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第一章

009「新屋敷ソラという生徒について(ストーキング終了)」

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「来たわね、新人ルーキー!」

 新屋敷ソラがギルドに入ると、窓口にいたきれいなお姉さんにすぐに声をかけられていた。

 何なの、あの女性ひと(怒)?

「はい、よろしくお願いします」

 新屋敷ソラが学校では見せたことのない笑顔・・で返事をした。

 え? 別人?

 普段、学校で笑顔など見せない彼の顔を初めて見た。普段から「だいぶ影はあるけど、きれいな顔立ちしてるな」とは思っていたこともあったので、そんな彼の不意打ちの笑顔はかなりのインパクトがあった。

「いい! すごくいい! 笑顔素敵じゃない! パーツはいいのに普段寝てばっかりで顔をまともに見せないだなんてやっぱりもったいないわ! 新屋敷ソラ、もっと普段からその顔を見せなさいよね! 何なの、もう!」

⋯⋯コホン。

 つい、少々、多少、口からいろいろと出てしまいましたわ。

 とりあえず、今のことは忘れてください。

 忘れるように。忘れなさい。⋯⋯⋯⋯忘れろ。



 新屋敷ソラ⋯⋯⋯⋯ソラ君は(今度からは名前で呼びましょう。今、私が決めました)、窓口のお姉さんに挨拶を済ませるとダンジョンの入口へと進んで、そのまま中に入っていった。

「ええっ?! ソ、ソラ君がダンジョンの中に?! え? え? ソラ君って探索者シーカー⋯⋯⋯⋯⋯⋯『高校生探索者シーカー』だったのっ!?」

 私はソラ君が探索者シーカーであることに驚いて、思わず大声を出してしまった。すると、

「あれ? ソラ君のお友達?」

 さっきの窓口の(ソラ君にちょっかいを出してた)お姉さんに声をかけられた。

「はい、友達です」

 私の中ではソラ君はすでに『友達』なので問題ないでしょう。

「ソラ君が探索者シーカーになったの知ってたの?」
「あ、いえ、さ、さっき、たまたま見かけたので、跡を追ったらここに入っていったのが見えたので⋯⋯」
「へ~跡を追いかけたんだ? ふ~ん⋯⋯」

 お姉さんが何かニヤニヤしている。

 何かすっごいマウント取られているような気がしたので、

「べ、別に、跡を追いかけてもいいじゃないですか!? と、とと、友達なんですから! ちゃんと友達なんですからね!」
「はい、はい、お母さんは信じていますよ」
「お母っ!?⋯⋯⋯⋯な、何なんですか、その上からの物言いは! 不愉快です!」
「あはは。ごめんごめん、怒らないでよ。それにしても、ソラ君すごいよね。まだ高校生になったばかりなのに探索者シーカーの試験合格するんだから。『高校生探索者シーカー』なんてかなり珍しいのよ」
「ええ、知ってます」
「ソラ君とは仲良いの?」
「ええっ!? そ、そそそ、そうですね。ええ、な、仲良いですわよ⋯⋯!」
「ソラ君って、普段からあんななの?」
「まーそうですね。ただ、学校ではあんな笑顔見せたことないのですごく意外でした」
「えっ?! そうなの?」
「はい。ていうか、普段ソラ君はいつも机に突っ伏して寝てばっかですわ。極力誰とも関わろうとしないですし⋯⋯」
「ええっ!? し、信じられない! ソラ君ってけっこう整った顔してるし、気さくだからてっきりリア充な高校生活送っているんだと勝手に思っていたわ!」

 と、お姉さんが私の話を聞いてだいぶ驚いていた。

「ふ~ん⋯⋯学校では誰ともしゃべらないんだ、ソラ君。ギルドでは⋯⋯まあ少し無口ではあるけど、そこまでしゃべらない子なんて印象じゃなかったから、まさか学校で『ぼっち』だなんてちょっとビックリだわ」
「私からしたら、ギルドここでのソラ君がビックリです。お互い様ですわ」



「まー、それはそれとして。でもソラ君ってちょっと不思議な子よね⋯⋯」
「そう⋯⋯ですか?」
「うん。普通探索者シーカーにデビューしたばかりの人って⋯⋯⋯⋯あ、探索者シーカーって『F級』から始まるんだけど⋯⋯」

 そう言って、お姉さんが簡単に探索者シーカーについての説明をしてくれた。

「でね、普通探索者シーカーになったばかりの新人ルーキーの多くは、先輩探索者シーカーに声をかけてダンジョンに入るのが一般的なの。だって、初めは誰だって怖いでしょ? ダンジョンに一人で入るのって」
「そうですわね」
「でも、ソラ君は『自分は一人がいいです』て言って、いつも一人でダンジョンに入っていくの」
「ええ?! だ、大丈夫なんですか?! ダンジョンって怖い魔物とかがいっぱいいるんですよね!!」
「まーね。でも、ダンジョンの入口あたり⋯⋯1階層なら問題ないのよ。1階層の魔物は新人ルーキーでも単独で倒せるレベルだから。まーそれでも探索者シーカーなりたての最初は怖いものだと思うんだけどね⋯⋯」
「そうですわね」
「でも、ソラ君、先週探索者シーカーデビューしてからこれまでダンジョンに毎日入っているけど、特にケガらしいケガもしていないようだから少し安心はしたけどね」
「そうだったんですね」

 私は受付のお姉さんと話したあとそのまま家に帰った。話してみるとお姉さんは意外と話しやすくて良い人だった。名前は琴音さんというらしい。

「それにしても、ソラ君が探索者シーカーになっていただなんて⋯⋯」

 ただでさえ、探索者シーカーになれるような人っていうのは限られるのに、まして、現役高校生での『探索者シーカーデビュー』なんて全国的にもほとんどいない。しかもソラ君はまだ高校一年生⋯⋯。

 ちょっとネットで調べてみたら『高校生探索者シーカー』は国内では30人くらいしかいないらしい。それでもかなり希少だけれども、ソラ君のような高校一年生で『高校生探索者シーカー』になった人は10人もいないとあった。これって、かなりすごいことだわ⋯⋯っ!

 まー同じクラスにもう一人・・・・『高校生探索者シーカー』がいるけど、私は彼を認めていない。『何が』という理由があるわけではないけれど、言うなれば『直感』。⋯⋯⋯⋯ソラ君に強く魅力を感じるのと同じように、私の『直感』があのもう一人・・・・の『高校生探索者シーカー』⋯⋯『竜ヶ崎真司』にはずっとうさんくささを感じている。

 まーそんなことはどうでもいいわ。

 とにかく、ソラ君と話してみたい。友達になりたい。

 でも、どうやったら話ができるかしら?

 とにかく、何とかして話ができる機会を考えてみましょう。

 私はそう心に決めると、ベッドから起き上がり机にノートを広げ計画プランを練った。
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