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第二章
063「各国の動き/インフィニティイギリス総本部①」
しおりを挟む——探索者ギルド『インフィニティイギリス総本部』
「何? 日本で魔物暴走だと?」
そこは、インフィニティイギリス本部の最上階10階にある『ギルドマスターの部屋』。そこには現在、
「はい。ただいま、討伐隊を集めているようです」
と報告するのは、ギルド受付部総長であり、且つ、現役S級探索者にして世界ランキング9位、探索者集団『ポセイドン』のリーダー『イライザ・タンゼント』。
普段から凛とした佇まい・所作の彼女は金髪のロングヘアーに『黒縁メガネ』をかけるという世界中の『黒縁メガネ美女の有志』らが彼女を崇拝することに。その後、世界中でファンクラブができるほどの人気探索者へと至った。
しかし、そんな彼女はファンクラブの存在を疎ましく思っており、またその気持ちを隠さずに面と向かってファンに罵倒する。⋯⋯⋯⋯が、ファンはそんな彼女に罵倒されると「ああっ!? もっとくださいっ!! もっとぉぉ~~っ!!」となぜかご褒美になってしまうことから最近は彼らにどう注意したらいいのか頭を悩ませている。
「またぁ~? ちょっと前に米国であったのに今度は日本って⋯⋯⋯⋯それ、情報は確かなのぉ~?」
と疑いの言葉を投げかけたのは、イギリス総本部副ギルドマスターにしてS級探索者世界ランキング4位、探索者集団『アルテミス』のリーダー『メイベル・ホワイト』。
金髪サイドテール(右)の彼女は、いつも白を基調としたドレスを着ているのだが、これは『家柄』『高貴さ』を彼女なりに表現しているもので戦闘時もこの白を貴重としたドレスを愛用している。まー実際、そんな彼女はイングランド貴族『ホワイト公爵家当主の娘』であり、まさに現代における本物の貴族なのだ。
彼女は特級魔法『聖なる射手』という魔法攻撃が武器で、数十から数千となる圧倒的物量の魔力の弓矢を生み出すとそれを敵に一斉に打ち込み蹂躙するというエゲツない攻撃力を持っている。
そんな彼女は『無垢なる執行人』という二つ名を持っているのだが、彼女曰く「全然、可愛くないっ!!」とまったく納得していないらしい。
「ああ、情報は確かだよ⋯⋯メイベル・ホワイト」
そんな、メイベルの疑問に柔和な笑顔と物腰柔らかい口調で紳士然に返事をしたのは、イギリス総本部ギルドマスターにしてS級探索者、そして世界ランキング2位の『レヴィアス・アークシュルト』。
彼もまたメイベル・ホワイトと同じイングランド貴族『アークシュルト公爵家』の嫡男だ。それだけでも身分は相当なものだが、さらに彼は『アークシュルト家の至宝』と呼ばれるほど、学術・芸術・武道から魔法・スキルといった探索者の才能にも溢れる天賦の才の持ち主であった。
そんな、探索者ギルド『インフィニティ』の総本山である『イギリス総本部』の顔役三人が集まっていた。
「それで? 現在の状況はどうなってるの?」
「はい。現在、魔物暴走は関東B6の38階層で確認したようですが、報告者らの話だと最下層の40階層も魔物で溢れかえっているだろうとのことです」
メイベルの少し怒気がこもった声色での質問に、眉根一つ動かさず冷静に回答するのは受付部総長のイライザ・タンゼント。
「⋯⋯だろうね。魔物暴走は最下層から発生するものだからね」
「はい。それと⋯⋯」
「ん?」
「現在、新屋敷ソラという高校生探索者が魔物暴走の侵攻を遅らせようと、その38階層に一人残っているようです」
「ほう? 新屋敷ソラ君がねぇ~⋯⋯」
ギルマスであるレヴィアスの言葉に同意の返事をするイライザ。しかし、その後のイライザから出た『新屋敷ソラ』の名前を聞いてレヴィアスが明らかな興味を示すと、
「はぁぁ~~っ!???? 何やってんの、そいつっ!? 確かに、魔物暴走は地上に魔物が出てくる恐れがあることがわかって、それ以降、魔物暴走が発生したらできるだけ現場の人間が魔物暴走の侵攻を遅らせる・食い止めるということにはなったけど、そんなのはあくまで『方便』でしょ! 実際は1つの探索者集団だけでは魔物暴走の侵攻を食い止めるどころか遅らせることさえ⋯⋯A級かS級の探索者集団でもない限り無理よ! 自殺行為もいいとこだわっ!!!!」
そう言って、ソラの行動に噛み付くメイベル・ホワイト。
「⋯⋯はい。メイベル様のおっしゃる通りかと」
「しかも、一人ってこいつ、マジで頭おかしいんじゃないの? 最近マスコミにチヤホヤされたからって調子に乗っているんじゃないっ?!」
「わたくし個人としては⋯⋯恐らくできる範囲で魔物暴走の侵攻を食い止めて無理と思った時点で転移水晶で脱出しようと思っているのかと⋯⋯」
「でしょうね! そうじゃないとタダの自殺志願者よ! まったく⋯⋯⋯⋯これだから高校生探索者って嫌いなのよ。『自分には才能がある!』なんて過信する奴ばっかなんだからっ!!」
「⋯⋯はい」
メイベルがかなり辛辣の言葉を吐くが、イライザもそこは納得のご様子。すると、
「まー、元高校生探索者の君が言ってもね~⋯⋯説得力が⋯⋯」
「何か言った、レヴィ?(ギロリ)」
「あ⋯⋯い、いや、その、何でもない⋯⋯です。アハハ⋯⋯」
「フンッ!!」
年下であるはずのメイベルの睨みにすぐに目を背けるのは『レヴィ』こと、ギルマスのレヴィアス・アークシュルト。
********************
「それで、イギリス総本部に応援要請とかはあったの?」
「いえ、ありません」
「⋯⋯そう? じゃあ、とりあえずは様子見ということね」
「はい。ですが、万が一応援要請が来るかもしれないので、準備だけはしておいてください」
「わかったわ」
と、メイベルがイライザに返事をすると「この場はもう終わりかな」という空気になったので、イライザは「とりあえず一旦解散ということで⋯⋯」と言おうとした。その時、
「いや、応援要請は来ないと思うよ」
と呟いたのは、レヴィアス・アークシュルト。
「⋯⋯⋯⋯何か『含み』のある言い方するじゃない、レヴィ? どういうことよ?」
レヴィアスの言葉に即座に反応するメイベル。
「彼だよ⋯⋯⋯⋯新屋敷ソラ君。彼がもしかしたら何とかするかもしれない」
「⋯⋯何ですって?」
レヴィアスの言葉に怒気を含んだ返事を返すメイベル。さらにメイベルがレヴィアスに問う。
「レヴィアス・アークシュルト。⋯⋯⋯⋯あんた、何が言いたいの?」
「ん? ああ⋯⋯⋯⋯新屋敷ソラ君がこの魔物暴走を一人で食い止めるかもって話だよ」
「なっ?!」
「⋯⋯⋯⋯」
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