100 / 157
第三章
100「混乱と思惑と」
しおりを挟む【祝100話 到着~!】
第一試合が終わった現在——会場は大きなざわめきが起こっていた。
「お、おい、ウソだよな? イギリスのレヴィアス・アークシュルトが負けただなんて⋯⋯?」
「バカ野郎っ!? 現実を見ろ! 負けたんだよ! デビューして半年もしない新人に!!」
「オーマイガー! ソラ・アラヤシキ⋯⋯やばすぎやろ~~~~っ!!!!」
「アメェェェェェェェェェェイジングゥゥゥゥゥ~~~~っ!!!!!!」
「WHATっ?! アンビリーバボー⋯⋯」
観客のほとんどが先ほどの試合結果が信じられないためか、会場のざわめきがしばらく続いた。
俺はそんな異様な雰囲気の中、舞台を降りると会場内に設置されている『インフィニティ日本本部用の控え室テント』へと戻った。
「すごい、すごい! すご過ぎるよ、ソラ君っ!!」
「うぉっ?!」
テントへ入るなり、いきなり胡桃沢が抱きついてきた。
「ソラっ! お前、マジすげーよ! やったなっ!!」
その後、唐沢も飛びついてきた。
そんな暖かく迎え入れたのは、二人だけでなく、そこにいる炎呪や不知火も同様だった。しかし、
「お疲れ、ソラ君。どうだったかい?」
「炎呪⋯⋯⋯⋯ビックリした」
「え? ビックリ? 何に?」
炎呪の後ろでは「大丈夫だよ、ソラ。お前の実力だよ!」やら「そうよ、ソラ君! あなたは勝ったのよ! 夢じゃないわ!」などと、唐沢と胡桃沢が「結果に驚いたのはわかるが勝ったのは事実だ! そんな謙遜しなくてもいいぞ!」などと言っていたが、しかし、俺はの言いたいことはそういうことではなかった。
「レヴィアスの奴⋯⋯⋯⋯ワザと負けました」
「「え?」」
俺の言葉を聞いて唐沢と胡桃沢が絶句する。
「うん、どうやらそのようだね」
「ああ、そうだな」
すると、炎呪も不知火さんも自分と同じ見解だと言うように俺の言葉を肯定した。
「でも、どうして⋯⋯なんでレヴィアスは俺にワザと負けたんだ?」
意味がわからなかった。
ワザと俺に負けることで、何のメリットが?
「理由はわからんが⋯⋯ただ、一つ言えることはレヴィアスは意味のないことは絶対にしない」
「っ!? 不知火⋯⋯さん」
「そうだね。レヴィ君は一見、あんな爽やかそうな顔してとてもドライだからね。無駄なことはしないよ」
「⋯⋯炎呪」
二人もまた俺と同様、レヴィアスの今回のワザと負けたことの動機を掴めずにいた。
「⋯⋯え? レヴィアス様ってそんな二面性ある人なんですかっ?!」
「レヴィアス・アークシュルト様って、そんな方⋯⋯なんですね。それにしても、それが本当なら不気味ですね。で、でも、私たちからしたら正直手を抜いているとか、ワザと負けたなんてまったくわかりませんでしたけど⋯⋯」
ようやく事態を把握した唐沢と胡桃沢も話に加わる。
「まーそうだろうね。今思えば試合開始前から試合開始、そして試合終わりまでの一連の流れ、すべてがレヴィ君の手のひらだったかもしれない」
「えっ!? マ、マジ⋯⋯?」
「マジも大マジ。レヴィ君ってそれくらい狡猾でかしこいからね」
「うむ。よく知る周りが一番にレヴィアスを評価するなら世界ランキングの強さよりも⋯⋯⋯⋯あいつの頭脳だからな」
「そ、そこまで⋯⋯」
二人の話を聞いて、今度はソラが絶句する。
********************
「まー少なくとも、ソラが望んだチヤホヤされることにはなるからいいんじゃないか?」
「え?」
「だって、ワザととはいえ、結果的にレヴィアス・アークシュルトを一撃で倒したわけだからな。もちろんこの腕試し大会は外部非公開ではあるが、毎年どっかのバカが隠し撮りして『Yo!Tube』にアップするからな」
「いや、セキュリティ⋯⋯『ざる』!」
不知火が、さも『腕試し大会の動画は外部に出回るもの』とばかりに言うと、ソラがぐう聖なツッコミを入れる。
「ま、そんなわけだから、もう芸能人並に注目されると思うぞ。よかったな、ソラ!」
と、ニヤニヤ顔で心底楽しそうに嫌味を言う不知火。
「こ、こんな『悪目立ち』で、有名になろうとは思っていなかったですしお寿司⋯⋯」
が、しかし⋯⋯時すでに遅し。
「どうか、どうか、『腕試し大会の隠し撮り動画』が世間に公表されませんように⋯⋯」
と、とりあえず、ソラは藁をも縋る想いで祈った。
まー、こういうのは得てしてね⋯⋯⋯⋯面白いほうに転がるのが世の常である。
********************
「さ~て! 第一試合からいきなり大番狂せが起きて会場が一時騒然となりましたが、気を取り直しまして、改めて、第二試合を始めたいと思います。ということで早速をくじを引かせていただきま~す!」
司会の琴音さんがノリノリである。
良きかな、良きかな。
「んしょ、んしょ、んしょっとぉぉ~!! じゃじゃん! 出ましたっ!! お、おおおおおお⋯⋯っ?!」
琴音さんのリアクションに会場のテンションが上がった。
「第二試合は、中国ギルド本部ギルドマスターにして、探索者世界ランキング第5位! 華僑四大財閥の一つ王家というすんごい貴族の一人娘!『氷結女帝』⋯⋯⋯⋯王明凛っ!!!!」
ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ~~~~っ!!!!!!
「メイリ~ン! メイリ~ン! メイリ~ン! メイリ~ン! メイリ~ン!」
「氷結女帝様ぁぁぁぁぁぁ~~~っ!!!!」
「王明凛~! 結婚してくれ~っ!!」
「キャァァァァァァ~~~っ!! メイリン様~っ!!!!」
会場の『王明凛コール』がハンパない!
「そして、対するは⋯⋯⋯⋯皆さん、お待ちかね! 去年の腕試し大会の再現! イギリス総本部の副ギルドマスターであり、イングランド貴族ホワイト公爵家当主の娘というこちらもガチ貴族! 探索者世界ランキング第4位!『無垢なる執行人』⋯⋯メイベル・ホワイトぉぉ~~っ!!!!」
ヌォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ~~~~~っ!!!!!
「メイベル! メイベル! メイベル! メイベル! メイベル! メイベル! メイベル!」
「メイベル姫~! サイコー!」
「姫~! 罵ってぇぇぇ~~~っ!!!!」
「『無垢なる執行人』キターーーーーっ!!!!!」
うおっ?! 対戦相手のイギリス総本部のメイベル・ホワイトって人もやばすぎるほどの大声援じゃね~かっ!!
「な、なんだ、こりゃ⋯⋯?」
「えっ?! もしかして、ソラ君⋯⋯王明凛もメイベル・ホワイトも知らないのっ!?」
「知らね」
「嘘だろぉぉっ!? お前、マジで探索者の勉強しろ! 少なくとも、お前は今後絡む可能性があるだろが!」
「うっ! お、仰る通りです⋯⋯」
珍しく唐沢にド正論でツッコまれた。あと、胡桃沢も「ソラ君、本当に勉強して!」と怒られた。
なんか、すんません。
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……
こうじ
ファンタジー
『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる