7 / 157
プロローグ
007「高校生探索者の誕生」
しおりを挟む現在、資格講座は試験最終日に来ており、俺の出番は最後だった。
一日目——探索者の歴史だったり、探索者になってからのダンジョン活動についての話だったりとなかなか有意義な話を聞かせてもらった。
二日目——ここで魔法とスキルの出し方を教わった。まず魔法というのは体内の魔力を使って魔法を発動させるらしいのだが、この『魔力を作る』というのに皆、苦戦していた。
「魔法を発動したい右手に魔力を集めるイメージをするんだ!」
講師の沢渡さんが最初魔法とスキルのデモンストレーションを披露し、その後一人一人に細かく指導してくれた。しかし、皆なかなかうまく発動できないでいた。
ちなみに、魔法やスキルの獲得方法は『魔法書』や『スキル書』というものをパラパラっと一通り読み、その後、その読んだ魔法書やスキル書の内容を頭にイメージして発動できれば『獲得』となり、ステータス画面の魔法やスキルの項目に『魔法名』『スキル名』が追加される。
なので、皆で『魔法とスキルの書』を回しながら一度読み込んだ。回し読みができるってことは、つまり一冊あれば手に入るのかと、俺はその『手軽さ』にちょっと驚いた。
ただ、話を聞くとそれは初級の魔法やスキル書くらいで、中級・上級・特級の魔法やスキルではそういうことはないとのこと。ですよねー。
さて、そんな講師の話を思い出していると、
「で、できた!」
魔法を発動できた者が現れた。『運動神経良さげ系20代』の一人だ。
「いいぞ! では、次に『身体強化』のスキルを発動してみろ! スキル発動にも『魔力』が必要となる。スキル発動の場合は、発動するイメージを持ちながら体全体に魔力を行き渡らすんだ! やってみろ!」
しかし『運動神経良さげ系20代』は、このスキル発動がうまくいかなかった。
「いいか! 見ての通り、スキル発動は魔法発動よりも難しい。しかし、一度スキル発動のコツを覚えれば魔法よりもスキル発動のほうが簡単になる。しかし、今はそのコツを身につけることが大事だから、魔法発動からまずはやってみろ!」
そう言って、講師が檄を飛ばすと皆、魔法発動を始めた。
そんな中、一人の参加者が大声で講師を呼んだ。
「魔法とスキル、両方できました!」
それは、もう一人の『運動神経良さげ系大学生男子』だった。しかも⋯⋯⋯⋯イケメン(チッ)!
講師の沢渡さんがその大学生のところに行き、再度魔法とスキルを発動させ確認する。
「ファイヤバレット!」
大学生がそう叫ぶと、手のひらから火の玉が4~5個ほど出て、目標となる『コンクリートの的』へ着弾。⋯⋯すごい、本当に魔法だ。
「身体強化!」
そして、次はスキル『身体強化』を発動。するとプロのスポーツ選手のような素早い動きやジャンプ力、またプロボクサーや格闘技選手のようなパンチやキックなどを見せた。
「うむ! 合格だ!」
「ありがとうございます!」
彼は最終試験を受けることなく、その場で合格となった。
どうやら、この資格講座では二日目のこの実践授業で『魔法』『スキル』両方発動できれば、その場で合格をもらえるとのこと。実際、二日目に合格をもらえるのは結構多いらしく、話によると講座を受ける前に知り合いに探索者がいれば、やり方を教えてもらえるらしいので講座までに練習するのも多いらしい。
これは別にズルということではなく、そもそもこの講座自体、何度も受けられるので一度受講すれば発動のやり方は教わるのであとは自己学習をして、発動できたら再度講座を受けにくるそうだ。
ただし、そういう人は初日の講座は受けるが二日目からは皆と一緒に講座は受けず、直接別のギルド関係者に魔法・スキルの発動確認をしてもらい、すぐにF級探索者の合格証を受け取るらしい。
ちなみに、今回のような講座中に発動した者というのは、単純にこの講座で授業を受けた『きっかけ』にすぐに発動したということらしい。こういうのは結構稀なようだ。
実際、この大学生以外に二日目に魔法もスキルも発動できる者はいなかった。
え? 俺はどうだったのかって?
それはすぐにわかる。
********************
「では、これで最後だな。⋯⋯⋯⋯新屋敷ソラ!」
「はい!」
いよいよ俺の番が来た。
「はじめっ!」
結果は⋯⋯⋯⋯⋯⋯合格だった。
というか、『魔法』も『スキル』も二日目の時点で発動ができていた。つまり、俺の予想どおり二日目の実践授業で講師が見せたデモンストレーションと解説だけですぐに魔法もスキルも獲得できていたのだ。それはつまり、
「よし!『自動最適化』は魔法やスキル獲得にも通用するっっ!!!!」
俺はその事実にあまりに感激し、ギルドの入口で思わず大声を上げると周囲の探索者に見られて恥ずかしい思いをする。まーこればっかりはしょうがないだろう。それくらい嬉しかったのだ。
自宅に戻ると、すぐに部屋へ入った俺は『自動最適化』が魔法やスキル獲得にも通用した『証拠』でもある『ステータス画面』を開く。
——————————————————
名前:新屋敷ソラ
レベル:1
魔法:<初級>ファイヤバレット
スキル:<初級>身体強化
恩寵:自動最適化
——————————————————
「はは、本当に魔法とスキルが追記されてる。すごい⋯⋯」
俺の能力が魔法とスキル獲得にも活かせるとわかって嬉しかったのはもちろんだが、しかしこの時の俺はまだ自称神様からもらった『恩寵:自動最適化』の本当の凄さをまだ理解してはいなかった。
あと、もう一つ——高校生の俺が『探索者』になるということが『どれだけすごいことなのか』⋯⋯この時の俺には知る由もなかった。
そんな、何も知らないことだらけの『高校生探索者』がここに誕生した。
プロローグ 完
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として
たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。
だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。
一度目では騙されて振られた。
さらに自分の力不足で全てを失った。
だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。
※他サイト様にも公開しております。
※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる