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第三章
090「初対面と初タイマン②」
しおりを挟む一触即発となったソラと『単独探索者最強の一角』として有名な現役S級ランカー『不知火不師斗』と顔合わせ初日にタイマンすることとなった。
「おい、賢者。訓練場でいいか?」
「ああ、いいぞ」
そう言って、不知火不師斗が先頭になって部屋を出ていく。
「ついてこい、小僧。⋯⋯教育してやる」
「望むところだよ、おっさん」
不知火不師斗の口からシャレにならない言葉が飛び出すがソラもまた負けてはいない。しかし、周囲の⋯⋯というか、唐沢と胡桃沢は気が気ではなかった。
「ちょ、ちょっと、何よ、この状況⋯⋯?」
「し、知らねーよ。ていうか、不知火不師斗にケンカ売るなんてソラ、何考えてんだっ!」
しかし、そんな二人とは対照的に、
「誰が勝つかな~! 誰が勝つかな~!」
と、一人ハイテンションの炎呪がキラキラした顔をして二人の後をついていった。
「ここだ」
不知火が足を止めたそこには『円形の闘技場』のようなものがあった。
「よし、じゃあ私が審判してやろう」
そう言って、訓練場へ足を運んだのは⋯⋯⋯⋯、
「賢者っ!! あ、あんたが、審判するってのかっ?!」
そう。審判を買って出たのは他ならぬ賢者であった。それを見た不知火不師斗は意外だったのか、かなり驚いた様子を見せる。
「ああ、まかせろ。まー私としても身近でソラの実力を見たいからな。問題ないだろ、ソラ?」
「⋯⋯はい、問題ないです」
「あ、僕も賢者の対面で審判やるよ。多いほどいいだろ?」
と、今度は炎呪までも参加の声を上げた。
「ええ、どうぞ、どうぞ⋯⋯(どうせ、ダメって言ってもやるだろ、あんた?)」
そんなわけで、審判ということで賢者と炎呪が立ち会いとなった。
********************
「では、お前たちには『模擬戦』という形でやってもらう。剣のかわりに木刀を使ってくれ」
賢者が二人に説明をする。
「では、準備ができたら開始線まで下がって」
「⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯」
ソラと不知火が準備を終わると、開始線に下がる。
ソラは少し短めの木刀を二本を選び、不知火は一本の長めの木刀を選んだ。
「二刀流⋯⋯? お前使いこなせるのか?」
「大きなお世話だ。やればわかるだろ?」
「フッ⋯⋯そうだな」
ソラの言葉を聞いて、不知火がフッと笑った。
「それでは⋯⋯⋯⋯はじめっ!!」
「「はぁっ!!!!」」
ドン⋯⋯っ!!
賢者が開始の合図と同時に、二人が一瞬で間合いを詰めた。
ガキィィィィィィィンンっ!!!!
ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ⋯⋯!!
二人は間合いを詰め、鍔迫り合いとなった。
「ほう? やるな⋯⋯小僧」
「そ、そりゃ⋯⋯こっちのセリフ⋯⋯だ⋯⋯ぜ(くっ!? なんつーパワーだっ!!)」
余裕のある不知火に対して、ソラはだいぶ余裕がなかった。それくらい不知火のパワーがソラの想定以上だったのだ。
「俺とまともに鍔迫り合いできるとはな。⋯⋯⋯⋯どうやら口だけではないようだ」
「ふん! でっけえお世話⋯⋯⋯⋯だっつーの!!」
そう言って、ソラは鍔迫り合いからフッと一度、横へ体をずらし、不知火の体勢を崩そうと試みる。しかし、
「崩れねーよ」
「くっ!?」
不知火はソラの崩しを予想していたのか、崩れる前に左足を前に出し踏ん張ると、
「オラァァァァァァァァァっ!!」
ガキィィィィィィィンンンンっ!!!!!
不知火が木刀を横一閃に放つ。
「ぐぅぅぅぅっ?!」
ドガァァァァァァァァァァンっ!!!!
ソラの体がまるで重力を無視したかのようなスピードで壁に激突した。
側から見ると、不知火が軽く木刀を横に振り抜いたくらいにしか見えなかったが、その剣を受けたソラには尋常じゃない威力の剣戟が放たれており、結果ソラの体がもの凄いスピードで訓練場の壁に激突したのであった。
「ソラっ!?」
「ソラ君っ!!」
ソラがあまりの勢いで壁に激突したため唐沢と胡桃沢が思わず声を上げる。しかし、
「⋯⋯なるほど。これがS級世界ランカーの力か」
そう言いながら、ソラがスッと立って歩いてきた。
あれだけの勢いで壁に激突したにしてはソラが思っていた以上にピンピンしていることに驚く二人⋯⋯⋯⋯だけではなかった。
「おいおい、マジかよ? 気絶させるつもりで結構本気で飛ばしたんだが⋯⋯?」
不知火もソラが思っていた以上に元気なことに驚きを隠せないでいた。
「⋯⋯フン、あれくらいどうってことない。それよりもあんたそんなヒョロヒョロのくせに、なんつーパワーだよ!」
そして、ソラもまた不知火の強さに感嘆の声を上げる。
「いいね~⋯⋯お前おもしれーよ!」
「右に同じ⋯⋯⋯⋯だっ!!」
そう言うと、二人が笑いながらまたも一気に間合いを詰めた。しかし、今度は鍔迫り合いではなく、
「おおおおおおおおおおおおおおおお~っ!!!!」
「おらおらおらおらおらおらおらぁぁ~っ!!!!」
激しい打ち合いを始めた。
かくして『第二ラウンド』スタートである。
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