75 / 157
第二章
075「緊急生ライブ配信③」
しおりを挟む——ギルド本部『記者会見会場』
「お、おい、ちょっと待てっ!! じゃあ何か! 新屋敷ソラっていう16歳の未成年探索者が今回の『魔物暴走』を『単独』で食い止められると判断できるだけの圧倒的な実力を持っているって言いたいのかっ?!」
「ああ、そうだよ! 実際結果がそう言ってるだろっ!!!!」
「なっ?! そ、そんなわけあるかっ!! あの⋯⋯あのイギリスのレヴィアス・アークシュルトでさえ、『魔物暴走』を一人で食い止めたのだって20代になってからだぞ!」
「知ってるよ!」
「だったら! お前が言っていることはまるで⋯⋯⋯⋯レヴィアス・アークシュルト以上の実力者と言っているようなもんなんだぞっ?!」
「ああ、そうだよ! 実際、結果が出ているじゃねーか! ていうか、そこまで言うのなら直接本人に聞けよっ?!」
「「「「「っ!!!!!!!!」」」」」
そして、記者たちの視線が一斉に俺へと向けられる。
ニカッ。
記者の向けられた視線の先にいた俺は満面な笑みを浮かべ話し始めた。
「えーと、初めまして⋯⋯⋯⋯新屋敷ソラです」
パシャ! パシャ! パシャ! パシャ! パシャ! パシャ! パシャ! パシャ! パシャ!
一斉にストロボが焚かれる。
ま、まぶしい。
「今回の『魔物暴走鎮圧』の件でご質問があればお答えします」
瞬間——ほとんどの記者がすごい勢いで一斉に手を挙げた。すると、司会進行役の琴音さんが質問者を選んでくれた。
「えー⋯⋯関東毎日の吉田です。今回の『魔物暴走』ですが、新屋敷ソラさんが一人で38階層に残ったのは『ギリギリまで粘って転移水晶で離脱する予定』だったのでしょうか? それとも『一人で食い止める自信があったから』でしょうか?」
「はい、食い止めれるという自信があったので残りました」
「「「「「なっ!!!!!!!!!」」」」」
記者たちがさっき激しくやり取りしていた話をその記者がストレートに質問してきたので、こちらもストレートに即答した。それと、
「あと、レベリングのボーナスステージかと思ってました」
「「「「「⋯⋯はっ?????」」」」」
一瞬、記者たちが呆気に取られる。
「そ、それは、つまり⋯⋯自分のレベルを上げるための最適な環境⋯⋯といった感じでしょうか?」
「そうですね。固い言い方だとそうなりますかね」
「い、いやいやいやいやいや⋯⋯っ?! レベリングのボーナスステージっておかしいでしょ!!『魔物暴走』ですよっ?!」
「はい。なので、こっちから魔物を探さなくても向こうからやってくるのでラッキーでした」
「ラ、ラッキー⋯⋯?????」
全記者が俺のこの解答に唖然とする。
あと、横に座っている唐沢と胡桃沢が頭を抱え、その横の炎呪はゲラゲラと一人爆笑していた。
⋯⋯解せぬ。
********************
「あ、あの⋯⋯」
「はい、そちらの方」
「と、東京朝日の古賀です! 新屋敷さん! あなたは現在D級ランカーのはずですよね?」
「はい、そうです」
「⋯⋯通常、D級ランカーであればBランクダンジョンの『魔物暴走』を食い止めるなんてあり得ないです! ただ、もしあり得るとしたら、それはあなたのレベルがD級ランクのそれを遥かに超えたレベルであるということになりますが⋯⋯⋯⋯これについてはいかがでしょうっ!!」
「仰る通りです」
「っ!? つ、つまり、現在の新屋敷さんの探索者レベルはD級ランカーの適正レベルを超えていると⋯⋯?」
「う~ん⋯⋯⋯⋯まー各ランカーの適正レベルがどのくらいなのかわかりませんが、たぶんD級ランカーの適正レベルよりも上だと思いますよ?」
「ち、ちなみに⋯⋯現在の探索者レベルは⋯⋯どのくらい⋯⋯」
「そうですね~、えーと、60ぅ⋯⋯⋯⋯」
「「「「「⋯⋯えっ!?」」」」」
「あ、やっぱ、レベルについては教えられないです。すみません」
「そ、そう⋯⋯ですか⋯⋯。わ、わかりました、ありがとうございます」
彼や他の記者たちがザワザワしている。おそらく俺が自分のレベルを聞かれた時に「60ぅ⋯⋯」ということを聞いてざわついているのだろう。
ちなみに、実際の俺の探索者レベルはというと⋯⋯、
——————————————————
名前:新屋敷ソラ
レベル:86
魔法:<初級>ファイヤバレット/ファイヤランス/ウィンドバレット/サンダーバレット/サンダーランス/ソードウィンド/コールドブレス/サンドアタック<中級>魔炎豪雨/風刀豪雨/雷刀豪雨/氷塊豪雨
スキル:<初級>身体強化/縮地/怪力/忍足<中級>魔力洗浄/小規模索敵/気配遮断/鑑定調査
恩寵:自動最適化/共有化
——————————————————
と、ダンジョンボスを倒したときにレベルが一気に5つ上がったので、現在のレベルは『86』になっている。つまり、さっきの俺の「60ぅ⋯⋯」発言は完全にガセ。偽情報である。しかも過少申告。
まー探索者ランクの適正レベルというのは、俺にはわからないのだが少なくともレベル60台はD級ランクの適正レベルは超えていると唐沢から聞いたことがあったので、これが『過小申告』であると疑うのはいないだろう。
この後もいろいろと質問されたが、俺は特に隠すことなくそのまま真実を話した。そんな中、最後の質問ということで一人の記者がこんな質問をした。
「新屋敷ソラさん。今回、あなたの功績は探索者の歴史においても輝かしい偉業と功績であることは間違いないでしょう。そして、あなたのその強さは国内だけに留まらず、海外の⋯⋯とりわけ先進国のギルド本部はもちろん、全世界の探索者に様々なインパクトを与えたと思います。そこで質問ですが⋯⋯⋯⋯新屋敷ソラさんは世界ランキングトップ10を目指すつもりはあるのでしょうか?」
「「「「「っ!!!!!!!!!」」」」」
この質問に、全記者が俺の言葉に注目した。
「そう⋯⋯ですね~⋯⋯⋯⋯はい、やれるだけのことはやってみたいと思います」
「「「「「おおおおおおおおおおおおおっ!!!!」」」」」
すると、俺の言葉に記者だけでなく、周囲の探索者やギルド職員などが一斉に声を上げた。
「あ、新屋敷ソラさんのこの強さなら⋯⋯本当に世界ランキングトップ10に日本人が入る日が来るかも⋯⋯っ!!」
「よっしゃぁぁぁ!! これで『弱小国探索者ギルド』なんて言われる日ともおさらばだぜっ!!」
「日本の探索者、なめんじゃねーぞーっ!!」
こうして、急遽開いたギルド本部での『記者会見』が幕を閉じた。
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる