イフライン・レコード ファンタジー地球に転移した俺は恩寵(ギフト)というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!

mitsuzoエンターテインメンツ

文字の大きさ
上 下
31 / 157
第二章

031「竜ヶ崎真司の現在(4)」

しおりを挟む


「えっと~、2ヶ月前に高校生探索者シーカーになった新人ルーキーで、名前はたしか⋯⋯⋯⋯⋯⋯新屋敷ソラ」
「⋯⋯え?」

 僕は彼女の言葉に一瞬、頭が真っ白になった。

「新屋敷⋯⋯ソラ?」
「え、ええ。⋯⋯あ、そうか! 竜ヶ崎さんと同じ高校の同級生の方ですよね!」
「え? あ⋯⋯はい」

 頭の中がまだ真っ白な状態だったのだが、そんなボーッとする僕に彼女は興奮気味に話を続けた。

「すごいんですよ、彼! だって、そのトロールオークを倒したのも一人で倒したんですから!」
「は? 一人⋯⋯で⋯⋯?」
「はい! つまり、単独攻略です! 2ヶ月前に探索者シーカーになったばかりの新人ルーキーがですっ!? そんな彼があのトロールオークを単独で倒したんです!」
「そ、そんな⋯⋯バカな⋯⋯」
「すごいですよね! でも、それだけじゃないんです! 何と新屋敷ソラくんはその功績が認められて、E級を飛び越してD級ランカーになったんですぅぅ~!! つまり『二段階特進』ですよっ!!!!」
「っ!? に、二段階特進⋯⋯っ!?」
「はいぃぃ! いや~もうビックリです! ちなみに、この『二段階特進』は実に10年ぶりみたいですよ?! いや~もう私、朝から興奮しっ放しで! あ、私これから本部に行ってちょっとその新屋敷ソラくんを見に行ってきますので! 失礼します!」

 そう言って、彼女はさっさと飛び出していった。

「に、二段階特進? 10年ぶりにトロールオークを単独攻略? な、何だよ⋯⋯何が⋯⋯何がどうなっているんだ?」

 彼女が飛び出していった後も彼女の言葉がどうにも受け入れられず⋯⋯⋯⋯僕はしばらくその場に立ち尽くしていた。



「おい! おい、真司! 真司ぃぃっ!!」
「⋯⋯え?」

 僕は帯同しているいつもの探索者集団シーカー・クランのリーダーに声をかけられ、その声のほうへ顔を向けた。

「ど、どうした! 顔が真っ青だぞっ?!」
「え? 顔?」
「ああ⋯⋯ひどい顔だ。それに受付でボーッと立ったままだし⋯⋯⋯⋯何かあったのか?」
「あ、まあ⋯⋯」

 さっきの受付嬢の話があまりにもショックで、僕はまだまともな思考になっていなかった。

「本当にどうしたんだ、らしくないぞ? 何か悩み事でもあるのか?」
「そうだぞ! 悩みがあるなら言ってみろ!」
「そうだぞ。そんな顔色悪くして、一体何が⋯⋯」
「⋯⋯黙れ」
「「「「え?」」」」

 僕は、メンバーの言葉がすごく耳障り・・・に感じて、ついそんなことを口走っていた。でも、そのおかげでシーンと静かになったのでよかった。

「す、すみません。体調がすぐれないので⋯⋯今日は⋯⋯休みます」
「し、真司⋯⋯」

 そう言って、僕は彼らの返事も聞かず、フラフラっとその場から立ち去った。


********************


「⋯⋯ここはどこだ?」

 気がつくと、僕はギルド本部の近くにある公園に来ていた。

 どうやら僕はここまで歩いてきたようだがその記憶はない。

 とりあえず、少し頭も回るようになったので僕は一度大きく深呼吸をして記憶を遡ってみた。

「ふ~⋯⋯よし、もう大丈夫だ。とりあえず、ゆっくりと思い出していこう。まずは、僕は何でこんなところにいるんだ? えーと⋯⋯⋯⋯そうだ。今日は関東B6でレベリングする予定だったんだ。でも、何でここに? あ、そうだ。確か、関東B6のギルドの受付嬢と話をして⋯⋯それで⋯⋯何か受付嬢が興奮気味に話していて⋯⋯たしか⋯⋯同級生がどうこうとか⋯⋯⋯⋯同じ学校の高校生探索者シーカーが何とかって⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯はっ!? そうだ、新屋敷ソラ! あいつの話だった! たしか、話の内容は⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯あ」

 僕はやっとのことで思い出した。思い出したくもない話を思い出した。

「新屋敷ソラが関東C24のダンジョンボスのトロールオークを⋯⋯C級ランカーの探索者集団シーカー・クランでも手こずるトロールオークを単独で⋯⋯倒したんだった⋯⋯」

 僕はすべての記憶が戻ると、心の中でいろんな感情が渦巻いた。


 驚愕、戦慄、嫉妬、憎悪⋯⋯⋯⋯そして、絶望。


「う、嘘だ! あり得ない! トロールオークは今のBランクダンジョンの関東B6でも20階層以上から出現するほどの強さなんだぞ!? それを単独で撃破なんておかしいだろっ!! 嘘だ! 嘘だ! 絶対に嘘だぁぁぁ~~~~っ!!!!」

 僕はこの情報を『嘘』だと思った。何だったら『単独で倒したと話を持った』とも思ったし、『他の人の手柄を自分の手柄のようにした』とも思った。

 すると、今度はその『自分で作り出した嘘』に沸々と怒りが込み上げてきた。

「許さない、許さないぞ、新屋敷ソラ⋯⋯っ! そんな嘘をついてまでして二段階特進をするなんて! そんなの⋯⋯そんなの⋯⋯許されることじゃないっ!!!!」

 僕はその怒りのまま、本部へと向かった。

 新屋敷ソラが嘘をついていると報告するために!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

処理中です...