51 / 157
第二章
051「大騒ぎ」
しおりを挟む「おおお! あれは⋯⋯新屋敷ソラくんだっ!!」
学校の校門まで行くと、テレビカメラとレポーターっぽい人がいっぱいた。マスコミの人たちだろう。そんなマスコミの人たちは俺を見つけると一斉に寄ってきた。
「おはよう! 君、新屋敷ソラ君だよね! 唐沢君と胡桃沢さんとは友達なのかな~?!」
「唐沢君と胡桃沢さんとは高校からのお友達なんですかっ?!」
「唐沢君と胡桃沢さんは付き合っているんですかっ?!」
「胡桃沢さんはモデルのあの胡桃沢星蘭さんですよね!? どういったご関係ですかっ?!」
「胡桃沢星蘭さんのお父様は、かの有名なKZインダストリーの胡桃沢勝己さんですよね! 唐沢君はお会いになったことはありますかっ?!」
おおお⋯⋯これがマスコミの突撃取材か。
まさか、生きてる間に突撃取材を受ける立場になるとは思っていなかった俺は一瞬感動したが、すぐに「うぜぇ~」となった。だって、全然質問が終わらないもの。すると、
ザザザ⋯⋯!
数名の黒服がマスコミをばらけさせ、俺が校舎に入れるよう道を作ってくれた。
「な、何ですか、あなたたちはっ!? 私たちは許可をとってここで取材しているのよ!!」
強気な性格っぽい女性アナウンサーがその黒服たちに文句を言う。しかし、
「我々は『公安』の者です。あと、いくら許可をもらったと言っても彼らは高校生です。自重してください」
「そ、そんなの、そんなの政府の横暴よっ!?」
それでも、尚も噛み付くレポーター。しかし、
「公安はその許可を取った者よりも権限は上になります。よって、それ以上邪魔をするのならその許可を強制取消とし、以降この場での取材は禁止とします。それでも抵抗しますか?」
『公安』を名乗る黒服の人は語気を強めて警告をする。
「ふ、ふん! 何よ、威張っちゃって!」
レポーターは不貞腐れながらもさすがにこれ以上は食い下がれないと判断し、黒服の指示を受け入れ身を引いた。同時にそれを見た他のマスコミも彼女に合わせ引く。
「さ、ソラ君。校舎の中へ」
「あ、ありがとうございます」
そ、それにしても『公安』って⋯⋯⋯⋯何か、かなり大事になってません?」
(※なってます)
********************
「あ、ソラ君!」
「おはよう」
「ソラ、待ってたぞ!」
教室に入るなり、胡桃沢と唐沢に声をかけられると腕をホールドされ教室から連れ出された。
「お、おい! いきなり何だよっ?!」
「今、教室に入ってもクラスメートからやたら話しかけられてまともに話ができないの!」
「おう! だからいつもランチで使っている屋上に行こうと思ってよ!」
そう言って、二人に腕を引っ張られながら屋上へと移動した。
「ふー、何だか大変なことになってるわね⋯⋯」
胡桃沢は屋上から校門を見ながらそう呟く。校門のほうではまだマスコミが張り付いていた。
「胡桃沢はモデルやってんだからマスコミの対応とか問題ないだろ?」
と、唐沢が言うと、
「バカ言わないでよ! モデルの仕事とマスコミ対応なんてまったく別物よ! まーたしかにたまに取材とかあるけど、モデルがマスコミ相手にしゃべることなんてほとんどないわよ!!」
「ふ~ん、そういうものなんか」
「ていうか、モデルの仕事も最近は断ってるし! それよりも探索者として強くなりたいからレベリング優先にしてるし!」
そう、胡桃沢はモデルの仕事を辞めたわけではないが、ほとんどやっていないらしい。聞くと「本当は辞めるって言ったんだけど、事務所に仕事はしばらく休んでいいけど残って欲しいって言われたから⋯⋯それで仕方なく籍は置いている状態なの。一応事務所にはこれまでいろいろとよくしてもらっていたし⋯⋯」とのことだった。
まー、胡桃沢もまさか探索者にすぐになれると思っていなかっただけに突然なことだっただろうし、探索者集団を結成してからは俺の『恩寵』の共有もできるようになったため、予想よりもかなり早いスピードで成長し、今のような大騒ぎになる程強くなったわけで。
つまり、元はと言えば、俺が胡桃沢のモデルの仕事を潰してしまったと言えるのかもしれない。とはいえ、胡桃沢は前に、
「モデルは知り合いに誘われたからやっただけで自分の意思じゃないし⋯⋯まー楽しかったし、良い経験にもなったけど⋯⋯でも『やりがい』みたいものはなかったから⋯⋯。でも、探索者活動は違うわ。めっちゃ楽しいし、強くなりたいもの!」
と、瞳をキラキラさせながら言っていた。それを聞いた当時、少し安心したのは懐かしい話だ。
「さて⋯⋯これからだけど、どうすっかだな」
「どうすっか⋯⋯って、何かすることがあるの?」
唐沢の言葉に胡桃沢が反応する。そして俺は、
「学校を辞める⋯⋯⋯⋯って話か?」
と、唐沢に逆に尋ねた。
「お? さすがわかっていたか、ソラ」
そう言うと、唐沢が話を始めた。
「今、俺たちの状況は『注目の新人探索者』ということでマスコミに取り上げられるほどになった。それはそれでありがたいことではあるけど、でも実際学校がこんなんだと勉強なんてまともにできないだろ? まーマスコミが俺たちに興味が無くなれば収まるだろうけど⋯⋯でも⋯⋯」
「でも?」
胡桃沢が話が途切れるタイミングで聞き返す。
「ソラはこの程度でレベリングを終わらせるなんて考えてないだろ?」
「! まー⋯⋯そうだな」
「ということは⋯⋯だ、一緒に探索者集団として活動している俺たちももっと強くなっていくだろうし、それはしばらくは終わらないだろ? てことは、マスコミから追われるのは強くなり続けるかぎり続くってことだ」
「! た、たしかに⋯⋯唐沢の言う通りね」
「ああ、そうだな。逆に言えば、マスコミに追い続けられるのが当たり前になって初めて、一流の探索者集団と言われるのかもしれないな」
「おお、ソラ! 確かにそうかもな!」
「ちょっと、かっこいいわね⋯⋯ソレっ!」
そう言って、三人は二カッと笑う。
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説


幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します
湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。
そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。
しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。
そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。
この死亡は神様の手違いによるものだった!?
神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。
せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!!
※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~
芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。
駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。
だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。
彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。
経験値も金にもならないこのダンジョン。
しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。
――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる