上 下
64 / 157
第二章

064「各国の動き/インフィニティイギリス総本部②」

しおりを挟む


「レヴィアス・アークシュルト。⋯⋯⋯⋯あんた、何が言いたいの?」
「ん? ああ⋯⋯⋯⋯新屋敷ソラ君がこの魔物暴走スタンピードを一人で食い止めるかもって話だよ」
「なっ?!」
「⋯⋯⋯⋯」

 レヴィアスの妙に確信的な発言に驚愕するイライザと静観するメイベルだった。⋯⋯が、その束の間すぐにメイベルがユラリと言葉を発する。

「⋯⋯血迷ったか、レヴィアス・アークシュルト? 確かに、あの新屋敷ソラという奴はデビューして2ヶ月でD級ランカーになった成長著しい才能ある奴かもしれんが所詮まだD級ランカーだぞ? そんなD級ランカーがBランクダンジョンの魔物暴走スタンピードを一人で止めるなど⋯⋯⋯⋯⋯⋯あってたまるかぁぁーーーっ!!!!」

 早々にブチ切れるメイベル。

「⋯⋯失礼ながら、ギルドマスター」
「レヴィでいいよ、イライザ?」
「いえ、そんなわけにはまいりません。イングランド公爵家でしかも『アークシュルト家の至宝』と言われるレヴィアス様にそんな略称は失礼極まりないので」
「はぁ~相変わらず真面目だな~、イライザは。それで? 何か言いたいことでもあるのかな?」
「はい。正直、今回の件⋯⋯失礼ながらレヴィアス様の先ほどの話は荒唐無稽にも程があるかと⋯⋯」
「つまり、メイベルと同じ意見ってことかな?」
「⋯⋯はい」
「ちなみに、もし彼⋯⋯⋯⋯新屋敷ソラ君が魔物暴走スタンピードを一人で食い止めたとしたら⋯⋯⋯⋯どう思う?」
「もし、本当にそんな芸当ができたのなら率直に言って⋯⋯⋯⋯我々の力と同等かそれ以上の力を持った『規格外の化け物』ということになるかと」
「ふむ」
「ていうか、イライザ! あんた何真剣に答えてんの! そんなことあるわけないでしょ!! レヴィはそうやっていつも『相手に期待しすぎるクセ』があるんだからそんな話まともに聞いちゃダメよ!!」

 そう言って、レヴィの話を一刀両断するメイベル。

「アハハ⋯⋯⋯⋯僕ってそんなに相手に期待しすぎるかな?」
「はい」
「当たり前でしょ!」
「あ、あれぇぇ~~??」

 二人の即答にショックを受けるレヴィアス。しかし、

「はぁぁ~~⋯⋯やっぱ、こいつ手遅れね。しかも無意識ってところがタチ悪いわ」
「ごもっともです」

 と、メイベルとイライザはレヴィアスに聞こえないほどの小さい声でお互いの意見の一致を確認する。


********************


「じゃあ、これで話し合いは終わりかな⋯⋯イライザ?」
「あ、一応⋯⋯あと一つありまして」
「ん? 何だい?」
「あれでしょ? 一月初めの日本訪問の話よね?」
「そうです」
「あ~! そうだったね」
「いや、何でギルマスのあんたが忘れてんのよ!? しっかりしなさいっ!!」
「も、申し訳ない⋯⋯」

 と、副ギルドマスターのメイベルにがっつり怒られへこむギルマスのレヴィアス。

 一般的には、ギルドマスターのレヴィアス・アークシュルトは『かっこいい』『頼りがいがある』『男らしい』『甲斐性天井知らず』という評価を受けているが、実際の彼はこのように『天然』でだいたいが副ギルドマスターのメイベルと受付総長のイライザがこのイギリス総本部の運営を担っていた。

「とりあえず、予定通り⋯⋯来年一月中旬頃で問題ないでしょうか?」
「ああ、それでいいよ。ところで各国のギルドはどうなっているのかな?」
「はい。基本、先進五カ国⋯⋯英国イギリス米国アメリカ仏国フランス中国チャイナ露国ロシアのギルドマスターは全員参加を表明しております。他途上国のギルドマスターらも参加の方向で動いているようです」
「へ~⋯⋯意外だな。『探索者世界会議シーカー・ワールド・フォーラム』でもないのに途上国のギルマスたちが参加するなんて?」
「フフ⋯⋯まーそれだけ、日本の高校生探索者シーカーの活躍に興味があるのでしょうね。しかも、そんな活躍のニュースが世間を賑わす最中、魔物暴走スタンピードも発生した。今回のこの魔物暴走スタンピード鎮圧の成功如何によっては、ほとんどの国のギルマスたちが日本に訪れるかもしれないよ?」

 と、ニコニコと楽しげに微笑むレヴィアス。

「フン! 逆に言えば、その魔物暴走スタンピード鎮圧の成功如何によって参加を見合わせる国が増えるとも言えるけどね?」

 そう言って、ニコニコのレヴィアスを睨むメイベル。

「やめてください、二人とも。ただ、確かに今回の魔物暴走スタンピード鎮圧を日本本部が速やかに成功させた場合、かなりの数の国が訪日を希望するでしょう。ただ、そうなった場合ですが、せっかく多くのギルマスが日本に訪れるなら⋯⋯急遽ではありますが『探索者世界会議シーカー・ワールド・フォーラム』を開くのはいかがですか?」

 と、二人の間に入りつつ提案するイライザ。

「お? いいね、それ! ちょうど、最近出現頻度が高くなっている『魔物暴走スタンピード』についての情報交換もしたかったからね」
「はい。ちょうど良い機会かと⋯⋯」
「そうね。今回の日本の魔物暴走スタンピードの情報も実際に生で聞いてみたいわ」
「うむ。それでいこう! 調整のほう頼むよ、イライザ」
「かしこまりました」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

名前を書くとお漏らしさせることが出来るノートを拾ったのでイジメてくる女子に復讐します。ついでにアイドルとかも漏らさせてやりたい放題します

カルラ アンジェリ
ファンタジー
平凡な高校生暁 大地は陰キャな性格も手伝って女子からイジメられていた。 そんな毎日に鬱憤が溜まっていたが相手が女子では暴力でやり返すことも出来ず苦しんでいた大地はある日一冊のノートを拾う。 それはお漏らしノートという物でこれに名前を書くと対象を自在にお漏らしさせることが出来るというのだ。 これを使い主人公はいじめっ子女子たちに復讐を開始する。 更にそれがきっかけで元からあったお漏らしフェチの素養は高まりアイドルも漏らさせていきやりたい放題することに。 ネット上ではこの怪事件が何らかの超常現象の力と話題になりそれを失禁王から略してシンと呼び一部から奉られることになる。 しかしその変態行為を許さない美少女名探偵が現れシンの正体を暴くことを誓い…… これはそんな一人の変態男と美少女名探偵の頭脳戦とお漏らしを楽しむ物語。

女体化入浴剤

シソ
ファンタジー
康太は大学の帰りにドラッグストアに寄って、女体化入浴剤というものを見つけた。使ってみると最初は変化はなかったが…

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた

ああああ
恋愛
優は大切にしていた妹の友達に冤罪を掛けられてしまう。 そして冤罪が判明して戻ってきたが

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

冤罪で自殺未遂にまで追いやられた俺が、潔白だと皆が気付くまで

一本橋
恋愛
 ある日、密かに想いを寄せていた相手が痴漢にあった。  その犯人は俺だったらしい。  見覚えのない疑惑をかけられ、必死に否定するが周りからの反応は冷たいものだった。  罵倒する者、蔑む者、中には憎悪をたぎらせる者さえいた。  噂はすぐに広まり、あろうことかネットにまで晒されてしまった。  その矛先は家族にまで向き、次第にメチャクチャになっていく。  慕ってくれていた妹すらからも拒絶され、人生に絶望した俺は、自ずと歩道橋へ引き寄せられるのだった──

処理中です...