部連中は一体誰が来ているのかね⋯⋯」
********************
「ぐはぁぁぁっ!!!?」
魔法攻撃で吹き飛ばされ壁に激突した黒装束の男は、すでに瀕死の状態のようで立つことができないでいた。
「あんたらが秘密結社『朧』なの? 何、こんなショボい連中なの? 拍子抜けね~⋯⋯」
だいぶ、煽りMAXで男に対してそう嘯くのは、
「メイベル様! お願いですから自ら敵に向かっていくのはおやめてください!」
イギリス総本部副ギルドマスター・メイベル・ホワイト。
「そうです! こういった下賤の者たちにメイベル様が手をかけるなど! 何とも、うらやま⋯⋯ゲフンゲフン⋯⋯⋯⋯何とも許し難き所業!」
「死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね!」
そして、メイベルを『メイベル様』と言うその3人のメイド嬢らは、メイベル家に仕えるメイドであり、メイベル・ホワイト専属メイドである。
はじめに、メイベルに注意をしたのは3人のメイドの中で赤髪が特徴的なショートボブの『ベロニカ』。彼女は3人をまとめるリーダー。
続いて、2人目は少し言動に怪しさを醸し出す変態性はあるものの、卓越した頭脳でメイベルに向けられる様々な危険を予測・察知し、先回って対応する隠密行動を得意とするのは、ベロニカの忠実な部下『チェリー』。
そして、最後の3人目は、「死ね! 死ね! 死ね!」と連呼しながら瀕死の黒装束の男を何度も踏みつける⋯⋯白金のロングヘアが儚さのように映るロリ系美少女『プラチナ』。儚げな見た目に残業性が同居する『取扱危険少女』。
そんな、個性豊か過ぎなメイド衆らは、メイベルと同様周囲から一目置かれるほどの実力者である。
「はいはい、わかったわよ。あとはまかせるわ。あと、プラチナ⋯⋯⋯⋯そいつ殺したらダメよ? 情報を聞き出す必要があるか⋯⋯」
「ごめん、メイベル。手遅れ」
メイベルがプラチナに黒装束の男を殺さないよう注意しようとしたが時すでに遅しだった。
「は~~~~~~~⋯⋯もう、プラチナ。あなたね~」
「ご、ごめん⋯⋯なさい⋯⋯」
「うっ!」
メイベルが怒ろうとする前に、顔をうるうるさせて上目遣いに懇願するプラチナ。
「は~~~~⋯⋯わかったわよ。でも、次からは許しませんからね! ちゃんと『半殺し』で止めるのよ!」
「は~い! メイベル、大好き~っ!!」
そう言って、メイベルに抱きつくプラチナ。
「「さすが、あざとい!」」とベロニカとチェリーは内心呟くも、「「ま、いつものプラチナね」」とプラチナのあざとさに納得する二人。
そんなメイベルたちの前に一人の『顔出しの黒装束の男』が現れる。
「よ~、あんたメイベル・ホワイトだよなぁ~? 実物はやっぱかわいいねぇ~」
下品な笑みを浮かべながら呟く男。
「⋯⋯何者だ?」
メイベルは男の凄まじい威圧に警戒レベルをすぐに最大限に上げつつ声を掛ける。
「『朧十二衆』⋯⋯⋯⋯朧申」
「「「「っ!!!!!!」」」」
男の威圧にベロニカ・チェリー・プラチナはかなりの脅威を感じ、すぐさま最大限の警戒と同時にメイベルの前に出て最大防御の陣形を築く。
「朧十二衆⋯⋯⋯⋯なるほど。どうやら当たりのようね?」
しかし、メイベルはそんな男の威圧の脅威を感じつつも表情にはまだ余裕があった。
「はっはっは! さすがメイベル・ホワイト! これだけの威圧を放っても動じないかよ! へっへっへ⋯⋯楽しみだね~。それじゃあ⋯⋯⋯⋯⋯⋯お手並み拝見だっ!!」
秘密結社『朧』幹部である『朧十二衆』の一人『朧申』が嬉々とした表情でメイベルたちに襲いかかる。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として
たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。
だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。
一度目では騙されて振られた。
さらに自分の力不足で全てを失った。
だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。
※他サイト様にも公開しております。
※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる