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第二章
045「新しい恩寵《ギフト》」
しおりを挟むピコーン!
「キャッ!? な、何⋯⋯?」
「なんだ、何の音だっ!?」
二人は突然の音に狼狽える。しかし、俺には聞き覚えのある音だったので自分のステータス画面を拡げた。すると、
「あ、やっぱり⋯⋯」
「「やっぱり?」」
「『恩寵』が1つ増えたみたい⋯⋯」
「「へ~『恩寵』が増えたんだ~⋯⋯⋯⋯⋯⋯って、増えたぁぁぁ~~~っ?!!!!!!!」」
二人の『ノリツッコミ』がハモる中、俺は気にせずステータス画面を確認する。
——————————————————
名前:新屋敷ソラ
レベル:62
魔法:<初級>ファイヤバレット/ファイヤランス/ウィンドバレット/サンダーバレット/サンダーランス/ソードウィンド/コールドブレス/サンドアタック
スキル:<初級>身体強化/縮地/怪力/忍足<中級>魔力洗浄
恩寵:自動最適化/共有化←New!
——————————————————
「「いや、『New!』って書いてますけどぉぉっ?!」」
「うむ、わかりやすさは大事だぞ」
二人がソラのステータスにあーだこーだと色々言っているが、ソラは無視して『共有化』の効果を確認しようと「共有化の説明の表記を頼む」と脳内で指示をした。すると、ソラの脳内に『共有化』の説明が表記される。
——————————————————
『共有化』
・『自動最適化使用者が仲間と認識した者』に限り、自動最適化の『周囲の情報や使用者の記憶・知識から自動で計算して最適な効果を生み出す』の共有化が可能となる
・適用条件:使用者の仲間意識/ダンジョン内のみ/半径100メートル以内
——————————————————
「え? これって⋯⋯」
「⋯⋯ああ。どうやら、俺の『自動最適化』が限定的ではあるが二人にも共有できるようになったみたいだ」
「ええっ?! そ、それって、普通にすごくない⋯⋯?」
「い、いや、かなりやばいぞ⋯⋯これ。だって、俺や胡桃沢みたいな格闘技とかやったことない奴でも、この『自動最適化』を使えば『勝手に体が最適な動きで敵を倒す』ってことを体感・実感できるわけだろ? それって⋯⋯⋯⋯『魔物を倒す技術』が体に身に付くってことじゃん!」
「⋯⋯だな。俺も前に『自動最適化』を止めて試してみたが、結果『自動最適化』と似た動きができるようになっていたからな」
「そ、そうなんだ⋯⋯」
「すごいな⋯⋯」
「まー、俺に関して言えば、わざわざ『自動最適化』を止めるなんてこと今後することはないがな」
「え、えーと、つまり、整理すると⋯⋯⋯⋯ダンジョンで三人で探索活動している限り、ソラ君の『恩寵:自動最適化』が私と唐沢にも適用されると。⋯⋯で、『自動最適化』を使用することで『魔物を倒す戦闘技術』を自然に体に覚えさせられるってことで⋯⋯オーケー?」
「オッケーだもの!」
俺は元気よく返事をした。
********************
「はぁっ!!」
「ファイヤバレット! コールドブレス!⋯⋯」
その後、恩寵に追加された『共有化』の練習ということで、俺は戦わずに二人に魔物と戦ってもらった。すると、
「す、すごい。体が勝手に動く感じは多少あるけど⋯⋯でも、ほとんど違和感ない。むしろ快適だぜ!」
「うん、うん! そう、そう! 何だろう⋯⋯『体がうまく動いた!』っていう感覚が連続している感じっていうのかしら! とにかく、気持ちよく体が動くからすごい気持ちいいわね! これ、凄いわっ?!」
二人とも『共有化』による『自動最適化』の効果に大満足のようだ。
「ていうか、こんな便利機能を最初から使っていたとか反則だろ! まさにチートじゃねーか!!」
「ふ⋯⋯そう言ったろ?(ニチャァ)」
「でも、何なんでしょうね⋯⋯この『恩寵』って?」
「さあな。俺もそれはよくわかっていない」
「う~ん、他にもソラみたいに『恩寵』を持っている奴っているのかな~⋯⋯?」
「⋯⋯⋯⋯」
俺は「この世界に俺以外に恩寵を持つ奴は四人いる」と言おうと思ったが⋯⋯⋯⋯一旦伏せた。なぜなら、ここでその事を言えば『転移者』の話をしなければならなくなるからだ。
『恩寵』の話ならまだしも『転移者』の話を今二人に話すのは時期尚早だ。そんなことを言ったら「頭おかしい」と思われるのが関の山だろうからな。
「まー世界のどこかにはいるんじゃないかと思うけど⋯⋯⋯⋯どうだろうな?」
と話をほぐした。
「でも、もし『恩寵』を持っている人がいたとしたらソラ君と同じ効果なのかしら?」
「俺は別だと思うぞ?」
「ああ、俺も唐沢と同意見だ」
「そう? ま、そもそもいるかどうか、あるかないかもわからないモノの話だものね⋯⋯⋯⋯不毛ね」
「「ドライな奴!」」
「な、何よー! 本当のことでしょ!」
「じょ、冗談だよ、冗談。まーでも、胡桃沢の言う通りだな。確かに『恩寵』なんて、ソラ以外に持っている奴なんているかわからないことを今、考えるのは不毛な話だ。それよりもソラ⋯⋯」
「ん?」
「今、ここって⋯⋯⋯⋯29階層だよな?」
「ああ、そうだな」
「しょ、初日で、29階層進出とか俺たちやばくね?」
「ええっ!? もう29階層だったの! 夢中で魔物を倒していたからわからなかったけど、そんなに進んでいたなんて⋯⋯」
二人は、新人デビューした初日に29階層まで来た事実にものすごく戸惑っていた。無理もない。ただ、
「ていうか、俺的には二人には『最速でD級昇格』をしてもらおうかと思っているぞ?」
「「へ? 最速で⋯⋯D級昇格⋯⋯?」」
「ああ。二人にはD級探索者への昇格最速記録を作っていただき有名になってもらいます。あ、ちなみに拒否権はありません。リーダーの命令は絶対!」
「なっ?!」
「ちょっ?!」
二人の戸惑いをちゃんと無視して話を続けるソラ。
「今の二人には俺の『恩寵:自動最適化』が共有化されています。しかも、単独ではなく探索者集団として探索しています。結果、レベルアップが捗るのは自明の理。強くなるのは必然なのであります」
「ま、まあ⋯⋯」
「た、たしかに、強くなるのは嫌じゃないけどぉ~⋯⋯」
お? 効いてる、効いてる。
「なので、それならいっそのこと、俺や竜ヶ崎の最速記録なんか軽くブチ抜いてもらって有名高校生探索者になってくれって話でございます」
「お、お前が、そこまで言うんなら⋯⋯⋯⋯なぁ?(ニヤニヤ)」
「え、ええ、そうね。ソラ君の頼みなら⋯⋯⋯⋯仕方ないわね(ニヤニヤ)」
「そう言っていただけると嬉しいです。二人ともありがとうございます」
ニチャァ。
計・画・通・り(※デスノ風)。
こうして、ソラの思惑にまんまとハマった唐沢と胡桃沢は新人デビューして三日で『E級』へ昇格。そして、さらにその四日後の一週間後にはソラと同じ『D級』へと昇格を果たした。
ちなみに、これは『圧倒的な世界最速記録』となった。
そして、ソラの思惑どおり二人はギルドや探索者から大注目された⋯⋯⋯⋯が、しかし、事はそれだけでは収まらなかった。
ソラの思惑を通り越して、唐沢と胡桃沢だけでなくソラたち探索者集団『新進気鋭』も、そのリーダーである『新屋敷ソラ』も各国ギルドや探索者から大注目され騒がれることとなる。
しかも、その騒ぎはギルド・探索者内に収まらず、ついには世間へと漏れ出ることとなった。
「ど、どど、どうしてこうなったぁぁぁぁ~~~~!?(※ソラ)」
『策士策に溺れる』
お後がよろしいようで。
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