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第一章
019「関東C24の完全制覇」
しおりを挟む俺はもはや日課になっているダンジョン探索を終えると、待っていた唐沢と合流して家に帰った。
胡桃沢は「用事があるから」と言って、先に帰ったらしい。
ていうか、それでも午前中までいたのだからすごい。ギルドでなにやってんだろ?
まー、それを言ったら唐沢なんて夕方までずっとギルドにいるのだから、マジで何やってんのか聞いてみた。
「ん? あー⋯⋯ギルドにいる現役の探索者の人たちに、探索者に目指しているので魔法とスキルを身につけるコツとかあったら教えてほしいとか⋯⋯いろいろ聞いてるかな。あと、単純に探索者の知り合いも作りたいな~って思っているから、よくギルドで探索者に話しかけてるよ」
とのこと。
いや、こいつマジで『コミュニケーションおばけ』だな!?
と、改めて思い知らされた。
そんな話をきっかけに唐沢がこんなことを言ってきた。
「なぁ、ソラ? お前って今レベルはいくつだ?」
「⋯⋯なんで?」
「いや、こんなにほぼ毎日通っているから結構強くなっているのかなって⋯⋯」
「あーーーーーーー⋯⋯いや、大したことないよ。まだレベル4とかだし」
「そうなのか? 毎日潜っていてもレベル上げるのってやっぱ難しいんだな」
どうやら、唐沢はギルドにいた先輩探索者からレベル上げの大変さを聞かされたとのこと。その話によると、
「最初のうちはレベルが低いから、身体能力も高くないし、魔法やスキルも身体強化とかファイヤバレットといった初級魔法やスキルしか使えない。おまけに魔力も少ないから何回も使えない⋯⋯。だから最初のうちは魔物を倒すのが大変でレベル上げには時間がかかるって言ってたんだよ」
というのが、その先輩探索者から聞いた内容だった。
そして、俺もそう聞かされたのだろうと予想していたので『本当のレベル』を隠した。
え? 何で隠したのかって?
だって、あまりに強くなり過ぎたから。
それを説明するのがなんか面倒だなぁ~って(テヘペロ)。
俺は自分にいつも『ダンジョンは危険と隣り合わせ』と言い聞かせていたので、調子に乗らないようこれまで自分を律してきた。しかし、ここまで慎重にダンジョンでレベリングをしてきたにも関わらず、それでも俺の成長は『異常』に早かった。それは途中から気づいていた。
今、俺は探索者になって2ヶ月目を迎えていたが、本来の新人探索者の成長であれば、よくてもレベル15くらいなのだが、しかし、俺のステータスはこうなっていた。
——————————————————
名前:新屋敷ソラ
レベル:49
魔法:<初級>ファイヤバレット/ファイヤランス/ウィンドバレット/サンダーバレット/サンダーランス/ソードウィンド/コールドブレス/サンドアタック
スキル:<初級>身体強化/縮地/怪力/忍足
恩寵:自動最適化
——————————————————
アホみたいに強くなってた。
どのくらい強いかというと、今の時点でずっと通っていたギルドの地下にあるダンジョン『関東C24』の最下層に余裕を持って到達するくらいには強くなっているのだ。もちろん単独で。
ちなみにダンジョン名の『関東C』とは『最大でCランク相当のダンジョン』という意味なので、最下層にいる魔物やダンジョンボスの強さは『最大でCランク相当』ということになる。
なので、この『関東C24』を単独で最下層まで行けるということは、それだけの実力ということになる。しかも、この『Cランク相当』というのは『パーティー攻略を基準にしている』とのことなので、そこを単独で攻略しているということは、俺の強さは『それ以上』ということになるだろう。
実際、最下層の魔物でさえ今の自分には敵じゃないので、俺の分析は間違っていないと思う。
さて、そんなアホみたいに強くなった俺は、この最下層に来るまでにこのダンジョン内の魔物をほとんど狩り尽くしていたのだが⋯⋯⋯⋯唯一残っている魔物がいた。それは、
「⋯⋯ダンジョンボス」
俺は昔からゲームをすれば『完全コンプリート』するまで何度も同じゲームをする、いわゆる『収集家』の癖があったため、唯一残されているダンジョンボスを倒して、この『関東C24の完全制覇』を目論んでいた。
そんなわけで、明日俺はいよいよ『関東C24』のダンジョンボスに挑戦する。
********************
——関東C24ダンジョン/最下層
次の日、俺はいつものように朝からダンジョンへ入るとすぐに最下層へと向かった。
そして1時間後——俺は現在『関東C24』の最下層である45階層の『ダンジョンボスの部屋』の前まで来ていた。
ちなみに、最下層は一週間前に初めて訪れたのだがその時は最下層まで3時間ほどかかっていた。しかし、今では1時間程度で着くなど、最初と比べてかなり時間を短縮できるようになっていた。
俺は時間短縮の方法として『一階から最下層まで魔物を無視して突っ走る』という作戦を思いつき、それを試してみた。すると、最初の試みで3時間かかっていたのが1時間半と一気に半分の時間短縮に成功したのだ。
その後、さらに慣れてくると効率化も図れるようになり、気づけば1時間程度で最下層に着くことができるようになっていた。
ちなみに、途中で魔物に出くわすこともあったが、レベル49にまで成長した俺の『身体能力』に、さらにスキルの『身体強化』を付加し、その上『気配を消して走るスキル』である『忍足』も付加した状態で駆け抜けたため、魔物が出現しても俺には気づかないので、そのままノンストップで最下層まで走ることができた。
たまにタイミング悪く魔物にぶつかることもあったが、その都度『パーン!』とまるで花火のように一瞬で魔物の体が弾け飛んだ。その際、走行の邪魔には特にはならなかった。
ただ、探索者にぶつかるわけにはいかないため、その場合は避けるのだが、そのときたまに戦闘中の魔物にぶつかることがあるため、戦闘中の探索者が「えっ!? 魔物がいきなり破裂した! なぜにっ!?」と驚かせてしまうことがちょいちょいあった。まー気にせずそのまま走り抜けたが。
ちなみに、こんな走行中に魔物を消し飛ばせば『魔石』や、たまには『アイテム』も落としたりするのだが、この辺の魔物の魔石はもう必要ないし、よっぽどなレアアイテムをドロップしない限り、俺の足が止まることはなかった。
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