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【第一章 ハズレモノ胎動編】
009「シカト作戦」
しおりを挟む——一週間が過ぎた
特訓初日、シャルロットに励まされた俺は一生懸命、死に物狂いで頑張ると心に誓い、実際、自分の限界まで頑張って特訓をこなしていた。なのに、結果は⋯⋯⋯⋯散々たるものだった。
この一週間、俺はみんなと同じように剣術・魔法・体術の特訓を受けていたが成長はほとんど見られなかった。
——————————————————
【ステータス】
名前:エイジ・クサカベ(異世界人)
称号:ハズレモノ
レベル:2/??
HP:28/??
MP:19/??
身体能力:21/??
身体硬度:11/??
魔法:なし/??
固有魔法:なし/??
固有スキル:なし/??
体術:なし/??
——————————————————
俺は一週間の特訓でレベルがたった⋯⋯『1』しか上がらなかった。
一応、この世界の人間でも、筋肉を鍛えたり、剣術を磨いたり、MPが空近くなるまで魔法を発動させたりして追いこむような自主訓練を続ければ、レベル3~5くらいまでは上がるらしい。
ちなみに、この『自主訓練』だけでこの世界の人間が『レベル3~5』に達するには、早い生徒で『二ヶ月』、遅い人で『半年』くらいかかるそうだ。
そういう意味で言えば、俺が一週間で『レベル2』になったのは、この世界の人間よりかは成長が早いことを意味するのではないだろうか!? 少し希望が湧いた。
とはいえ、俺以外の奴らは一週間どころか特訓初日からメキメキとレベルが上がっていき、一週間後の今では全員が『レベル7~9』まで上がっている。ちなみに、その中でも柊木だけは別格でここまでで、すでに『レベル12』と⋯⋯二桁に達していた。
あと、俺以外の奴らは特訓や授業を初日に受けただけで、剣術・魔法・体術が習得となったものはステータスに追加されていた。
なぜだ? なぜ俺だけ、レベルの成長速度がここまで遅いんだ? あと、どうして剣術や魔法、体術がステータスに追加されないのだろう?
正直、意味がわからなかった。いくら何でもこの『ステータスの成長の悪さ』は異常だ。
なぜ? どうして?
シャルロットは言っていた⋯⋯『この異世界に召喚される条件の一つは召喚に選ばれた者』だと。そして、実際、教室にいた生徒全員が異世界に召喚されなかったという事実を考えれば、俺だって『召喚に選ばれた者』であり、それは、つまり『召喚に選ばれた理由』があるはず。
でも、今の自分を見ていると、だんだん自信がなくなり、今では「俺はやっぱり間違って召喚に選ばれたに違いない」と思うようになっていた。
そんな精神的ダメージを受けているタイミングで、さらに嫌なことが起きた。
それは、この一週間でみんなが俺に話しかけなくなったのだ。最初は気のせいかと思い、俺から話しかけてみたが見事に無視された。つまり『シカト』である。
男子はまあ⋯⋯しょうがない。でも、クラス委員長やユーミンといった女子までもが俺を無視した。あ、いや、厳密にはクラス委員長の古河だけは俺が話しかけようとするのを察すると、慌てて、その場から離れたのだが⋯⋯。
とはいえ、これはかなりショックだった。
ただ、この全員からのシカトだが、俺は少し『心当たり』があった。それは学園初日の特訓後、『王宮の間』でのシャルロットとのやり取りの一件だ。
あの時、俺もそうだったが、シャルロットがまさか俺を擁護したり励ましたりするような発言をするとは思っていなかったのだが、それは、あの六人もそう思っただろう。
そんなシャルロットの心遣いは俺からすれば『感謝』しかないが、六人からすれば「あんな救世主になれない無能な奴をどうして贔屓するんだ」と思うのは当然だろう。実際に柊木も「どうして日下部だけエコ贔屓するんだ」とか言ってたしな。
つまり、そのやり取りの一件で六人の俺に対する心証はだいぶ悪くなったのではないだろうか?
特に柊木や小山田⋯⋯いや、男子全員は「無能のくせに」くらいには思っていても不思議じゃない。
それにあの後、俺以外の六人が柊木の部屋へと入っていくのを見た。
そこでおそらく「俺をシカトしよう」という話になったのではないだろうか?
シカトの理由は明確にはわからないが、もしかすると『クズステータスのくせに、俺たちと一緒に特訓カリキュラムに参加するなんて目障りだ』とか『場違いだ』などと思っての行動なのかもしれない。
ふん。だが俺は負けない!
お前らのその傲慢で伸びに伸び切った『鼻っ柱』をへし折ってやる!
絶対にあきらめねー!
一ヶ月で強くなってやる!
それには来週からの『魔物討伐』⋯⋯これがとっても重要だ!
ちなみに、この世界の常識では『自主訓練』での成長が止まると、それ以上のレベルアップは魔物を狩って経験値を得ないとレベルアップできないらしい。
そして、文献に残っている異世界人の成長スピードは、『自主訓練』は『一週間程度で上限に達する』という記述があるらしく、その為、特訓カリキュラムも二週間目から『魔物討伐』という内容となるらしい。
ただ通常、学園では『魔物討伐』は『二年の後半』から始まるカリキュラムらしいので、剣術や魔法などを習い始めてから二週間で『魔物討伐』を始める異世界人の特訓カリキュラムはかなり異常なスピードとのことだ。
そんな話を聞くと、改めて俺たち異世界人の能力はこの世界では、いかに『規格外』かということを気づかされる。
今のところ、俺だけは『成長スピード』が遅いままだが、次の特訓カリキュラムである『魔物討伐』にはかなり期待している。
だってそうだろ? 魔物を倒せば自主特訓よりも大量に経験値が入りレベルアップのスピードが上がるって話なんだから!
もしかしたら、魔物討伐すれば俺の能力が開花する⋯⋯⋯⋯なんてこともあるんじゃないかっ!
よーし、頑張るぞ!
絶対に強くなってやる!
見てろよ、六人っ!
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