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負けてない
しおりを挟む「情報収集をしてきたぞ」
この男、貴崎 小次郎(きさき こじろう)は二日に渡り、私の情報などを調べていたらしい。
まるで人が変わったみたいに夜中まで外を駆け回り、私の為に必死になる姿には、心打たれるものがありました。
髪はボサボサで、生気もなく気だるげで、髭面のおじさん、そんなおじさんだったはずだけど、今は生き生きと毎日を謳歌しているみたいです。
「ご苦労でしたわね! 一体どんな情報を手に入れたのかしら?」
「それがな、やっぱり圧力がかかってて調べるのが難しいんだ。 栗山さん、このゲームのエンディングは知っているのかい? ゲーム会社にネタバレ厳禁だって門前払いされたんだよ」
私は、このゲームのエンディングを知らない。
そしてこのゲームは、ノベルゲームでもある為公式からネタバレ防止のガイドラインも設立されていて、クリア者しかストーリーを知らないのも現状だ。
私の昏睡事件も相まってこのゲームは、生産中止を余儀なくされて、プレイヤー間でもネタバレ防止でなかなか口を割らないのも、情報が集まらない原因になっている。
「実は、クリア目前まで進行していましたの。 まだクリアしていないのに、わたくしは転生してしまったのですわ」
「それで、ドシ踏んで処刑されてしまったと?」
「そ、そうですわ! 気安く詮索しないでくださいまし!」
なるほどね、と小次郎は顎に手を当てて暫く考え込んでいた。
「憶測に過ぎないのだが、このゲームに悪役令嬢メリッサを死に追いやった、本当の悪役令嬢がいたんじゃないか?」
(私を死に追いやった本当の悪役令嬢?)
あながち間違いでは無さそうだと、納得してしまいそうです。
ストーリーの結末が分からないってのは大分致命傷で、私が悪役令嬢として破滅フラグを何とか回避していたのに、呆気なく殺されたのだ。
黒幕の一人や二人いたって、不思議じゃない。
「その話しは、あり得そうですわね。 まぁ、そうだったとしても攻略は難しいですわ。 黒幕が誰か分かりませんもの…… もう諦めますわ……」
絶望と後悔と無力な私。
考えれば考える程に無謀だと感じていたし、もう諦めてしまおうと思っていたが、小次郎だけは諦めていなかったみたいです。
「お前! 負けて帰ってきたんじゃないんだろ!! 俺はいつだって負けてきた人生だった。 そんな俺がまだ折れてないんだ! 負けてないお前は、まだ戦えるはずだろ!?」
説教か? いや、これは小次郎なりの私への励ましだ。
これほどまでに、真摯に向き合ってくれた人なんか、私の人生において誰一人としていなかったと言うのに、小次郎は真正面からぶつかってきてくれたのです。
そんな彼を私は『格好いい』と思ってしまったのだ。
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