上 下
101 / 157
第三章

101「いつもの二人/第二試合『王明凛VSメイベル・ホワイト』」

しおりを挟む


「さあ! 女性探索者シーカー頂上決戦! 今年のこの因縁の二人に決着は着くのでしょうか! ちなみに試合の制限時間は今年も『5分』となっております。それでは、第二試合⋯⋯⋯⋯はじめぇぇ~~~っ!!!!」

 琴音が試合開始の宣言をするも、第一試合と同様、この二人もまた言葉のやり取りから始まった。

「何よ? また私に挑みに来たの、王明凛? もう、そろそろ実力の違いに気づいてもいいと思うのだけれど⋯⋯?」
「あら? あらあらあら⋯⋯メイベルお嬢様、これはこれは。以前の試合では決着がつかず引き分けでしたね。それなのに実力の違いと言われても⋯⋯」
「はん! ランキングは私のほうが上よ!」
「あ~~~~⋯⋯ランキングね~。うふふ⋯⋯そうですわね、ランキングでは・・・・・・・メイベルお嬢様が上ですもんね~。ランキングでは・・・・・・・!」
「何が言いたいわけっ?!」
「いえいえ、何も」
「嘘おっしゃい!!」
「嘘も何も⋯⋯⋯⋯私はただランキングが必ずしも実力差には直結しないという世間一般の話をしているだけですよ、メイベルお嬢様?」
「はぁ?! 何が世間一般よ! それに、その『メイベルお嬢様』って言い方やめなさいよ!」
「え? どうして~? あなたは本当にれっきとしたお嬢様でしょ? 間違ってないじゃない」
「あんたに言われるのがムカつくって言ってんのよ!」
「え~~~~? 私はメイベルのこと好きなのに~」
「そういうところがムカつくって⋯⋯⋯⋯⋯⋯言ってんのよっ!!」

 ババッ!

——瞬間、メイベルが後方に飛ぶと同時に、

聖なる射手ホーリー・アーチャーっ!!」

 メイベルの放った魔法は『特級魔法』の『聖なる射手ホーリー・アーチャー』。メイベルは数少ない特級魔法が使える探索者シーカーである。そんなメイベルの背後に無数の『魔力で作られた青白い矢』が発現すると一斉に王明凛へ射出した。

氷冷瞬壁アイス・ウォールっ!!」

 しかし、対する明凛もまた『特級魔法』の使い手。彼女はその特級魔法『聖氷隔壁アイス・バルクヘッド』はメイベルの攻撃がわかっていたかのように絶妙のタイミングで『氷の壁』を作り出す『聖氷隔壁アイス・バルクヘッド』を自身の体の周囲に展開。メイベルの放った無数の魔力の矢をすべて阻んだ。

「チッ! 相変わらず、あんたのその『聖氷隔壁アイス・バルクヘッド』⋯⋯固くてムカつくのよっ!!」
「お褒めいただき光栄です、メイベルお嬢様」
「だ・か・ら⋯⋯⋯⋯⋯⋯お嬢様って言うなぁぁ~~~っ!!!!!」

 次にメイベルは一気に距離を詰めてきた。

光剣フォトン・ソードっ!! てやぁぁぁぁぁぁ~~~っ!!!!」
「⋯⋯⋯⋯氷剣アイス・ソード!」

 ガキィィィィィィィィィィィィィィンンンン⋯⋯っ!!!!

 メイベルの光の剣による攻撃を、明凛は氷の剣を瞬時に展開してすばやく対応。

 ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ⋯⋯っ!!!!

 二人の魔法の剣が激しくぶつかり合う。

「メイベルお嬢様。さすがの剣戟でございます」
「何、余裕ぶっこいてんのよ!」
「いえいえ、これでも精一杯凌いでいます。顔に出ないだけです」
「嘘つけーーーーーーーーっ!!!!!」

 ガキン!

 そう言って、メイベルが下方から光剣フォトン・ソードを振り上げると、明凛の氷剣アイス・ソードを持つ両腕が上がる。

「そこだぁぁぁ~~~っ!!!!!」

 メイベルがガラ空きの胴に光剣フォトン・ソードの突きを放つ。しかし、

 クルン。

 明凛はメイベルの光剣フォトン・ソードで下から打ち上げられた両腕のいきおいを利用して、なんと、その場で体を一回転させ、メイベルの突きを躱す。

「何っ?!」

 と、同時に、

「フッ⋯⋯!」
「っ!!」

 明凛が着地と同時に、突き技が失敗し無防備になったメイベルへ逆に突き技を繰り出した。

「こ、このぉぉぉ~~~っ!!!!」

 ギャリリリリリリリリリリ~~~~⋯⋯っ!!!!

 しかし、メイベルもまたその明凛の超速の突き技を光剣フォトン・ソードを使っていなす。

 ババッ!

 そして、両者がそのタイミングで同時に後方へと下がった。

「はぁぁぁぁぁ~~~~~! もう、何なの!? 何であんたは会うといちいちいちいち私に絡んでくんのよっ!!」
「ええっ!? そ、それは⋯⋯⋯⋯⋯⋯愛です(ポッ)」
「嘘つけ~っ!!」
「⋯⋯まーでも、メイベルさんを好きなのはたしかですよ」
「は、はぁぁ~?」
「だって、可愛いんだもん。メイベルってちょっとイジっただけでもすぐに反応するじゃない! そこがいいの~!」
「おんどりゃ~! おちょくっとんのかいっ!!」
「よっ! 煽り耐性⋯⋯『紙』っ!!」

 プチン。

 何か『切れた』音がした。

 そう、それはメイベルの血管が切れた音だった。

「だぁらっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~っ!!!!」

 血走った目をしたブチギレメイベルが光剣フォトン・ソードを消して、拳を構えて突っ込んできた。⋯⋯⋯⋯⋯⋯が、

 ガシっ!

「ほい、タイムアップだぞ。メイベル」
「っ?! ゲ、ゲオルグ・シェフチェンコ⋯⋯っ!!」
「っ!!」

 メイベルの拳が王明凛に届く直前で、ゲオルグ・シェフチェンコが入ってきてメイベルを止めた。

 実は、メイベルがブチ切れて王明凛に突っ込む直前、審判が「時間切れ。タイムアップ!」と宣告していた。しかしメイベルにはその声が届いていないことをゲオルグは判断すると瞬時に動いて止めに入ったのだった。

(あのキレたメイベルのスピードを簡単に止めるなんて⋯⋯。ゲオルグ・シェフチェンコ⋯⋯⋯⋯やはり『世界最強』は伊達じゃないわね)

「フッ⋯⋯」

 王明凛は微笑をこぼして舞台を降りていった。

「ちょ! ちょっと待ちなさいよ、王明凛っ!! あんたね~、いつもいつも⋯⋯!」

 そして、その王明凛の後ろから追いかけるメイベル。

 それは、毎年の腕試し大会で『よくある光景』であった。



『第二試合 王明凛VSメイベル・ホワイト/タイムアウト引き分け』
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

【完結】悪役令嬢の断罪現場に居合わせた私が巻き込まれた悲劇

藍生蕗
ファンタジー
悪役令嬢と揶揄される公爵令嬢フィラデラが公の場で断罪……されている。 トリアは会場の端でその様を傍観していたが、何故か急に自分の名前が出てきた事に動揺し、思わず返事をしてしまう。 会場が注目する中、聞かれる事に答える度に場の空気は悪くなって行って……

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

クラスメイトに死ねコールをされたので飛び降りた

ああああ
恋愛
クラスメイトに死ねコールをされたので飛び降りた

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

ちょっっっっっと早かった!〜婚約破棄されたらリアクションは慎重に!〜

オリハルコン陸
ファンタジー
王子から婚約破棄を告げられた令嬢。 ちょっっっっっと反応をミスってしまい……

女体化入浴剤

シソ
ファンタジー
康太は大学の帰りにドラッグストアに寄って、女体化入浴剤というものを見つけた。使ってみると最初は変化はなかったが…

冤罪で自殺未遂にまで追いやられた俺が、潔白だと皆が気付くまで

一本橋
恋愛
 ある日、密かに想いを寄せていた相手が痴漢にあった。  その犯人は俺だったらしい。  見覚えのない疑惑をかけられ、必死に否定するが周りからの反応は冷たいものだった。  罵倒する者、蔑む者、中には憎悪をたぎらせる者さえいた。  噂はすぐに広まり、あろうことかネットにまで晒されてしまった。  その矛先は家族にまで向き、次第にメチャクチャになっていく。  慕ってくれていた妹すらからも拒絶され、人生に絶望した俺は、自ずと歩道橋へ引き寄せられるのだった──

処理中です...