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第三章

081「新年の抱負と展望と昇格と」

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「明けましておめでとう」

 近所にある神社に行くと、ちょうど入口前の階段のところで唐沢と胡桃沢を見つけた俺は、元旦らしい言葉をかける。

「あけおめ~、ソラ!」
「明けましておめでとうございます、ソラ君!」

 唐沢は特に『袴』というわけではなく、ジーパンにカジュアルなシャツにベストと普段着だった。⋯⋯まったく、せっかくの正月というのに『袴』じゃないとは⋯⋯これじゃ風情も何もあったもんじゃ⋯⋯。

「いや、お前も『袴』じゃねーだろっ!!」
「⋯⋯⋯⋯」

 どうやら心の声が漏れてたようだ。

 そんな、面白みのない唐沢はほっといて、その横を見ると⋯⋯⋯⋯、

「ど、どう? 似合う⋯⋯かな?」

 淡い桃色を基調とした振袖を纏う胡桃沢を見た俺は、改めて胡桃沢星蘭が元人気JKモデルだったことを思い出した。⋯⋯抜群に似合ってる!

「ちょっ!? ソ、ソラ君っ!! 抜群に似合ってるって⋯⋯! ほ、褒めすぎ⋯⋯っ!!!!」

 おっと、これまた心の声が漏れてたようだ。

 今日はよく漏らすな。すまんね。



 ガラン、ガラン。

 俺たちは境内に行き、お賽銭を投げ手を合わせる。

 周囲の人たちも同じように手を合わせる。お正月のよくある光景だ。

 そんなよくある光景を見ると、正直——ここが『元いた地球ではない』とは到底思えない。

 しかし⋯⋯⋯⋯ここが元いた地球ではないということは疑いようのない事実。その証拠に脳内で「ステータス」と唱えれば、

——————————————————

名前:新屋敷ソラ

レベル:89

魔法:<初級>ファイヤバレット/ファイヤランス/ウィンドバレット/サンダーバレット/サンダーランス/ソードウィンド/コールドブレス/サンドアタック<中級>魔炎豪雨ファイヤスコール風刀豪雨ウィンドスコール雷刀豪雨サンダースコール氷塊豪雨スノースコール
スキル:<初級>身体強化/縮地/怪力/忍足<中級>魔力洗浄マナクリーン小規模索敵スモールサーチ気配遮断インビジブル鑑定調査サーチング
恩寵ギフト自動最適化オートコンプリート共有化シェアリング

——————————————————

 こうして、頭の中に『ステータス』が展開される。

 間違いなく、ここは元いた地球ではない。⋯⋯『並行世界線イフラインの地球』であることがはっきりとわかる。

 ちなみに『魔物暴走スタンピード』以降、さらに探索者シーカーレベルが上がっており、現在『レベル89』となっていた。


(今年は探索者シーカーレベル100を目指すっ!!(キリッ))


 俺は手を合わせながら、さらなる高みを目指そうと一人密かに燃えていたのである(ボッ!)。


********************


「おみくじ引こうぜー!」

 と、唐沢がガキみたいなことを言ってきたが付き合いは大事なのでその流れに乗った。⋯⋯『大吉』だった。

「おお、みんな『大吉』か! こりゃ幸先良い1年だなっ!!」
「そうね。今年から本格的に社会人として探索者シーカー活動をするわけだけど⋯⋯こう幸先良いのは嬉しいわねっ!!」
「⋯⋯社会人かぁ~」

 胡桃沢にそう言われて改めて気づいた。

 俺たちはもう社会人なんだと。

 事務所となる部屋も無事借りることができ、その後、必要なものを買い揃え事務所として本格的に稼働できる状態となったのがつい先日⋯⋯二週間前のことだ。今は毎朝、その事務所に一度集まってからダンジョンへと足を運んでいる。

「ま、とりあえず、のんびりいこう」

 と、二人に言うと、

「は? んなわけいくかよ! なぁ、胡桃沢?」
「そうよ、ソラ君! のんびりなんてできるわけないでしょ?!」

 俺は二人も同意するものと思っていたが、まさかの否定⋯⋯しかも強く否定された。

「え? なんで?」
「『え? なんで?』⋯⋯じゃねーよ! 11月の『魔物暴走スタンピード鎮圧』の記者会見でお前があんだけ目立ったからじゃねーか!」
「え?」
「そうよ! それにソラ君⋯⋯あの後『魔物暴走スタンピード鎮圧』の功績が認められて、異例の『三段階特進』でA級ランカーになったでしょ!」

 そう、俺はあの記者会見の後『魔物暴走スタンピード鎮圧』の功績が認められ、D級からA級ランカーへと一気に『三段階特進』という『インフィニティ日本本部史上初の三段階特進』を果たした。

 ということで、最近は関東B6ではなく『関東A12』というAランクダンジョンを活動拠点にしている。

「そうだぞ、ソラ。お前は今や俺たち以上に『時の人』なんだぞ? そんなお前の口から『のんびりいこう』とか言われるとは思わなかったわっ!?」
「うっ⋯⋯」
「唐沢の言う通りよ、ソラ君! 君はもう有名探索者シーカーの一人なんだから!! もう少し自覚しなさいっ!!」
「ううっ⋯⋯すみません」

 なぜか新年早々、二人から説教を喰らった。

 まー俺の軽はずみな言葉が悪いのだが⋯⋯。


********************


「しかし、俺たち『新進気鋭アップスタート』もだいぶ有名になったな⋯⋯」
「そうね」

 唐沢と胡桃沢が俺の前を歩きながらそんな話をしていた。たしかに、高校を辞めてから俺たちクランは有名になった。まーしかし冷静に考えてみればそりゃそうだろうという感じだ。

 なんせ、クラン結成してすぐに唐沢と胡桃沢がE級・D級の昇格スピードで世界記録を更新。

 続けて、俺が一人『魔物暴走スタンピード』を鎮圧。

 さらに直近では、俺が新人ルーキーデビューして4ヶ月足らずでD級からA級ランカーへと三段階特進。

 やりすぎもいいとこである。

 が、しかし、致し方ないのだ。

 だって、チヤホヤされるの好きだもの!



 ちなみに、現在唐沢と胡桃沢もB級ランカーへと昇格。C級からB級への昇格スピードもこれまた世界記録を更新したらしい。

 もはや『個人』だけでなく、『探索者集団シーカー・クラン』も含めて有名となっていた。

「い、いや~⋯⋯しかし、改めて考えてみると俺たちって結構すごいんだな、ハハハ」
「「な・に・を・い・ま・さ・ら・っ!!」」

 二人のモーレツなツッコミがシンクロした。

「あ、そういえば! お父様が5日に食事会開くって連絡あったからその日は絶対い予定明けといてよね!っ?」

 と、胡桃沢。

「お、おお⋯⋯! つ、ついに、胡桃沢の親父さん⋯⋯胡桃沢勝己に会えるのか⋯⋯」

 と、興奮気味なセリフは唐沢。

 そういや、唐沢は胡桃沢の親父さんのファンだったっけ。

「ちょっとぉ~、唐沢。そんな態度やめてよね?」
「わ、わかってるよっ!? ちゃんと場では弁えるってっ!!」
「⋯⋯ならいいけど。ソラ君は5日⋯⋯大丈夫よね?」
「ああ、問題ない。事前に父さんからも話は聞いてたしな」
「そっか。じゃあ、それでよろしくね!」
「ああ」

 そんな感じで、初詣を無事終えた俺たちはその後事務所へと行き、三人だけの正月パーティーをした。



 そんな正月休みを過ごした後、1月5日はすぐにやってきた。
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