イフライン・レコード ファンタジー地球に転移した俺は恩寵(ギフト)というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!

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第三章

085「食事会④」

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「さて、色々と話をしたが細かい話はまたこの後するとして⋯⋯。とりあえず、君たちをここに呼んだのはそんな我々の活動に協力してほしいということなんだ」

 と、健二が三人に説明をする。

「ちなみに私たちは組織で動いている。その組織の名は⋯⋯⋯⋯『天罰ラース』」
「「⋯⋯『天罰ラース』」」
「そして、敵は『おぼろ』という秘密結社の組織で、その組織をまとめているのが『不穏因子』の奴でそいつは『裁定者ジャッジメント』と呼ばれている」
「「おぼろ⋯⋯裁定者ジャッジメント⋯⋯」」
「ああ、そうだ。こいつらは探索者シーカーを敵視している者たちで構成されている。ちなみにこれまでも有名探索者シーカーたちがこの『おぼろ』に狙われたりすることがあったが、今年は特にその動きが活発化するだろうと私たちは考えている」
「「えっ!?」」
「そういったわけで、今は君たちはもちろん他の有名探索者シーカー探索者集団シーカー・クランにも声をかけている最中だ。これからはこれまでのようにただ待つではなく、こちらから仕掛けていこうと思っていてね。だからその時は君たちにもぜひ協力して欲しい」
「ソ、ソラ君はともかく、私や唐沢はそんな期待されるほどの実力なんてありません」
「そうです! 俺や胡桃沢ではとてもそんな役に立てるなんて思っていな⋯⋯」
「そんなことはないぞ、星蘭、唐沢君!」
「っ!! お父⋯⋯様?」
「⋯⋯勝己さん」
「お前も唐沢君も十分な戦力だ。それは間違いない。だからそのことについては心配せずしっかりと胸を張りなさい」
「! お、お父様⋯⋯」
「は、はい!」

 胡桃沢は勝己の言葉に驚きつつも嬉しそうな笑みを浮かべ、唐沢は憧れの勝己にそんな言葉を貰って手放しに喜んだ。さらに勝己が続ける。

「はっきり言ってソラ君だけじゃなく、お前たちの今の力も十分戦力になる。ただもっと言えば、今以上の成長にも大いに期待しているのも確かだ。だからどうか⋯⋯⋯⋯力を貸して欲しい」
「お父様!」
「っ!? そ、そこまで⋯⋯勝己さんが俺や胡桃沢のことを⋯⋯」

 胡桃沢も唐沢も勝己のその発言に魂を大きく揺さぶられる。

「唐沢君。君が私のファンだということは娘から聞いている。嬉しいよ」
「い、いえ⋯⋯そんな⋯⋯」
「であれば、私のことはよく知っているだろう?」
「は、はい! お、俺は、勝己さんの『男気』が大好きなんです! 俺も勝己さんのような『男気のある探索者シーカー』になりたいですっ!!」
「うむ。良い目をしているな。君なら大丈夫だ! 私のように⋯⋯いや私以上になれるだろう!!」
「ええっ!? そ、それは、さすがに⋯⋯」

 唐沢は、勝己のあまりの手放しな褒めっぷりに嬉しさ以上に戸惑ってしまい最終的に⋯⋯⋯⋯思考を投げた。

「お、お父様! 唐沢があまりの嬉しさに頭をショートさせてしまったじゃないですかっ!?」
「ハッハッハ! すまん、すまん! まーとにかくだ。我々としては君たちを戦力として考えているし、同時に敵から襲われても大丈夫なように抱え込みたいとも思っている。だから、君たちには我々の組織に入って欲しい」

 と、勝己がソラだけでなく『新進気鋭アップスタート』三人の力を戦力として考えていると同時に保護するためでもあるという話をして、改めて組織の加入を進めた。

「俺は入ります!」
「わ、私も!」

 すると、唐沢と胡桃沢が同時に組織への加入を表明する。

「そうか、ありがとう⋯⋯」

 そう言って、勝己が唐沢と胡桃沢と握手を交わす。そして、

「さて、残るはソラ君だが⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯」
「お、おい、ソラ?」
「ソラ君?」

 唐沢と胡桃沢は、ソラも自分たちと同じように組織に入ることをすぐに了承すると思っていただけにソラがすぐに返事をせず考え事をしていることに少し驚いていた。

「そうですね。一つ尋ねたいんですけど⋯⋯⋯⋯」
「何だね?」
「組織の活動に協力はするけど加入はしない⋯⋯⋯⋯ってのはダメですか?」
「ええっ?! ソラ、お前入らないのかっ?!」
「ソラ君っ!!」
「ん? ああ、そうだな~⋯⋯本来ならソラ君にも組織に加入して欲しいのだが、ただまあ、さすがにソラ君は二人とは事情が違う・・・・・からな~」
「⋯⋯⋯⋯」

 そう言って、ニカッと笑いながらソラに顔を向ける勝己。そして、その勝己の言葉に静観するソラ。すると、

「⋯⋯勝己。ここからは私とソラの二人だけで話す」
「そうか? ま、そうだよな。じゃあ、唐沢君と星蘭は私と健二で向こうで食事をしようか」
「「え? え?」」

 勝己が唐沢と胡桃沢に声をかけると強引に部屋から連れ出した。唐沢と胡桃沢は突然の退出に戸惑うもあれよあれよと部屋から出される。

 最後に、部屋から出ようとした健二が一度足を止めると、

「⋯⋯賢者ワイズマン

 賢者ワイズマンに声をかけた。

「なんだ?」
「ソラを⋯⋯⋯⋯よろしくお願いします」
「!」

 神妙な面持ちで声をかけた健二の言葉に込められた想いを察して・・・賢者ワイズマンが目を見て返事をする。

「ああ、まかせろ」

 その賢者ワイズマンの言葉を聞いて安心した健二は最後にソラに言葉をかけた。

「それじゃあ、ソラ。またあとでな」
「⋯⋯あ、ああ」


 そうして、二人を残して皆が部屋から出ていった。


********************


「さて、ソラ⋯⋯さっきの話の続きになるが、実は君には組織加入を⋯⋯⋯⋯求めてはいない」
「何っ?!」

 いきなり、さっきの勝己の話とは違うことを言う賢者ワイズマンに驚くソラ。

「まー組織に入ってもらってもかまわんが、しかし君もいろいろ考えているんじゃないか? 例えば⋯⋯⋯⋯君と同じ転移者の捜索とか?」
「! まーそうですね」
「ふむ。であるならば、やはり君は組織に属するよりも自由にしたほうがいいと私は思っているんだ。まーその辺が勝己や健二とは異なる意見なんだがね⋯⋯」
「そう⋯⋯なのか?」

 意外だった。てっきり、この『天罰ラース』という組織は賢者ワイズマンが頂点⋯⋯リーダーと思っていたからだ。

「まー勝己もそうだが、健二は特に君の父親だからね。そりゃ過保護になるのもわかるだろ?」
「まーたしかに」
「ふむ。だが、君はまた違うだろ、ソラ? 私もそうだったがこの『並行世界線イフラインの地球』での家族はまったく同じではあるのだが、しかし⋯⋯⋯⋯やはりどこか『他人』の感じを受けてしまうだろ?」
「なっ?!」

 賢者ワイズマンが言ったその言葉はソラがこれまでずっと内に抱えていた『誰にも言えない不安』だった。そう、賢者ワイズマンの言う通り、ソラはこの世界⋯⋯『並行世界線イフラインの地球』の家族への『違和感』がどうしても拭えていなかった。とはいえ、普段はそんなことを考えないよう無理矢理にその気持ちを表に出さないようにしていた。

「まー無理もないが、ただ一つだけ言っておこう。お前のその『違和感』は別に間違ってはいない。⋯⋯普通だ」
「⋯⋯え?」

 賢者ワイズマンの意外な発言に少し戸惑いを見せるソラ。

「この世界はダンジョンや魔法といった元いた世界の地球には絶対にない『ファンタジー』が常識となった世界だ。そして、それが人々の常識にある以上、家族だけでなく目に入るものすべて違和感だらけなはずだ。だから、その認識で正しい。だが、家族に対しての違和感に罪悪感を抱えることは一切ない!」
「!」
「考えてもみろ? 今お前はまだこの世界に来て1年も経たないんだぞ? そんな奴が外国の文化や常識にすぐに慣れると思うか? しかも、この世界は外国に暮らすのとはワケが違うレベルの文化や常識が存在する世界だ⋯⋯そうだろ?」
「⋯⋯た、たしかに」
「だから、罪悪感なんて抱えるなって言ってるんだ。それにその『違和感』を持っているのは良いことだ。防衛本能と言えるものだからな」
「防衛⋯⋯本能」
「そうだ。さっき私が敵の説明で『不穏因子』と言っただろ? あれはお前も気づいたと思うが我々・・『転移者』のことを差している」
「っ!!!! ちょ、ちょっと待てっ!?」
「ん? どうした?」
「い、いや、どうしたも何も! 我々・・って、あんたも敵も『転移者』なのかっ?!」
「あれ、言ってなかったか? ああ⋯⋯言ってなかったな。すまない、すまない。そうだ、私も敵も転移者だ⋯⋯⋯⋯⋯⋯20年前のな?」
「に、20年前ぇぇ~~~っ!!!!」



 いきなり、サラッととんでもない情報をぶっ込んできた賢者ワイズマンであった。
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